2013年1月6日日曜日

学部・修士・博士卒の不安定進路比重比較

 昨年の12月22日の記事では,大学院博士課程修了生の不安定進路比重を明らかにしたのですが,この記事をみてくださる方が多いようです。

 しかるに,最近増えているとはいえ,博士課程まで進む人間は絶対量としては多くありません。同世代の半分が入学する大学学部や,近年になって大衆化の度合いを急速に強めている修士課程の卒業後進路はどうか,という関心をお持ちの方が多いと存じます。

 私は,学部卒業生と修士課程修了生についても,同じ統計をつくってみました。今回は,それをご覧に入れましょう。どの段階まで進もうかと考えておられる方の参考になればと思います。

 資料は,昨年の末に確定値が公表された,2012年度の文科省『学校基本調査』です。これによると,同年3月の大学学部卒業生は558,692人,修士課程修了生は78,711人,そして博士課程修了生(満期退学含む)は16,260人なり。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm

 これらの者の進路構成が分かる図をつくりました。前の記事でもいいましたが,2012年度調査より,就職者のカテゴリーが「正規」と「非正規」に区分されていることが注目ポイントです。


 段階を問わず正規就職のシェアが最も大きくなっていますが,ここで注目したいのは,おめでたくない部分です。12月22日の記事では,非正規就職,一時的な仕事(バイト),その他(無業),および不詳・死亡の4カテゴリーを「不安定進路」と括りました。上図でいうと,藍色の線で囲った部分です。

 この不安定進路の比率は,学部卒で24.7%,修士卒で19.8%,博士卒で45.4%なり。予想通りですが,博士課程修了生で圧倒的に高くなっています。およそ半分。

 なお,学部と修士を比べると,不安定進路は修士のほうが少ないのですね。理系では,修士までの進学は一般化しており,修士の学位は,民間の間でも高い専門性の証として認められているためでしょう。

 しかしながら,文系はそうではありますまい。おそらく,学部→修士→博士と段階を上がるにつれ,行き場がなくなる度合いが高くなるものと思われます。理系にあっては,卒業生・修了生の惨状の程度は,博士>学部>修士,という傾向ではないかしらん。

 この点を確認するため,上図と同じ統計を専攻系列別に作成しました。段階による不安定進路比重の変異が,専攻系列によってどう違うかをご覧ください。


 いかがでしょう。9専攻の傾向は,3タイプに分かれます。その1は,段階を上がるにつれて膿が広がっていくタイプ(人文科学,社会科学,保健,家政)。その2は,修士までは安泰だが博士になると急に状況が悪化するタイプ(理学,工学,農学)。そして最後は,真ん中の修士の段階で状況が思わしくないタイプです(教育,芸術)。

 予想通りといいますか,人文系の専攻では,段階を上がるにつれて惨状の度合いが高くなります。文学,史学,哲学等の下位分野からなる人文科学系でいうと,不安定進路比重は,33.2%→47.4%→78.6%というように,直線的に増加するのです。

 理系の場合,修士までは不安定進路は少ないのですが,博士課程まで行くと一気にリスクが高まります。理系といえど,博士の学位まで取得すると行き場がなくなるのは,文系と同じのようです。

 教育系と芸術系については,段階間で大きな差はありませんが,修士段階で不安定進路比重が最も高くなっています。この理由については,ちょっと見当がつきませんので解釈は保留します。

 しかし芸術系では,図の四角形の半分以上が藍色になっているのがスゴイですね。芸術の道は険し。その対極にあるのが保健系で,四角形のほとんどがピンク色(安定進路)です。医師や看護師といった,社会的に需要のある有資格職業人を育成する専攻であるため,博士課程修了生でも膿の比重は2割ほどにとどまっています。

 これから,どの段階まで進もうかと悩んでいる学徒諸氏にとって参考になるところがあれば幸いです。半分冗談でいいますが,上の統計図を高校の進路指導室の壁にでも貼ったらどうでしょう。日本は学歴社会であるが,無目的に最高学府まで進んでもロクなことはない。このことを,若き高校生に知らしめるのです。こういう警告は,早い段階でなすほうがいいのではないでしょうか。

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