2014年度の『学校基本調査』の速報集計結果が公表されていますが,今年春の大卒者の進路はどうだったのでしょう。私は,正負の2指標を計算してみました。正規職員(正社員)への就職率と無業・不詳率です。計算方法は以下の通り。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
・正規就職率=(正規就職者数+臨床研修医)/(卒業生-大学院・専修学校等進学者)
・無業・不詳率=(無業者+不詳・死亡者)/卒業生
正規就職率ですが,医学部の場合はキャリアが研修医から始めることが一般的ですので,このカテゴリーも分子に加えます。分母のほうは,就職の意志がない進学組は除外することとします。無業・不詳率は,進学でも就職でもない「その他」と進路不詳・死亡のカテゴリーの割合です。
今年春の大卒者は56万5,571人ですが,先ほどの2指標を算出すると,正規就職率が77.2%,無業・不詳率が13.4%となります。就職率はメディアでは90%超とか報じられますが,正社員に限定すると8割弱というところです。無業・不詳者は,およそ7人に1人。こちも肌感覚に合っています。
これは卒業生全体の値ですが,専攻ごとにみるとかなりのバリエーションがあります。下表は,10の大まかな専攻系列別のデータです。
正規就職率ですが,看護や医学などの保健系で高くなっています。医療人材への需要が高まっている近況を思うと,さもありなんです。工学や農学も8割超。やはり理系は強いですねえ。
人数的に最も多い社会科学は78.6%,人文科学は71.1%であり,教育や芸術はもっと下に位置します。教育系が芳しくないのは,教員採用試験の浪人組が多いためでしょう。芸術系にあっては,正規就職率は半分未満。就職せず,アーティストを目指す学生も多いと思われます。
右側の無業・不詳率は,これのほぼ裏返しです。人文系の無業率は17.1%,芸術系では実に27.5%なり。まあこの中には,留学準備とかに勤しんでいる者も含まれることでしょう。
さて,上表のデータをグラフにしようと思います。いつも通り,2次元の座標の上に10の専攻をプロットしますが,今回は一工夫加えて,各専攻の卒業生の量も表現してみましょう。芸術系がぶっ飛んだ位置になるでしょうが,この専攻は量的にはマイノリティーです。願はくは,こういう情報も視覚化してみたい。
このねらいに即したグラフ技法として,バブル図というものがあります。ドットの大きさにて,それぞれの層の量を表現するものです。ブツをみていただきましょう。
社会科学系が19万4千人と最も多いので,円が最も大きくなっています。正規就職率が低く,無業・不詳率が高い芸術は,数の上では少数派。円が小さいですね。
右下の保健や工学は,人数的にも結構いるんだな。卒業生に対する需要のある専攻ですが,近年,これらの道に進む学生も増えています。
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/08/blog-post_7.html
このグラフを手書きで作成するとなると,ドットが置かれる点を中心とした円をコンパスで描くことになります。学生さんにやらせてみるのもいいかもな。
「グラフにする時はきちんとNを書け」。よく言われることですが,帯グラフの場合は,棒の幅でそれを表現することが可能であり,散布図の場合は上図のように円の大きさを使うことができます。後者がバブル図と呼ばれるものであり,エクセルで簡単に作図できます。今回は,その事例の紹介でした。
8月も最後の週になりました。もうすぐ秋です。季節の変わり目,体調を崩されませぬよう。