2015年1月28日水曜日

年功賃金の産業比較

 トヨタ自動車が,年功賃金体系を若年層に手厚い仕組みに変更する方針を打ち出しています。若手に責任感を持たせる,彼らの定着を促すうえでも,効果があると期待されます。
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6147548

 「何歳であるか」よりも「何ができるか」を重視する能力給への移行は,昔に比べたら進んでいるのでしょうが,まだ広く普及しているとはいえないでしょう。

 このことは,入職して間もない20代と定年間際の50代の年収を比較すると,よく分かります。2012年の『就業構造基本調査』をもとに,男性正社員の両年齢層の年収分布表をつくると,以下のようになります。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm


 20代354万人,50代481万人の年収分布ですが,中央の相対度数をみると,分布の型が大きく違っています。20代のモードは300万円台ですが,50代は700万円台です。平均年収を出しても,20代は321万円であるのに対し,50代は637万円にもなります。倍近くの差です。

 両群の年収分布がどれほどズレているかは,右端の累積相対度数をグラフにすることで可視化されます。横軸に20代,縦軸に50代の累積相対度数をとった座標上に,14の年収階層を位置づけ,線でつないでみました。年功賃金の度合いを示す,年功ローレンツ曲線です。


 ほう,曲線の底がかなり深くなっていますね。それもそのはず。何せ,年収600万以上が20代では18%なのに対し,50代では51%をも占めるのですから。

 上図の曲線の深さによって,両群の年収格差,すなわち年功賃金の度合いが教えられるのですが,それを数値で表してみましょう。計算するのは,ジニ係数です。対角線と曲線で囲まれた面積を2倍した値です。この値を計算すると,0.677にもなります。

 ジニ係数が高いと判断される目安は0.4ですが,それを大きく上回っています。それだけわが国では,年功賃金は未だに色濃い,ということです。

 さて,この年功ジニ係数を産業別に計算したらどうでしょう。年齢重視の年功賃金が幅を利かせていのはどの業種か。予想としては,公務員などは値がメチャ高いことでしょう。私は,先ほどと同じやり方にて,20の産業の年功ジニ係数を明らかにしました。


 予想通り,トップは公務員です。年功ジニ係数は0.971!日経デュアルの記事でも書きましたが,まさに「人の価値は年齢によって決まるシステム」ですね。しかるに財政が逼迫し,職員の高齢化も進む中,この制度をいつまで維持できるかは未知数です。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=3559

 ほか,公によって担われる度合いの高い教育やライフライン業も,年功賃金が色濃くなっています。新興産業の情報通信業(IT)は,年齢関係なしの実力の世界と聞きますが,以外に年功ジニ係数が高いのですね。金融・保険業も・・・。

 反対に,自然を相手にする農林漁業では,年功賃金の性格は比較的薄いようです。漁業はわずか0.147であり,20代と50代の年収分布にほとんど差がありません。最近,若者を積極的に募集している業種ですが,ガンバリに応えてくれる業種といえましょうか。運輸・郵便業の年功ジニ係数が小さいのはなぜでしょう。トラックで稼ぐも腕次第,ということでしょうか。

 「何歳であるか」よりも「何ができるか」に重きを置く能力給への移行が推奨されていますが,それがどれほど具現されたかは数値で「見える化」できます。産業別の値も随時公開し,各業界のインセンティヴを高めていくことも求められるでしょう。

 最近,「女性の活躍 見える化サイト」なるものを内閣府が設けていますが,これなども,同じねらいを持った取り組みであると思われます。推奨する動きの程度を数値で可視化する。分野を問わず,とても重要なことといえましょう。
http://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/mierukasite.html

0 件のコメント:

コメントを投稿