2013年4月23日火曜日

図書館職員の非正規化(ジェンダー差)

 前々回は,公共図書館の職員に占める非常勤職員の比重が殊に高まっていることを明らかにしました。1990年では12.9%でしたが,2011年では54.8%です。

 ところで,「臨時」の名札をつけている職員さんはほとんどが女性,という印象を持ちます。もしかすると,先の記事でみた図書館職員の非正規化は,もっぱら女性によって担われているのかもしれません。今回は,ジェンダーという視点を分析に組み入れてみようと思います。

 まずは,性別・従業上の地位別の職員数が,ここ10年ほどでどう変わったのかをみてみましょう。下表は,1999年と2011年の数値を比較したものです。指定管理業者の職員は除きます。資料は,文科省の『社会教育調査』です。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa02/shakai/index.htm


 今世紀の初頭にかけて,公共図書館の職員は24,844人から32,402人へと増えました。図書館業務の拡張によるものでしょう。

 しかるに,その増分の大半は非常勤職員,それも女性の非常勤職員によるものであることが分かります。女性の非常勤職員は,1999年では5,997人でしたが2011年では15,891人にまで膨れ上がっています。増加倍率は2.7倍であり,他の属性カテゴリーを圧倒しています。

 上表のデータを視覚化してみましょう。私は,6つの属性カテゴリー(2×3)の量を面積図で表現してみました。下図がそれです。


 赤枠の非常勤職員の領分が拡大していますが,その多くは女性であることが知られます。数字は職員全体に占める比率ですが,女性の非常勤職員のシェアは24.1%から49.0%まで高まっています。現在では,図書館職員のほぼ半分が女性の非常勤職員です。

 次のようにもいえます。イ)職員の非正規化は男性よりも女性で著しい,ロ)非常勤職員が女性に集中する度合いが高まっている,ということです。

 男性がメインの業務を担い,女性には補助的な業務があてがわれる。こうしたジェンダー差は,わが国の職域でよくみられることですが,時代に逆行するといいますか,その傾向が増してきています。それも,公供図書館という,パブリックな領域においてです。

 「性×従業上の地位」という枠組みを使って,さまざまな職業従事者の生態を解剖してみるのも一興です。上図のような,反時代的とでも形容できる現象が至る所で観察されるかもしれません。