2013年9月17日火曜日

大学教育のジェンダー観の国際比較

 9月12日の記事では,県別・性別の大学進学率を出したのですが,どの県でも進学率は男子のほうが高く,ジェンダー差が結構ある県もみられました。

 戦前期では,女子は大学教育を受けられなかったといいます。戦後になってそういうことはなくなりましたが,21世紀の現在でも,「大学教育はどちらかといえば男子にとって重要。子どものうち1人を大学にやるとしたら,勉強の出来に関係なく,男の子優先」。こういう考えの家庭も少なくないことでしょう。

 先の記事では都道府県比較をしましたが,スケールを拡大して国際比較はできないか,と考えました。あいにく大学進学率の国際統計はあまりないのですが,各国の国民が,大学教育の重要性の性差をどう考えているかを知ることができます。

 毎度使わせていただいている『世界価値観調査』(WVS)において,次のような設問が盛られています。たまには,調査票の設問の原文を掲げましょう。


 「大学教育は女子よりも男子によって重要である」という意見に賛成かどうかを,4段階で尋ねていますね。「強く賛成」,「賛成」,「反対」,「強く反対」のいずれか一つを選んでもらう形式です。

 前2者の回答の比率をもって「賛成率」とし,この値が国によってどう違うかをみてみましょう。2005~08年に実施された第5回調査の結果をもとに,57か国の国民男女の賛成率を出してみました。D.KやN.Aを除いた有効回答の中での比率であることを申し添えます。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp

 下の図は,横軸に男性,縦軸に女性の賛成率をとった座標上に,57の社会をプロットしたものです。はて,わが国の位置はどの辺りでしょう。


 イスラム国では,女性はあまり外に出ない文化があるためか,賛成率が高いですね。イランでは男性の64.2%,女性でも46.9%が賛成の意を表しています。

 一方,その対極にはスウェーデンが位置しています。この北欧国では,大学教育の重要性に性差を認める国民はほぼ皆無です。女性の社会進出が進んでいる国だし,分かるような気がするなあ。欧米の主要国も総じて賛成率は低いようです。

 日本はというと,57か国の中で真ん中あたりでしょうか。文化を異にするイスラム諸国に比せば低いですが,先進国の中では高い位置にあると判断されます。

 ちなみに,賛成率のジェンダー差にも注目しましょう。点線の斜線よりも下にある場合,女性よりも男性の率が10ポイント以上高いことを意味しますが,日本はこのゾーンに含まれています。お隣の韓国ほどではありませんが,大学教育のジェンダー観に男女のギャップがあることにも注意が要るかと思います。

 なるほど。先の記事でみた,わが国の大学進学率の男女差は,こういう国民意識の賜物である側面は否めません。

 まあ,以前に比したらこうしたジェンダー観念は弱まってきています。赤色の点矢印は,1995年から2005年にかけてのわが国の位置変化を表しますが,右下に動いています。1999年に男女共同参画社会基本法が制定されましたが,このことの影響もあるでしょう。関連する取組がもっと進展した現在では,上図のドイツあたりの位置にまで下りてきているかもしれません。

 あと一つ興味がもたれるのは,大学教育の中身です。たとえば,女子が理系学部に進むことへの賛否とかはどうなのでしょう。私が高校の頃,工学部への進学を親に強く反対されていた女子生徒がいました。「女が理系なんて・・・」です。数学がメチャできる子だったので勿体ないな,と思ったものです。

 日本では,この面でのジェンダー束縛も強いのではないかと思います。昨年の11月8日の記事でみたところによると,わが国の女子生徒の理系志向は国際的にみて最下位です。おそらく,科学的根拠のないジェンダー観によって潰されている才能も多いことでしょう。ヒトしか資源のない日本にとって,これは「モッタイナイ」で済まされることではありません。

 こうした高等教育とジェンダーに関わる諸問題については政府もよく認識しているようで,女子の理系人材(リケジョ)育成に関わる施策も打ち出されています。新潟大の工学部のパンフなんかは面白かったな。女子生徒の興味をひくため,イケメンの写真を載せたりとか・・・。

 さて,台風一過の今日は快晴です。今朝,自宅近辺で撮った写真を一枚。澄み渡る青空。


 季節の変わり目。朝夕などは結構冷えます。体調を崩されませぬよう。

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