2013年2月26日火曜日

パラサイトシングル率の国際比較

 パラサイトシングル。学校を卒業し,自立を期待される年齢になっても親と同居し,基礎的な生活条件を依存し続ける若年未婚者。山田昌弘教授は,日本社会でこういう人種が増えており,そのことが,わが国の未婚化,さらには少子化をもたらしていると指摘しました。

 最近では,この見方が広く共有されるようになっており,国の基幹統計である『国勢調査』においても,親との同居・非同居が分かるような集計がなされるようになっています。

 今の日本にパラサイトシングルがどれほどいるかは,昨年の8月22日の記事で明らかにしたのですが,国際比較ができないものかと前から思っていました。欧米では,子は成人したら親元を離れるのが当然と聞きますが,パラサイトシングル現象は,わが国に固有のものなのでしょうか。

 ネット上でざっと調べたところ,この疑問に答えてくれる情報(データ)は見当たりませんでした。しかるに,前回使った『世界価値観調査』(WVS)のデータを分析することで,各国の若者の親同居未婚者数を割り出せることに気づきました。今回は,その結果をご報告しようと思います。

 前回の記事で申しましたが,WVSサイトのオンライン分析の箇所において,自分の関心に則した集計表を独自につくることができます。複数の変数を掛け合わせたクロス集計も,3重クロスまでなら可能です。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp

 私は,「年齢×婚姻状態×親との同居状況」の3重クロス表を国ごとに作成し,25~34歳の親同居未婚者の数を明らかにしました。前後しますが,分析したのは最新の第5回(2005~08年)のWVSデータです。

 日本でいうと,25~34歳の調査対象者181人のうち,未婚者(事実婚は含まず)は82人。この82人のうち,親と同居している者は68人です。よって,当該年齢の若者のうち,親と同居している未婚者の比率は37.6%ということになります。2.7人に1人がパラサイトシングルです。この数値は,2005年の『国勢調査』から分かる,同年齢層のパラシン率とさして変わらないことを申し添えます。

 52の社会について,この比率を算出することができました。資料的意味合いを込めて,ベタな一覧表を提示します。比率が高い順に,各国を配列しました。


 日本が一番高いかと思いきや,そうではありません。同じアジアの台湾とホンコンのほか,南欧のイタリア,北アフリカのモロッコがより上に位置しています。これら4つの社会では,若者のパラシン率が40%を超えています。

 イタリアは,わが国と同程度,いやそれ以上に少子化が進んでいるといいますが,この国では若者の5人に2人がパラシンなのだなあ。知らんかった。

 主要国の位置をみると,お隣の韓国(30.3%)は日本のちょい下,ドイツ(14.1%)は中の下,アメリカ(6.7%)は下というところです。英仏は,親との同居・非同居を尋ねていないためデータを出せませんが,ドイツと同じくらいではないでしょうか。

 ところで表の一番下をみると,北欧の3か国は,揃いも揃ってパラシン率が低くなっています。この3つの社会では,親と同居している未婚の若者はごくわずかです。離家しても若者が安心して生活できる社会条件が整っているのでしょうか。

 さて,上表に掲げられている52の社会のパラシン率は,未婚化の進行具合とも相関していると思われます。私は同じデータを使って,同年齢層の未婚者率を出し,上表のパラシン率との相関をとってみました。日本の場合,未婚者率は82/181=45.3%です。


 上の相関図より,パラサイトシングルが蔓延っている社会ほど,未婚化が進んでいることが知られます。2つの指標の相関係数は+0.667であり,1%水準で有意です。山田教授がいわれているように,パラサイトシングル現象は未婚化,さらには少子化の引き金になっていることがうかがわれます。

 といっても,事はそう単純でなく,スイスやノルウェーのように,パラシンがほとんどいなくても未婚率が高い社会も存在します。スイスでは,未婚者63人のうち,親と同居している者(パラシン)は6人しかいません。未婚者の大半は離家しています。この国では,未婚化の要因は,パラシンとは別のところに求めねばなりますまい。

 しかるに日本は違います。日本の場合,未婚者82人のうち68人(82.9%)がパラシンです。東洋のこの国では,未婚化対策=パラサイトシングル対策という性格が強いとみられます。

 パラシンと未婚化・少子化の関連のロジックについては,冒頭でリンクを張った記事をみていただくとして,のうのうと暮している若者を親元から引き離す上でも,山田教授が提案されているような「親同居税」の導入を 検討すべきであるかもしれません。
 
 いやー,WVSのデータはスゴイ。第1~4回の結果もつなぎ合わせることで,時系列的な変化も明らかにできます。SPSSやSASのような高価なソフトがいるというのではありません。ここで提示したような国際統計は,オンライン分析によって,誰もが簡単に作成することができます。

 若者の意識について卒論を書きたいと思っている学生のみなさん,自前で調査をしようなどと考える前に,こういう既存の調査資料を十分に活用しようではありませんか。調査関係の授業では,私はいつも,学生さんにこのようなことをいっています。

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