2013年4月8日月曜日

都道府県別の有業男女の朝食欠食率

 新年度が始まり一週間が過ぎましたが,いかがお過ごしでしょうか。寒暖差が激しかったり,爆弾低気圧がきたりと,天候は穏やかでありませんが,頑張ろうではありませんか。私は,明後日の水曜が初出勤です。

 唐突ですが,朝食をきちんと食べていますか。朝食は1日の活力の源ですが,近年,国民の間で朝食欠食傾向が強まっているといわれます。3月17日の記事でみたところによると,20代前半の有業男性の朝食欠食率は4割近くにもなります(平日)。5人に2人です。

 社会に出て間もない年齢層ですが,深夜まで働いて朝は出勤ギリギリまで寝ているため,時間がないのでしょうか。女性にあっては,太りたくないという痩身願望から,意図的に朝食を抜く人もいるかと思います。

 しかるに,朝食を抜くと昼食時に摂取したカロリーが過剰に蓄積されるため,肥満につながりやすいといわれます。また,今朝の朝日新聞Web版の記事によると,朝食を食べたり食べなかったりする人はメタボになる確率が高いのだそうです。
http://www.asahi.com/tech_science/update/0408/TKY201304070226.html

 朝食を抜くと,いいことはなさそうです。当局も,国民の朝食欠食傾向には懸念を持っているようであり,「早寝早起き朝ごはん運動」なるものを展開すると同時に,毎年,朝食欠食率のような統計指標を公表して注意を呼び掛けています(厚労省『国民健康・栄養調査』)。

 私は,県別の数値を知りたいと思い,当該の資料にあたってみたのですが,目的の情報は載っていませんでした。全国値だけでなく,自分の地域の状況を知りたい,という関心を持っているのは私だけではありますまい。いろいろ探査したところ,総務省『社会生活基本調査』のデータを加工することで,県別の有業男女の朝食欠食率を出せることを知りました。その結果をご報告します。

 2011年の『社会生活基本調査』の結果によると,10月中旬の調査日(平日)において,朝食摂取行動をとった者の比率は,有業男性で76.1%,有業女性で82.6%となっています(A調査,平均時刻編,統計表2-1)。よって,朝食欠食率はこれを裏返して,順に23.9%,17.4%となります。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/h23kekka.htm

 本調査の対象は10歳以上の国民ですが,仕事を持っている有業者の場合,ほとんどが成人と考えてよいでしょう。有業成人の朝食欠食率は,まあこんなものかと思います。

 私はこのやり方にて,47都道府県の有業男女の朝食欠食率を明らかにしました。資料的意味合いを込めて,一覧表を提示します。


 男性でみると,最高は東京の29.8%,最低は和歌山の14.5%です。両者では倍の開きがあります。大都市・東京では遠距離通勤が多いためでしょうか。隣接する千葉や神奈川の値も高くなっていますね。

 女性の場合,順位構造はちと違っていて,沖縄が最も高くなっています。沖縄は女性アイドル産出県といいますが,若い女性の痩身願望が強いのでしょうか。でも,先ほど述べたように,朝食欠食は肥満につながりやすいことを認識すべきかと思います。

 予想通りといいますか,朝食欠食率は県によって異なっています。各県の都市性の程度と直線的に相関しているというような,単純な構造でもありません。各県の啓発活動の有様など,多様な要因が関与していることでしょう。

 過去の『社会生活基本調査』のデータと接合させることで,時代変化も明らかにできます。自県の数値が10年前(2001年)と比してどう変わったかを調べ,それをもとに,この間に実施した政策の効果を検討する。こういう課題も考えられます。

 上表の有業男性の朝食欠食率を地図化したものをツイッターに掲げていますので,リンクを張っておきます。興味ある方はご覧あれ。
https://twitter.com/tmaita77/status/317555960556175360

 最後に,あと一つの作業をしましょう。2011年5月17日の記事では,文科省の『全国学力・学習状況調査』(2010年度)の結果をもとに,公立小学校6年生と中学校3年生の朝食欠食傾向児率を県別に出しました。

 そこで出した子どもの朝食欠食率は,上表の大人のそれとどう関連しているのでしょう。有業男性と公立中学校3年生の朝食欠食率の相関をとってみました。下図は相関図です。


 ほう。大人の昼食欠食率が高いほど,子どものそれも高い傾向にありますね。相関係数は+0.524であり,1%水準で有意です。公立小学校6年生の朝食欠食率とは+0.363という相関でした。こちらも統計的には有意です。

 子どもは大人の鏡といいますが,やはり連動するものですね。健全な食習慣は早いうちからと,今の学校現場では食育の実践が盛んですが,朝食も食べないで慌ただしく出ていく親の姿を子どもが日々目にするようでは,その効果は半減してしまいます。大人がしっかりとした範を示す必要がありそうです。

 2011年6月12日の記事でみたところによると,子どもの朝食摂取率は学力と正の相関関係にあります。通塾率などよりもずっと強い相関です。変ないい方ですが,子どもの高い教育達成を望むなら,あくせく勉強させようと構えるよりも,自分の生活を律することから始めたほうがよいのではないでしょうか。

 新年度の始まりを機に,「生」の基本を見つめ直すというのも,またよいかと思います。