2013年1月29日火曜日

児童・生徒の理系職志望率

 文科省は毎年,『全国学力・学習状況調査』を実施していますが,2012年度調査より,学力調査の教科に理科が加えられています。理系人材の育成を重視しようという方針からでしょう。
http://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html

 これに伴い,児童・生徒への質問紙調査においても,理科の嗜好や学習に関連する設問が盛られるようになっています。その中の一つに,以下のものがあります。

 「将来,理科や科学技術に関係する職業に就きたいと思いますか?」

 児童・生徒の理系職志向の程度を測ることができる,興味深い設問です。私は,この問いに対し「当てはまる」ないしは「どちらかといえば当てはまる」という,肯定の回答を寄せた者の比率がどれほどかに注目しました。以下では,理系職志望率ということにします。

 まずは,国公私という学校の設置主体によって率がどう変異するかをみてみましょう。調査対象学年の小6と中3について,3群の理系職志望率をグラフ化してみました。


 ほう。学年を問わず,国私立と公立の間に断絶がありますね。両者では,在籍児童・生徒の階層が違うと思いますが,国私立校の場合,理系の研究職の子弟が結構多かったりして。

 なお,国公私立とも,学年を上がるにつれて理系職志望率は下がってきます。内容の高度化するとともに,受験が近いということで,実験や観察の比重が減り,座学が多くなることの故でしょうか。ちなみに,わが国の理科の授業スタイルは,国際的にみて知識偏重型であることが知られています。
http://synodos.livedoor.biz/archives/1990703.html

 次に,都道府県別の傾向です。児童・生徒の理系職志望率が高い県はどこでしょう。下表は,公立校の数値の県別一覧表です。47県中の順位も添えています。


 同じ国内であっても,子どもの理系職志望率は地域によって多少違っています。両端の極差でいうと,小6では8.4ポイント,中3では7.6ポイントの開きがみられます。

 右欄をみると,小6と中3の順位に差がある県が多いようですが,両学年とも赤色(5位以内)なのは,栃木と富山です。この2県は,児童・生徒の理系志向が相対的に強い「理系」県として性格づけることができましょう。富山といえば「くすり」を想起しますが,そういう地域性の影響もあるのかしらん。

 蛇足ですが,発達段階を上がった中学校3年生の理系職志望率の都道府県地図を掲げておきます。黒色は,25%(4分の1)を超える県です。


 当局の公表資料から知ることができるのはここまでなり。これだけでも面白いのですが,残念なのは男女の差,すなわちジェンダー差が分からないことです。

 理系志向の男女差はよく知られているところであり,昨年の11月8日の記事では,日本の女子高生の理系志向が国際的にみて最低であることが明らかになりました。

 男性はかくあるべし,女性はかくあるべしというジェンダー規範が強いわが国では,女子児童・生徒の理系志向が抑制される過程が,暗にも明にも存在するのかもしれません。今回分析した理系職志望率が男女別に分かれば,小6から中3にかけての男女差の変化を観察することで,そうした過程が本当にあるのかどうかが分かります。

 『全国学力・学習状況調査』の児童・生徒質問紙調査の結果が,学校の設置主体別や県別に公表されているにもかかわらず,性別のデータがなぜ出されていないのかが疑問です。性というのは,最も基本的な属性カテゴリーだと思うのですが・・・。

 報道によると,この4月に実施される2013年度調査より,全児童・生徒を対象とした全数調査に戻されるとのこと。それだけデータ数も増えるのですから,性別や地域類型別の結果なども公表していただきたいものです。

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