2011年6月19日日曜日

若者の職業別自殺率

 自殺率を年齢層別にみると,その絶対水準が高いのは高齢層ですが,ここ数年の増加率という点でみると,若者で高いようです。今年の元旦の記事では,30代の自殺者数が大きく増えていることを明らかにしました。

 ところで若者といっても,いろいろな輩がいます。職に就いている者もいれば,無職の者もいます。就業者のうちでみても,どういう職に就いているかはさまざまです。今回は,25~34歳の若者について,職業別の自殺率を出してみようと思います。なお,自殺率は性差が大きいので,ここでは男性に限定することとします。

 まず,総務省『国勢調査』の結果を使って,この年齢層の職業構成が,1995年と2005年でどう変わったかをみてみましょう。『国勢調査』では,就業者の職業を10の大カテゴリーに分けて集計しています。一番最後の「無職」とは,総人口から,これら10カテゴリーの合計を引いたものです。その主な組成は,完全失業者,学生,主夫,そしてニートです。


 上図によると,無職者の比重の増加が明らかです。1995年の7.3%から2005年の18.1%へと増えています。失業者の増加という理由のほかに,学生や就労意欲のないニートの増加ということも考えられましょう。この10年間で,大学院進学者が増えていますので,この年齢層でも,学生は少なからずいるものと思われます。

 就業者の職業については目立った変化はありませんが,専門職,事務職,販売職のようなホワイトカラー職従事者の比重が減じています。これら3者の合計は,1995年では46.1%でしたが,2005年では35.9%と,10ポイント以上の減です。最近の不況により,これらの職種の就く機会が減っていることだと思います。

 では,上記の諸カテゴリーについて,自殺率を計算してみましょう。分子の職業別自殺者数は,自殺予防総合対策センターが公表している,1995年度と2005年度のものを使います。同センターは,国立精神・神経医療センターの内部に設置されている,公的な機関です。分母は,先ほど用いた『国勢調査』の数字を使います。
http://ikiru.ncnp.go.jp/ikiru-hp/genjo/toukei/index2.html


 まず,最下段の全体の自殺率をみると,19.6から31.1に増えています。1.6倍の伸びです。自殺率の絶対水準をみると,「分類不能・不詳」というカテゴリーの自殺率が飛びぬけて高くなっています。2005年の10万人あたり385人ということは,0.385%≒0.4%です。年間,250人に1人が自らを殺めていることになります。

 『国勢調査』の説明によると,「分類不能・不詳」の職業とは,「主に記入不詳の理由により,いずれの項目(職業)にも分類しえないもの」と説明されています。おそらく,細切れの臨時雇いなど,不安定な職業(就労形態)が多いものと推察されます。2005年でみて,この層は全体の1.6%しかいませんが,この極少の部分に,若者の職場の病理が濃縮されているように感じます。

 次に自殺率が高いのは,無職者です。しかし,この10年間で率は大きく減っています。おそらく,学生が増えたためでしょう。就労意欲があるのに働けない完全失業者だけをとれば,自殺率はぐんと高くなることと思います。

 あと一点,特記しておくべきことは,この10年間の増加率でみると,専門・管理職が最も大きい,ということです。医者や教員,技術者など,高度な知識・技術を要する,文字通りの専門職です。給与などの待遇は,上記の職種の中で,最もよいことでしょう。しかるに,責任の重さや,職場が高密度に管理化されていることなど,この種の職業ならではの悩みやストレスも大きいことでしょう。教員の精神疾患や離職の問題については,このブログで繰り返し明らかにしたところです。

 若者にとって,職場は生活構造の重要な部分を占めています。この環境がはく奪されることが,彼らにとっていかに痛手であるかがうかがわれます。機会をみつけて,今度は,家族集団を持っているかどうか,つまり配偶関係別に自殺率がどう異なるかを調べてみようと思います。

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