2013年4月7日日曜日

20代前半時における人口減少

 下の統計表は,総務省『国勢調査』から採集した,2005年と2010年の年齢層別の日本人人口です。ナナメにたどることで,この5年間における世代人口の増減を知ることができます。2005年の15~19歳人口は,5年後の2010年には20~24歳となります。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm


 この世代の人口量は,10代後半から20代前半にかけて,650万人から616万人へと減じています。33万4千人の減少。これって何なのでしょうか。

 ツイッター上でいただいたコメントによると,就職等で離家する際,住民票を移さない者が多く,居所不明として処理される者が多いのではないか,ということです。また学生の中には,面倒くさいとか個人情報の流出が怖いとかいう理由で,調査への回答をしない者がいる可能性があるとのこと。

 なるほど。国の基幹統計である『国勢調査』をもってしても,人間の頭数を正確に把握するのって,結構難しいのですねえ。

 ちなみに,10代後半から20代前半にかけての世代人口の減少幅は,近年になるほど大きくなっています。下図は,様相を視覚化したものです。この図式を考案された,東洋大学の根本祐二教授のネーミングにならって,コーホート図と呼ぶことにします。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480066916/


 20代前半の谷が徐々に深くなっています。10代後半から20代前半というライフステージにおいて,人口が減る度合いが年々大きくなってきている,ということです。2005~2010年にかけての減少量は33万4千人なり。結構な量です。

 上の図は,どういうことを表しているのでしょう。先ほど述べたような,『国勢調査』の精度の低下でしょうか。国際化・グローバル化の進展により,初任地が海外という若者が増えたのでしょうか。読売新聞の「人事の眼」をみると,新入社員は海外に行ってもらう,という人事担当者の発言がよく載っています。

 また,展望が持てない日本に愛想を尽かして海外に移住する「外こもり」の増加,ということも考えられます。この点については,下川裕治さんの『日本を降りる若者たち』講談社現代新書(2007年)でいわれていたような気が・・・。幻冬舎から出ている指南本も結構売れているそうな(保田誠『外こもりのススメ』幻冬舎コミックス,2008年)。

 なお,コーホート図を凝視すると,10代という少年期における人口減少傾向も高まってきています。「小中高校生のうちに留学する子どもたちが増えつつある」という報告もあります。
http://astand.asahi.com/webshinsho/asahi/asahishimbun/product/2013021400008.html

 上記リンク先の朝日新聞Web新書では,「捨てられる日本教育」というフレーズが掲げられていますが,子どもや若者にとっての日本社会の魅力度が落ちているのでしょうか。今後,上記のコーホート図の谷はますます深くなっていくのか・・・。

 『国勢調査』の技術的な問題ゆえかもしれませんが,少し気になったので,統計表と統計図をここに載せておきます。