「便所飯」という言葉をご存知でしょうか。ニコニコ大百科によると,「便所の個室で食事をする行為の事。友人のいない者(主に学生や女性)が,一人で食事をする寂しい姿を見られないよう,衆目を避けて食事を取る」ことだそうです。
http://dic.nicovideo.jp/
「せっかくのお弁当なのに勿体ない・・・」と思ったりしますが,教室のあちこちで3~4人のグループができている中で,一人ぽつねんと弁当を開くというのは,確かに相当の勇気がいることかもしれません。
小・中学校では給食がありますから,この問題?が深刻なのは,高校段階以降でしょう。私が高校生の頃は,自分の席で一人で惣菜パンをぱくついていましたが,恥じらいのようなものはあまり感じなかったけどなあ。でも今の生徒,とりわけ女子生徒にすれば,12~13時を「魔の1時間」と考えるような向きもあるのでしょう。
便所飯かどうかは問わないとして,一人でランチを食べる生徒というのは,どれくらいの割合でいるのでしょう。2011年の総務省『社会生活基本調査』から試算した値をご紹介しようと思います。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index.htm
本調査では,2011年10月中旬の連続する2日間について,調査対象者の時間帯別の生活行動を仔細に調べています。報告書には,15分間隔の時間帯ごとに,**をしている者が何%という情報が掲載されています。
平日の12:30~12:45の時間帯において,女子高生が何をしているかに注目すると,①食事をしている者が全体の35.4%,②一人で食事をしている者が1.7%と報告されています。②は①の内数です。
したがって,食事をしている者のうち,一人で食事をしている者の比率は,1.7/35.4=4.9%と算出されます。お昼の他の時間帯について同じ値を計算すると,下表のようになります。
一人ランチ率は時間帯によって違っていますが,4つの数値を均すと5.7%となります。この値をもって,女子高生の一人ランチ率の試算値としましょう。18人に1人。1クラスの女子に1人というところでしょうか。
私の頃は,もっといたような気がするけどなあ。本を読みながらサンドイッチをぱくつく子,学食で一人カレーライスを食す子・・・。私の予想では20%くらいかな,と思っていましたが,それよりもかなり低い値が出たことに驚いています。地方の高校だったからかな。
同じやり方にて,男子の一人ランチ率も出してみましょう。より上の段階の率もみてみましょう。結果をグラフにしました。
一人ランチ率は,女子よりも男子で少し高くなっています。また,段階を上がるにつれてほぼ直線的に上がっていきます。大学には,高校のような四角い教室はありませんしね。いつどこで食べてもよし。一人ランチへの抵抗は,確かに小さくなることでしょう。
高校と大学の境って大きいよなあ。いじめにせよ,一人ランチへの抵抗にせよ,そういう友人関係に起因する問題の頻度が大きく減じます。これは,四角い教室がなくなることに加えて,学級(ホームルーム)という厄介な集団の拘束から解き放たれることによると思います。
今,大学の「小・中・高校化」を押し進めるような施策がとられていますが,私などは,その逆が必要だと思ってしまいます。小・中・高校の「大学化」です。この点については,横浜国立大学の渡部真教授もどこかでいわれていましたが・・・。
ちなみに,学級という制度が普遍的なものでないことは,柳治男教授の『学級の歴史学』講談社(2005年)を読むとよく分かると思います。