2015年11月2日月曜日

若者の「恋人なし」率の国際比較

 若者の草食化が進んでいるといいます。性行動の経験率が減っているのはよく知られていますが,そういうタイトな交わりだけでなく,そもそも恋人すら作らないと。

 これは日本の状況ですが,他国はどうなのでしょう。国際比較は,自国を相対視させてくれる鏡です。今回は,タイトルのごとく,若者の「恋人なし」率の国際比較をしてみようと思います。

 データは,内閣府の『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2013年)です。本調査のローデータを独自に分析して,10~20代の若者の「恋人」なし率を明らかにしてみました。ローデータは,申請すればすぐに,エクセルないしはSPSSファイルで送ってもらえます。

 この調査の属性質問(F3)では,対象者の配偶関係を尋ねています。この質問への回答から,目的のデータを作ることが可能です。下図は,10代と20代に分けて,回答分布を国別に図示したものです。国名は当て字にしていますが,「瑞」とは,北欧のスウェーデンを指します。


 日本は,恋人なしの比重が高くなっています。10代では90%,20代でも57%が恋人なしです。10代の少年期では欧米でも恋人なし率は高いですが,20代になると,結婚(事実婚)している者,恋人ありの者が多くなります。この年代でも恋人なし率が半分を超えるのは,日本と韓国だけです。

 話がそれますが,独仏瑞の3国は,赤色の事実婚のシェアが高いですねえ。これらの国では,法律上の結婚に踏み切る前に,同棲のお試し期間があるといいますが,その表れでしょう。

 さて,予想通りといいますか,日本の若者の恋人なし率が高いことが分かったのですが,もうちょっと深めてみましょう。若者の中で,恋人なし率が高いのはどの層か? こういう問題を立ててみます。

 社会学を専攻している人間なら,収入が職業といった社会的地位指標との関連をみたくなるもの。私もそうです。男性の場合,収入が高いほど婚姻率が高いことは本ブログでも繰り返し明らかにしてきたことであり,先日,ニューズウィーク日本版の寄稿記事でもこの点を指摘しました。

 多くの社会で,男性が一家を養うべし,主な稼ぎを担うべしというジェンダー規範があるため,男性には,相応の経済力が求められるためです。それは,結婚を前提としたお付き合いをする異性がみつかるかどうかにも,影響するでしょう。

 ここで使っている内閣府調査では,収入が職業は聞いていませんが,対象者の学歴は尋ねています。私は,日本の20代男女の配偶関係構成を,高卒と大卒に分けて明らかにしてみました。わが国では,事実婚と離婚・死別の回答はとても少ないので,これらはオミットしています。下図は,残りの3カテゴリーの内訳を帯グラフで示したものです。


 男性でみても女性でみても,配偶関係構成には学歴差があります。サンプルが少ないですが,男女とも,5%水準で有意の学歴差が検出されます。

 どういう学歴差があるかというと,男女で違っていて,男性では高卒のほうが恋人なし率が高く,女性はその逆です。これが何を意味するかは,取り立てて言うまでもありますまい。

 こういうジェンダー差は,韓国や欧米諸国でもありますが,統計的な有意差が出るのは日本だけです。わが国は,若者が恋人を見つけるに際して,ジェンダーや学歴(≒収入・職業)といった,社会的拘束が強い国ということになります。

 なお,今の若者の中では大卒者がマジョリティーなのですが,大卒者の中でも差があると思われます。たとえば,大学ランクによる違いなど。あと,私が前々から思っているのは,奨学金という借金の有無による違いです。

 今や大学生の半数が奨学金を借りており,数百万円(有利子)の借金を背負って社会に出ていくのですが,このことが,若者の恋人なし化,未婚化,ひいては少子化につながっていないか。相手に多額の借金があると知るや,交際や結婚はためらわれるもの。

 日本学生支援機構がその気になれば作れると思いますが,奨学金の借入額と婚姻状況の関連のデータを見てみたいものです。

 ひとまず,日本の若者の「恋人なし」率が,国際的にみても高いことを知りました。これは草食化というような若者のメンタリティ要因で説明されがちですが,社会的拘束を被った現象であるという点も,押さえておくべきかと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿