2016年12月7日水曜日

学力と労働生産性

 OECD「PISA 2015」の結果が公表されました。15歳生徒の科学的リテラシー,読解力,数学的リテラシーを測る,3年間隔の国際学力調査です。
http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/

 例によって,日本の平均点のランクに関心が寄せられていますが,私は,それぞれの社会の特性との関連に興味を持ちます。「こういう社会だから学力が高い(低い)」ではなく,「学力の多寡が社会に与えている影響」という因果方向を考えてみましょう。

 私は,上記調査の平均点が,社会の労働生産性とどう関連しているかを調べてみました。普通に考えれば,学力が高い,つまり国民の潜在パフォーマンスが高い国ほど労働生産性が高いと思われますが,現実はどうか。

 労働生産性とは,各国のGDP(国内総生産)を就業者数で除した値です。労働者一人当たりのパフォーマンスの指標として,よく使われます。総務省『世界の統計 2016』という資料に,各国の計算済みの数値(米ドル)が掲載されています。2013年のデータです。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/index.htm

 横軸に「PISA 2015」の科学的リテラシーの平均点,縦軸に労働生産性をとった座標上に,双方が分かる34か国を配置すると,下図のようになります。


 傾向は,うっすらとしたプラスの相関ですね。しかるに,右側の学力水準が高い国だけをとると,労働生産性には幅があります。

 日本は,15歳の科学的リテラシーは34か国でトップですが,労働生産性は平均以下です。うーん,国民の潜在タレントが十分に活かせていない社会ということになるでしょうか。お隣の韓国もです。右下の社会は,こういうタイプの社会として括れるでしょうか。

 まあ確かに,日本は優れたマンパワーを無駄にしている国です。女性の社会進出の制限,高学歴人材の失業(ワーキングプア化)といった事実を想起すれば十分でしょう。あと,通勤地獄のような条件も生産性を下げているといわれます。

 こういう歪みを是正し,もっと上方にシフトしたいものです。北欧のノルウェーはスゴイ。

 これから先,少ない労働力で社会を上手く回していくことが求められるようになります。せっかくのハイタレントを浪費している場合ではありません。まずなすべきは,人口の半分を占める女性の社会進出を促すことであるのは,間違いありますまい。