2011年3月11日金曜日

各世代の非行者輩出率

 前回の記事の続きです。私の世代(1976年生まれ)は,10代の間に,延べ数にして,およそ17万8千人の非行者を輩出したというお話をしました。私の世代の人口(約184万人)で除すと,9.7%ほどの比率になります。

 ところで,この数字は,他の世代に比べてどうなのでしょうか。私は,一回り上の1966年生まれ世代と,一回り下の1986年生まれ世代について,同じ統計をつくってみました。下表がそれです。非行者数の出所は,警察庁が毎年発行する『犯罪統計書』です。


 1966年生まれ世代の10歳の非行者数は,この世代が10歳であった1976年に,警察に補導された10歳少年の数です(以下,同じように読んでください)。非行者の合計は,10~19歳の人数を合算したものです。繰り返しになりますが,私の世代は,17万8千人ほどです。一番下の非行者排出率は,この合計値をベースの人口で除したものです。

 さて,表をみると,私の世代は谷間のようなもので,前後の世代に比して,非行少年の輩出率が小さいことが知られます。まあ,前回の図で,われわれの世代は,非行の多発ゾーンを通過していなかったので,だいたい予想された結果ではあります。

 では,他の世代についても,非行者排出率だけみてみましょう。現存の統計から,10代の状況をもれなく追跡できるのは,1962年生まれ世代から1991年生まれ世代までです。


 率の上位3位の世代は,赤く塗りつぶしています。これによると,非行少年を最も多く出したのは1968年(昭和43年)生まれ世代であり,先ほどみた66年生まれと69年生まれ世代がこれに次いでいます。これら1960年代後半生まれの世代は,幼少期に,石油ショックによる大混乱などを経験した世代です。こういう,人生初期の経験が影響しているのでしょうか。

 幼少期のショック体験が,その後の人生にどう影響するかという問題は,アメリカのエルダーという人が書いた『大恐慌の子どもたち』という本で扱われているようです。1929年の経済恐慌を子ども期に経験した世代を,丹念に追跡した研究だそうです。恥ずかしながら,私はまだ読んでいないのですが,これから一読してみようと思っています。

 もっとも,60年代後半生まれ世代が10代にさしかかった80年代前半に,警察が少年への統制を強めた,という事情も考えられます。少年非行の大半は,万引きのような窃盗ですが,この種の罪は,私服警備員を増員するなど,統制を強めるほど,たくさん検挙されます。よって,非行の中でもシリアスな凶悪犯に限定した分析も求められるでしょう。機会をみつけて,やってみようと思います。

 あなたは何年生まれ世代ですか。前回の記事と合わせて,ご自分を客観視する手立ての一つとなさってください。