私は43歳,アラフォーのステージです。独り身ですが,結婚して家庭を持っている人が数としては多いでしょう。
夫婦はタッグなんですが,令和の時代にあっては,偏狭な役割分担はなるべく無くしたほうがいい。しかし日本は未だにそれが強固で,家事の負担は女性(妻)に偏しています。夫婦の家事分担率のデータは,これまで嫌と言うほど出してきました。
しからば,稼ぎの分担はどうか。夫のシェアが大きいのは想像がつきますが,具体的なパーセンテージのデータはあまり見ません。40代の家庭に焦点を当てて,データを出してみましょう。当たり前のことを数値で可視化するのは,私の商売です。
皆さんならどうしますか。40代の有配偶就業者の所得を男女別に出して,両性の合算に占める男性の割合を出しますか。しかしこれだと,働いてない専業主婦がオミットされちゃいます。
私は以下の2つを計算し,bをaで割ってみることにしました。
a) 世帯主が40代である核家族世帯(夫婦+子)の所得中央値
b) 40代の有配偶男性有業者の所得中央値
2017年の『就業構造基本調査』のデータを使います。では,a)のほうから計算してみましょう。以下の表は,当該年代の世帯所得の分布表です。
世帯主が40代で,夫婦と子からなる核家族世帯は全国で407万世帯ほどです(所得不明は除く)。分布をみると,最頻階級は600万円台となっています。前々回で出した,小・中学生の家庭と一緒ですね。
累積%が50ジャストの中央値は,700万円台の階級に含まれます。按分比例を使って割り出しましょう。
按分比=(50.0-48.6)/(61.5-48.6)=0.1063
中央値=700万円+(100万円 × 0.1063)=710.6万円
アラフォーの子育て世帯の所得中央値は,711万円と出ました。これがフツーの水準です。皆さんのご家庭は,これと比してどうでしょうか。このレベルの稼ぎが要る時代なんですね,子育てには。
最近は共稼ぎの夫婦が多いので,これは夫と妻の合算の結果でしょうが,夫の割合はどれくらいか。ここでの関心事はコレです。同じやり方で,上記の(b)40代の有配偶男性有業者の所得中央値を出すと,541万円です。
よって,アラフォー世帯の夫の稼ぎ割合は,541/711=76.1%となります。およそ4分の3です。裏返すと,妻の稼ぎ分は4分の1ということになります。
これは全国データですが,都道府県別の数値もはじき出せます。一覧表を見ていただきましょう。
全国値は76.1%ですが,県別にみると64.4%~95.8%までの幅(range)があります。山形は「夫64:妻36」ですが,大阪は「夫96:妻4」という割合です。
黄色マークは8割を超える県ですが,近畿地方に多くなっています。大阪は,世帯所得が668万円で,そのうち夫が640万円。あくまで見立てですが,妻の稼ぎはほとんどないことになります。大阪は離婚率が高かったと思いますが,夫と別れた母子が貧困化するリスクはどうか。それが大きいので,夫のDVに耐え忍ぶ妻も多かったりして。
当然,夫の稼ぎ割合は,共稼ぎ世帯の率と逆相関の関係にあります。東北地方は,共稼ぎの世帯の率が高し。山形の世帯所得は,大都市の大阪より高くなっています。これは妻の稼ぎが多いことによるもので,配偶者控除が適用されず,可処分所得だと少なくなっちゃいそうです。配偶者控除,存続させる必要のある制度でしょうか。
東京の40代有配偶男性の所得は653万円で,鹿児島の40代子育て世帯(585万円)よりも高くなっています。ざっくり言うと,「東京の一馬力 > 鹿児島の二馬力」です。私は両方の暮らしを知ってますが,違うものですね。鹿児島では,夫婦正社員の共稼ぎでないと,子を大学にやるのは難しいと言われます。
共稼ぎが必須の時代ですが,夫の稼ぎ割合をみると,妻の寄与度をもっとアップさせ,世帯の収入アップを図る余地はあるように感じます。ISSPの2017年調査では,自分の収入と家族の収入を訊いていますが,スウェーデンの25~54歳の有配偶男性の回答を元にすると,「当人の収入中央値/世帯の収入中央値」は58.1%です。「夫58:妻42」なり。日本の「夫76:妻24」とは,だいぶ違いますね。
国際比較をやる術を見つけましたので,次回ではそれをやってみます。
2019年11月15日金曜日
2019年11月13日水曜日
有業者のリーダー比率
私のパソコンには,PISA,TIMSS,PIAAC,そしてTALISなど,国際調査のローデータファイル(エクセル)が入っています。どれも非常に大容量で,開くのに時間がかかり,動作も不安定になります。
しかし便利なツールも用意されていて,下記サイトにて,3重クロスまでの分析はリモート集計でできます。
https://nces.ed.gov/surveys/international/ide/
最近は,こちらを使っています。個票データのファイルを開くのが億劫というのもありますが,データの再現が容易であるためです。言わずもがな,再現可能性は科学の大前提です。
個票データだと,無数の変数の組み合わせが可能ですが,いろいろ欲が出て,自分でもワケが分からない袋小路にハマりがち。しかしリモート集計は3重クロスまでですので,精選した変数によるシンプルな分析を心がけるようになります。亡き恩師がよく言われてましたが,他人にも分かりやすいシンプルな分析がいいのです。
ここ数日,「出世に際して重要なのは,能力かジェンダーか」という関心をもって,OECDの国際成人力調査「PIAAC 2012」のデータを分析しています。まず思いつくのは,有業者の管理職比率のジェンダー差ですよね。
「Do you manage or supervise other employees?」という問いに,イエスと答えた人の割合を使いましょう。ただこれには,作業チームのリーダーのような人も含まれるので,管理職ではなく「リーダー」ということにします。
日本だと,16~65歳の有業者のうちリーダの割合は,男性では40%,女性では16%です。その差は24ポイント,予想通り男性のほうが圧倒的に高し。もはや驚きもしませんが,他国はどうでしょう。調査対象の26か国のデータは以下です。
下に位置するのは,「男性>女性」の度合いが大きい国ですが,日本と韓国が仲良くワーストに位置しています。リーダー的地位に到達するチャンスのジェンダー差が最も大きい社会です。
それはどの社会でも同じですが,上のほうの国は,男性と女性の差が比較的小さくなっています。エストニア,スウェーデン,イギリスでは8ポイントの差です。日本や韓国より,ジェンダー差がずっと小さいと。
上に立つのは有能な人が望ましいのですが,上記の差は能力の性差の反映でしょうか。「PIAAC 2012」は学力調査ですので,認知面の学力も知ることができます。ホワイトカラー労働が多くなっている現在では,学力が職務遂行能力と強く相関するとみてもよいでしょう。
日本の16~65歳の有業者を,数学的思考力の習熟度レベルに基づいて3つのグループに分けてみます。レベル3未満を低,レベル3を中,レベル4・5を高としましょう。最後の高学力グループのサンプルでリーダー比率を出すと,男性が50%,女性は19%となります。同じ高学力層でも,リーダーの出現率にはジェンダー差があります。というか,上表の有業者全体の場合よりも差が広がるじゃないですか。
もっと驚くべき事実があります。女性の高学力グループのリーダー比率は,男性の低学力グループよりも低いのです。前者は19%,後者は32%なり。言葉がよくないですが,有能女性よりも無能男性のほうがリーダーになる確率は高いと。能力よりもジェンダーの社会です。
こういう国って他にあるのでしょうか。他国についても高学力女性,低学力男性の2グループを取り出し,リーダーの比率を計算してみました。データが得られた21か国の一覧をご覧ください。
一番上のアイルランドでは,低学力男性が27%,高学力女性が45%で,後者のほうが18ポイントも高くなっています。ジェンダーよりも能力です。数としては,こういうタイプのほうが多数です(右端の差分がプラス)。
悲しいかな,日本はそれとは逆で,能力よりジェンダーの度合いが韓国に次いで高くなっています。無能男性が有能女性の上に立つ。会社勤めをしている人は,こういう光景を常日頃目にしていることでしょう。朝日新聞で「働かないおじさん」が取り上げられていますね。機械的な年功序列で管理職に上り詰め,能力に見合わない高給をむさぼっている中高年男性のことです。
両性の3つの学力グループの数値をグラフにすると,日本の女性の閉塞状況が露わになります。以下のグラフは,日本とアイルランドの対比です。
緑は学力高群,オレンジは中群,青は低群のリーダー比率です。アイルランドでは学力レベルが上がるにつれ,両性ともほぼ同じスパンでリーダー比率が上がっていきます。
しかし日本の女性は何たることか,3つの学力群とも2割弱の位置に固まってしまっています。能力に関係なく女性は低位置に留め置かれる。低位収束現象とでも呼んでおきましょう。
日本の女性には,見えない天井があるようですが,いわゆるマミートラックの影響もあるでしょう。結婚・出産で退職し,子育て後復職しても,元のキャリアを取り戻すのは難しい。配偶者の転勤についていくことで,キャリアがその都度リセットされる。
残念といいますか,女性の管理職昇進意欲が低いこともいわれています。「管理職になりたいか」と問うても,イエスという回答の率が男性に比して有意に低し。晩産化の影響で,40~50代のステージは「育児+介護」のダブルケアになる時代ですが,こうした負荷に管理職の重責が加わるのは耐えがたい,という意識もあるとみられます。
しかしこれは日本の事情で,上記のデータで分かるように,他国では違うのですよね。夫の家事分担が進んでいる,家事の省力化・外注化が進んでいる,女性の昇進に対する妬みがない…。日本と異なる要因は数多く指摘できます。結果として,女性のハイタレントがちゃんと活用されているのは,素晴らしいことです。
管理職の女性比率を*%にする。こういう数値目標を掲げ,それを達成するためのアファマーティブ・アクションも必要かもしれません。
しかし便利なツールも用意されていて,下記サイトにて,3重クロスまでの分析はリモート集計でできます。
https://nces.ed.gov/surveys/international/ide/
最近は,こちらを使っています。個票データのファイルを開くのが億劫というのもありますが,データの再現が容易であるためです。言わずもがな,再現可能性は科学の大前提です。
個票データだと,無数の変数の組み合わせが可能ですが,いろいろ欲が出て,自分でもワケが分からない袋小路にハマりがち。しかしリモート集計は3重クロスまでですので,精選した変数によるシンプルな分析を心がけるようになります。亡き恩師がよく言われてましたが,他人にも分かりやすいシンプルな分析がいいのです。
ここ数日,「出世に際して重要なのは,能力かジェンダーか」という関心をもって,OECDの国際成人力調査「PIAAC 2012」のデータを分析しています。まず思いつくのは,有業者の管理職比率のジェンダー差ですよね。
「Do you manage or supervise other employees?」という問いに,イエスと答えた人の割合を使いましょう。ただこれには,作業チームのリーダーのような人も含まれるので,管理職ではなく「リーダー」ということにします。
日本だと,16~65歳の有業者のうちリーダの割合は,男性では40%,女性では16%です。その差は24ポイント,予想通り男性のほうが圧倒的に高し。もはや驚きもしませんが,他国はどうでしょう。調査対象の26か国のデータは以下です。
下に位置するのは,「男性>女性」の度合いが大きい国ですが,日本と韓国が仲良くワーストに位置しています。リーダー的地位に到達するチャンスのジェンダー差が最も大きい社会です。
それはどの社会でも同じですが,上のほうの国は,男性と女性の差が比較的小さくなっています。エストニア,スウェーデン,イギリスでは8ポイントの差です。日本や韓国より,ジェンダー差がずっと小さいと。
上に立つのは有能な人が望ましいのですが,上記の差は能力の性差の反映でしょうか。「PIAAC 2012」は学力調査ですので,認知面の学力も知ることができます。ホワイトカラー労働が多くなっている現在では,学力が職務遂行能力と強く相関するとみてもよいでしょう。
日本の16~65歳の有業者を,数学的思考力の習熟度レベルに基づいて3つのグループに分けてみます。レベル3未満を低,レベル3を中,レベル4・5を高としましょう。最後の高学力グループのサンプルでリーダー比率を出すと,男性が50%,女性は19%となります。同じ高学力層でも,リーダーの出現率にはジェンダー差があります。というか,上表の有業者全体の場合よりも差が広がるじゃないですか。
もっと驚くべき事実があります。女性の高学力グループのリーダー比率は,男性の低学力グループよりも低いのです。前者は19%,後者は32%なり。言葉がよくないですが,有能女性よりも無能男性のほうがリーダーになる確率は高いと。能力よりもジェンダーの社会です。
こういう国って他にあるのでしょうか。他国についても高学力女性,低学力男性の2グループを取り出し,リーダーの比率を計算してみました。データが得られた21か国の一覧をご覧ください。
一番上のアイルランドでは,低学力男性が27%,高学力女性が45%で,後者のほうが18ポイントも高くなっています。ジェンダーよりも能力です。数としては,こういうタイプのほうが多数です(右端の差分がプラス)。
悲しいかな,日本はそれとは逆で,能力よりジェンダーの度合いが韓国に次いで高くなっています。無能男性が有能女性の上に立つ。会社勤めをしている人は,こういう光景を常日頃目にしていることでしょう。朝日新聞で「働かないおじさん」が取り上げられていますね。機械的な年功序列で管理職に上り詰め,能力に見合わない高給をむさぼっている中高年男性のことです。
両性の3つの学力グループの数値をグラフにすると,日本の女性の閉塞状況が露わになります。以下のグラフは,日本とアイルランドの対比です。
緑は学力高群,オレンジは中群,青は低群のリーダー比率です。アイルランドでは学力レベルが上がるにつれ,両性ともほぼ同じスパンでリーダー比率が上がっていきます。
しかし日本の女性は何たることか,3つの学力群とも2割弱の位置に固まってしまっています。能力に関係なく女性は低位置に留め置かれる。低位収束現象とでも呼んでおきましょう。
日本の女性には,見えない天井があるようですが,いわゆるマミートラックの影響もあるでしょう。結婚・出産で退職し,子育て後復職しても,元のキャリアを取り戻すのは難しい。配偶者の転勤についていくことで,キャリアがその都度リセットされる。
残念といいますか,女性の管理職昇進意欲が低いこともいわれています。「管理職になりたいか」と問うても,イエスという回答の率が男性に比して有意に低し。晩産化の影響で,40~50代のステージは「育児+介護」のダブルケアになる時代ですが,こうした負荷に管理職の重責が加わるのは耐えがたい,という意識もあるとみられます。
しかしこれは日本の事情で,上記のデータで分かるように,他国では違うのですよね。夫の家事分担が進んでいる,家事の省力化・外注化が進んでいる,女性の昇進に対する妬みがない…。日本と異なる要因は数多く指摘できます。結果として,女性のハイタレントがちゃんと活用されているのは,素晴らしいことです。
管理職の女性比率を*%にする。こういう数値目標を掲げ,それを達成するためのアファマーティブ・アクションも必要かもしれません。
2019年11月6日水曜日
小・中学生の家庭の年収分布
「年収600万円で中学受験はできるか」という主題の記事を見かけました。
https://st.benesse.ne.jp/ikuji/content/?id=44042
受験費用,合格後の入学金,授業料,制服代,交通費,学用品費…等のデータが示され,私立生の親の何人かに年収を尋ねた結果が紹介されています。
こういう問題を扱う場合,私立に通わせている家庭の年収分布を出すのが手っ取り早いと思うのですが,それはされていません。文科省『子供の学習費調査』に出ているのですがね。秋晴れの昼下がり,ヒマですので,アシストをさせていただきましょう。
上記のリンク先の「5 世帯の年間収入段階別,項目別経費の金額段階別構成比」に,小・中学生の家庭の年収分布が%値で出ています。公立と私立に分けられています。公私立の小・中学校の分布を採取し,中央値の検討をつけるため累積%にしてみました。結果は以下のようです。
左は公立,右は私立の分布ですが,かなり違いますね。公立小の最頻階級は400~500万円台,公立中は600~700万円台ですが,私立は小中ともマックスの1200万円以上です。分布が高年収層に偏しており,私立小では半分近くが1200万円以上となっています。幼少期の「お受験」をできる家庭はやっぱりスゴイ。
下段の累積%をみると,50ジャストの中央値(median)は,公立は600~700万円台,私立は1000~1100万円台の階級に含まれることが知られます(赤字)。按分比例を使って割り出すと,児童・生徒の家庭の年収中央値は以下のようになります。
公立小 = 636万円
公立中 = 675万円
私立小 = 1160万円
私立中 = 1022万円
いかがでしょう。まず冒頭の記事の問いに絡めると,年収600万円というのは,私立中学校の家庭では中央値よりもずっと下ですね。全生徒の下位15%のラインにも達しません。中学受験をする家庭のフツーの年収は1000万円,下位25%でも700万円くらい。この事実を押さえましょう。
公立でみても600万円を超えているのに驚きます。公立小は400万円台かなと思いきや,それよりもずっと高し。うーん,ざっくり言うなら,子育てをするには600万円の年収が要る時代ってことでしょうか。
小・中学生の親は30~40代くらいだと思いますが,この年齢層の男性有業者の所得分布を,2017年の『就業構造基本調査』から明らかにすると以下のごとし。
小・中学生のお父さん年代の所得分布ですが,真ん中が膨らんだきれいなノーマルカーブですね。右端の累積%から,中央値は400万円台であるのが分かります。
小・中学生の家庭の年収中央値は600万円台,父親年代のそれは400万円台。上表の分布は税引き前の所得の分布ですので,手取りだともっと下方にシフトします。子育てをするには,共稼ぎでないとキツイ時代になっているようです。
先週のニューズウィーク記事で扱いましたが,都内23区の出生率をみると,今世紀初頭の頃と現在では,地域差の構造が変わっています。一昔前では地価の安いエリアで高かったのが,現在では所得水準が高いエリアで多産になっているのです。母親のフルタイム就業率とも相関するようになっています。これなども,共稼ぎでないとキツイ時代になっていることの証左です。
今からでも遅くはありません。増税でえられた財源の使いみちを正しましょう。重きを置くべきは,保育の費用負担の軽減ではなく,受け皿の拡充です。保育士の待遇改善はそのための主要戦略ですが,保育士の非正規化もビックリするほど進行しています。
https://twitter.com/tmaita77/status/1190947315093098501
非正規のパートと思って応募したら,正規職員と同等の仕事をさせられるのもザラ。正規でも安いのに,それをも上回る低賃金で働かされる。これでは,保育の質も脅かされるというもの。
共稼ぎでないとキツイ,そうでないと出産できない。こういう時代になっていることは,子育てファミリーの稼ぎを一瞥するだけで分かっちゃいます。
https://st.benesse.ne.jp/ikuji/content/?id=44042
受験費用,合格後の入学金,授業料,制服代,交通費,学用品費…等のデータが示され,私立生の親の何人かに年収を尋ねた結果が紹介されています。
こういう問題を扱う場合,私立に通わせている家庭の年収分布を出すのが手っ取り早いと思うのですが,それはされていません。文科省『子供の学習費調査』に出ているのですがね。秋晴れの昼下がり,ヒマですので,アシストをさせていただきましょう。
上記のリンク先の「5 世帯の年間収入段階別,項目別経費の金額段階別構成比」に,小・中学生の家庭の年収分布が%値で出ています。公立と私立に分けられています。公私立の小・中学校の分布を採取し,中央値の検討をつけるため累積%にしてみました。結果は以下のようです。
左は公立,右は私立の分布ですが,かなり違いますね。公立小の最頻階級は400~500万円台,公立中は600~700万円台ですが,私立は小中ともマックスの1200万円以上です。分布が高年収層に偏しており,私立小では半分近くが1200万円以上となっています。幼少期の「お受験」をできる家庭はやっぱりスゴイ。
下段の累積%をみると,50ジャストの中央値(median)は,公立は600~700万円台,私立は1000~1100万円台の階級に含まれることが知られます(赤字)。按分比例を使って割り出すと,児童・生徒の家庭の年収中央値は以下のようになります。
公立小 = 636万円
公立中 = 675万円
私立小 = 1160万円
私立中 = 1022万円
いかがでしょう。まず冒頭の記事の問いに絡めると,年収600万円というのは,私立中学校の家庭では中央値よりもずっと下ですね。全生徒の下位15%のラインにも達しません。中学受験をする家庭のフツーの年収は1000万円,下位25%でも700万円くらい。この事実を押さえましょう。
公立でみても600万円を超えているのに驚きます。公立小は400万円台かなと思いきや,それよりもずっと高し。うーん,ざっくり言うなら,子育てをするには600万円の年収が要る時代ってことでしょうか。
小・中学生の親は30~40代くらいだと思いますが,この年齢層の男性有業者の所得分布を,2017年の『就業構造基本調査』から明らかにすると以下のごとし。
小・中学生のお父さん年代の所得分布ですが,真ん中が膨らんだきれいなノーマルカーブですね。右端の累積%から,中央値は400万円台であるのが分かります。
小・中学生の家庭の年収中央値は600万円台,父親年代のそれは400万円台。上表の分布は税引き前の所得の分布ですので,手取りだともっと下方にシフトします。子育てをするには,共稼ぎでないとキツイ時代になっているようです。
先週のニューズウィーク記事で扱いましたが,都内23区の出生率をみると,今世紀初頭の頃と現在では,地域差の構造が変わっています。一昔前では地価の安いエリアで高かったのが,現在では所得水準が高いエリアで多産になっているのです。母親のフルタイム就業率とも相関するようになっています。これなども,共稼ぎでないとキツイ時代になっていることの証左です。
今からでも遅くはありません。増税でえられた財源の使いみちを正しましょう。重きを置くべきは,保育の費用負担の軽減ではなく,受け皿の拡充です。保育士の待遇改善はそのための主要戦略ですが,保育士の非正規化もビックリするほど進行しています。
https://twitter.com/tmaita77/status/1190947315093098501
非正規のパートと思って応募したら,正規職員と同等の仕事をさせられるのもザラ。正規でも安いのに,それをも上回る低賃金で働かされる。これでは,保育の質も脅かされるというもの。
共稼ぎでないとキツイ,そうでないと出産できない。こういう時代になっていることは,子育てファミリーの稼ぎを一瞥するだけで分かっちゃいます。
2019年11月5日火曜日
フルタイム就業者の所得の職業比較
朝晩,急に冷え込むようになりましたが,いかがお過ごしでしょうか。
ここ数日,ツイッターにて,職業別の非正規雇用率のデータを発信しています。図書館司書・学芸員,保育士,幼稚園教員,介護職員…。これらの職業の非正規化は,全国的にスゴイことになっています。
https://twitter.com/tmaita77/status/1190508161058230272
教育,文化,福祉…。成熟社会を象徴する職業が軽んじられています。
司書の非正規率が高いのは知ってましたが,保育士の非正規率もかなり高いことに驚きました。2015年の『国勢調査』のデータによると,全国値で42.2%,マックスの長野県で57.9%です。人手不足で,望めば正規職員として雇ってくれる園なんていくらでもあると踏んでましたが,そうでもないのですね。
増税で得られた財源で幼保の無償化が始まってますが,保育士の薄給は手付かずのまま。フルタイムの正規職員でも,お給料は少ないことでしょう。業務負担と責任を考えると,正職員で働くなんてアホらしい,パートのほうがいい。こう考える人が多いから,保育士の非正規率が高いのかもしれません。
久々ですが,『就業構造基本調査』に出ている,職業別の所得分布統計をいじってみたくなりました。職業別の平均所得はこれまで何度も出してきましたが,今回はフルタイム就業者に限定します。また分布の代表値として,平均値ではなく中央値(median)を使います。
私は,2017年調査の全国編の統計表「03500」に当たって,年間250日・週43時間以上就業している有業者を取り出し,税込みの年間所得の分布を明らかにしました。以下に掲げるのは,全職業1669万人の分布表です。所得の階級は,原資料によります。
年間250日(月20日),かつ週43時間以上働いているフルタイム就業者のデータです。中層が膨らんだノーマル分布ですね。ピークは300万円台で,全体の20.3%がこの階級に属します。週5日,1日8時間以上勤務してこれかと,ちょっと落胆しますが,老弱男女ひっくるめた全労働者だとこんな感じです。
累積%値が50ジャストの中央値も,この階級に含まれるようです。按分比例を使って推し量りましょう。
按分比 =(50.0-34.2)/(54.4-34.2)= 0.781
中央値 = 300万円+(100万円 × 0.781) = 378.1万円
最近のフルタイム就業者の所得中央値は378万円と出ました。400万円は超えるかと思ってましたが,さにあらず。貧しくなってますね。ちなみに所得300万円に満たないプアは全体の34.2%います(上表の真ん中の%値)。フルタイムで働いても,3人に1人がプアであると。フルタイム・ワーキングプアと命名しておきましょう。実数にして571万人です。
では,職業別のデータをご覧に入れましょう。私は,フルタイム就業者の年間所得分布をもとに,67の職業の所得中央値を計算しました。中央値は計算に手間取りますが,はじき出される数字はリアルです。また,所得300未満の者の割合も出しました。フルタイムで働いても,プアの状態にある人の率です。
まずは,管理職からサービス職までの35職業のデータからです。
赤字は中央値が500万円を越える職業ですが,専門職は高いですね。トップは医師で1226万円。真ん中の中央値でコレです。その次は管理的公務員で915万円,3位は法務従事者(弁護士等)で755万円となっています。
教員は570万円,著述家・記者・編集者は522万円ですか。後者はプアの率が21.5%と高いことから,売れっ子とそうでない人の格差が大きいものと思われます。
保育士が属する社会福祉専門職は315万円。私立園の保育士に絞ったら,もっと低いでしょうね。この職業のプア率は45.8%,フルタイム就業しても半分近くが300万円稼げません。介護サービス職はもっと低し。
続いて,保安職業以降の32職業をみていただきましょう。
体を動かすブルーカラー系の職業です。全般的に低いですが,公共性のある鉄道運転士と,パイロットを含む船舶・航空機運転手は高くなっています。
しかし,年間250日(月20日),かつ週43時間以上働いてコレとは,ちょっと驚きます。女性や高齢者が搾取されていることの表れでしょうか。わが国では,働く人が手にする富が,生産年齢の男性に集中しがちです。
最後に,今みた2つの変数のマトリクス上に,67の職業を配置したグラフにしておきましょう。横軸に中央値,縦軸にプア率をとった座標上に,各職業を散りばめました。点線は全職業の値です。
両者は表裏ですので,ナナメの配置になります。私が注目する社会福祉専門職と介護職は,左上にあります。重要性を増しているにもかかわらず,待遇は低し。
あなたの職業はどの辺に位置づくでしょうか。大雑把な職業中分類のデータですみませんが,先ほどの表から自分が属する職業の目星をつけ,該当のドットを赤で囲ってみるとよいでしょう。
フルタイム就業者に絞った中央値の比較です。こういうデータはあまり出てないと思いますので,参考にしていただければ幸いです。
余談ですが,データえっせいαの2回目の記事を本日公開しました。テーマは,犯罪の認知度です。犯罪統計には当局の恣意がどうしても入りますが,そこを切り口に社会を読むと面白い。どうぞ,お読みください。
https://note.mu/tmaita77
ここ数日,ツイッターにて,職業別の非正規雇用率のデータを発信しています。図書館司書・学芸員,保育士,幼稚園教員,介護職員…。これらの職業の非正規化は,全国的にスゴイことになっています。
https://twitter.com/tmaita77/status/1190508161058230272
教育,文化,福祉…。成熟社会を象徴する職業が軽んじられています。
司書の非正規率が高いのは知ってましたが,保育士の非正規率もかなり高いことに驚きました。2015年の『国勢調査』のデータによると,全国値で42.2%,マックスの長野県で57.9%です。人手不足で,望めば正規職員として雇ってくれる園なんていくらでもあると踏んでましたが,そうでもないのですね。
増税で得られた財源で幼保の無償化が始まってますが,保育士の薄給は手付かずのまま。フルタイムの正規職員でも,お給料は少ないことでしょう。業務負担と責任を考えると,正職員で働くなんてアホらしい,パートのほうがいい。こう考える人が多いから,保育士の非正規率が高いのかもしれません。
久々ですが,『就業構造基本調査』に出ている,職業別の所得分布統計をいじってみたくなりました。職業別の平均所得はこれまで何度も出してきましたが,今回はフルタイム就業者に限定します。また分布の代表値として,平均値ではなく中央値(median)を使います。
私は,2017年調査の全国編の統計表「03500」に当たって,年間250日・週43時間以上就業している有業者を取り出し,税込みの年間所得の分布を明らかにしました。以下に掲げるのは,全職業1669万人の分布表です。所得の階級は,原資料によります。
年間250日(月20日),かつ週43時間以上働いているフルタイム就業者のデータです。中層が膨らんだノーマル分布ですね。ピークは300万円台で,全体の20.3%がこの階級に属します。週5日,1日8時間以上勤務してこれかと,ちょっと落胆しますが,老弱男女ひっくるめた全労働者だとこんな感じです。
累積%値が50ジャストの中央値も,この階級に含まれるようです。按分比例を使って推し量りましょう。
按分比 =(50.0-34.2)/(54.4-34.2)= 0.781
中央値 = 300万円+(100万円 × 0.781) = 378.1万円
最近のフルタイム就業者の所得中央値は378万円と出ました。400万円は超えるかと思ってましたが,さにあらず。貧しくなってますね。ちなみに所得300万円に満たないプアは全体の34.2%います(上表の真ん中の%値)。フルタイムで働いても,3人に1人がプアであると。フルタイム・ワーキングプアと命名しておきましょう。実数にして571万人です。
では,職業別のデータをご覧に入れましょう。私は,フルタイム就業者の年間所得分布をもとに,67の職業の所得中央値を計算しました。中央値は計算に手間取りますが,はじき出される数字はリアルです。また,所得300未満の者の割合も出しました。フルタイムで働いても,プアの状態にある人の率です。
まずは,管理職からサービス職までの35職業のデータからです。
赤字は中央値が500万円を越える職業ですが,専門職は高いですね。トップは医師で1226万円。真ん中の中央値でコレです。その次は管理的公務員で915万円,3位は法務従事者(弁護士等)で755万円となっています。
教員は570万円,著述家・記者・編集者は522万円ですか。後者はプアの率が21.5%と高いことから,売れっ子とそうでない人の格差が大きいものと思われます。
保育士が属する社会福祉専門職は315万円。私立園の保育士に絞ったら,もっと低いでしょうね。この職業のプア率は45.8%,フルタイム就業しても半分近くが300万円稼げません。介護サービス職はもっと低し。
続いて,保安職業以降の32職業をみていただきましょう。
体を動かすブルーカラー系の職業です。全般的に低いですが,公共性のある鉄道運転士と,パイロットを含む船舶・航空機運転手は高くなっています。
しかし,年間250日(月20日),かつ週43時間以上働いてコレとは,ちょっと驚きます。女性や高齢者が搾取されていることの表れでしょうか。わが国では,働く人が手にする富が,生産年齢の男性に集中しがちです。
最後に,今みた2つの変数のマトリクス上に,67の職業を配置したグラフにしておきましょう。横軸に中央値,縦軸にプア率をとった座標上に,各職業を散りばめました。点線は全職業の値です。
両者は表裏ですので,ナナメの配置になります。私が注目する社会福祉専門職と介護職は,左上にあります。重要性を増しているにもかかわらず,待遇は低し。
あなたの職業はどの辺に位置づくでしょうか。大雑把な職業中分類のデータですみませんが,先ほどの表から自分が属する職業の目星をつけ,該当のドットを赤で囲ってみるとよいでしょう。
フルタイム就業者に絞った中央値の比較です。こういうデータはあまり出てないと思いますので,参考にしていただければ幸いです。
余談ですが,データえっせいαの2回目の記事を本日公開しました。テーマは,犯罪の認知度です。犯罪統計には当局の恣意がどうしても入りますが,そこを切り口に社会を読むと面白い。どうぞ,お読みください。
https://note.mu/tmaita77
2019年11月1日金曜日
2019年10月の教員不祥事報道
昨日は記事を出しましたので,先月の教員不祥事報道の整理を今日やります。
先月,私がネット上でキャッチした教員不祥事報道は41件です。赤字は注目事案。声が小さいと,クラス全員を長時間起立させた小学校教諭。私も経験ありますね。10分くらいだったかな。こんなしょーもないことで,授業時間を潰していいのかと思った覚えがあります。
長時間起立させるのは,肉体的苦痛を与えますので,れっきとした体罰です。体罰の判定基準は,肉体的苦痛を与えるか否か。教員採用試験でも頻出ですので,主な事例を示した文科省通知はみておきましょう。『教職教養らくらくマスター』だと,教育原理のテーマ24です。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331908.htm
風俗店でバイトしていた,大阪の小学校教諭。動機は「お金をかせぐため」。29歳の若年教員みたいですが,もしかすると奨学金返済の重荷を抱えているのでしょうか。公務員の副業(営利事業への従事)は制限されていますが,視野を広げる上でも,解禁を検討してみてはどうかなと思います。
教員の世界は,大きく揺れています。兵庫県の教員いじめが注目を集めています。いじめを憎み,厳しく指導すべき教員の世界で酷いいじめが起き,大々的に報道されるのは前代未聞のことです。そうした腐敗は子どもにも伝播し,問題の小学校ではいじめが増えているとのこと。ギスギスした教員社会の風通しをよくしたいものです。働き方改革は,その中核に位置します。
秋も深くなってきました。季節の変わり目,体調を崩されぬよう。私は,今年はインフルエンザの予防接種を受けるつもりです。学校卒業以来です。
<2019年10月の教員不祥事報道>
・セクハラ教員を懲戒免職…だが処分直後に公表せず 香川県教委
(10/1,瀬戸内海放送,香川,高,男)
・埼玉県の教諭淫らな行為か 逮捕(10/2,NHK,埼玉,特,男,31)
・わいせつ行為 盗撮の疑い 県立学校教諭2人を懲戒免職
(10/3,佐賀テレビ,佐賀,高男40:盗撮,特男39:わいせつ)
・酒酔い運転疑いで中学校教諭逮捕(10/3,NHK,北海道,中,男,47)
・教諭 女子にみだらな行為か逮捕(10/6,NHK,埼玉,特,男,29)
・岡山の小学校教諭を買春容疑で逮捕 女子高生にわいせつ行為をした疑い
(10/7,共同通信,岡山,小,男,35)
・京都府立校講師が回答書き換え、府教委が処分
(10/8,産経,京都,高,女,50代)
・祖母殺害容疑、幼稚園教諭を逮捕(10/8,読売,兵庫,幼,女,21)
・37歳高校教師が女子生徒に「付き合ってほしい」と教室で抱きしめ車でも2度キス
(10/10,東海テレビ,愛知,高,男,37)
・女子高生2人の胸つかむ 中学教師を懲戒免職
(10/10,京都新聞,京都,中,男,30)
・鹿児島市の小学校 校長が教諭に不適切指導
(10/13,MBC,鹿児島,小,男,50代)
・盗撮容疑で逮捕 時間講師を免職 県が懲戒処分
(10/13,毎日,宮崎,産業技術専門学校,男,33)
・裸の写真送らせた疑い 教諭免職(10/11,NHK,長崎,小,男,24)
・買春容疑で岡山の小学校教諭逮捕広島県警
(10/14,信濃毎日,岡山,小,男,32)
・中学の男性講師5年以上無免許運転、接触事故で発覚
(10/16,中京テレビ,岐阜,中,男,20代)
・1カ月以上無断欠勤 千葉県教委、男性教諭を分限免職
(10/17,千葉日報,千葉,小,男,58)
・支援学校教諭わいせつで懲戒免職(10/18,NHK,秋田,特,男,30代)
・中学教諭が女子生徒に不適切画像(10/18,NHK,島根,中,男,20代)
・男性教諭を懲戒免職 更衣室の女児盗撮で
(10/19,わかやま新報,和歌山,小,男,27)
・女性教諭「業務を考えながら運転していたら…」(10/20,読売,鹿児島,女,38)
・県立の特別支援学校 担任の男性講師が中2生徒を虐待か
(10/21,FNN,熊本,特,男)
・川崎市立小教諭を逮捕 女子高校生に淫行疑い
(10/23,産経,神奈川,小,男,23)
・小学校講師採点前テスト用紙紛失(10/23,NHK,兵庫,小)
・支援学校教諭、生徒つかみ「ぶん殴るぞ」 処分検討
(10/23,朝日,大阪,特,男,40代)
・中学講師を逮捕 児童買春の疑い(10/23,NHK,長野,中,男,31)
・わいせつ、酒気帯び…小学校長ら3人懲戒免職 新潟県教委(10/23,毎日,新潟,わいせつ:小男58,裸画像要求:中男48,飲酒運転:小男47)
・教諭、背を向け歩き出した生徒の肩を押す…転倒させ腕骨折
(10/24,読売,兵庫,中,男,25)
・小学校教諭の女 酒気帯び運転で現行犯逮捕(10/24,NNN,長崎,小,女,53)
・アンケート破棄し体罰隠蔽 埼玉県立高の教諭処分
(10/24,産経,埼玉,高,男,30)
・あいさつの号令「声が小さい」 神戸市立小でクラス全員に長時間の起立強制
(10/24,毎日,兵庫,小,女)
・盗撮目的で女装し女子トイレ侵入した疑い 高校講師を逮捕
(10/24,サンスポ,愛知,高,男,26)
・「用を足している姿が見たかった」 男子トイレをスマホで撮影した教師
(10/25,静岡テレビ,静岡,中,男,20代)
・児童11人盗撮の罪で教諭を起訴(10/25,NHK,奈良,小,男,25)
・無免許運転で教諭懲戒処分 北九州市教委(10/26,毎日,福岡,小,女,35)
・高3少年にわいせつな行為 埼玉県立高教諭を逮捕
(10/28,日刊スポーツ,埼玉,高,男,42)
・教え子高1女子に校内でキス、下半身触る 教諭を懲戒免職
(10/28,神奈川新聞,神奈川,高,男,27)
・罰金の小学教諭、停職6カ月処分 ポルノ禁止法違反
(10/30,毎日,岐阜,小,男,49)
・生徒の頬たたき唇切るけが 中学教諭を減給処分
(10/30,北海道テレビ,北海道,中,男,40代)
・コーチの体罰報告せず 岐南工高前教頭を処分
(10/30,岐阜新聞,岐阜,高,男,56)
・小学校の男性教諭、男性向け風俗店で勤務 懲戒処分検討
(10/31,朝日,大阪,小,男,29)
・17歳女子生徒に淫行疑い 元私立高教諭逮捕(10/31,日経,三重,高,男,28)
先月,私がネット上でキャッチした教員不祥事報道は41件です。赤字は注目事案。声が小さいと,クラス全員を長時間起立させた小学校教諭。私も経験ありますね。10分くらいだったかな。こんなしょーもないことで,授業時間を潰していいのかと思った覚えがあります。
長時間起立させるのは,肉体的苦痛を与えますので,れっきとした体罰です。体罰の判定基準は,肉体的苦痛を与えるか否か。教員採用試験でも頻出ですので,主な事例を示した文科省通知はみておきましょう。『教職教養らくらくマスター』だと,教育原理のテーマ24です。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331908.htm
風俗店でバイトしていた,大阪の小学校教諭。動機は「お金をかせぐため」。29歳の若年教員みたいですが,もしかすると奨学金返済の重荷を抱えているのでしょうか。公務員の副業(営利事業への従事)は制限されていますが,視野を広げる上でも,解禁を検討してみてはどうかなと思います。
教員の世界は,大きく揺れています。兵庫県の教員いじめが注目を集めています。いじめを憎み,厳しく指導すべき教員の世界で酷いいじめが起き,大々的に報道されるのは前代未聞のことです。そうした腐敗は子どもにも伝播し,問題の小学校ではいじめが増えているとのこと。ギスギスした教員社会の風通しをよくしたいものです。働き方改革は,その中核に位置します。
秋も深くなってきました。季節の変わり目,体調を崩されぬよう。私は,今年はインフルエンザの予防接種を受けるつもりです。学校卒業以来です。
<2019年10月の教員不祥事報道>
・セクハラ教員を懲戒免職…だが処分直後に公表せず 香川県教委
(10/1,瀬戸内海放送,香川,高,男)
・埼玉県の教諭淫らな行為か 逮捕(10/2,NHK,埼玉,特,男,31)
・わいせつ行為 盗撮の疑い 県立学校教諭2人を懲戒免職
(10/3,佐賀テレビ,佐賀,高男40:盗撮,特男39:わいせつ)
・酒酔い運転疑いで中学校教諭逮捕(10/3,NHK,北海道,中,男,47)
・教諭 女子にみだらな行為か逮捕(10/6,NHK,埼玉,特,男,29)
・岡山の小学校教諭を買春容疑で逮捕 女子高生にわいせつ行為をした疑い
(10/7,共同通信,岡山,小,男,35)
・京都府立校講師が回答書き換え、府教委が処分
(10/8,産経,京都,高,女,50代)
・祖母殺害容疑、幼稚園教諭を逮捕(10/8,読売,兵庫,幼,女,21)
・37歳高校教師が女子生徒に「付き合ってほしい」と教室で抱きしめ車でも2度キス
(10/10,東海テレビ,愛知,高,男,37)
・女子高生2人の胸つかむ 中学教師を懲戒免職
(10/10,京都新聞,京都,中,男,30)
・鹿児島市の小学校 校長が教諭に不適切指導
(10/13,MBC,鹿児島,小,男,50代)
・盗撮容疑で逮捕 時間講師を免職 県が懲戒処分
(10/13,毎日,宮崎,産業技術専門学校,男,33)
・裸の写真送らせた疑い 教諭免職(10/11,NHK,長崎,小,男,24)
・買春容疑で岡山の小学校教諭逮捕広島県警
(10/14,信濃毎日,岡山,小,男,32)
・中学の男性講師5年以上無免許運転、接触事故で発覚
(10/16,中京テレビ,岐阜,中,男,20代)
・1カ月以上無断欠勤 千葉県教委、男性教諭を分限免職
(10/17,千葉日報,千葉,小,男,58)
・支援学校教諭わいせつで懲戒免職(10/18,NHK,秋田,特,男,30代)
・中学教諭が女子生徒に不適切画像(10/18,NHK,島根,中,男,20代)
・男性教諭を懲戒免職 更衣室の女児盗撮で
(10/19,わかやま新報,和歌山,小,男,27)
・女性教諭「業務を考えながら運転していたら…」(10/20,読売,鹿児島,女,38)
・県立の特別支援学校 担任の男性講師が中2生徒を虐待か
(10/21,FNN,熊本,特,男)
・川崎市立小教諭を逮捕 女子高校生に淫行疑い
(10/23,産経,神奈川,小,男,23)
・小学校講師採点前テスト用紙紛失(10/23,NHK,兵庫,小)
・支援学校教諭、生徒つかみ「ぶん殴るぞ」 処分検討
(10/23,朝日,大阪,特,男,40代)
・中学講師を逮捕 児童買春の疑い(10/23,NHK,長野,中,男,31)
・わいせつ、酒気帯び…小学校長ら3人懲戒免職 新潟県教委(10/23,毎日,新潟,わいせつ:小男58,裸画像要求:中男48,飲酒運転:小男47)
・教諭、背を向け歩き出した生徒の肩を押す…転倒させ腕骨折
(10/24,読売,兵庫,中,男,25)
・小学校教諭の女 酒気帯び運転で現行犯逮捕(10/24,NNN,長崎,小,女,53)
・アンケート破棄し体罰隠蔽 埼玉県立高の教諭処分
(10/24,産経,埼玉,高,男,30)
・あいさつの号令「声が小さい」 神戸市立小でクラス全員に長時間の起立強制
(10/24,毎日,兵庫,小,女)
・盗撮目的で女装し女子トイレ侵入した疑い 高校講師を逮捕
(10/24,サンスポ,愛知,高,男,26)
・「用を足している姿が見たかった」 男子トイレをスマホで撮影した教師
(10/25,静岡テレビ,静岡,中,男,20代)
・児童11人盗撮の罪で教諭を起訴(10/25,NHK,奈良,小,男,25)
・無免許運転で教諭懲戒処分 北九州市教委(10/26,毎日,福岡,小,女,35)
・高3少年にわいせつな行為 埼玉県立高教諭を逮捕
(10/28,日刊スポーツ,埼玉,高,男,42)
・教え子高1女子に校内でキス、下半身触る 教諭を懲戒免職
(10/28,神奈川新聞,神奈川,高,男,27)
・罰金の小学教諭、停職6カ月処分 ポルノ禁止法違反
(10/30,毎日,岐阜,小,男,49)
・生徒の頬たたき唇切るけが 中学教諭を減給処分
(10/30,北海道テレビ,北海道,中,男,40代)
・コーチの体罰報告せず 岐南工高前教頭を処分
(10/30,岐阜新聞,岐阜,高,男,56)
・小学校の男性教諭、男性向け風俗店で勤務 懲戒処分検討
(10/31,朝日,大阪,小,男,29)
・17歳女子生徒に淫行疑い 元私立高教諭逮捕(10/31,日経,三重,高,男,28)
2019年10月31日木曜日
年収と情報機器の所持率
国立青少年教育振興機構は,2年おきに『青少年の体験活動等に関する実態調査』をしています。最新は2016年度調査で,個票データも公開されています。申請すれば,CD-ROMで送ってもらえます。
エグイ言い方ですが,的を射ているような気がします。あとは,親が子どもと接する時間とリンクしているようにも思えます。貧困層には一人親世帯などが多く,富裕層にはバリバリの共稼ぎ夫婦が多し。こういう家庭が,わが子との連絡手段ないしは安否確認の手段としてスマホを持たせていると。
タブレットは,スマホに比して,貧困層ほど所持率が高い傾向が明瞭です。
「だからどうした?」という話ですが,親の監督もなく,幼少期より一人で電子機器に見入ることで目が悪くなる,ないしは姿勢が悪くなるといった,健康不良には注意をしたいものです。こういう要素も,家庭環境による子どもの健康格差につながっているといえるでしょう。
なお,家庭の年収階層を問わず,専用のパソコンを子に持たせる保護者はわずかしかいません。低学年のデータだからだろと思われるかもしれませんが,中学年,高学年でみても,数値はほぼ一緒です。高学年の富裕層でようやく5%になる程度です。
多くの親が,インターネットは検索して情報を得るためのツールと思ってるのでしょうね。それならデカイPCなんて不要で,スマホで十分。こういう考えなんでしょうか。ネットで得た原情報を加工し,創作物を生み出し発信する。こういう用途が頭に浮かぶ親御さんが少ないようで,残念な気がします。これからの時代で求められる姿勢は,「創作」と「発信」で,そのために不可欠なツールがPCだと思うのですが…。
教育のICT化が遅れており,PCが必須の環境が用意されてないこともあるでしょう。北欧の諸国では,PCがないと宿題もできません。
今回のデータはシンプルなものですが,いろいろな課題を演繹できるものかと思います。
********************
インターエデュという会社のサイト記事にて,私のブログコンテンツが不正利用されていました。27日の朝に,地方の高校の先生から「この記事の県別大学進学率,文科省資料には出てらず,舞田さんがブログで出しているものじゃないですか」と情報提供がありました。
先方に確認したところ,非を認めたので,記事の削除および謝罪の告知をしてもらいました。
https://www.inter-edu.com/article/uni-research/uni-research181205/
1年前の記事で,執筆者や当時の担当編集者はもう会社にいないので,事の経緯は定かでないという回答ですが,私がブログで出している県別大学進学率は,文科省の資料に載っているものだと勘違いしたのでしょうか。でも,私が計算したデータということをブログには書いているのですがね。まあ,悪意はなかったと解釈しておきましょう。
1年間の営利利用ですので,意地の悪い人なら使用料を相当吹っ掛けるのでしょうが,私は少額の請求にとどめました。謝罪と対応がしっかりしたものでしたので。
やったことは結果的には「盗用」でけしからんことですが,問題が発覚した後の動きは満点です。ミスは仕方ありません。大事なのは,事が起きてからの対応です。よほど酷い事案でない限り,誠意ある謝罪と普通の対応をしてくれれば,私は事を荒げたりはしません。
西俊明,およびタナカキミアキは初動を間違えたので,あんな大ごとになったのです。
タナカキミアキの一昨日の動画を見たら,「私は生き残るためなら手段を選ばない人間だ」と言っています。ほう,ずいぶん正直ですね。あなたを多少知る身として,納得です。
島倉さんという人が「著作権について認識が甘すぎるユーチューバーに喝!」という動画を出しています。名前は出されてませんが,誰のことやら。5分30秒あたりから,スゴイことが言われています。怖いなあ。
タナカさん,無職になって,これから「手段を選ばない形で」這い上っていくそうです。「手段を選ばない」はいいですが,ルールはちゃんと守らないといけません。
調査対象は,小学校1~6年生,中学校2年生,高校2年生で,小学生については保護者調査も実施されてます。家庭の年収もバッチリ訊いています(問14)。調査設計に,教育社会学者が加わっているのでしょうね。ここの前理事長は,千葉大名誉教授の明石要一先生でした。
個票データを使って,各設問への回答を,家庭の年収とクロスさせてみると面白い。保護者調査の問11にて,スマホ,・パソコン等の機器(専用)を,子どもに持たせているかと問うています。日本の子ども・若者の情報機器所持率が低いのは分かっていますが,家庭環境との相関はまだ明らかにしてませんでした。
おそらくは,裕福な家庭ほど所持率は高いだろう。中学生や高校生ではそういう階層差は小さいだろうが,小学生,とりわけ低学年の児童ではそれが大きいのではないか。私はこういう仮説をもって,データを分析してみました。結果は,昨晩にツイッターで発信した通りです。意外な結果ゆえか,見てくださる方が多くなっています。
ただ,小学校1年生の児童を家庭の年収階層(7階層)で分けたら,サンプルが少なくなるのではないか,という疑問が寄せられています。そうですね。最も低い200万未満と,最も高い1200万以上の層は100人を割ります。
ここでは,小学校1年生と2年生の低学年サンプルを取り出して,年収別の所持率を出してみます。これだと,どの群も200人以上の母数を確保できます。下の表は,スマホ,タブレット,パソコンの所持率の階層差です。正確には,低学年のわが子に,当該の機器(専用)を持たせている保護者のパーセンテージです。
昨日,ツイッターで流したデータと近似しています。スマホの所持率をみると,費用がかかるので年収と比例するかと思いきや,そうではありません。
200万未満の層が19.3%と最も高く,600~700万円台の階層まで低下し,その後反転して上昇する「U字」型になっています。低学年児童のスマホ利用層は,貧困層と富裕層に割れているようです。
私はこのデータをみて,どこかで聞いた「貧困層ではスマホ育児が多い」説を思い出しました。子どもに構う時間的・精神的余裕が親になく,四角い物体を子どもに持たせて,ひとまず黙らせると。富裕層の用途は,これとは違います。現職の小学校の先生は,「年収低い層が子どもを手っ取り早く黙らせるために持たせるか,年収の高い層がより能力を伸ばすために持たせるか」の違いだと言われています。
https://twitter.com/sunostrism/status/1189523005795233792エグイ言い方ですが,的を射ているような気がします。あとは,親が子どもと接する時間とリンクしているようにも思えます。貧困層には一人親世帯などが多く,富裕層にはバリバリの共稼ぎ夫婦が多し。こういう家庭が,わが子との連絡手段ないしは安否確認の手段としてスマホを持たせていると。
タブレットは,スマホに比して,貧困層ほど所持率が高い傾向が明瞭です。
「だからどうした?」という話ですが,親の監督もなく,幼少期より一人で電子機器に見入ることで目が悪くなる,ないしは姿勢が悪くなるといった,健康不良には注意をしたいものです。こういう要素も,家庭環境による子どもの健康格差につながっているといえるでしょう。
なお,家庭の年収階層を問わず,専用のパソコンを子に持たせる保護者はわずかしかいません。低学年のデータだからだろと思われるかもしれませんが,中学年,高学年でみても,数値はほぼ一緒です。高学年の富裕層でようやく5%になる程度です。
多くの親が,インターネットは検索して情報を得るためのツールと思ってるのでしょうね。それならデカイPCなんて不要で,スマホで十分。こういう考えなんでしょうか。ネットで得た原情報を加工し,創作物を生み出し発信する。こういう用途が頭に浮かぶ親御さんが少ないようで,残念な気がします。これからの時代で求められる姿勢は,「創作」と「発信」で,そのために不可欠なツールがPCだと思うのですが…。
教育のICT化が遅れており,PCが必須の環境が用意されてないこともあるでしょう。北欧の諸国では,PCがないと宿題もできません。
今回のデータはシンプルなものですが,いろいろな課題を演繹できるものかと思います。
********************
インターエデュという会社のサイト記事にて,私のブログコンテンツが不正利用されていました。27日の朝に,地方の高校の先生から「この記事の県別大学進学率,文科省資料には出てらず,舞田さんがブログで出しているものじゃないですか」と情報提供がありました。
先方に確認したところ,非を認めたので,記事の削除および謝罪の告知をしてもらいました。
https://www.inter-edu.com/article/uni-research/uni-research181205/
1年前の記事で,執筆者や当時の担当編集者はもう会社にいないので,事の経緯は定かでないという回答ですが,私がブログで出している県別大学進学率は,文科省の資料に載っているものだと勘違いしたのでしょうか。でも,私が計算したデータということをブログには書いているのですがね。まあ,悪意はなかったと解釈しておきましょう。
1年間の営利利用ですので,意地の悪い人なら使用料を相当吹っ掛けるのでしょうが,私は少額の請求にとどめました。謝罪と対応がしっかりしたものでしたので。
やったことは結果的には「盗用」でけしからんことですが,問題が発覚した後の動きは満点です。ミスは仕方ありません。大事なのは,事が起きてからの対応です。よほど酷い事案でない限り,誠意ある謝罪と普通の対応をしてくれれば,私は事を荒げたりはしません。
西俊明,およびタナカキミアキは初動を間違えたので,あんな大ごとになったのです。
タナカキミアキの一昨日の動画を見たら,「私は生き残るためなら手段を選ばない人間だ」と言っています。ほう,ずいぶん正直ですね。あなたを多少知る身として,納得です。
島倉さんという人が「著作権について認識が甘すぎるユーチューバーに喝!」という動画を出しています。名前は出されてませんが,誰のことやら。5分30秒あたりから,スゴイことが言われています。怖いなあ。
タナカさん,無職になって,これから「手段を選ばない形で」這い上っていくそうです。「手段を選ばない」はいいですが,ルールはちゃんと守らないといけません。
2019年10月26日土曜日
いじめの公私比較
子どもの問題行動が,13~15歳の思春期に多発するのはよく知られています。中学生のステージです。中学校の多くは公立ですが,最近は私立の生徒も増えてきています。東京では,中学生のおよそ4人に1人が私立校の生徒です。
その私立校に関連する,興味深い記事を見かけました。10月23日の京都新聞ウェブ版のもので,「私立校のいじめ対応に不満,どうすれば? 指導機関なく『治外法権』との声も」と題する記事です。
https://this.kiji.is/559542111595529313?c=39546741839462401
中身については後で触れますが,いじめというのは,問題行動の中でも量的な把握が最も難しい。可視性が低く,客観的な基準がありません。学校がいじめの把握にどれほど本腰を入れるか,すなわち認知の姿勢にも影響されます。
ここで問いたいのは,学校の「認知の姿勢」です。中学校の公立と私立を比較し,上記の京都新聞記事の内容と絡め,問題提起をさせていただきましょう。
いじめの基本的な統計は,いじめの認知件数です。文科省『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』にて計上されています。また毎年実施される『全国学力・学習状況調査』では,「いじめはどんな理由があってもいけない」という項目への意見を問うています。これに対し,否定的な回答をした生徒の率は,いじめの容認率と読めます。
この2つの数値がどうであるかを,公立と私立で比べてみます。年による変化があるので,ここ数年のデータを確認してみます。
一番上のいじめ認知件数をみると,2018年度では公立が9万3921件,私立が2841件となっています。公立が圧倒的に多いですが,中学校は大半が公立ですので,これは当然とみられるかもしれません。
そこで生徒千人あたりの数にしてみると(中段),公立は31.5件,私立は11.9件となります。生徒数を考慮しても,公立のほうが多いですね。公立は私立の約3倍です。わが子に中学受験をさせようとしている親御さんは,「だから公立には行かせたくないんや」と思われるでしょうか。
しかるに下段のいじめ容認率をみると,公立が4.5%,私立が7.0%で,こちらは私立のほうが高くなっています。2018年度だけでなく,どの年度でも同じです。幼少期からの受験勉強による人格の歪み等,要因はいろいろあり得ますが,それは置いておきます。
いじめの認知件数は公立の方が多いが,生徒のいじめ容認率は私立の方が高い。うーん,私立では統計に表れていない「暗数」が多そうですね。
2018年度の私立中3年生のいじめ容認率は7.0%ですが,この比率を同年度の私立中学生徒数にかけると1万6683人(b)となります。いじめを容認する生徒の推定数です。2018年度の統計に出ている,私立中のいじめ認知件数は2841件(a)。統計上のいじめ認知数は,いじめを容認する生徒数の17.0%でしかありません(a/b)。飛躍を承知で言うと,実際に起きているであろういじめの真数の2割も拾えてないことになります。
公立中学校のデータで同じ値を計算すると70.0%となります。公立では私立に比して,いじめがかなり把握されているようです。その差は4.1倍です。
これは2018年度の試算結果ですが,偶然なんでしょうか。2012年度からの推移をご覧いただきましょう。
統計上のいじめ件数が,いじめを容認する生徒数の何%かという「いじめ把握度」は,どの年度でも私立より公立で高くなっています。その差が広がる傾向にあるのも注目。公立は,17年度から18年度にかけて大幅に増えていますが,教育委員会の指導もあり,いじめの摘発に本腰が入れられるようになっているのでしょう。
私立のいじめ把握度は低いのですが,生徒募集に影響が出るので,学校がいじめ認知に積極的でないことも考えられます。いじめ被害を訴え出ても,なあなあで済ませてしまう,本腰の対応をしない…。
問題のある生徒は退学させてしまえばいいという考えなのか,私立校では,この手の問題への対応に関する研修が,公立に比して不十分だという声もあります。
https://twitter.com/free_andpeace/status/1187753398373892100
冒頭で紹介した京都新聞記事では,私立校のいじめ対応には不満が多いことがいわれています。公立校なら教育委員会が強く指導できるのですが,私立はそうはいきません。指導の権限は,設置者の学校法人にありますが,しょせん内輪の間柄ですので,ちゃんとした対応がとられるかはちょっと怪しい。
そこで私立学校についても,外部の指導機関が必要なのではないか,というのが同記事で言われている提言です。学校法人の自浄作用にだけ期待するのは無理筋というもの,その通りだと思います。
私立校であっても,国が定めた法律や指針を遵守する義務があります。いじめ防止対策推進法第22条では,「当該学校の複数の教職員,心理,福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織」を置くこととされていますが,私立校では,こういう組織がちゃんと設置されているか。いじめ防止対策推進の実態を,公私別に明らかにする調査をしてみる必要もあるでしょう。
わが国の学校では,私立校が結構なシェアを占めます。この部分が「治外法権」であっていいはずはありません。
その私立校に関連する,興味深い記事を見かけました。10月23日の京都新聞ウェブ版のもので,「私立校のいじめ対応に不満,どうすれば? 指導機関なく『治外法権』との声も」と題する記事です。
https://this.kiji.is/559542111595529313?c=39546741839462401
中身については後で触れますが,いじめというのは,問題行動の中でも量的な把握が最も難しい。可視性が低く,客観的な基準がありません。学校がいじめの把握にどれほど本腰を入れるか,すなわち認知の姿勢にも影響されます。
ここで問いたいのは,学校の「認知の姿勢」です。中学校の公立と私立を比較し,上記の京都新聞記事の内容と絡め,問題提起をさせていただきましょう。
いじめの基本的な統計は,いじめの認知件数です。文科省『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』にて計上されています。また毎年実施される『全国学力・学習状況調査』では,「いじめはどんな理由があってもいけない」という項目への意見を問うています。これに対し,否定的な回答をした生徒の率は,いじめの容認率と読めます。
この2つの数値がどうであるかを,公立と私立で比べてみます。年による変化があるので,ここ数年のデータを確認してみます。
一番上のいじめ認知件数をみると,2018年度では公立が9万3921件,私立が2841件となっています。公立が圧倒的に多いですが,中学校は大半が公立ですので,これは当然とみられるかもしれません。
そこで生徒千人あたりの数にしてみると(中段),公立は31.5件,私立は11.9件となります。生徒数を考慮しても,公立のほうが多いですね。公立は私立の約3倍です。わが子に中学受験をさせようとしている親御さんは,「だから公立には行かせたくないんや」と思われるでしょうか。
しかるに下段のいじめ容認率をみると,公立が4.5%,私立が7.0%で,こちらは私立のほうが高くなっています。2018年度だけでなく,どの年度でも同じです。幼少期からの受験勉強による人格の歪み等,要因はいろいろあり得ますが,それは置いておきます。
いじめの認知件数は公立の方が多いが,生徒のいじめ容認率は私立の方が高い。うーん,私立では統計に表れていない「暗数」が多そうですね。
2018年度の私立中3年生のいじめ容認率は7.0%ですが,この比率を同年度の私立中学生徒数にかけると1万6683人(b)となります。いじめを容認する生徒の推定数です。2018年度の統計に出ている,私立中のいじめ認知件数は2841件(a)。統計上のいじめ認知数は,いじめを容認する生徒数の17.0%でしかありません(a/b)。飛躍を承知で言うと,実際に起きているであろういじめの真数の2割も拾えてないことになります。
公立中学校のデータで同じ値を計算すると70.0%となります。公立では私立に比して,いじめがかなり把握されているようです。その差は4.1倍です。
これは2018年度の試算結果ですが,偶然なんでしょうか。2012年度からの推移をご覧いただきましょう。
統計上のいじめ件数が,いじめを容認する生徒数の何%かという「いじめ把握度」は,どの年度でも私立より公立で高くなっています。その差が広がる傾向にあるのも注目。公立は,17年度から18年度にかけて大幅に増えていますが,教育委員会の指導もあり,いじめの摘発に本腰が入れられるようになっているのでしょう。
私立のいじめ把握度は低いのですが,生徒募集に影響が出るので,学校がいじめ認知に積極的でないことも考えられます。いじめ被害を訴え出ても,なあなあで済ませてしまう,本腰の対応をしない…。
問題のある生徒は退学させてしまえばいいという考えなのか,私立校では,この手の問題への対応に関する研修が,公立に比して不十分だという声もあります。
https://twitter.com/free_andpeace/status/1187753398373892100
冒頭で紹介した京都新聞記事では,私立校のいじめ対応には不満が多いことがいわれています。公立校なら教育委員会が強く指導できるのですが,私立はそうはいきません。指導の権限は,設置者の学校法人にありますが,しょせん内輪の間柄ですので,ちゃんとした対応がとられるかはちょっと怪しい。
そこで私立学校についても,外部の指導機関が必要なのではないか,というのが同記事で言われている提言です。学校法人の自浄作用にだけ期待するのは無理筋というもの,その通りだと思います。
私立校であっても,国が定めた法律や指針を遵守する義務があります。いじめ防止対策推進法第22条では,「当該学校の複数の教職員,心理,福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織」を置くこととされていますが,私立校では,こういう組織がちゃんと設置されているか。いじめ防止対策推進の実態を,公私別に明らかにする調査をしてみる必要もあるでしょう。
わが国の学校では,私立校が結構なシェアを占めます。この部分が「治外法権」であっていいはずはありません。
登録:
投稿 (Atom)













