2015年1月6日火曜日

好かれない教科

 ヒマをみては,公的機関が何か面白い調査をしていないかとサーチしているのですが,国立青少年教育研究機構が,青少年に関わるいろいろな調査をしているようです。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/

 その中の一つに,『青少年の体験活動等に関する実態調査』(2012年度)があります。主眼は,青少年の体験活動の頻度と生活意識の関連分析のようですが,調査票をみると,いろいろ興味深い設問が盛られています。

 私は,好きな教科を尋ねている設問に関心を持ちました。小学校調査では問9,中学校調査では問10です。9の教科を提示し,自分の好きなもの全てに丸をつけてもらう形式なり。丸をつけた児童・生徒の比率が各教科の「好き」率になりますが,ひねくれ者の私は,その逆の比率に注目してみました。当該の教科を選ばなかった者の率,すなわち「好きでない」率です。

 たとえば,小学校5年生男子のうち,国語に丸をつけた児童は全体の17.4%です。よって残りの82.6%が,当該教科を好んでいないことになります。以下では「好きでない」率ということにしましょう。

 私は,各教科について,小5と中2の男女の「好きでない」率を明らかにしました。下表は,値を整理したものです。(   )内は,中学校の教科名称です。


 どの教科も値が高いですね。まあ,「好きでない=普通+嫌い」ですから,量は多いのでしょうが,ここまでとは思いませんでした。

 なお男女とも,小5から中2になるに伴い,比率が上昇します。女子の家庭科(技術・家庭科)にあっては,「好きでない」率は39.9%から81.0%へと倍増しています。私の頃は,男子は技術,女子は家庭というようにパッカリ分かれていましたが,今は女子も技術をやるのですよね。針や包丁ならいいが,金槌や鋸を握るとなるとちょっと・・・という子が多いのでしょうか。

 あとジェンダーの差にも注目。予想通りといいますか,理数教科を好まない者の率は「男子<女子」であり,中学校になるとその差が開きます。国語や芸術教科を好まぬ者の率は,その反対です。よく言われることですが,教科嗜好のジェンダー差も出ていますね。

 それでは,上表のデータをビジュアル化してみましょう。学年差と性差を同時に見てとれる図をつくってみました。横軸に男子,縦軸に女子の「好きでない」率をとった座標上に,小5と中2の各教科のドットを位置づけ,学年間を線で結びました。

 末尾を小5,先端を中2とした矢印にしています。これで,小5から中2にかけての変化がイメージしやすくなるかと思います。


 ほとんどの教科が右上に動いています。男女とも,「好きでない」の者の率が上がっている,ということです。しかし,その増加幅は教科によって違っていて,家庭科(技術・家庭科)では,矢印が長くなっています。先ほど述べたように,この教科を好かない女子の率が急騰するためです。

 美術や保健体育の矢印も長いですね。小学校から中学校に上がるに伴い,実技系教科の状況が芳しくなくなるようです。しかるに,それは主要教科も同じであり,算数(数学)と理科は,小5の時点で高い「好きでない」率が中2になるとさらにアップし,女子では8割を超えるようになります。

 性差という点でいうと,点の斜線より上にある教科は「男子<女子」,これより下にある教科はその逆ですが,それぞれのゾーンにある教科にはジェンダー色が出ています。

 肌感覚でも分かるように,女子で理数教科を好まない者が多いのですが,全員がそうではありません。理科を好む女子は,小5では36.5%,中2では16.4%います。追及すべきは,こうしたリケジョがどういう環境で育っているかです。

 実は今日,上記の調査のローデータを入手したところです。それぞれの設問の回答を,家庭環境の設問とクロスさせることもできます。保護者の養育態度との関連も興味深い。女子の理系嗜好の要因分析なんていう研究もできるかも。理科が好きか否かを外的基準に立てた,数量化Ⅱ類のようなタッチもいい。課題として記しておこうと思います。