2013年4月21日日曜日

図書館職員の非正規化

 私は公共図書館をよく使いますが,職員さんの名札に「臨時」という文字を見かけることが多くなったように思います。また,ちょっと専門的な調べ事の相談を持ちかけた際,「専任の人が今日は休みなので・・・」と困惑されたことがあります。

 「非正規化」とは,今の日本の企業社会を風刺するキーワードですが,公の世界も例外ではありますまい。「官製ワーキングプア」という言葉だってあります。今回は,自分が日頃お世話になっている図書館職員さんの生態をちょっと解剖してみようと思います。

 社会教育施設である図書館の基本統計は,文科省の『社会教育調査』に載っています。公共図書館の職員数は,1990年では16,331人であったのが,2011年では32,402人にまで増えています(指定管理者職員は除く)。ほぼ倍増です。図書館業務の拡張によるものでしょう。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa02/shakai/index.htm

 上記資料では,①専任,②兼任,および③非常勤の別に職員数が掲載されています。②は,館長の兼任などでしょう。③は,いわゆる非正規雇用の人たちです。専任と同様フルタイム勤務の人もいれば,細切れの時間雇用の人もいます。

 私は,この20年間における図書館職員数の変化を,3つの成分の組成も併せて把握できる統計図をつくりました。最近ハマっている面積図です。職員の絶対数が,四角形の面積によって表現されています。


 職員の全数はこの期間にかけて倍増していますが,増分のほとんどは非常勤職員によって担われていることが分かります。その結果,全職員中の非常勤比率は12.9%から54.8%へと激増しました。今日では,図書館職員の半分が非常勤です。

 なるほど。「臨時」という名札が多く目につくようになるはずです。しかし,半分以上とは驚きでした。非正規化の程度は,教員以上ですね。

 ところで,今みたのは全国統計ですが,地域ごとにみるとどうでしょう。私は,図書館職員の非常勤率を都道府県別に計算し,地図をつくってみました。2011年と1999年の地図の模様を比べてみます。


 ほう。この10年ちょっとの間にかけて,地域を問わず,図書館職員の非正規化が進行していることが知られます。2011年の非常勤率の最高値は,広島の68.6%。この県では,公共図書館の職員の7割近くが非常勤です。

 なお,この期間中の伸び幅が最も大きいのは徳島です。当県の図書館職員の非常勤率は,1999年では10.5%であったのが,2011年では50.6%にまで高まっています。10人に1人が,2人に1人になったわけです。よほど抜本的な非正規化方針がとられたのだと思われます。

 図書館職員の非正規化があまりに進行することは,問題をはらんでいます。よくいわれるのは,図書館サービスの質の低下です。冒頭で紹介したような私の体験は,その一つをなしています。また,働く職員さんの側にすれば,低賃金労働の増加・常態化というような事態を意味します。

 今回みたのは図書館職員ですが,公民館や博物館といった他の社会教育施設でも,職員の非正規化は進んでいるものとみられます。興味ある方は,文科省の『社会教育調査』にあたって,同じ統計をつくってみられるとよいでしょう。

 余暇社会,生涯学習社会といわれる現在,これらの社会教育施設が果たす役割は格段に大きくなっています。図書館職員の全数の増加はその表れですが,最初の面積図でみたように,増分のほとんどは非常勤職員です。

 人件費の抑制という事情からでしょうが,こうした戦略にあまりに依存し過ぎることは,当該施設に期待される本来の機能の遂行を妨げる条件にもなり得ます。

 図書館の機能遂行の度合いを計測する指標を開発して,非常勤職員率との相関を明らかにする,というような実証研究が求められるように思います。開館時間や地域サービスの頻度というようなものではなく,住民の内的な満足度との相関を明らかにすることです。こういう研究ってあるんかな。

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