2013年2月10日日曜日

首都圏の年収地図

 昨年の12月2日の記事では,東京都内の区市町村の年収地図を紹介したのですが,今回は,首都圏(1都3県)にまで射程を広げたものをつくってみようと思います。

 県別ならいざ知らず,区市町村別の平均年収が分かる資料なんてあるのかと思われるかもしれませんが,あるのです。総務省が5年おきに実施している『住宅・土地統計調査』です。この資料から,単身世帯等も含む全世帯の年間収入分布を,区市町村別に知ることができます。
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/kekka.htm

 この調査でいう「世帯の年間収入」とは,「世帯全員の1年間の収入の合計」とされています。ボーナスや財産収入等も軒並み含むのとこと。各世帯の年収が正確に把握されているといってよいでしょう。

 私は,最新の2008年調査の結果を使って,首都圏218区市町村の平均年収を計算しました。六本木ヒルズのある港区(東京)を例に,平均年収の算出の仕方を説明します。下表は,当区の2008年の世帯平均年収分布です。年収が不明の世帯は除きます。


 9万7千世帯のうち,1,000万以上1,500万未満の世帯が最も多くなっています。この区では,こうした富裕層が多くを占めることに,若干驚きます。1,500万以上の層を含めると,全世帯の4分の1が年収1,000万以上です。「さすが」とでもいいましょうか。その一方で,年収400万未満の世帯も3割ほど存在します。

 この分布から,当該区の世帯の平均年収を出してみましょう。度数分布表から平均値を出すに際しては,階級値を使うやり方が一般的です。

 それぞれの階級に含まれる世帯の年収を,一律の中間の値とみなします。たとえば,年収300万円台の世帯は,中間をとって,一律に年収350万円と仮定するわけです。上限のない1,500万以上の層については,一律に年収2,000万円とみなすことにしましょう。

 このような仮定を置くと,9万7千世帯の平均年収は,以下の式で算出されます。全体を100とした相対度数を使った方が計算が楽です。

 [(50万×2.1)+(150万×7.5)+・・・+(2,000万×10.8)]/100.0 ≒ 759.3万円

 ほう。全世帯の平均年収が750万円超ですか。これは,かなり高い部類に入るでしょう。ちなみに,私が住んでいる多摩市の世帯平均年収は555.2万円です。結構な開きがありますなあ。

 同じやり方で1都3県の区市町村の世帯平均年収を出し,地図化すると,下図のようになります。名づけて「首都圏の年収地図」。数値が出せない地域(欠損値)も結構ありますが,この点はご容赦ください。


 濃い青色は600万円を超える地域ですが,都内の23区,ならびに川崎・横浜市内に多く分布しています。何となく分かる気がします。rank関数で上位10位を出すと,以下のごとし。

 1位 東京・千代田区 783.5万円
 2位 横浜市青葉区 759.9万円
 3位 東京・港区 759.3万円
 4位 横浜市都筑区 733.4万円
 5位 東京・中央区 705.6万円
 6位 さいたま市浦和区 692.3万円
 7位 千葉・浦安市 676.4万円
 8位 千葉・白井市 669.6万円
 9位 川崎市麻生区 664.8万円
 10位 東京・目黒区 664.5万円

 先ほど例とした港区は3位です。千代田区と横浜市内の青葉区がこの上をいっています。千代田区は,全世帯の平均年収が800万近くか・・・。なお,218区市町村の中の最低値は349.0万円となっています。

 子どもの学力水準や通塾率,さらには中学受験率などについて同じ地図を描いてみたら,上図の模様とさぞ似通っていることでしょう。肥満児率や虫歯保有率のような健康不良の指標の地図は,逆の模様になっているかもしれません。

 子どもの発達や能力の社会的規定性の様が,こうしたマクロデータから明らかにできるようになればいいな,と思っています。

 なお,今回使用したデータから,218区市町村のジニ係数を出すことが可能です。住民の富の差が大きいのはどこか。上図と同じように地図化すれば,首都圏の格差地図ができ上がります。こちらはすぐできる作業ですので,近いうちにやってみるつもりです。*東京都内のジニ係数地図は,2011年12月22日の記事にて作成していることを申し添えます。