3月9日の朝日新聞Web版によると,早寝早起き日本一の県は青森だそうです。ソースの総務省『社会生活基本調査』(2011年)をみると,本県の平日の平均起床時間は6時19分となっており,確かに全県で最も早くなっています。
http://www.asahi.com/area/aomori/articles/TKY201303080415.html
早寝早起きは,健康な生活の基本的な条件となるものです。私は,夜11時過ぎに寝て朝の7時前に起きるという日々ですが,就寝時刻と起床時刻をツイッターに記録して,自己管理に役立てています。
早寝早起きの習慣は早いうちから身につけたいものですが,今の子どもたちの状況はどうなのでしょう。子どもの平均起床(就寝)時間については多くの調査がなされており,上記の『社会生活基本調査』からも知ることができます。
しかるに,そこで明らかにされている数値は全国のものです。私は,都道府県別の違いに関心を持ちます。拙著『47都道府県の子どもたち』武蔵野大学出版会(2008年)で申したように,子どものすがた,ならびに彼らを取り巻く環境は地域によって異なっています。夜遅くまでの通塾というように,早寝早起きを阻害する条件の多寡にしても,県によってバラエティがあります。
今回は,子どもの平均起床(就寝)時間を都道府県別に明らかにしてみようと思います。資料は,2010年度の文科省『全国学力・学習状況調査』です。本調査では,対象の小6児童,中3生徒に対し,「普段(月~金曜日),どれくらいの時刻に起きて(寝て)いるか」と尋ねています。
http://www.nier.go.jp/10chousakekkahoukoku/index.htm
公立中学校3年生の回答分布は以下のようです。D.KとN.Aを加えていないため,合計が100%になっていないことに留意ください。
起床時間は,6時半から7時までの間が32.8%と最も多くなっています。就寝時間は,4割が23時台。日をまたいでしまう「午前様」も27.7%います。中学3年ともなれば,深夜まで塾通いする生徒も多いと思いますが,こうしたことの影響とみられます。
上表の分布を使って,中3生徒の起床時間の平均値(average)を出してみましょう。各階級の生徒の起床時間は,一律に中間の時刻とみなします。6時~6時半の生徒は,一律に6時15分と考えるわけです。6時より前の生徒は6時,8時より遅い生徒は8時と仮定しましょう。
この場合,6時00分からの経過時間の平均値は,以下のようにして求められます。
[(0分×8.9)+(15分×25.4)+(45分×32.8)+・・・(120分×0.9)]/99.9 ≒ 46分
よって,公立中学校3年生の平均起床時間は6時46分となります。同じやり方で,就寝時間の平均を出すと23時26分となります。ふむふむ。まあ,こんなものではないでしょうか。今の私は,中学生の平均像に近いのだなあ・・・。
これは全国の数値ですが,私は同じ手続きにて,47都道府県の公立小学校6年生,中学校3年生の平均起床時間,平均就寝時間を計算しました。下表は,その一覧です。最も早い県の時刻には黄色,最も遅い県の時刻には青色のマークをしています。右欄には,早い順の順位を掲げました。1~5位までは赤色にしています。
小6の起床時間が最も早いのは,冒頭の新聞記事でいわれていた青森です。中3は長野。逆に最も遅いのは,双方とも大阪です。東京も遅いですね。
表の右欄の順位をみると,長野は,4つの順位とも赤色(5位以内)となっています。子どもでいうと,日本一の早寝早起き県は長野県なり。反対に,大阪や東京のような都市部では,それが芳しくないようです。夜遅くまで通塾,朝起きれない・・・。こういう子どもが少なくないのでしょう。
私は視覚人間ですので,ベタな数値の一覧を提示して終わり,というのは気が引けます。そこで,中学校3年生の早起きマップをつくってみました。小6から中3にかけて。子どもの起床時間は遅くなり,かつ地域差も大きくなります。下図は,中3の平均起床時間に依拠して,47都道府県を塗り分けたものです。
5分間隔の区分けですが,近畿や首都圏南部が黒く染まっています。6時50分よりも遅い,ということです。白色は6時35分より早い県であり,中部や北関東の5県,青森,そして宮崎が該当します。早起き県です。
上図の模様と,子どもの育ちの様がどういう関係にあるのかも興味深いですね。学力や非行率などと相関をとったら,どういう値になるか。
早寝早起きの効果に関する実証研究というのは,探せばあるのでしょうが,こういう追試可能なマクロデータで+の効果が明らかになれば,エビデンスとしての意味合いは大きいものと思います。県単位でなく,市町村単位でこの手の分析ができるようになれば,もっとよいのですが・・・。