2013年2月18日月曜日

未婚率・恋人なし率の学歴差(5か国)

 後期の授業も終わって,休みに入っています。私はといえば,出かけるのは週に2回,駅前のデパートに買い物に行く日だけ。それ以外の日は自宅にこもっています。半ヒッキー状態です。むろん,晴れた日は小1時間ほどの散歩をしますが。

 今日は,週に2回の「下山日」でした(丘の上から駅まで下りるのでこう呼んでいます)。駅前のなか卯で牛丼を食って,図書館で本を借りて,書店に寄って,食糧の買い出し。お決まりのコースです。

 書店に寄るのは新刊のチェックのためですが,毎週2回,決まった曜日の決まった時間帯に,無精ひげをたくわえた薄汚いオッサンがやってくるので,店員さんにすれば「また来た」という感じでしょう。

 さて新書の新刊コーナーをのぞいたところ,橘木俊詔教授の『夫婦格差社会』(中公新書,2013年)が目につきました。パラパラとめくると,階層や地域によって婚姻率や恋人あり率が異なるというデータがわんさと載っています。
http://www.chuko.co.jp/shinsho/2013/01/102200.html
 
 わが国は,個々人の地位や富の配分に際して学歴がモノをいう度合いが高い学歴社会ですが,恋人ができるか,結婚が叶うか,ということにも学歴は影響するものと思います。具体的な典拠はすぐには思いつきませんが,こういう議論は,他のところでもなされているような気がします。

 本書では,内閣府の調査データが頻繁に引用されていますが,内閣府HPの「少子化対策に関する調査等」の箇所をみたところ,いろいろと興味深い調査の結果がアップされているではありませんか。

 その中の一つに,「少子化社会に関する国際意識調査」(2011年3月結果公表)があります。これによると,若者の婚姻や異性交際の状況が学歴でどう違うかを,国別に知ることができます。学歴による結婚格差現象なるものは,どの社会でもみられるのか。こういうことを知りたくなりました。
http://www8.cao.go.jp/shoushi/cyousa/cyousa22/kokusai/mokuji-pdf.html

 本調査の対象は,5か国(日,韓,米,仏,瑞)の20~49歳の男女です。調査実施時期は,2010年の10~12月。最初の問1において「結婚しているか」と尋ね,その次の問2では「現在,親しい間柄の恋人または結婚を約束した婚約者がいるか」と問うています。

 私は,「結婚も同棲もしていない」(問1)と答えた者,「恋人との交際経験はない」(問2)と答えた者の比率の学歴差を,国ごとに整理しました。

 下図は,横軸に恋人なし率,縦軸に未婚率をとった座標上に,各国の2学歴グループのデータを位置づけたものです。矢印のしっぽは,初等教育・中等教育卒業の学歴グループの位置を表します。矢印の先端は,大学以上卒業の学歴群の位置を示唆します。学歴が上がるとどういう位置変化が起きるか,というイメージを持って図をご覧ください。


 どうでしょう。恋人との交際と結婚の双方に学歴がプラスの作用をもたらすなら,矢印の向きは左下がりになるはずです。韓国,アメリカ,そしてスウェーデンは,こういう社会のようです。後2者は,縦軸上の位置変化が大きいことから,結婚に至るに際して学歴の影響が大きいことが知られます。

 韓国は,位置変化の幅は大きくありませんが,恋人との交際経験ならびに結婚の両方に対して,学歴がプラスに作用しています。その意味で,交際・結婚の学歴差が最も顕著であるのは,この国かもしれません。韓国は,わが国以上の学歴社会ですしね。

 さて日本はというと,矢印は左上がりです。未婚率については,高学歴群のほうが高くなっています。昨年の3月3日の記事でみたように,基幹統計の『国勢調査』の結果の上では,未婚者より既婚者の学歴水準が高かったことから,ここでの結果は偶然とも考えられます。

 まあしかし,日本の位置変化の幅は,アメリカやスウェーデンの比べれば小さいものです。むろん,学歴差ではなく所得差という点でみると,上図のマトリクス上には,また違った矢印が描かれるかもしれませんが。

 ところで,フランスのような社会もあるのですね。この大陸国では,高学歴者のほうが,恋人なし率,未婚率とも高くなっています。お隣のドイツなんかは,どういう向きの矢印になるかしらん。

 今回の国際データでみる限り,わが国の交際・結婚格差現象の規模は中程度というところでしょうか。橘木教授の上記著作において国際比較がされているか分かりませんが,もしされているとしたら,どういう解釈が添えられていることか。金欠のため買えませんでしたが,図書館で借りれたらじっくり読んでみるつもりです。

 なお,今回使った「少子化社会に関する国際意識調査」には,伝統的な性役割観や今後の生活展望などについても尋ねています。回答結果の男女差,学歴差,配偶関係差が,国によってどう違うか。こういうことも分かります。内閣府の調査も結構使えますね。