2017年5月19日金曜日

パチンコ実施率の変化

 多くの人が何らかの趣味や娯楽を持っていますが,どういうものが好んでされるかは,時代と共に変わっているでしょう。

 総務省『社会生活基本調査』で,いろいろな趣味・娯楽の実施率の変化をとってみたのですが,過去20年間の変化が最もドラスティックなのはパチンコです。

 1991年と2011年の年齢層別の実施率がどう変わったかをグラフにすると,以下のようになります。調査実施時期から遡って1年間の間にパチンコをしたという人の割合です。


 20~40代の低下がスゴイですね。20代前半では,37.8%から12.9%と,3分の1近くに減っています。若者の「パチンコ離れ」とはよく言ったものです。

 その要因については,1)スマホゲームなどの普及,2)自由に使えるお金の減少,3)自由時間の減少,といったことがいわれています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kodamakatsuya/20160512-00057599/

 なるほど。若者の給料は減ってますからねえ。前回みたところによると,20代前半の正社員の年収中央値は250万円弱です。沖縄に至っては185万円。正社員でこれです。非正規も含めたら,もっと少なくなります。

 おカネだけでなく,自由に使える時間(ゆとり)も減っているでしょう。昨今の人手不足もあって,ピチピチの若年労働者は馬車馬のようにこき使われていますから。

 20代前半には学生も多く含まれますが,彼らとて,昨今の締め付けにより大学等の出席管理も厳しくなっています。私の頃は,大学をサボって1日中パチンコに入り浸る猛者もいましたが,最近はそういう学生も減っているでしょうねえ。学生に「君たちはパチンコとかしないの?」と訊いたことがありますが,「そんなのするヒマないっすよ」と返されたのを覚えています。ああ,学費稼ぎの長時間バイトも増えているんでしたね。
http://tmaita77.blogspot.jp/2017/05/blog-post_7.html

 60歳以上の高齢層は,これら3つのファクターと無縁なためか,パチンコの実施率はこの20年間でさほど変わっていません。65歳以上では,若干増えてもいます。しかるに実施率が高いのは若者ですので,この層が離れていくのは,業界にとってかなり痛手でしょう。

 なお,パチンコの実施率には地域差もあります。25~34歳のパチンコ実施率を都道府県別に計算し,4つの階級で塗り分けたマップにしてみました。以下に掲げるのは,1991年と2011年のマップです。


 全国的に地図の模様が薄くなっています。1991年ではほとんどの県が3割以上でしたが,2011年では2割未満の県が大半です。全国的に,若者の「パチンコ離れ」が進行していることが知られます。

 まあ,若者の「**離れ」というのは,ほとんどが「おカネの若者離れ」に起因しているのも否めません。声高には言えませんが,カネがなければ趣味や娯楽もそうできません。

 ある方がツイッターで,「高齢者にカネをばらまくより,消費意欲旺盛な若者にお金を渡したほうが,景気がよくなっていいんじゃないか」という趣旨のことを言われてましたが,そんな気もします。前回みたところによると,20代前半の若者の年収中央値はたった250万円ほど。これでは生活に精一杯で,遊びにカネを回すのは難しい。

 2016年に実施された『社会生活基本調査』のデータが間もなく公開されると思いますが,実施率の年齢カーブはもっと下に下がり,地図もさらに薄くなっていることでしょう。社会の変化といえばそれまでですが,経済的逼迫,時間的ゆとりの減少によって,若者のせっかくの消費性向が抑えつけられている。パチンコ実施率の変化から,こういうことも見て取る必要があるでしょう。
 
 2011年の若者のパチンコ実施率の県別一覧表は,昨日ツイッターで発信しました。リンクを貼っておきます。興味ある方はどうぞ。傾向としては,他の娯楽が多い都市部では低いようです。沖縄が低いのはなぜなのか…。
https://twitter.com/tmaita77/status/865171236774592512