私は今年で40歳。働き盛りの時期ですが,ガツガツ稼いでいる人とそうでない人の分化も,さぞ大きいことと思います。
これは年齢現象であると同時に,世代現象ともとれるでしょう。私の世代は,大学卒業時に就職氷河期に直面したロスジェネです。学卒時に正規就職が叶わず,不安定な非正規雇用に留め置かれている人が相対的に多い世代でもあります。
働き盛りの年代における,持てる者と持たざる者の分化。われわれの世代では,これがひときわ顕著なのではないかと推察されます。
それは収入の多寡によりますが,そうした経済条件に違いにより,生活意識や将来展望などにも分化が起きているのではないか。今回は,その様をデータで可視化してみようと思います。
分析したのは,国立青少年教育振興機構『子どもの読書活動の実態とその影響・効果に関する調査研究』(2013年)のローデータです。読書の設問がメインですが,20歳以上の成人を対象に,諸々の生活意識についても問うています。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/72/
私は,30~40代男性のサンプルを取り出し,年収の多寡によって,目ぼしい設問への回答がどう違うかを明らかにしました。自分の世代に絞った分析です。
まずは,年収の分布をみてみましょう。年収の設問に有効回答を寄せたのは1008人です。この1008人の年収分布をヒストグラムにすると,下図のようになります。
おおむね,真ん中辺りが厚いノーマル分布です。最頻階級は年収500万円台ですが,30~40代男性の年収だと,こんなところでしょうか。私は,これよりもずっと低いです。
この分布を参考に,プア(貧困層)とリッチ(富裕層)を取り出すとしたら,どこで区切るのがよいでしょう。思うに,前者は年収200万未満(青色),後者は750万以上(赤色)とするのがベストではないでしょうか。サンプルの数は,前者が145人,後者が140人と,ほぼ同じくらいになります。
この2つの群について,既婚率などの属性,読書嗜好,自己イメージ,学校時代の運動部経験,朝食摂取頻度を比較してみました。どの設問も無効回答はなく,%の母数は,プアが145人,リッチが140人です。ただし,運動部経験のみ,当該の学校に通った経験のある者がベースとなっています。
働き盛りのプアとリッチの比較ですが,いかがでしょう。既婚率はプアが23.5%,リッチが77.9%と,大きな差があります。男性が結婚するには経済力が求められる。これは本ブログでも,何度もデータを提示したことです。
大卒率も大きく違っています。こうした学歴の差が収入の差につながっているのは明らか。
秋にちなみ,読書嗜好も比べてみましたが,これもリッチのほうが有意に高くなっています。現在のみならず,子ども時代の読書嗜好にも差があり。ダイレクトな因果とはいいきれませんが,子ども期の読書の重要性は,否定できますまい。
自己イメージの違いも大きいですねえ。生活満足度はプアが21.4%,リッチが62.1%と,3倍近くの開きが出ています。将来展望や人生の主体性の差も大きい。客観的な経済条件の差により,意識にこうも違いが出るとは。学校体験の違いも引きずっているようです(2番目)。
次に運動部経験ですが,リッチには,学校時代に運動部に属していた経験のある人が,プアに比して多くなっています。まあ企業は,上の命令を従順に聞く体育会系の学生を好んで採るといいますからね。大企業には,体育会系の採用枠もあるそうな。
https://twitter.com/masa_mynews/status/794733841915052033
生活習慣の代表指標の朝食摂取頻度も,プアとリッチでは違っている。プアには,昼夜逆転など,不規則な生活をしている者が多いためでしょう。
量的にほぼ等しい,プアとリッチの生活意識を比較してみましたが,結構な違いがあることに驚かされます。われわれの世代では,30~40代のステージになっても,年収200万未満のプアは少数派ではないです。この層が高齢期に到達したとき,今の「暴走老人」以上に,社会を脅かす危険因子になる可能性は大といえましょう。
人手不足の深刻化から,われわれロスジェネにも正社員化の道を開こうということですが,こういう施策をぜひ進めてほしいと思います。随所で書いていますが,新卒も既卒も,われわれのようなロスジェネも同じ人間。何も違う所はありません。