2017年7月3日月曜日

褒められ経験と自尊心

 いよいよ暑くなってきましたが,いかがお過ごしでしょうか。横須賀では,久しぶりの晴れ空が広がっています。

 さて,日本教育新聞の連載『数字が語る・日本の教育』ですが,5月22日のコラム「褒められ経験」を,宮城県大和町の教育委員会広報(2017年7月号)に転載していただきました。公的機関の広報に載せていだけるのは,うれしく思います。
https://www.town.taiwa.miyagi.jp/soshiki/syogai/4281.html

 家で褒められる頻度と自尊心が,学年を上がるにつれてどんどん低下するというデータです(資料は,国立青少年教育振興機構『青少年の体験活動等に関する意識調査』2014年度)。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/107/

 そこでは,2つの指標を切り離して観察しましたが,両者を関連づけてみると,さもありなんという傾向が出てきます。家で褒められる頻度と自尊心のクロス集計結果を,小学校4年生と高校2年生の断面で比べると面白い。

 家で褒められる頻度は,「よくある」と「時々ある」をまとめて「褒められる」群とし,その他を「褒められない」群としましょう。自尊心は,「自分が好き」という項目に「とても思う」ないしは「少し思う」と答えた者を「自分が好き」群,それ以外を「自分が好きでない」群と括ります。

 小4と高2の2時点について,この「2×2」のクロス集計結果を図示すると,以下のようになります。横幅で褒められ経験,縦幅で自尊心の群分けをしたモザイク図です。


 小4では「自分が好き」という児童(白色)のほうが多いですが,高2になると逆転します。「自分が好きでない」という児童生徒(青色)の領分が広がります。全体に占める比率は,小4では37.6%ですが,高2になると65.3%に増えます。

 これには褒められ経験の減少も寄与しているようで,褒められないという者の比重も,高2になると高くなります(横軸)。

 日本の子どもも自尊心は低く,発達段階を上がるにつれてそれが顕著になっていくのはよく知られていますが,褒められ経験の減少というのも,その原因になっているのではないか。

 小さいうちは,前にできなかったことができるようになり,褒められることが多いのですが,大きくなり自我が芽生えると,親の意向と衝突する。また,成績の些細な相対水準で小言を言われることも多くなるでしょう。

 いつしか叱れることが当たり前になり,たまに褒められると戸惑う子どもも出てきます。これは,自尊心が破壊されていることの証拠で,自信をもって社会に参入できず,後々になって,ニートや引きこもりといった社会不適応にもつながりやすくなります(これらがよくないと断言はしませんが)。

 自分に対する好意的な評価,すなわち自尊心は,積極的に外部に出て行って,いろいろな経験を積もうという意欲の基盤です。生きていく上で欠かせない心性ですが,褒めることで,それを伸ばすことはできます。

 「叱るより褒めよ,叱る前に褒めよ」。多くの育児書に書いてあることですが,これは正しいのです。不自然になってはいけませんが,お子さんを褒めましょう。難しいことではなく,どの親御さんにもできることです。

 ちなみに上記のモザイク図の模様は,家庭環境によっても違っています。貧困層と富裕層の子どもの図を左右に並べると,これが結構違っている。家庭環境とリンクした,自尊心格差という現象にも注意を払わねばなりません。この点については,今月20日頃公開の日経デュアル記事で触れることにいたします。お楽しみに。

 急に暑くなってきました。もう,昼食後に歩いてコミュニティセンターに行くことはできません。夏の間は,図書館の本はファミリーマート荒崎入口店に取り寄せ,涼しくなった夕方に自転車で取りに行くことにします。

 みなさまも,熱中症などにはご注意を。

1 件のコメント:

  1. 闇雲に褒めたり、結果に対して褒めるのではなく、努力や過程を褒めることが肝心だと思います。

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