4月になり,教員採用試験の勉強に本腰を入れ始めた方も多いと思います。勉強の記録をブログにつけておられる方もいます。拝見すると,この「はいみー」さんという方は,拙著『教職教養らくらくマスター』を参考書として使ってくださっているようです。光栄に存じます。がんばってください。
http://blog.goo.ne.jp/ah1610
今回は,この夏実施の2013年度試験を受験される方を想定し,教職教養試験でよく問われる事項がどのようなものかをご覧に入れようと思います。出題傾向は自治体によって異なりますが,ここでは,受験者数が最も多い東京都の傾向をみてみます。
東京アカデミー社のホームページで公表されている資料によると,東京都の2012年度・小学校試験の受験者は5,378人,最終合格者は1,696人だそうです。よって不合格者は3,682人ですが,このうちの2,312人(62.8%)が筆記試験で落とされた者です。
http://www.tokyo-ac.co.jp/kyousai/ky-data_0.html
まあ,沖縄や福島のように,受験者の9割近くを筆記で落とす県もあることを考えると,東京は比較的面接重視であるといえます。しかし,筆記も侮れません。要となるのは,校種を問わず,受験者全員に課される教職教養です。この科目の勉強には,とくに力を入れる必要があるでしょう。
私は,2008~2012年度の東京都の教職教養試験において,どのような事項が多く出題されたのかを調べました。参照したのは,『教員養成セミナー』2012年3月号(時事通信社)の「最新5ヵ年全国出題頻度表:教職教養編」という記事です。この5年間で4回以上出題されたという事項を拾ってみました。
いかがでしょう。教職教養の内容は,教育原理,教育史,教育法規,および教育心理の4領域に分かれるのですが,全般的にみると,法規のウェイトが大きくなっています。
現代の教師は,学校という組織の一員として,組織的・体系的な教育の一翼を担うことが期待されます。そうである以上,学校運営に際して依拠すべき諸規則(法規)についてきちんと知っておいていただきたい,という願いが採用側にはあるのでしょう。
出題回数が5回という事項をみると,この期間中一貫して,服務の問題が出題されています。教員の不祥事が続発していることを受けてでしょうか。公務員としての教員が遵守すべき,職務上の3つの義務と身分上の5つの義務を押さえておきましょう。
また,東京のような大都市では,学校で荒れ狂う子どもが多いのでしょうか。出席停止制度についても毎年問われています。出席停止は義務教育学校で行うことができる措置ですが,これは他の子どもの学習権を保障するためのもので,懲戒行為ではないことに注意が要ります。
出席停止を命じる際には,保護者の意見を聴取すること,出席停止期間中の学習支援等の配慮を行うこと,といった留意事項があることにも要注意。表で挙げられている,学校教育法第35条の条文を繰り返し読んでおきましょう。
あと一点,都の教育施策も必出です。2012年度の試験では,「東京都教員人材育成基本方針」など,都の教員研修に関する文書が出題されています。東京都は現在,団塊世代の大量退職に伴い,大量採用を余儀なくされています。こういう状況のなか,新規採用教員の資質低下を憂いてのことでしょうか,若年教員の研修に力を入れる方針が打ち出されています。上記の文書は,都教委のホームページで閲覧可能です。概要を確認しておきましょう。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/buka/jinji/jinzai.htm
頻出事項に関するコメントはこれくらいにしますが,東京都の試験を受験予定の方は,上表に盛られた事項を中心に学習を進めると効率的です。教育史も侮るなかれ。表には,進歩主義教育を担った3人の思想家が掲げられていますが,各人に関する重要なキーワードを即答できますか(デューイ=経験主義,キルパトリック=プロジェクト・メソッド,パーカースト=ドルトン・プラン)。
次回は,他の自治体について,この5年間一貫して出題された事項(必出事項)を明らかにしてみようと思います。