2017年1月11日水曜日

著作物の使用条件

 先週の金曜,某出版社より,ニューズウィークWeb版に出した記事の図表を使わせてほしい,という連絡がきました。下記記事の図1「幼子の世話は,最初に誰がすべきか」です。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/02/post-4532.php

 2月に刊行予定の新刊に使いたい,図表は原版を参考に新たに作り直すとのことでした。つまり,改変を施す,ということです。

 こういう依頼がくると喜ぶ人が多いのでしょうが,私はその逆です。またトラブルに巻き込まれ,嫌な思いをするのではないかと,憂鬱になります。

 私は,以下の3つの条件で使用を許諾すると返事しました。

 1)使用料をお支払いいただくこと。額は相談。
 2)事前に,該当箇所のゲラをお見せいただくこと。
 3)本が刊行されたら,一部お送りいただくこと。

 昨日,先方からリプがありました。「条件を検討した結果,許諾申請は取り下げる」とのことです。使用料をよこせだの,ゲラを見せろだの言ったので,不快に思ったのでしょう。

 しかるに,どれも当たり前の要求です。まず1)ですが,商業出版という営利事業に他人の著作物を使う場合は,使用料を払うのが普通です。

 先週発売された雑誌『プレジデント』に,私が計算した「職業別の時間給」のデータが転載されていますが,使用料はきっちりとお支払いいただきました。
https://twitter.com/tmaita77/status/818670778199613440

 学校の授業の教材に使うとか,入場料を徴収しない講演会の資料に使うとかの場合は,この限りではありません。こういう非営利の活動に使うというなら,使用料を請求したりはしません。しかし,営利目的の利用の場合は話が別です。

 2)の条件は,クレジット・出典の記載が適切であるかを確認するためです。先方の依頼メールに,「先生のお名前,記事名,媒体名を明記する」と書いてありましたが,私はゲラを見せていただくことにしています。

 先日,信じられない経験をしたからです。私が某Web誌に書いた記事を紙雑誌に転載したい,という依頼で,依頼のメールに「クレジット・出典を明記します」とありました。

 しかし,念のためゲラを見てみるとビックリ。クレジット表記が「舞田敏彦=文,A=図表作成」となっています。Aとはデザイナーで,私がエクセルで送った図表をちょっとアレンジしただけの人です。

 これでもって,このAという人があたかも図表の著作権者であるかのように書かれるとあっては,たまったものではありません。編集部に抗議して修正してもらいましたが,もしこのまま出版されていたら,大問題になっていたところです。ウェブなら修正ができますが,紙媒体の場合は取り返しがつきません。ゲラを確認して,本当によかったと思います。

 あとひとつ,ゲラを見せてもらう目的は,自分の著作物がどういう使われ方をするかを確認するためです。今回の依頼では,使用にあたって,原版を参考に先方が図表を新たに作り直す(=改変する)とのことでした。その改変が常軌を逸したものではないか,許容の範囲内か。これをゲラで確認したいというのは,著作権者の当然の思いでしょう。

 3)については,他人の著作物を使った作品を,一部謹呈するというのは当然のことです。

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 今回,転載許諾を申請してきた出版社さんには,こういう思いが伝わらなかったのでしょうね。私のメールの文面がぶっきら棒だったためかもしれませんけど・・・。

 図表の転載依頼をいただくことが結構ありますが,私がこういう考えの人間であることを,告知しておこうと思います。

1 件のコメント:

  1. 当然の主張に同意します.
    1)ですが,世界的に著作権では利用(exploitation)して二次的著作物を作る等と,使用(use)=知覚(perception:本を読む,音楽を聞く,映画・美術品を鑑賞する)を分けて考えています.この件,利用(exploitation)に該当し事前許諾は当然ですし利用料は当事者間交渉で決定することですね.
    2)は「改変を施す」も同一性保持権・翻案権があるので事前許諾は当然.
    著作物を触ることをビジネスにする出版社の割に担当者の知識不足が悲しいですね.
    3)は業界の昔からの慣行ですかね,,(笑)

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