2012年3月8日木曜日

教員のパフォーマンス指数(連携・協力)

前回の続編です。前回は,教員の本分である「授業」という観点から,各県の教員のパフォーマンスを観察しました。今回は,表題の通り,「連携・協力」という視点を据えてみようと思います。

 今日,子どもの教育は,学校という専門機関で行われています。学校は複雑な組織なのですが,この組織を円滑に動かしていくには,組織の成員たる教員の連携・協力(チームプレー)が欠かせません。むろん,専門職としての教員にはそれなりの自律性が付与されて然るべきですが,そればかりを強調すると,組織的・体系的な教育は到底望み得なくなります。

 各自治体の教員採用試験のパンフに載っている,求める人材像に関する文章をみると,ほぼ例外なく,「協調性」という言葉が含まれています。チームプレーができない人はお断り,ということでしょう。採用試験の面接では,この要素が備わっているかを厳格に試されます。集団討論の場で,他人の意見に耳を貸さず,自分の意見だけを強硬に主張するような人は一発でアウトです。私などは,そこで弾かれるのだろうな。

 なお,学校内のみならず,学校外の諸主体(保護者,地域住民・・・)との連携・協力も求められます。地域社会には,優れた知や技を持った人材が数多くます。団塊世代の大量退職により,こうした地域資源の量は,以前よりも増えていることでしょう。これを適切に活用することは,教育の効果を高める上でも,重要なことといえます。学習指導要領の総則でも,「学校がその目的を達成するため,地域や学校の実態等に応じ,家庭や地域の人々の協力を得るなど家庭や地域社会との連携を深めること」といわれています。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/sou.htm

 このようなことを念頭に置きながら,文科省『全国学力・学習状況調査』の学校質問紙調査の結果を眺めていたところ,使えそうな設問があることに気づきました。私は,各県の公立小・中学校が,以下の3つの問いに対し,どのような回答を寄せているかに注目することにしました。

①:地域の人材を外部講師として招聘した授業を行いましたか。
②:指導計画の作成にあたっては,教職員同士がよく協力していますか。
③:学校の教育目標やその達成に向けた方策について,全教職員の間で共有し,取組に当たっていますか。

 2009年度調査の対象となった,東京都の公立小・中学校は1,970校です。このうち,①の設問に対し,最も強い肯定の回答(「よく行った」)を寄せた学校は477校です。比率にすると,24.2%です。②と③の設問に対し,「よくしている」と答えた学校の比率は,順に39.1%,38.4%となっています。
http://www.nier.go.jp/09chousakekkahoukoku/index.htm

 私は,上記の3つの設問に対し,最も強い肯定の回答を寄せた学校の比率(以下,実施率)を都道府県別に計算しました。前回と同様,全国値と47都道府県の両端の値を示します。


 前回の授業面での指標と同じく,こちらもかなりの地域差があります。「指導計画の作成にあたって,教職員同士がよく協力して」いる公立小・中学校は,山梨では全体の66.3%ですが,滋賀では30.8%です。③についても,両端では30ポイントを超える開きがあります。

 では,3指標を合成して,連携・協力面での教員のパフォーマンス指数をつくってみましょう。やり方は,前回と同じです。3つの実施率を,全県中の順位に依拠して,1~10の点数にします。1~5位=10点,6~10位=9点,11~15位=8点,16~20位=7点,21~25位=6点,26~30位=5点,31~35位=4点,36~40位=3点,41~45位=2点,46~47位=1点,とします

 下表は,3指標の順位とスコアの県別一覧です。右端の指数は,3つのスコアを平均したものです。この値をもって,連携・協力面での教員のパフォーマンス指数とします。


 最大値には黄色,最小値には青色のマークをつけました。指数が7.00以上の場合,数字を赤色にしました。まず両端をみると,最も高いのは長野,最も低いのは沖縄です。長野の指数は,考えられ得る値の最大値(10.00)に達しています。3指標とも,上位5位に入っているためです。スゴイ。

 指数が7.00を超える県に注目すると,長野の周辺の中部地方の県の数字が赤色になっています。それと,北関東,北陸の諸県でしょうか。これらの県は,連携・協力面でのパフォーマンスが相対的に良好であると評されます。あくまで各学校の自己評価の結果ですが。

 指数が高い(低い)県のロケーションが分かる地図もつくってみました。前回と同じく,4未満を黒色,4台を赤色,5台を黄色,6台を水色,7以上を白色で塗り分けたマップです。


 中部や北陸のゾーンが,白く染まっています。一方,近畿,東北,そして九州では,黒色や赤色がやや多くなっています。地方県では,外部講師として招聘できるような人材が比較的少ない,という事情もあるのかもしれません。

 前回の授業面の指数とは違った側面が明らかになりました。次回は,研修という面でのパフォーマンス指数を県別に出してみます。次々回では,3つの観点の指数を動員した,総合的なパフォーマンス指数を構成してみる予定です。