タイトルをみて,「ああ,『学校基本調査』の進路統計の分析だな」と思われ方も多いでしょうが,本調査で正規・非正規の就職者数が別個にカウントされるようになったのは,つい最近のことです。
よって,よくいわれる「新卒就職者の非正規化」というトレンドもあまり可視化されていないのですが,『就業構造基本調査』のデータを使って,それが可能であることに気づきました。
2012年の同調査では,卒業年と初職のクロス表が公表されています(下記サイトの表167です)。この表から,各年の卒業者が,最初にどういう形態の職に就いたのかを知ることができます。卒業後しばらくしてから就職する者もいますが,ここでは「卒業後1年未満の間に就職した者」に限ることとします。大半が,卒業後直ちに職に就いた新卒就職者とみてよいでしょう。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048178&cycleCode=0&requestSender=search
私はこの方式で,高卒と大卒の新卒就職者の初職変化を明らかにしました。正規が何%,非正規が何%というデータです。ジェンダー差も見るため,男女で分けました。では,2×2の4つの面グラフをご覧ください。1983~2012年の30年間の変化図です。
時とともに,非正規雇用の領分が広がってきています。大卒男子でみると,1983年の非正規率はたった3.6%でしたが,2012年の卒業者では実に25.3%,4分の1にも達しています。高卒ではもっとすごく,男子で26.4%,女子では35.7%です。
私は1999年の卒業生で,いわゆるロスジェネといわれる世代ですが,私なんかの頃よりも非正規比重が増えているのだなあ。まあ最近では,事態はちょっとばかし改善しているのでしょうけど。
以上は高卒と大卒の図ですが,他の学校卒業者はどうかという関心もあるでしょう。6つの学歴カテゴリーの初職内訳図をつくってみました。1983年と2012年の断面図を並べてみます。下に掲げるのは,男性の図です。
どの群でも非正規の比重が増してきています。最近の大学院卒では2割ほどが非正規ですが,オーバードクター問題の深刻化の表れでしょうか・・・。
別に,初職が正規雇用からスタートしないといけないという決まりはありません。諸外国では,キャリアは非正規からスタートし,徐々に正規に移行していくのが通例であると聞きます。今回みたのは,卒業直後の時点の静態図ですが,問題とすべきは,その後において非正規から正規への移動可能性がどれほど開かれているかです。
上記サイトの表167では,初職と現職の関係も明らかにされています。初職が非正規であった者のうち,どれほどが現在正規に就いているか。その比率は過去に比してどう変わってきているか。回を改めて,検討してみたい課題です。