2012年8月7日火曜日

学習塾の生態①

今の子どもの多くは,学習塾という「第2の学校」に通っています。この学習塾の数や基本的特性について明らかにした公的調査はないかと探していたのですが,経済産業省の『特定産業サービス実態調査』というものを見つけました。

 本調査は,タイトルのごとく,特定産業のサービスについて調べたものですが,その「特定産業」の中に,学習塾が含まれています。

 総務省統計局のe-Statにアップされている統計表をみると,学習塾の数,そこで働く従業員の数,受講している児童・生徒の数など,興味をひかれるデータが結構載っています。今回と次回にかけて,学習塾の生態がどういうものかをみてみようと思います。

 この調査の対象となっているのは,日本標準産業分類でいう「学習塾」に相当する事業所です。「小学生,中学生,高校生などを対象として学校教育の補習教育又は学習指導を行う事業所」とされています。たとえば,学習塾,進学塾,そして予備校です。

 ただし,各種学校に相当するものは除外されています。大手の大学受験予備校は各種学校なので,本調査の対象にはなっていません。しかるに,地域でよく見かけるような学習塾は,ほとんどが対象になっていると考えられます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/htoukeib/Detail.do?bunCode=8231

 ではまず,全国に存在する学習塾の数を把握しましょう。最新の2010年調査によると,全国の学習塾の数は,49,298校だそうです。同年の小・中・高校の数は35,475校ですが(文科省『学校基本調査』),それよりも多くなっています。

 規模という点でいうとどうでしょう。下表は,従業員数別の事業所数分布をとったものです。


 全体の6割が,従業員数5人未満の零細事業所です。10人未満までをとると,全体の8割がカバーされます。従業員が50人を超える事業所は,たったの1.5%なり。

 ビルの1フロアを使っただけの小さな塾を結構見かけるので,零細事業所が多いだろうとは思っていましたが,全体の8割が従業員数10人未満とは・・・。

 次に,学習塾の数を,顧客あたりの比率に換算してみましょう。先ほど示したように,2010年の学習塾は49,298校です。この年の5~19歳の子ども人口は,およそ1,744万人です(『国勢調査』)。よって,学習塾の数は,顧客1万人あたり約28.3校ということになります。

 私が住んでいる東京都多摩市の5~19歳人口は,18,279人です(2010年10月1日)。上記の比率を適用すると,この市には,51.7校の学習塾が存在すると見積もられます。まあ,違和感のある数字ではないですね。

 さて,5~19歳の子ども人口1万人あたり学習塾28.3校というのは,全国統計でみた比率ですが,地域別ではどうでしょうか。同じ比率を47都道府県について出し,値に依拠して各県を塗り分けた地図をつくりました。


 比率が最も高いのは東京かと思いきや,そうではありませんでした。最高は和歌山で,1万人あたり44.5校です。昨年の6月9日の記事でみたように,当県は,公立中学校3年生の通塾率が全国で最高なのですが,そのことには,地域に塾が多いという条件も影響しているようです。

 塾が最も少ないのは山形で,顧客1万人あたり19.3校。上記の記事のデータによると,当県の公立中学校3年生の通塾率は,全県で下から3番目なり。通塾率の高低は,地域に塾がどれほどあるかと,ある程度連関していることがうかがわれます。

 今回は,学習塾の数をみました。次回は,そこで働く従業員の数を明らかにします。正規,非正規といった,雇用形態別の数字も出せます。塾産業は,安価な労働力である学生バイトに支えられているといいますが,実情は如何。

 では,次回にて。