2016年12月16日金曜日

教員の同業婚の国際比較

 最近,結婚に関するデータをいじっています。昔と違い,現在では恋愛婚が主流です。相思相愛の者が自由意志で結ばれるのですが,くっつくのは似た者同士であるのがしばしば。

 たとえば,夫婦の学歴の組み合わせをみると,同学歴婚の夫婦が多くなっています。
https://twitter.com/tmaita77/status/749464193691115520

 おそらくは,職業についても同じことがいえるでしょう。成人になると,職場が主な生活の場になりますが,職場結婚が多いですよね。とくに,教員の同業婚の多さは,よく言われるところです。こう言っては何ですが,教員の生活世界は狭いですし・・・。

 私は,教員養成の老舗の東京学芸大学を出ましたが,父母とも教員という学生が多かったような気がします。曾祖父母,祖父母,父母の全員が教員という,純粋教員一家の級友もいました。

 教員の同業婚率を出せないかと前から思っていたのですが,このほど公表された,OECD「PISA 2015」のデータを使うことで,それができることを知りました。

 最新の2015年調査では,対象の15歳生徒に対し,父母の職業を尋ねています。具体的な職業名を書いてもらい,後からそれを分類する「アフターコード」形式です。この回答を加工することで,目的の数値を試算することが可能です。

 私は,父が教員である生徒のうち,母も教員である者が何%かを計算してみました。ここでいう教員とは,以下の3カテゴリーに分類されるものをいいます。数字は,コード番号です。

 2330 Secondary education teacher
 2340 Primary school and early childhood teacher
 2341 Primary school teacher

 就学前から中等段階の学校の教員,つまり,幼稚園から高校の先生と考えてよいでしょう。日本の15歳生徒でいうと,父が教員である者は130人です。このうち,母も教員であるのは50人。比率にすると,38.5%となります。この数値をもって,教員の同業婚率とみなしましょう。日本の場合,およそ4割なり。

 PISA調査は国際調査ですので,他国の数値も出すことができます。下表は,値が高い順に並べたランキング表です。%の母数が50人に満たない国は,分析対象から外しました。以下のデータは,「PISA 2015」の生徒質問紙調査のローデータを加工して,独自に計算したものであることを申し添えます。
http://www.oecd.org/pisa/data/2015database/


 タイと韓国では,値が50%を超えています。有配偶で子どもがいる教員に限ると,およそ半分が同業婚であると推測されます。日本はおよそ4割で,比較対象の47か国の中では高いほうです。47か国の平均値は,28.9%なり。

 15歳生徒の父母の職業から出した試算値ですが,同業婚率4割というのは,他の職業に比しても高いと思われます。先述のように,教員は生活世界が狭いので,職場結婚の比重が大きくならざるを得ないのかもしれません。

 前に,教員の社会人経験者率を出したことがありますが,日本は韓国と並んで最低水準でした。異業種の人と知り合う機会が少ないのも,無理からぬこと。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/01/post-4389.php

 教育の役割は,社会が求める人材を育てることですが,それを担う教育が「社会」を知らぬというのは問題だ,という意見があります。それもあってか,近年では教員研修の中に,民間企業に教員を派遣する長期社会体験研修が組み込まれたり,採用試験でも,社会人経験者が歓迎されたりします。

 結構な取組だとは思いますが,「上から」の押し付けだけでなく,もっと教員が自発的な意志で社会に出れるようにすることができないものか。そのための条件となるのは,教員にヒマを与えることです。2012年の中教審答申で,教員を高度専門職と位置付ける方針が明示されましたが,専門職のメルクマールは自律性なり。

 医師や研究者のレベルまでとはいいませんが,これをある程度は担保しないと,教員が実質的に専門職とみなされるのは難しいでしょう。いつまでも,「準専門職」という,苦肉の言い回しが当てがわれることになります。

 教員の同業婚から話が広がってしまいましたが,今回のデータは,教員の生活世界の狭さと同時に,その職業の性格についても,日本的な特徴を表しているように思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿