2012年3月13日火曜日

学生・生徒の自殺

3月9日に,警察庁の『平成23年中における自殺の概要』が公表されました。自殺統計には,厚労省のもの(『人口動態統計』)と警察庁のものがありますが,後者の特徴は,自殺者の身分や自殺原因について仔細に集計していることです。

 当該の資料によると,2011年中の学生・生徒の自殺者数は1,029人となっています。何の変哲もない数字に見えますが,メディアが報じるところによると,統計を取り始めた1978年以降,学生の自殺者が千人を超えたのは初めてだそうです。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20120309-OYT8T00777.htm

 前にも書きましたが,私はこの種の報道に接すると,原資料にあたって,詳細な統計を確認したくなります。当局の資料をもとに,学生・生徒の自殺者の推移を跡づけてみました。2006年までの数は,内閣府『平成23年版・自殺対策白書』,2007年以降の数は警察庁『自殺の概要資料』の各年次版より得ました。
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/w-2011/html/index.html


 学生の自殺者は,1990年以降,増加します。97年から98年にかけてグンと増えるのは,国民全体の傾向と同じです。学生の世界でも,「98年問題」はあったのですね。その後減少しますが,2002年以降再び増加に転じ,なるほど,2011年には千人の大台にのっています。

 先ほど述べたように,2011年の学生・生徒の自殺者は1,029人ですが,その内訳は,小・中学生が84人,高校生が269人,大学生が529人,専修学校生等が147人,です。大学生が半分以上を占めます。

 今,大学生は大変です。将来を悲観してしまうのか,就職失敗という理由で自殺する大学生が増えていることは,昨年の3月8日の記事でみた通りです。

 これは原因の一つですが,学生・生徒の自殺原因の全体構造はどういうものなのでしょう。何故に,若い命を自ら殺めてしまうのでしょうか。上記の警察庁資料から,2011年の学生・生徒の自殺原因を明らかにしてみようと思います。

 警察庁の統計では,遺書などによって判明した分に限り,自殺原因が集計されています。しかるに,一人の自殺原因が複数の原因カテゴリーにわたることもあるので,ここで集計されている数は,各原因カテゴリーに当てはまる自殺者の数であることに留意ください。その総計は,原因が判明した自殺者の頭数とイコールにならないこともあり得ます。

 まずは,大雑把な原因の大分類の統計をみてみましょう。学生・生徒の自殺原因の構成を,自殺者全体のものと比較してみます。
http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/H23jisatu-huroku.pdf


 自殺者全体では,健康問題に関する原因の比重が大きくなっています。このカテゴリーの原因だけで,全体の46.5%が占められています。これは,高齢者が多いためでしょう。一方,学生・生徒では,学校問題に関連する原因が最多です。全体の約4割に相当します。やはり,主要な生活の場である学校関連の原因が影を落としているようです。

 ところで,学校関連の原因といっても,いろいろあります。いじめ,成績不振,教師による叱責・・・。もっと下りた,原因の小分類の内訳を観察してみましょう。大分類でいう学校問題の原因は,小分類の統計では,7つのカテゴリーに細分されます。

 下表は,学校の種別ごとに,細かい自殺原因の構成を示したものです。学校種間の比較ができるよう,相対度数分布(%)を出しています。


 上位3位の数字には黄色のマークをしています。1位の数字は赤色のゴチにしています。最も多い自殺原因(赤色)に注目すると,小・中学生と大学生は「学業不振」,高校生と専修学校生は「うつ病」となっています。

 大学生では,自殺原因の約2割は「学業不振」なのか。日本の学生は勉強しないと揶揄されるのですが,彼らの悩みの最大のタネは,勉学に関することであるようです。2011年の間に,学業不振が原因で命を絶った大学生は93人です。

 最近,大学教育に喝(カツ)を入れようという動きが高まっており,成績が振るわない学生は進級させない,卒業させない,という大学が増えているそうです。こういうことも影響しているのかしらん。過去のデータと比較ができればはっきりすることですが。

 なお,就職失敗は,大学生の自殺原因全体の8.2%です。41人の大学生の自殺原因が,これに相当します。就職失敗による大学生の自殺者数は,2007年が13人,2008年が22人,2009年が23人,2010年が46人,2011年が41人,というように推移しています。

 新卒採用の慣行が根強いわが国では,新卒時点での就職に失敗した者は,翌年以降は「既卒」の枠に放り込まれ,大きな不利益を被るといいます。こういう事情から,深く思い詰めてしまう学生さんもいるのでしょう。諸外国でも,このような学生の存在が社会問題化しているのでしょうか。もしかすると,わが国に固有の社会病理現象であるのかもしれません。国際比較の統計があればなあ。

 あと一点,高校以上の段階において,「うつ病」が大きなシェアを占めています。現代は「うつの時代」といわれますが,大人のみならず,子どもの世界でも,それは当てはまるようです。

 中高生の自殺の原因については,昨年の9月18日の記事でも触れています。こちらも参照いただけますと幸いです。

 回を改めて,ロスジェネといわれる,われわれ30代の自殺原因についても,詳細に解剖してみようと思っています。

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