2016年10月1日土曜日

東京都内49市区の大卒人口率

 地域別の平均世帯年収は,このブログで何度もデータを出しました。首都圏の市区町村の年収地図なんてのも,前に作りました。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/03/2013.html

 各地域の住民の階層構成を測る指標ですが,経済面だけでなく,文化面も可視化したいもの。後者でよく使われるメジャーは,高学歴人口率です。大学進学率が50%超の今の日本では,大卒人口率を出すのがよいでしょう。

 私は,アラフォー年代(35~44歳)の大卒人口率を,東京都内の49市区別に計算してみました。資料は,2010年の『国勢調査』です。西暦の下一桁が「0」の年では,住民の学歴も調査しています。このデータを使って,上記年齢層の学校卒業人口に占める,大学・大学院卒人口の比率を出してみました。以下では,大卒人口率ということにします。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001039448&requestSender=search

 ただ学歴はデリケートな項目のためか,不詳率(≒回答拒否率)が高くなっています。たとえば港区では,35~44歳の学校卒業人口のうち,学歴不詳者の割合が45.9%にもなっています。不詳がここまで多いと,この部分を分母に含めて率を計算すると,おかしなことになります。

 そこで,学歴不詳者は分母から除外して,学校卒業人口の大卒人口率を計算することとします。下表は,計算表です。右端に,算出された大卒人口率(%)を掲げています。黄色は最高値,青色は最低値です。赤字は,上位5位を意味します。


 同じ大都市の東京でも,アラフォーの大卒率は,地域によって大きく違っています。最高の61.0%(文京区)から最低の16.7%(武蔵村山市)までのレインヂです。

 区部と市部の間に太い敷居線を入れましたが,東の区部で大卒率は高く,西の市部では低い「東高西低」の傾向が,数値の表だけからも朧げに分かります。

 データをマップにすると,それはクリアーです。50%以上,40%台,40%未満,という3つの階級を設けて,49市区を塗り分けると,下図のようになります。


 都心で色が濃く,周辺にいくほど薄くなる。シカゴ学派の「同心円理論」を想起させるような図柄ですね。アメリカなどと違い,日本では階層による「「棲み分け」(segregate)はないといいますが,最近の大都市・東京では,こういう構造です。

 これは,35~44歳,つまり小学校高学年児童の親年代くらいの大卒率ですが,これがまた,高学年児童の学力と非常に強く相関している。

 私は以前,都教委に情報公開申請し,2013年度の都の学力調査の地域別データを入手しました。このデータから,49市区の算数の平均正答率を取り出し,先ほど明らかにした,親世代の大卒人口率との相関をとると,以下のようになります。


 親世代の大卒人口率が高い地域ほど,公立小学校5年生の算数の平均正答率が高し。相関係数は,+0.9266にもなります。非常に強い相関関係です。

 平均世帯年収との相関係数は+0.7ほどですので,親世代の大卒人口率のほうが,子どもの学力と強く相関しています。経済面より,文化面の資本が重要ということでしょうね。ブルデューの文化的再生産理論が思い出されます。

 教育社会学に馴染みのある人なら,誰もが知っている現実ですが,こういうデータを提示しようと考えたのは,昨日,今年度の全国学力調査の結果が公表されたことを受けてです。

 結果が出て,各学校は自校の平均正答率が全国や県と比してどうかに一喜一憂し,出来がよければ教委から褒められ,逆なら叱られる。これから,こういう光景が全国の至る所でみられるでしょう。

 しかるに,上図のような現実(リアル)があることを知るとき,ある学校(地域)の結果が芳しくないことの原因を,教員の指導力不足だけに帰すことができるでしょうか。まぎれもなく,子どもの学力は社会的規定を被っているのであり,そのことを考慮しないといけません。でないと,教員を疲弊させるだけです。

 私は,学力調査の地域別の結果を読む際は,地域の社会経済条件を勘案すべきであると考えています。たとえば,平均年収,ここで出した大卒人口率,さらには一人親世帯率のような指標から各地域の学力の期待値を出し,実測値をそれと照合してみる。後者が前者より高いなら,「がんばっている」と評されるわけです。

 前にやってみたところ,この観点でいうと,足立区などは「がんばっている」と評されます。平均正答率を素のままで見るだけでは分からないことです。この区では,「下」に手厚い実践をいろいろやっているようですが,そういう「草の根」の取組の成果といえましょう。敬意を払うべきです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/07/23.html

 まあ,上記の散布図でも,足立区は回帰直線よりかなり上にありますので,それはうかがえるのですが・・・。

 今年度の全国学力テストの詳細結果が,これから続々と出ると思います。希望自治体には,学校別のデータも供されるでしょう。その際,ここでお見せしたような現実があることを踏まえ,懸命に奮闘している教員を追い詰めることのないようにしてほしいと思います。

3 件のコメント:

  1. >平均世帯年収との相関係数は+0.7
    この計算を行った対象の世帯は35-45歳の世代でしょうか?

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  2. いいえ,こちらは全世帯です。年齢別のデータはとれないので。

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  3. 見事に子供が多い地区の学歴が低いですね。

    子供が多ければ豊かだとは言っていられないですね。

    やはりお金持ちが住みたがらない地域と言うのはそれなりに意味があるのですね。

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