2019年8月7日水曜日

水泳の授業はスイミングスクールで

 酷暑の日が続いています。海がすぐ近くなんで,いつでも海水浴ができるのですが,見苦しい裸体を晒す度胸はないです。

 学校では体育の授業で水泳をしているかと思いますが,昨日,面白い記事を見かけました。タイトルは「この手があった!スイミングで学校の授業は一石三鳥」。3つのメリットとは,熱中症の心配なし,指導充実,コスト半分以下,というものです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190806-00010000-tokai-soci

 スイミングスクールの屋内プールなら,熱中症の心配はなし。講師は水泳のプロなんで,指導も充実。スイミングスクールに払う費用は,学校のプールの維持管理費の半分ですむ。至れり尽くせりですね。スクールの側にしても,一般客の少ない午前中に使ってもらえばありがたい。

 この記事をRTしたところ,「日本はスイミングスクールが至る所にあるので,どんどん活用すべきだ」というリプがありました。そうなんですかね。文科省の『体育・スポーツ施設現況調査』という資料に,公共・民間のスポーツ施設のプール数が出ています。

 2015年度とデータがちと古いですが,都道府県別の表をみると,東京都は379,私の郷里の鹿児島県は103となっています。屋内・屋外の合算です。

 これだとピンとこないので,1つのプールを何人の児童で使うことになるか,またどれほどの広さの土地に1つのプールがあるか,という情報も出してみます。公的統計からa~cの3つの数値を取り出しました。いずれも2015年度の数値です。


 東京には56万2969人の児童がいるので,1つの学校外のプールを1485人で使うことになります。1回に使える人数が50人とすると,30回ローテーションすればいい計算です。まとまった時間の水泳の授業が年間5回とすると,1つのプールのトータルの使用回数は150回ですか。この程度なら,一般の利用客の妨げにはならないのでは。学校の授業での使用は午前中と決めればよろしい。鹿児島は,もっとゆとりある形で使えそうです。

 次に気になるのは,学校からプールへの移動です。送迎は施設やスイミングスクールがバスでやってくれるみたいですが,あまりに遠すぎると困る。そこで,何㎞四方の土地にプールが1つあるかを出してみたところ,東京では5.6㎢(2.4㎞四方)の土地に1つはあるじゃないですか。これなら,バスですぐですね。鹿児島は,ちょっと時間がかかるかな。

 この2つが,学校外の施設のプールの利用しやすさを測る指標になります。47都道府県の数値をご覧いただきましょう。まずは,プール1つあたりの児童数です。


 児童数の多い都市部はちとキツイですが,地方ではゆったり使えますね。山梨は1つのプールあたり571人。1回50人とすると,たった11回ローテーションすればいいだけです。授業回数が年間5回とすると,1つのプールの使用回数は55回。余裕です。1回の使用人数をもっと少なくしてもよさそうです。

 次に,スポーツ施設のプールの立地密度です。


 高知や北海道は,学校からプールまでバスで30分ほどかかりそうですが,右下の都市部では数分で済みそうです。ただ渋滞や事故など思わぬ事態があり,他の授業時間の侵食もあり得ますので,スポーツ施設での水泳の授業は,夏季休暇等にまとめて行うのがいいかもしれません。屋内なら,夏である必要はなし。

 熱中症の心配なし,指導充実,コスト半分以下。学校外と連携することで,こんなにものメリットが引き出せます。

 昨年春にスポーツ庁が出した『部活動ガイドライン』では,中学校の運動部活動を,学校外のスポーツクラブ等に委ねるのもアリだと述べています。授業ではない課外活動なんで,全然OKです。北欧の諸国では,こういうスタイルです。中学校教員の8割が,課外活動指導時間「ゼロ!」と言い切っています(OECD「TALIS 2018」)。
http://tmaita77.blogspot.com/2019/06/2018.html

 教育を行う場は,学校だけにあらず。学校外とも手を携え,教育の効果を高めていきたいものです。子どもは社会全体で育てる。こういう構えが大切。日本では,学校と外部社会の敷居が高いのですが,教育資源の活用や人事交流の面でも,これを崩していく必要があるでしょう。