2016年10月30日日曜日

公務員はモテますか?

 実務教育出版より,『受験ジャーナル・平成29年度・Vol1』が届きました。公務員試験業界の老舗ジャーナルですが,この号は私も制作に関わりましたので,送ってもらえました。表紙のデザインも,今風でカッコいいですねえ。
http://jitsumu.hondana.jp/book/b251011.html


 7~9ページに,読者の質問にプロ講師が答える記事が載っていますが,ズバリ「公務員はモテますか?」という問いが寄せられています(Q8)。答えは,「あなた次第。ただ一般的には,公務員は若いうちに結婚する人が多い」というものです。

 なるほど,肌感覚ではそうですよね。では,データでみるとどうでしょう。

 モテるかどうかを統計で可視化するのは難しいですが,結婚している(できている)者の率が指標になるでしょう。ここでは,その裏返しの未婚率に注目することとします。結婚しないで(できずに)未婚にとどまっている者が何%か。モテていても,敢えて結婚しない人もいますが,この点はオミットすることとします。

 2012年の総務省『就業構造基本調査』では,「性別×年齢×従業地位×産業×配偶関係」のクロス集計がされています。下記サイトの表23です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048178&cycleCode=0&requestSender=search

 このデータを使って,公務員の未婚率の年齢曲線を描いてみました。はて,公務員の曲線は全体とどう違うか。従業地位(正規・非正規・・・)の影響を除くため, 正規職員の未婚率曲線を比べてみましょう。

 ここでいう公務員とは,産業大分類でいう「公務」に該当する者です。他の産業分類に含まれる,教員や警察官などは含みません。大半が,役所の職員さんと思われます。


 加齢とともに結婚する人が増えますので,未婚率曲線は右下がりになります。20代ではほぼ重なっていますが,30代以降で官民の差が開いてきますね。30代後半の男性でみると,全体の未婚率は28.3%,公務員は17.8%,10ポイント以上の開きがあります。

 正規職員同士の比較ですが,確かに公務員は,平均的な傾向と比して結婚しやすいようです。上記の読者の質問に即していうと,「モテる」ということになるでしょうか。女性よりも男性で,それは顕著です。曲線の開きは,男性で比較的大きくなっています。

 男性の場合,結婚には経済力が求められる面があるのは否めませんが,民間に比した公務員の高給と安定性が強みになるのでしょうか。給与の官民比較のデータは,最後にお見せします。

 次に,産業中分類のデータを使って産業別の未婚率を出し,その布置構造の中で公務員がどこに位置するかを明らかにしてみましょう。私は108の産業について,アラフォー男女の未婚率を計算し,二次元のマトリクスの上に散りばめたグラフを作ってみました。

 公務員は,産業中分類では,国家公務,地方公務,外国公務の3カテゴリーに分かれますが,それぞれがどこに位置するか。


 公務員は3カテゴリーとも,左下に位置しています。男女とも,アラフォー正規職員の未婚率が平均水準よりも低い,ということです。全産業でみても未婚率は相対的に低い,「モテる」業種といえましょう。航空業界は強いですね。

 対極の右上をみると,印刷業や映像・文字情報制作業などは,男女とも未婚率が高くなっています。キツイといいますからね。後者は,テレビ制作会社などでしょうが,凄まじいまでの激務(ブラック労働)とよくいわれます。私は,この業界の輩に煮え湯を飲まされた経験があり,いい印象は持っていません。二度と相手にしないと,心に誓いました。似たような経験をした人もいるようですな。
http://www.blackroad.net/blf/2016/03/post-70.html
http://www.blackroad.net/blf/2014/12/post-49.html

 左上は「男性<女性」の度合いが激しい産業です。金融取引・先物取引業は,女性正社員の未婚率が男性よりも圧倒的に高い。女性48.1%,男性4.5%と,10倍以上のジェンダー差です。仕事と家庭の両立ができないまでの,バリバリの実力の世界だからでしょうか。

 公務員の未婚率の年齢カーブと,全産業の未婚率構造の中における公務員の位置を見ていただきました。「公務員はモテますか?」という問いですが,データでみても,まあ「イエス」という答えができるでしょうね。

 とくに男性はそうですが,先に記した通り,民間に比した待遇の良さが武器になっているとみられます。最後に,年収の官民差のグラフをご覧いただきましょう。性別と従業地位の影響を除外するため,男性の正規職員の比較をします。以下のグラフは,プレジデント・オンラインの記事でも紹介したものです。
http://president.jp/articles/-/20248


 年齢を重ねるとともに年収分布がどう変わるかを表現したグラフですが,いかがでしょう。公務員は,加齢とともに自動的に高年収のゾーンが垂れてきます。年功賃金の典型です。未婚率の低さ(男性)が,こういう条件とつながっていることは否定できますまい。

 冒頭の『受験ジャーナル』において,講師さんも指摘されていますが,公務員は信頼度100%で「ローンもすぐに組める」でしょう。融資も一発! しかしそれが災いすることもあるようで,ついつい借り過ぎてしまい,首が回らないまでの借金地獄に陥ることも・・・。

 私は教員の不祥事報道を集めていますが,教員の財産犯(借金返済のための公金横領など)も少なくない,という印象です。スーパーでの食料品万引きなどもチラホラ。「何で学校の先生が・・・」と思われますが,動機は「生活苦」とのこと。

 ともあれ,だまっていれば給料が上がる。退職後の保障もバッチリ。こういう見通しが約束されているためか,公務員には保守志向が強く,冒険志向が弱い,という面もあります。この点は,10月21日の記事でもみた通りです。

 この記事で書いたことを繰り返しますが,社会を動かす公務員には,冒険志向をもっと持ってほしいと思います。今の日本の諸問題は小手先の改革では通用せず,これまでの慣例を覆すような抜本改革が求められますが,冒険志向なしに,それはなし得ません。

 話が逸れましたが,「公務員はモテますか?」という問いに,未婚率のデータで回答してみました。お休みの日の読み物として,ご笑覧いただければ幸いです。曇天ですが,日曜の午後をお健やかにお過ごしください。