昨日,2013年度の『学校教員統計』の中間結果が公表されました。本調査の教員異動統計から,前年の2012年度の病気離職教員数を知ることができます。字のごとく,病気を理由に教壇を去った教員の数であり,その多くは精神疾患によるものです。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kyouin/1268573.htm
この数は,教員の危機状況の指標ともとれます。私は,1979年度から2012年度までの長期推移を跡付けてみました。下の表は,公立の小・中・高校のデータです。
観察期間中の最低値に青色,最高値に黄色のマークをつけましたが,世紀の変わり目をボトムにして,その後急増しています。小学校は,2006年度から2009年度にかけて370人から609人へと激増をみています。
2006年12月の教育基本改正,翌年の教育三法改正,さらには09年の教員免許更新制施行など,さまざまな改革が立て続けになされた時期ですが,その帰結であるとしたら何とも皮肉なことです。
上表に掲げたのは離職教員数の実数ですが,ベースの教員数は時期によって違いますので,不幸にして病気離職に至る確率を知ることはできません。そこで,各年の本務教員数で除して,離職率に換算してみましょう。
2012年度の公立小学校教員の病気離職者数は,上表にあるように590人ですが,同年5月の公立小学校本務教員数は412,154人と記録されています(『学校基本調査』)。よって,本務教員1万人あたりの病気離職教員数は14.3人となる次第です。この値を病気離職率とします。
私はこのやり方で,各年度の病気離職率を計算し,折れ線グラフにしてみました。下図をご覧ください。
中学校教員の離職率は,全国的に学校が荒れた80年代初頭で高かったようですが,その後は低下します。しかし,世紀の変わり目をボトムにして,以後は直線的に上昇。2012年度は,小学校を抜いてトップに躍り出ています。
こうした中学校教員の危機について,油布佐和子教授は,中学校は仕事の領域が広く,「中1ギャップ」に象徴されるような生徒指導上の課題もあり,教員評価の導入によって失敗できないプレッシャーがあると指摘し,そのうえで,人手不足の解消が必要だと言われています。
http://mainichi.jp/select/news/20140805k0000m040082000c.html
全くもって,その通りであると思います。国際教員調査(TALIS 2013)にて,わが国の教員が世界一多忙であることが浮き彫りになったことを受け,学校に外部人材(チーム学校)を導入し,教員らの(授業以外の)業務負担を緩和する方針が明示されていますが,今みている離職率のデータも,それを支持しているといえるでしょう。
ところで,教職危機の指標としての病気離職率をみる場合,どの属性で高いのかも観察しないといけません。2012年度の年齢層別の離職率はまだ出せませんが,2009年度までのトレンドでみると,病気離職率は若年層で高まっています。
http://tmaita77.blogspot.jp/2013/11/blog-post_17.html
はて,2012年度の年齢別離職率はどうなっているのか。6月29日の記事でみたように,長時間勤務は若年教員に多いなど,(量的に少ない)彼らに負担が凝縮されている構造もあります。来年春に公表される確定結果を待って,この点も明らかにすることにいたしましょう。
ひとまず,教員の病気離職率のカーブを最近まで延ばしたらこうなった,ということをご報告いたします。