2011年6月25日土曜日

教員の自殺

 以前,教員の離職率や精神疾患による休職率を分析しました。今回は,離職や精神疾患を通り越した,極限の事態である自殺(suicide)にまで及ぶ教員がどれほどいるか,またその要因としてどのようなものが大きいか,ということを数で明らかにしようと思います。

 警察庁が毎年発刊している『自殺の概要資料』には,職業別の自殺者数が記載されていますが,その中に,「教員」というカテゴリーがあります。幼稚園,小学校,中学校,高校,特別支援学校,大学のような正規の学校のほか,専修学校や各種学校などの教員も含んでいるのでしょうが,母集団の組成からして,大半が小・中・高校の教員であるとみてよいでしょう。

 当該資料の2010年版によると,同年中に自殺した教員の数は146人だそうです。最近の推移をたどると,2007年が125人,08年が128人,09年が144人,そして10年が146人というように,少しずつ増えてきています。ちなみに,2010年の146人のうち,男性が115人(78.8%)と多くを占めています。
http://www.npa.go.jp/toukei/index.htm

 同年の文科省『学校基本調査報告』によると,この年の教員人口(幼稚園,小学校,中学校,高等学校,中等教育学校,特別支援学校,高等専門学校,短期大学,大学,専修学校,各種学校)は約181万人です。ゆえに,教員の自殺率は,先ほどの146人をこの数で除して,10万人あたり8.1人と算出されます。この年の人口全体の自殺率(24.9)と比べたら,かなり低くなっています。なお,小・中・高校の教員(104万人)のみをベースにして自殺率を出すと,14.0となります。

 このように,教員の自殺者は実数でみても率でみても少ないのですが,自殺の原因の構成は,独特のものとなっています。下図は,自殺者の自殺理由の内訳(大分類)を,教員と人口全体とで比較したものです。2010年の統計です。


 双方とも,最も多いのは「健康問題」に関する理由ですが,教員の場合,それに次ぐのが「勤務問題」となっています。このカテゴリーに属する理由のシェアは,人口全体では7.8%しかないですが,教員では31.9%も占めています。おそらく,過労とかバーンアウトとかいったものであると思われます。

 では,およおその見当をつけたところで,もっと細かい小分類の原因表をみてみましょう。上記の警察庁の資料では,2007年版より,細かな小分類の原因表が公表されています。私は,2007年から2010年にかけて,教員の自殺の原因構成がどう変わったかを調べました。


 上表の統計は,原因の延べ数を集計したものですので,総計の値は,自殺者の頭数よりもやや多くなっていることに留意ください。表によると,両年とも,うつ病による自殺が最多です。しかし,この理由による自殺者が最近3年間で15人も増えています。2010年では,うつ病だけで,自殺理由全体の30.7%を占めるに至っています。その次に多いのが,勤務問題の中の「仕事疲れ」というものです。教員の多忙化がいわれる今日,さもありなん,という感じです。

 また,2010年では,「夫婦関係の不和」という,家庭関連の原因も目立っています。家庭は,仕事でへとへとに疲れた身を癒す「憩いの場」となることが期待されるのですが,その家庭までもが,緊張や葛藤の場となってしまっては,たまったものではありません。教員は,同業婚が比較的多いといいますけれども,お互い多忙で,知らぬ間に夫婦関係に亀裂が入る,ということでしょうか。

 これまで,教員の離職,精神疾患,および自殺という病理指標を分析してきましたが,いずれの現象も,その根は同じものであるように感じます。

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