いつの時代にも問題教師はいるものですが,明治時代の教育社会には,以下のようなタイプの「狂師」がいたようです。1890年(明治23年)1月26日の読売新聞によります。学海指針社の雑誌『教育』第31号からの転載だそうです。
①重箱狂師・・・生徒の重箱や持参品(贈物)の多寡によって教授を差別する。賄賂を要求。
②幇間(たいこもち)狂師・・・宴会などで来客の機嫌をとる。
③官員狂師・・・威張り散らし,官吏を気取る。官吏の子分になろうという思想を養成する。
④放蕩(ほうとう)狂師・・・自由気まま,好き勝手。
⑤高利貸狂師・・・金儲けに目がない。自分だけ富めばよい。義理人情など河童の屁。
⑥奴隷狂師・・・官吏や町村吏の言いなり。柔弱卑怯の性質を育成する。
⑦貧乏狂師・・・貯蓄は**(災い?解読不能)のもと。宜しく赤貧に安ずべし。貧乏の先導者。最も多い。
⑧虚言狂師・・・生徒との約束を守らない。
⑨横着狂師・・・校務の整理票簿の整頓をしない,捨てる。窓が壊れ,障子が破けていても気にとめない。
⑩不潔狂師・・・醤油のついたシャツ,フケだらけの髪 etc…不潔を厭わない者の見本。
いかがでしょう。②と⑥は,官吏などの有力者に頭が上がらなかった,教員の弱い立場を反映しています。当時は,地域の有力者の恣意によって教員の任免がなされていました。
⑦と⑩は,当時の教員の待遇の悪さに由来しているように思います。1890年といえば,1886年の諸学校令によって近代学校体系が打ち立てられてから間もない頃です。小学校への就学児童の急増に教員の供給が追いつかず,正規の資格を持たない准教員や代用教員も少なくありませんでした。給与が低い彼らは,貧乏狂師や不潔狂師として世間の目に映じたことでしょう。
私などは,④と⑦と⑨に該当しそうだなあ。いや,もしかしたら⑩にも当てはまるかも。いろいろな見方があるでしょうが,現代の教師の姿に通じるところもあるかと存じます。
教職危機の歴史研究,資料を収集中。半マジ,半道楽です。今,『日本之小学教師』という雑誌(1899年;明治32年創刊)の目次集成にあたっているのですが,面白そうな記事がわんさとあります。たくさんあるので,記事タイトルと掲載号をノートに記録するのも疲れます。
近く,国会図書館に行って,目ぼしい記事のコピーを取ってくる予定です。武蔵野大学の有明キャンパスに出講する曜日にしようかな。そしたら交通費も浮くし。