2014年度も今日でおしまいです。年度末のためか,今月は教員の不祥事報道が多く,私が把握しただけでも40件ありました。いつも通り,記事名,県名,そして当該教員の属性を記録します。
今月もわいせつや体罰が大半ですが,子猫生き埋めのほか,ATMのお金を盗む,公金着服といった経済事犯も見受けられます。意外と,教員や公務員に,この手の金銭犯罪が多いのです。融資などが通りやすいので,ついお金を借り過ぎてしまい,首が回らなくなってしまうのでしょうか。
明日から新年度がスタートです。心機一転,がんばりましょう。
<2015年3月の教員不祥事報道>
・重体の男性が死亡 教諭を危険運転致死容疑で送検(3/2,朝日,沖縄,小,男,47)
・生徒に体罰 姫路市の中学校 胸を突かれて転倒(3/3,神戸新聞,兵庫,中,男,30)
・みだら、不適切な行為 教諭2人を懲戒処分
(3/3,神奈川新聞,神奈川,小男39,小男23)
・男性教諭を刑事告発 免許偽造、小学校で授業(3/3,神奈川新聞,神奈川,小,男,35)
・児童の水着盗んだ教諭懲戒処分(3/4,NHK,岐阜,小,男,30)
・車上荒らしで教諭逮捕=強盗致傷容疑―札幌(3/7,産経,北海道,中,男,40)
・女性教諭にセクハラ発言、校長を停職処分(3/7,産経,東京,特,男,58)
・女児盗撮 小学校教師を逮捕(3/11,時事通信,和歌山,小,男,25)
・教諭に蹴られ小6男児骨折(3/11,朝日,愛知,小,男,40代)
・男性教諭が授業中にパソコンの操作を誤ってわいせつ画像を公開
(3/12,産経,神奈川,中,男,40代)
・「川崎の事件みたいになっちゃう」教諭が暴言(3/12,読売,神奈川,小,女,50代)
・中学校野球部の顧問が常習的に体罰(3/12,紀伊民報,和歌山,中,男,35)
・先生ダメです! ATMで取り忘れた現金を、京都の小学校教諭が失敬して御用
(3/15,エキサイトニュース,京都,小,男,29)
・強制わいせつの中学教諭懲戒免(3/17,神奈川新聞,神奈川,中,男,27)
・児童のわいせつ画像をネットで閲覧可能に 中学教諭懲戒免職
(3/20,産経,東京,中,男,50)
・小学校教諭 タクシー料金の支払いを免れようとタクシーの運転手投げ飛ばす
(3/20,ライブドアニュース,千葉,小,男,33)
・女生徒盗撮未遂 中学教諭処分 (3/20,NHK,栃木,中,男,269
・死亡ひき逃げ事件で教諭が懲戒免職 県教委が処分発表
(3/21,山形新聞,山形,高,男,60)
・ナンパ目的でマンション侵入=容疑で中学教諭逮捕(3/22,時事通信,大阪,中,男,26)
・高校教諭 子猫4匹を生き埋め (3/23,Yニュース,千葉,高,男,30代)
・三重県立高校の校長 約800万円横領で懲戒免職(3/24,ANN,三重,高,男,56)
・女子生徒に「髪の毛くれ」 40代高校教諭を処分
(3/25,神戸新聞,兵庫,セクハラ:高男40代,飲酒運転:小男55,同:特男40,体罰:小男33,公金無断引き出し:高男54)
・体罰で教諭ら3人処分=胸蹴り骨折も(3/25,時事通信,福岡,中男29,特男40,小男58)
・香川県立高教諭に賠償命令 わいせつで元生徒自殺(3/26,共同通信,香川,高,男,50代)
・県教委、体罰2教諭を指導措置 交通違反の3教諭は懲戒処分
(3/26,山形新聞,山形,交通違反:小女50代,中男50代,体罰:特男50代)
・教諭が授業中スカート内盗撮(3/26,時事通信,埼玉,高,男,28)
・児童の顔に落書きの教諭らに懲戒処分(3/26,RBC,沖縄,小,男,47)
・中2の胸蹴り骨折させる 教諭を減給処分(3/26,読売,福岡,中男29,特男40)
・入試出願忘れ小学校教諭を処分 (3/26,NHK,群馬,小女55,小男46)
・徴収金着服教諭を免職 校長は公印無断複製し減給
(3/26,千葉日報,千葉,着服:中男50,公印無断複製:中男59)
・窃盗の中学教諭が懲戒免職 川崎市教委が処分(3/26,神奈川新聞,神奈川,中,男,28)
・919万円横領事務主任、生徒にキスの教諭免職
(3/26,北海道新聞,北海道,高男36,高男48)
・酒気帯び運転で小学校教諭逮捕(3/26,NHK,長崎,小,男,49)
・中学教諭、タクシー運転手を羽交い締め、逮捕(3/26,産経,兵庫,中,男,48)
・神奈川県、教諭ら3人を懲戒免職
(3/27,TBS,神奈川,セクハラ:中男31,窃盗:中男32,個人情報漏えい:小男33)
・強姦容疑の教諭、懲戒免職 愛知 盗撮で起訴の教諭も
(3/27,朝日,愛知,強姦:高男26,盗撮:中男30,中男35)
・生徒にいす投げつけなど、体罰で3教諭懲戒処分
(3/29,読売,大阪,中男34,中男24,中男55)
・「おにぎりに銀歯」うそ 記事掲載させた疑いで教諭逮捕(3/29,朝日,宮崎,小,男,46)
・生徒に体罰、教諭戒告処分 静岡市教委(3/30,静岡新聞,静岡,中,男,30代)
・女子中生にキス、胸触り繰り返す 20代臨時講師懲戒免職
(3/30,神戸新聞,兵庫,中,男,20代)
2015年3月31日火曜日
2015年3月29日日曜日
教員の月給の相対水準(2013年)
2013年の文科省「学校教員統計」の確報結果が公表されました。3年間隔の統計調査ですが,結果が出るたびにやりたい作業があります。教員の月給の分析は,その一つです。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kyouin/1268573.htm
この資料には,調査年9月の本務教員の平均月給額が掲載されています。諸手当は含まない本俸の額です。2013年9月の男性教員の平均月給は,公立小学校が32.13万円,中学校教員が35.10万円,高校教員が36.62万円なり。高校がちょっと高いですね。
これは民間と比べてどうなのでしょう。過去からの変化も気になります。この関心に応えるデータをつくってみました。下の表をみてください。
1989年以降の推移です。先生の月給は,今世紀の初頭まで上がり,それから先は減ってきています。小学校の男性教員の月給は,2001年では40.4万円でしたが,2013年では35.1万円と,5万円以上減じています。中高は4万円の減。財政がひっ迫する中,締め付けが強まっているのでしょうか。
これは絶対水準ですが,民間と比した相対水準はどうでしょう。厚労省統計に載っている大卒男性労働者の平均月給と比べてみました。表の下段の数値は,これを1.0とした場合の教員月給の指数です。
ほう,ほとんどの数値が1.0を下回っています。つまり,教員の月給は民間より低い,ということです。近年になるほどそれは顕著で,小・中教員の月給は,民間の9割を下回っています。前者の減少幅が後者を上回っているためです。
まあ公務員の場合,ボーナス等の諸手当が充実していますから,これを含めた年収額だと,結果は異なるかもしれません。また,年齢構成の影響もあるでしょう。しかるに,これらの要素を統制した比較はできませんので,ここではラフな平均月給(本俸)を比べています。
以上は全国データの比較ですが,言わずもがな,様相は地域によって違うと思われます。私は鹿児島の出身ですが,民間の給料が低い当地にあっては,公務員の優位性が高いんですよね。一方,東京のような大都市では,その反対であるような気がします。
私は,上表の下段の相対指数を都道府県別に計算してみました。各県の大卒男性労働者の平均月給を1.0とした場合,公立学校の男性教員の月給がどういう値になるかです。
といっても,厚労省統計では,地域と学歴のクロスデータがありませんので,大卒労働者の月給を県別に知ることはできません。そこで全国データでの倍率を適用して,各県の大卒男性労働者の平均月給を推し量りました。2013年の全国統計でみると,大卒男性労働者の平均月給は39.64万円,全男性労働者のそれは32.96万円です。前者は後者の1.203倍。この値を,各県の全男性労働者の平均月給に乗じた次第です。
では下表にて,結果をご覧いただきましょう。
予想通り,対民間の相対水準は,県によってかなり違っています。表の上方と下方には1.0以上の値が多く,中ほどにはそれを下回る値が多いですね。地方の周辺県では,教員の月給が民間を凌駕しているが,都市県ではその逆ということです。
0.8を下回る指数が青字にしていますが,東京は低いですねえ。小学校は0.69,中学校は0.73,高校は0.76です。小学校に至っては,民間の7割未満ということになります。東京では教員採用試験の倍率が低下しているといいますが,こういう面の要因が効いていたりして…。大阪も然り。
その一方,東北の青森や岩手では,教員が優位です。この両県の小学校教員の月給は,民間の1.2倍超。地方では,民間の給料水準が低いためでしょう。諸手当込みの年収額では,差はもっと大きくなるとみられます。
先ほど,採用試験の競争率の話が出ましたが,教員月給の対民間比は,それと相関しているのも事実です。上表の小学校の相対指数を横軸,2016年度の公立小学校教員採用試験の競争率を縦軸にとった座標上に,47都道府県をプロットすると下図のようになります。
各県の採用試験の競争率は,空きポストの数という人口的要因で決まりますが,こういう現実もある,ということです。人間は,エコノミック・アニマルでもあります。
話がそれましたが,人数的に多い公立小学校教員の月給の相対水準をマップにしておきましょう。4つの階級を設けて,各県を塗り分けてみました。
白色は1.0未満,つまり教員の月給が民間より低い県です。首都圏のような都市部は,見事に真っ白になっています。色が濃いのは教員の優位性が高い県で,1.2倍を超えるのは,青森,岩手,宮崎の3県です。
教員は近代社会の始まりとともに生まれた職業ですが,戦前の教員の給料といったら,もうメチャ安で,生存が脅かされるまでの絶対貧困の状態に置かれた教員も少なくありませんでした。戦後初期の頃も状況は悲惨で,本業だけでは食べていけないので,教え子や同僚に見つからないかとビクビクしながら,靴磨きのバイトに勤しむ教員もいたそうです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/04/blog-post_14.html
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/03/blog-post_28.html
その後の高度経済成長期でも,民間と比した不利は変わらず,「教員にでもなるか,教員にしかなれない」という者を揶揄した,「デモシカ教師」という言葉が広まっていたのはよく知られています。
今ではそういうことはありませんが,教員給与が時代によってこうも激しく浮沈するということは,教員という職業の性格の曖昧さを物語っているともいえるでしょう。「教員は専門職か」という問題にも,まだ決着はついていません。単純作業に勤しむ労働者ではないが,医師や弁護士のような,高度な自律性を持つ高度専門職というのは憚られる。そこで,「準専門職(semi profession)」という苦肉の言い回しが採られているほどです。
しかし2012年の中教審答申では,「教員を高度専門職」と位置づけることが明言され,大学院修士課程修了の学歴を求める方針も打ち出されました。その具体的な中身はどうであれ,教員の専門職化の具現度は,ここでみた月給の相対水準で測ることもできます。換言すると,時代が教員とう職業をどう見ているかをうかがい知れる,フィルターともいえます。
統計が公表されるたびに,教員給与のデータを観察するのは,こういう関心からです。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kyouin/1268573.htm
この資料には,調査年9月の本務教員の平均月給額が掲載されています。諸手当は含まない本俸の額です。2013年9月の男性教員の平均月給は,公立小学校が32.13万円,中学校教員が35.10万円,高校教員が36.62万円なり。高校がちょっと高いですね。
これは民間と比べてどうなのでしょう。過去からの変化も気になります。この関心に応えるデータをつくってみました。下の表をみてください。
1989年以降の推移です。先生の月給は,今世紀の初頭まで上がり,それから先は減ってきています。小学校の男性教員の月給は,2001年では40.4万円でしたが,2013年では35.1万円と,5万円以上減じています。中高は4万円の減。財政がひっ迫する中,締め付けが強まっているのでしょうか。
これは絶対水準ですが,民間と比した相対水準はどうでしょう。厚労省統計に載っている大卒男性労働者の平均月給と比べてみました。表の下段の数値は,これを1.0とした場合の教員月給の指数です。
ほう,ほとんどの数値が1.0を下回っています。つまり,教員の月給は民間より低い,ということです。近年になるほどそれは顕著で,小・中教員の月給は,民間の9割を下回っています。前者の減少幅が後者を上回っているためです。
まあ公務員の場合,ボーナス等の諸手当が充実していますから,これを含めた年収額だと,結果は異なるかもしれません。また,年齢構成の影響もあるでしょう。しかるに,これらの要素を統制した比較はできませんので,ここではラフな平均月給(本俸)を比べています。
以上は全国データの比較ですが,言わずもがな,様相は地域によって違うと思われます。私は鹿児島の出身ですが,民間の給料が低い当地にあっては,公務員の優位性が高いんですよね。一方,東京のような大都市では,その反対であるような気がします。
私は,上表の下段の相対指数を都道府県別に計算してみました。各県の大卒男性労働者の平均月給を1.0とした場合,公立学校の男性教員の月給がどういう値になるかです。
といっても,厚労省統計では,地域と学歴のクロスデータがありませんので,大卒労働者の月給を県別に知ることはできません。そこで全国データでの倍率を適用して,各県の大卒男性労働者の平均月給を推し量りました。2013年の全国統計でみると,大卒男性労働者の平均月給は39.64万円,全男性労働者のそれは32.96万円です。前者は後者の1.203倍。この値を,各県の全男性労働者の平均月給に乗じた次第です。
では下表にて,結果をご覧いただきましょう。
予想通り,対民間の相対水準は,県によってかなり違っています。表の上方と下方には1.0以上の値が多く,中ほどにはそれを下回る値が多いですね。地方の周辺県では,教員の月給が民間を凌駕しているが,都市県ではその逆ということです。
0.8を下回る指数が青字にしていますが,東京は低いですねえ。小学校は0.69,中学校は0.73,高校は0.76です。小学校に至っては,民間の7割未満ということになります。東京では教員採用試験の倍率が低下しているといいますが,こういう面の要因が効いていたりして…。大阪も然り。
その一方,東北の青森や岩手では,教員が優位です。この両県の小学校教員の月給は,民間の1.2倍超。地方では,民間の給料水準が低いためでしょう。諸手当込みの年収額では,差はもっと大きくなるとみられます。
先ほど,採用試験の競争率の話が出ましたが,教員月給の対民間比は,それと相関しているのも事実です。上表の小学校の相対指数を横軸,2016年度の公立小学校教員採用試験の競争率を縦軸にとった座標上に,47都道府県をプロットすると下図のようになります。
各県の採用試験の競争率は,空きポストの数という人口的要因で決まりますが,こういう現実もある,ということです。人間は,エコノミック・アニマルでもあります。
話がそれましたが,人数的に多い公立小学校教員の月給の相対水準をマップにしておきましょう。4つの階級を設けて,各県を塗り分けてみました。
白色は1.0未満,つまり教員の月給が民間より低い県です。首都圏のような都市部は,見事に真っ白になっています。色が濃いのは教員の優位性が高い県で,1.2倍を超えるのは,青森,岩手,宮崎の3県です。
教員は近代社会の始まりとともに生まれた職業ですが,戦前の教員の給料といったら,もうメチャ安で,生存が脅かされるまでの絶対貧困の状態に置かれた教員も少なくありませんでした。戦後初期の頃も状況は悲惨で,本業だけでは食べていけないので,教え子や同僚に見つからないかとビクビクしながら,靴磨きのバイトに勤しむ教員もいたそうです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/04/blog-post_14.html
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/03/blog-post_28.html
その後の高度経済成長期でも,民間と比した不利は変わらず,「教員にでもなるか,教員にしかなれない」という者を揶揄した,「デモシカ教師」という言葉が広まっていたのはよく知られています。
今ではそういうことはありませんが,教員給与が時代によってこうも激しく浮沈するということは,教員という職業の性格の曖昧さを物語っているともいえるでしょう。「教員は専門職か」という問題にも,まだ決着はついていません。単純作業に勤しむ労働者ではないが,医師や弁護士のような,高度な自律性を持つ高度専門職というのは憚られる。そこで,「準専門職(semi profession)」という苦肉の言い回しが採られているほどです。
しかし2012年の中教審答申では,「教員を高度専門職」と位置づけることが明言され,大学院修士課程修了の学歴を求める方針も打ち出されました。その具体的な中身はどうであれ,教員の専門職化の具現度は,ここでみた月給の相対水準で測ることもできます。換言すると,時代が教員とう職業をどう見ているかをうかがい知れる,フィルターともいえます。
統計が公表されるたびに,教員給与のデータを観察するのは,こういう関心からです。
2015年3月27日金曜日
都道府県別の年齢層別の転入超過率
地方人の地元志向,都会人の田舎暮らし志向の高まりとかいわれますが,それを示すデータってどこにあるのでしょう。
人の動き(移動)を知ることができる資料として,総務省の「住民基本台帳人口移動報告」があります。1年間に人がどれほど入ってきたか(転入者数),どれほど出て行ったか(転出者数)が県別に掲載されています。前者から後者を差し引いた分が,転入超過数です。これをその年の始めの人口で除すと,転入超過率が出てきます。人口の社会増を表す指標です。
私は,東京都の転入超過率を計算してみました。年齢層によって様相は大きく違うでしょうから,年齢層別の率を出しています。下の表は,最新の2014年の計算表です。aとbは2014年中の転入・転出者数,cは同年1月1日時点の人口です。
10代後半と20代前半で転入超過率は大きくなっています。進学・就職に伴う流入層でしょう。20代前半では,この1年間にかけて6.4%も人口が増えていることになります。さすがですね。かくいう私も,10代の後半で東京に入ってきた人間の一人です。
50代後半以降では,値はマイナスに転じます。転出が流入を上回る,ということです。都会に出てきた人が定年を機にUターンする,あるいは定年後は田舎暮らしをとIターンする人たちでしょう。
これは2014年の統計ですが,過去に比してどう変わっているのか。若者の地元志向が強まっているなら,10代後半から20代前半の山は低くなっているでしょう。都会人の田舎暮らし志向が強まっているなら,定年近辺のマイナスの絶対値(流出超過率)が高まっているはず。
上記の資料にて,県別・年齢層別の数が集計されているのは,2010年からのようですので,2010年と2014年の比較をしてみましょう。下の図は,算出された年齢層別の転入超過率を折れ線グラフにしたものです。
まず若年期の流入超過率をみると,10代後半ではちょっと下がっていますが,20代前半では山が高くなっています。20代前半の流入超過率は,2010年では5.0%でしたが,2014年では先ほどみたように6.4%です。
定年期の流出超過率はというと,こちらは微減しています。つまり相対量でみて,東京から出ていく人間が減った,ということです。
むーん,東京都のデータですが,この大都市に入ってくる人間は増え,そこから出ていく人間は増えていない,むしろ減っていると。よくいわれる地元志向,田舎暮らし志向のどちらも観察されませんね。
他の県のデータもみてみましょう,移動が激しい20代前半と60代前半の転入超過率を,都道府県別に計算してみました。観察ポイントは,20代前半の流入超過率が都市で減ったか(地方で増えたか),60代前半の流出超過率が都市で増えたか(地方で減ったか)です。
左の20代前半をみてみましょう。首都圏(1都3県)と九州県は赤色にしていますが,前者では転入超過率が軒並みアップし,後者では下がっています。首都圏には若者が入り,九州からは出ていく傾向が強まっていると。他の地方県をみても,若者の転出超過率が上がっているようです。
リタイヤ期の人口移動はというと,首都圏では転出超過率は下がっています。九州では,どの県でも転入超過率は微減していると。おそらく,東京からのUターン,Iターンは減っているとみてよいでしょう。
「地方人の地元志向,都会人の田舎暮らし志向の高まり」という希望的観測のデータって,どこにあるのか? 今はそれがなくとも,今後の地方創生政策により,それが出てくることを願うばかりです。今日の朝日新聞に,破格の待遇で一人親世帯を歓迎する自治体の紹介記事が載っていましたが,ユニークな施策だと思いました。
http://www.asahi.com/articles/ASH3T570MH3TPTFC00N.html
桜の季節になりましたね。週末はお花見に行かれる方も多いことでしょう。私も,近場の都立桜ケ丘公園にて,ささやかな花見を楽しみたいと思っています。
人の動き(移動)を知ることができる資料として,総務省の「住民基本台帳人口移動報告」があります。1年間に人がどれほど入ってきたか(転入者数),どれほど出て行ったか(転出者数)が県別に掲載されています。前者から後者を差し引いた分が,転入超過数です。これをその年の始めの人口で除すと,転入超過率が出てきます。人口の社会増を表す指標です。
私は,東京都の転入超過率を計算してみました。年齢層によって様相は大きく違うでしょうから,年齢層別の率を出しています。下の表は,最新の2014年の計算表です。aとbは2014年中の転入・転出者数,cは同年1月1日時点の人口です。
10代後半と20代前半で転入超過率は大きくなっています。進学・就職に伴う流入層でしょう。20代前半では,この1年間にかけて6.4%も人口が増えていることになります。さすがですね。かくいう私も,10代の後半で東京に入ってきた人間の一人です。
50代後半以降では,値はマイナスに転じます。転出が流入を上回る,ということです。都会に出てきた人が定年を機にUターンする,あるいは定年後は田舎暮らしをとIターンする人たちでしょう。
これは2014年の統計ですが,過去に比してどう変わっているのか。若者の地元志向が強まっているなら,10代後半から20代前半の山は低くなっているでしょう。都会人の田舎暮らし志向が強まっているなら,定年近辺のマイナスの絶対値(流出超過率)が高まっているはず。
上記の資料にて,県別・年齢層別の数が集計されているのは,2010年からのようですので,2010年と2014年の比較をしてみましょう。下の図は,算出された年齢層別の転入超過率を折れ線グラフにしたものです。
まず若年期の流入超過率をみると,10代後半ではちょっと下がっていますが,20代前半では山が高くなっています。20代前半の流入超過率は,2010年では5.0%でしたが,2014年では先ほどみたように6.4%です。
定年期の流出超過率はというと,こちらは微減しています。つまり相対量でみて,東京から出ていく人間が減った,ということです。
むーん,東京都のデータですが,この大都市に入ってくる人間は増え,そこから出ていく人間は増えていない,むしろ減っていると。よくいわれる地元志向,田舎暮らし志向のどちらも観察されませんね。
他の県のデータもみてみましょう,移動が激しい20代前半と60代前半の転入超過率を,都道府県別に計算してみました。観察ポイントは,20代前半の流入超過率が都市で減ったか(地方で増えたか),60代前半の流出超過率が都市で増えたか(地方で減ったか)です。
左の20代前半をみてみましょう。首都圏(1都3県)と九州県は赤色にしていますが,前者では転入超過率が軒並みアップし,後者では下がっています。首都圏には若者が入り,九州からは出ていく傾向が強まっていると。他の地方県をみても,若者の転出超過率が上がっているようです。
リタイヤ期の人口移動はというと,首都圏では転出超過率は下がっています。九州では,どの県でも転入超過率は微減していると。おそらく,東京からのUターン,Iターンは減っているとみてよいでしょう。
「地方人の地元志向,都会人の田舎暮らし志向の高まり」という希望的観測のデータって,どこにあるのか? 今はそれがなくとも,今後の地方創生政策により,それが出てくることを願うばかりです。今日の朝日新聞に,破格の待遇で一人親世帯を歓迎する自治体の紹介記事が載っていましたが,ユニークな施策だと思いました。
http://www.asahi.com/articles/ASH3T570MH3TPTFC00N.html
桜の季節になりましたね。週末はお花見に行かれる方も多いことでしょう。私も,近場の都立桜ケ丘公園にて,ささやかな花見を楽しみたいと思っています。
2015年3月25日水曜日
理系リテラシーのジェンダー差の国際比較
OECDの国際学力調査PISAでは,15歳生徒の読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシーを調査しています。日本はおおむね良好な結果をおさめていますが,平均点の性差という点ではどうでしょう。
OECDの「Family Database」というサイトにて,PISA2012の平均点の男女差をまとめた表がアップされています。下記サイトの「CO3.4」の表です。
http://www.oecd.org/els/family/database.htm
私は,理系学力のジェンダー差が社会でどう違うかに関心を持ちました。下表は,数学的リテラシーと科学的リテラシーの平均点の男女差を整理したものです。男子の平均点から女子の平均点を差し引いた値です。
プラスの値,つまり「男子>女子」のケースがほとんどです。日本はそれが顕著で,数学では17.9点,科学では11.0点ものジェンダー差があります。しかし,その逆の社会もあるようで,北欧のフィンランドでは,両科目とも女子が男子を凌駕しています。お隣のスウェーデンもそうです。
表をみると,数字の絶対値や符号による,さまざまなタイプがあるようです。こうした分布をとらえやすくするため,グラフで視覚化してみましょう。横軸に数学的リテラシー,縦軸に科学的リテラシーの平均点の性差をとった座標上に,35の社会をプロットしてみました。
右上にあるのは,2科目とも「男子>女子」の社会です。わが国はその程度が大きいので,ルクセンブルクに次いで,極地に近い位置にあります。
米独仏は,数学は「男子>女子」ですが,科学はその逆なので,右下の象限にあります。北欧の瑞芬は両科目とも女子のほうが高いので左下に位置しています。主要国に注目すると,日韓英,米独仏,瑞芬というような,3つのクラスターに分けられそうです。
「女子の脳は男子に比して理系向きにできていない」などと言われますが,そうした生物学的性差(sex)よりも,社会的な性差(gender)の影響が大きい,ということでしょうね。女子に対して向けられる役割期待のようなものです。この点については,前に日経デュアル誌にて書きました。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=3428
時代比較や国際比較は,「今,ここ」という自らの状況を相対視するのにもってこいです。「生まれつきだから,身体の違いだから…」というように諦めていた問題が,実はそうではなく,実践によって解決可能であることに気づかせてくれます。こういう考えのもと,私は日々,タテ・ヨコの比較のデータを集めています。
OECDの「Family Database」というサイトにて,PISA2012の平均点の男女差をまとめた表がアップされています。下記サイトの「CO3.4」の表です。
http://www.oecd.org/els/family/database.htm
私は,理系学力のジェンダー差が社会でどう違うかに関心を持ちました。下表は,数学的リテラシーと科学的リテラシーの平均点の男女差を整理したものです。男子の平均点から女子の平均点を差し引いた値です。
プラスの値,つまり「男子>女子」のケースがほとんどです。日本はそれが顕著で,数学では17.9点,科学では11.0点ものジェンダー差があります。しかし,その逆の社会もあるようで,北欧のフィンランドでは,両科目とも女子が男子を凌駕しています。お隣のスウェーデンもそうです。
表をみると,数字の絶対値や符号による,さまざまなタイプがあるようです。こうした分布をとらえやすくするため,グラフで視覚化してみましょう。横軸に数学的リテラシー,縦軸に科学的リテラシーの平均点の性差をとった座標上に,35の社会をプロットしてみました。
右上にあるのは,2科目とも「男子>女子」の社会です。わが国はその程度が大きいので,ルクセンブルクに次いで,極地に近い位置にあります。
米独仏は,数学は「男子>女子」ですが,科学はその逆なので,右下の象限にあります。北欧の瑞芬は両科目とも女子のほうが高いので左下に位置しています。主要国に注目すると,日韓英,米独仏,瑞芬というような,3つのクラスターに分けられそうです。
「女子の脳は男子に比して理系向きにできていない」などと言われますが,そうした生物学的性差(sex)よりも,社会的な性差(gender)の影響が大きい,ということでしょうね。女子に対して向けられる役割期待のようなものです。この点については,前に日経デュアル誌にて書きました。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=3428
時代比較や国際比較は,「今,ここ」という自らの状況を相対視するのにもってこいです。「生まれつきだから,身体の違いだから…」というように諦めていた問題が,実はそうではなく,実践によって解決可能であることに気づかせてくれます。こういう考えのもと,私は日々,タテ・ヨコの比較のデータを集めています。
2015年3月22日日曜日
首都圏の子育て人口の転入超過率地図
政府は「地方創生」を掲げ,東京から地方への人口移動を促そうとしていますが,人の動きを知ることのできる公的な統計資料として,総務省の「住民基本台帳人口移動報告」があります。1年間で人口がどれほど入ってきたか,どれほど出て行ったかが地域別に掲載されています。
http://www.stat.go.jp/data/idou/
地域といっても都道府県単位だろうと思っていたのですが,最近の資料では,区市町村別のも出ているではありませんか。おまけに,5歳刻みの年齢層別の数値も出ています。これを使えば,子育て人口を引き寄せている地域はどこかを,県よりも下りた区市町村レベルで明らかにできます。
私は,首都圏(1都3県)の242区市町村について,25~34歳の転入超過率マップをつくってみました。2014年中の転入人口から転出人口を引いた値を,同年1月1日時点の人口で除した値です。この値がプラスであれば,「転入>転出」,すなわち子育て人口が増えていることを意味します。マイナスの場合は,その逆です。
私が住んでいる東京都多摩市でいうと,2014年中の25~34歳の転入者数は1812人,転出者数は2112人です。同年1月1日時点の25~34歳人口は17570人。よって転入超過率は,以下のようになります。
(1812-2112)/17570 = -1.71%
値はマイナス,転入よりも転出が多い,つまり子育て人口を逃しているわけですか。公園などの緑地面積が首都圏1位で,子育てにはよい地域だと思うのですが,ママ・パパ人口が出て行っているのだなあ。都心から遠いという,地の利の条件ゆえでしょうか。
同じやり方で,1都3県の242区市町村の率を計算してみました。下図は,それを地図にしたものです。色つきは値がプラス,つまり子育て人口が増えていることを意味します。
やっぱり都心ですね。通勤や通学に便利という,地の利の条件が効いているようです。都内特別区の真ん中に濃い色がありますが,千代田区,中央区,港区です。これら3区では,子育て人口の転入超過率,つまり増加率が5%を超えています。
しかし,地理的ロケーションが全てというわけではなく,周辺部にも色つきの地域はあります。これらの中には,子育て支援を充実させることで,子育て人口を引き寄せている努力地域も多いと思いますが,具体的にどこでしょう。算出された転入超過率が高い順に,242区市町村を並べたランキング表をつくってみました。上位10位だけというケチなことは言わず,全てを掲げます。紙と違い,ブログの場合は,スペースは無制限。いいですねえ。
赤字は上位10位ですが,東大和市や流山市のほか,千葉の睦沢町のような郡部も入っています。千葉の流山市は,「母になるなら流山」と大々的にRPし,駅前保育送迎ステーションなど,子育て環境を充実させていることで知られています。
http://www.nagareyama-city.jp/
睦沢町は,定住促進のための重要戦略として「子育て支援」を位置付け,病児保育利用の助成,子ども医療費の無償化など,経済面の支援を充実させているもようです。
前に日経デュアル誌でも書きましたが,人の動きというのは正直です。水が高きから低きに流れるがごとく,魅力的な地域にはどんどん人が入ってくる。今回出したような指標を絶えずモニタリングして,施策の評価・改善に役立てていくことが重要でしょう。
2014年の実態資料として,上表のデータを提示しておきたいと思います。
http://www.stat.go.jp/data/idou/
地域といっても都道府県単位だろうと思っていたのですが,最近の資料では,区市町村別のも出ているではありませんか。おまけに,5歳刻みの年齢層別の数値も出ています。これを使えば,子育て人口を引き寄せている地域はどこかを,県よりも下りた区市町村レベルで明らかにできます。
私は,首都圏(1都3県)の242区市町村について,25~34歳の転入超過率マップをつくってみました。2014年中の転入人口から転出人口を引いた値を,同年1月1日時点の人口で除した値です。この値がプラスであれば,「転入>転出」,すなわち子育て人口が増えていることを意味します。マイナスの場合は,その逆です。
私が住んでいる東京都多摩市でいうと,2014年中の25~34歳の転入者数は1812人,転出者数は2112人です。同年1月1日時点の25~34歳人口は17570人。よって転入超過率は,以下のようになります。
(1812-2112)/17570 = -1.71%
値はマイナス,転入よりも転出が多い,つまり子育て人口を逃しているわけですか。公園などの緑地面積が首都圏1位で,子育てにはよい地域だと思うのですが,ママ・パパ人口が出て行っているのだなあ。都心から遠いという,地の利の条件ゆえでしょうか。
同じやり方で,1都3県の242区市町村の率を計算してみました。下図は,それを地図にしたものです。色つきは値がプラス,つまり子育て人口が増えていることを意味します。
やっぱり都心ですね。通勤や通学に便利という,地の利の条件が効いているようです。都内特別区の真ん中に濃い色がありますが,千代田区,中央区,港区です。これら3区では,子育て人口の転入超過率,つまり増加率が5%を超えています。
しかし,地理的ロケーションが全てというわけではなく,周辺部にも色つきの地域はあります。これらの中には,子育て支援を充実させることで,子育て人口を引き寄せている努力地域も多いと思いますが,具体的にどこでしょう。算出された転入超過率が高い順に,242区市町村を並べたランキング表をつくってみました。上位10位だけというケチなことは言わず,全てを掲げます。紙と違い,ブログの場合は,スペースは無制限。いいですねえ。
赤字は上位10位ですが,東大和市や流山市のほか,千葉の睦沢町のような郡部も入っています。千葉の流山市は,「母になるなら流山」と大々的にRPし,駅前保育送迎ステーションなど,子育て環境を充実させていることで知られています。
http://www.nagareyama-city.jp/
睦沢町は,定住促進のための重要戦略として「子育て支援」を位置付け,病児保育利用の助成,子ども医療費の無償化など,経済面の支援を充実させているもようです。
前に日経デュアル誌でも書きましたが,人の動きというのは正直です。水が高きから低きに流れるがごとく,魅力的な地域にはどんどん人が入ってくる。今回出したような指標を絶えずモニタリングして,施策の評価・改善に役立てていくことが重要でしょう。
2014年の実態資料として,上表のデータを提示しておきたいと思います。
2015年3月21日土曜日
二次元接触頻度と人格の関連
生身の人間は三次元の空間で生きていますが,各種のメディアが発達して以降,平面の二次元の世界に触れる頻度も高くなっています。マンガ,ゲーム,ネット・・・。とくに若者にあってはそうでしょう。
恋愛にしても,生身の異性に相手にされないものだから,二次元の世界にその対象を求めるオタクもいます。マンガやロールプレイング・ゲームの美少女にのめりこみ,現実の女性に興味を抱かなくなる。ひきこもりアニメ「N・H・Kにようこそ!」の山崎くんなどは,その典型です。
最近,若年男性の草食化が進んでいるといいますが,三次元の世界から二次元の世界に逃避する者が増えていることの表れとも読めます。二次元の美少女は,自分を傷つけることなんて一切言わず,思いのままになりますしね。
さて今回は,こうした二次元の世界との接触頻度が,青少年の人格とどう関連しているのかを明らかにしようと思います。子を持つ父母や教員にとっても,大きな関心事でしょう。この点については,いろいろな調査レポートがありますが,公的調査のデータを加工して浮かび上がらせた結果をご報告します。
用いたのは,国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する実態調査」(2012年度)のデータです。当局にローデータを申請し,それを独自に分析してみました。
この調査は,小学校4~6年生,中学校2年生,高校2年生の児童・生徒を対象としています。思春期の青少年ですが,彼らはどの程度,二次元の世界と接しているか。私は,以下の4つの設問への回答を合成し,それを測る単一のメジャーをつくってみました。
テレビ,ゲーム,ネット,マンガへの接触頻度です。1日あたりの平均時間を5段階で尋ねています。「5」という回答には0点,「1」には1点,「2」には2点,「3」には3点,「4」には4点のスコアを与え,それを合計しました。これによると,対象者の二次元接触レベルは,0~16点のスコアで測られることになります。マックスは,4×4=16点です。私は6点でした。
対象となった小・中・高校生の二次元接触度スコアの分布は,下図のようです。いずれかの設問に無回答のあった者を除いた,17,557人のヒストグラムです。
真ん中あたりに山がある,ノーマル・カーブに近い型です。0~4点の者は,二次元接触レベルの低い「低群」としましょう。5~9点は「中群」,10点以上は「高群」と括ることとします。
この3群で,人格や生活行動の設問への回答がどう違うかを分析するのが主題ですが,その前に,性別・学年別に,3群の分布がどうなっているのかをみておきましょう。
女子よりも男子で低群が少なく,高群が多いですね。やはりといいますか,二次元の世界への接触頻度は,男子のほうが高いようです。
学年別にみると,男女とも中学校2年生で高群が最も多くなっています。これも,さもありなんです。勉強が難しくなるわ,学校でいじめが蔓延るわ,二次元の世界に逃避したくなるというものでしょう。それを親に注意されようものなら,反抗期という年頃もあって,「うるせえ,ババア!」と。
では本題ですが,二次元接触レベルと人格・行動の関連を分析するにあたって,性別や発達段階の影響を除くため,中学校2年生男子のデータを使うこととします。二次元接触レベルが一番高い属性であり,サンプル数でも,低群が451人,中群が1350人,高群が456人と,バランスよく分布しています。
私は,生活(Q5),行動(Q6),自己意識(Q7),および自信(Q8)に関わる42の設問への回答とのクロスをとってみました。4段階の選択肢のうち,最も強い肯定の回答をした生徒の割合を,群ごとに整理しました。分母から無回答を除いて計算した割合です。
下の表は,その一覧表です。「低群>中群>高群」の傾向である場合は「>」,その逆の場合は「<」の不等号を付しています。低群と高群の差が10ポイントを超える場合は,不等号を赤字にし,黄色のマークを施しています。
二次元接触レベルと関連が深い黄色マークの項目に注目すると,高群の生徒は,あいさつができない,夜更かし・朝寝坊が多いなど,行動の歪みが見受けられます。また,イライラや集中力欠如など,情緒の不安定も観察されます。
自己意識をみても,積極性や協調性のなさを自覚している者が多く,他者への共感性や規範遵守志向も相対的に低い。そして締めとして,学校の友人も多くないと。*傾向がクリアーな黄色マークの項目は,折れ線グラフにしました。下記ツイートをご覧ください。
https://twitter.com/tmaita77/status/579103136725389313
https://twitter.com/tmaita77/status/579103136725389313
随所で指摘されていることではありますが,大規模な公的調査のデータでもこういう傾向が浮かび上がるとなると,ぐうの音も出ません。協調性(協力してグループ活動をする)や受容性(人の話をきちんと聞く)などは,他者の干渉を受けることのない二次元界に没頭していると,なかなか育まれない資質です。
二次元の世界というのは,何かとストレスの多い現実界からの逃避の場となりますが,そうした消極面だけでなく,現実の条件にとらわれない自由な発想や社会構想の供給源なり,社会変革のきっかけを提供するという,プラス面の機能をも果たしています。よって適度に触れる分には問題はなく,むしろ好ましいとさえいえますが,それが度を超えると,よからぬ事態が生じます。人格形成の途上にある青少年の場合,とくにその危険が大きく,上表のデータは,その可視的な表れです。
かといって,適度の接触頻度にとどめようにも,周囲にこれだけ各種メディアが氾濫している状況ですので,子どもの主体性・自発性にもっぱら委ねるというわけにはいきますまい。大人の側の意図的な指導が必要です。時間を決める,現実の世界で打ち込めるものを与えるなど,すべきことはいろいろあります。20年も30年も前から繰り返し言われていることですが,高度情報社会の局面に入っている現代日本では,その必要がことに大きくなっているといえるでしょう。
2015年3月19日木曜日
学業成績と非行の関連
川崎の事件の影響で,非行問題への関心が高まっています。久しぶりに非行に関する記事を書きたいなと思い,内閣府「非行原因に関する総合的調査」(2010年3月)の結果表を眺めていたところ,「おや」と思うデータがありましたので,それをご報告しようと思います。
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikou4/html/html/mokuji.html
タイトルにあるように,学業成績と非行の関連についてです。この2つは,カレーライスと福神漬のごとく切っても切れない関係にあり,互いに強く関連しています。「成績不振→非行」という因果経路は,誰もがピンとくるでしょう。学歴社会のわが国では,なおさらのこと。学校での成績が振るわないことは,将来展望閉塞をもたらし,当人を非行へと傾斜せしめるのに十分な要因となり得ます。
それはいつの時代でもそうだろうといわれるかもしれませんが,最近になって,両者の関連が強まっているのではないか。上記の調査から,こういう疑いを持たせるデータが出ています。一般少年と非行少年の,学業成績分布の変化です。
非行が最も多い中学生男子のデータです。非行少年とは,刑法犯・特別法犯で警察に検挙・補導された,12歳以上の犯罪少年・触法少年をさします。上表は,一般少年と非行少年の群に,クラス内での成績を3段階で自己評定させた結果です。*無回答が若干いますので,3つの合計は100%にはなりません。
これをみると,一般少年はこの30年間でさほど変わっていませんが,非行少年のほうは成績不良者が明らかに増えてきています。不良の割合は1977年では47.9%でしたが,2009年では79.0%,8割近くにも達しています。グラフにすると,事態の変化がより分かりやすいでしょう(下図)。
このように,両群で成績分布の乖離が大きくなっていることは,学業成績が振るわない者から非行者が出やすくなっていることを示唆します。
一般少年と非行少年の数値を照らし合わせることで,この点を可視化してみましょう。最初の表によると,2009年の一般少年の成績不良率は35.6%,非行少年のそれは79.0%です。よって,成績不良者からの非行者の出現確率は,79.0/35.6 ≒ 2.219,という数値で測られます。
表の最下段の数値は,この値を百分比で表したものです。非行少年の中での割合を,一般少年のそれで除した値です。それぞれの成績群から,非行少年が出る確率のメジャーとして使えるでしょう。ここでは,非行少年の輩出率と呼ぶことにします。
各群からの非行少年輩出率がどう変わってきたかを,折れ線グラフにしてみました。ジェンダーの差もみるため,女子のデータもつくりました。
成績良好群と普通群からの輩出率は減っていますが,不良群からの輩出率は一貫して上昇してきています。この傾向は,男子よりも女子で顕著です。
ポストモダンとか価値観の多様化とか盛んにいわれるようになり,学業成績に重きを置かない子どもが増えている,という指摘を何かの記事で読んだことがあります。しかし現実は上のとおりで,学業成績は未だに子どもの自我の強いよりどころであり,その善し悪しが非行に影響する経路があるようです。むしろ最近では,それが強まっているとすらいえます。
調査の始点の1977年では,大学進学率は26.4%でしたが,終点の2009年では50.2%にまで高まっています。トロウ流にいうと,高等教育のユニバーサル段階への突入です。大量進学体制はますます強まり,上級学校への非進学という選択肢は取りにくくなっています。こうした状況のなか,成績如何が自尊心はく奪や将来展望不良を媒介にして,非行につながるという因果経路が太くなっているのではないでしょうか。
1月8日の記事でみたように,勉強の得意度と自尊心は強く関連しており,学年を上がるほどそれは明瞭になってきます。しかるに,自尊心や将来展望の基盤は,年齢を上がるにつれて多様化すべきものであり,その逆であってはなりません。青年期にもなれば,興味や関心が分化してくるのは当然であり,子どもがどの道を志向しようとも,頭ごなしに否定されるべきではありますまい。
今回は,学業成績と非行の関連の一端をみましたが,よくいわれるように非行は家庭環境とも強く相関しています。とくに家族形態との関連が重要で,両親ありの世帯と一人親世帯では発生率がどう違うか,という問題がよく取り上げられます。4月6日の日本教育新聞コラムにて,この点のデータを載せる予定です。どうぞ,ご覧ください。
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikou4/html/html/mokuji.html
タイトルにあるように,学業成績と非行の関連についてです。この2つは,カレーライスと福神漬のごとく切っても切れない関係にあり,互いに強く関連しています。「成績不振→非行」という因果経路は,誰もがピンとくるでしょう。学歴社会のわが国では,なおさらのこと。学校での成績が振るわないことは,将来展望閉塞をもたらし,当人を非行へと傾斜せしめるのに十分な要因となり得ます。
それはいつの時代でもそうだろうといわれるかもしれませんが,最近になって,両者の関連が強まっているのではないか。上記の調査から,こういう疑いを持たせるデータが出ています。一般少年と非行少年の,学業成績分布の変化です。
非行が最も多い中学生男子のデータです。非行少年とは,刑法犯・特別法犯で警察に検挙・補導された,12歳以上の犯罪少年・触法少年をさします。上表は,一般少年と非行少年の群に,クラス内での成績を3段階で自己評定させた結果です。*無回答が若干いますので,3つの合計は100%にはなりません。
これをみると,一般少年はこの30年間でさほど変わっていませんが,非行少年のほうは成績不良者が明らかに増えてきています。不良の割合は1977年では47.9%でしたが,2009年では79.0%,8割近くにも達しています。グラフにすると,事態の変化がより分かりやすいでしょう(下図)。
このように,両群で成績分布の乖離が大きくなっていることは,学業成績が振るわない者から非行者が出やすくなっていることを示唆します。
一般少年と非行少年の数値を照らし合わせることで,この点を可視化してみましょう。最初の表によると,2009年の一般少年の成績不良率は35.6%,非行少年のそれは79.0%です。よって,成績不良者からの非行者の出現確率は,79.0/35.6 ≒ 2.219,という数値で測られます。
表の最下段の数値は,この値を百分比で表したものです。非行少年の中での割合を,一般少年のそれで除した値です。それぞれの成績群から,非行少年が出る確率のメジャーとして使えるでしょう。ここでは,非行少年の輩出率と呼ぶことにします。
各群からの非行少年輩出率がどう変わってきたかを,折れ線グラフにしてみました。ジェンダーの差もみるため,女子のデータもつくりました。
成績良好群と普通群からの輩出率は減っていますが,不良群からの輩出率は一貫して上昇してきています。この傾向は,男子よりも女子で顕著です。
ポストモダンとか価値観の多様化とか盛んにいわれるようになり,学業成績に重きを置かない子どもが増えている,という指摘を何かの記事で読んだことがあります。しかし現実は上のとおりで,学業成績は未だに子どもの自我の強いよりどころであり,その善し悪しが非行に影響する経路があるようです。むしろ最近では,それが強まっているとすらいえます。
調査の始点の1977年では,大学進学率は26.4%でしたが,終点の2009年では50.2%にまで高まっています。トロウ流にいうと,高等教育のユニバーサル段階への突入です。大量進学体制はますます強まり,上級学校への非進学という選択肢は取りにくくなっています。こうした状況のなか,成績如何が自尊心はく奪や将来展望不良を媒介にして,非行につながるという因果経路が太くなっているのではないでしょうか。
1月8日の記事でみたように,勉強の得意度と自尊心は強く関連しており,学年を上がるほどそれは明瞭になってきます。しかるに,自尊心や将来展望の基盤は,年齢を上がるにつれて多様化すべきものであり,その逆であってはなりません。青年期にもなれば,興味や関心が分化してくるのは当然であり,子どもがどの道を志向しようとも,頭ごなしに否定されるべきではありますまい。
今回は,学業成績と非行の関連の一端をみましたが,よくいわれるように非行は家庭環境とも強く相関しています。とくに家族形態との関連が重要で,両親ありの世帯と一人親世帯では発生率がどう違うか,という問題がよく取り上げられます。4月6日の日本教育新聞コラムにて,この点のデータを載せる予定です。どうぞ,ご覧ください。
2015年3月16日月曜日
校長・学長の女性比・女性輩出率
昨日,ある方からのリクエストで,小学校校長の女性比率マップをツイッターで発信したところ,結構RTがありました。こういう基本データが意外に知られていないのかな,と思った次第です。
考えてみれば,学校のトップの女性割合がどれほどかに関心をお持ちの方も多いでしょう。今回は,各学校段階の長の女性比率をみてみようと思います。また,過去との比較も交えることにしましょう。
なお長の女性比は,全体の女性比が高まれば,それに比例して自ずと高まります。そこであと一つのジェンダー指標として,女性教員から長が出る確率(輩出率)も計算してみます。巷では100人に1人とか1000人に1人とかいわれますが,どういう値が出てくるでしょうか。
資料は,文科省の「学校基本調査」です。小学校,中学校,高校,大学について,次の3つの数値を採取しました。(a)校長・学長数,(b)女性の校長・学長数,(c)女性の全教員数,です。bをaで除すことで,校長・学長の女性比が出てきます。bをcで割ることで,女性からのトップ輩出率が明らかになります。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
私は,1991年度と最新の2014年度の値を計算しました。各年5月時点の本務教員数をもとにしています。下の表は,結果を整理したものです。
「失われた20年」というように,90年代以降の時期は影の面が強調されがちですが,光の面もあります。男女共同参画に向けた施策が立て続けに打ち出され,施行されたことです。
その成果でしょうか。学校のトップの女性比は,以前と比したら増えてきています。小学校校長の女性比は,4.9%から19.1%へと10ポイント以上も伸びました。ただ中等教育より上では,未だに1ケタであり,絶対水準としてはまだまだ低いことが知られます。トップの女性比が一番低いのは中学校なんだな。あと,大学が中高よりも高いんだ。これも発見。
これは全体の女性割合を反映しますが,視点を変えて,女性からトップが出る確率はどうでしょう。こちらも,90年代初頭に比べて増えています(大学は別)。現在では,下の段階ほど輩出率が高いという構造です。女性からのトップ輩出率は,小学校で68人に1人,中学校で198人に1人,高校で208人に1人,大学で599人に1人なり。
ちなみに男性では,順に10人に1人,16人に1人,37人に1人,206人に1人です。トップになれる確率は,やはり男性のほうが格段に高いようです。
次に,都道府県別の値をみてみましょう。人数的に多い小学校のデータを出してみました。下表は,2014年度の一覧表です。最高値に黄色,最低値に青色のマークをしています。上位5位の数字は赤色にしました。
2つの指標はだいたい相関していますが,校長の女性比が最も高く,かつその地位が女性に最も開かれているのは,北陸の石川です。隣接する富山と福井も高い値。北陸はスゴイですねえ。一方,最低は山梨となっています。私の郷里の鹿児島も,あまり高くないな。女性比は46位,輩出率は39位か・・・。
最後に,校長の女性比(b/a)を地図にしておきます。25%以上,20%以上25%未満,15%以上20%未満,15%未満の4階級を設け,47都道府県を塗り分けてみました。
昨日,ツイッターで発信した図と同じものですが,25%(4分の1)を超えるのは,神奈川,富山,石川,福井,そして広島です。北陸3県は,ヘッドのジェンダーバランスが最もいいようですが,学力テストや体力テストでの高いパフォーマンスの一因は,こういうところにあったりして。校長会など,重要事項を審議する場において,女性の視点からの意見も幅を利かすでしょうし。
オリンピックが開かれる2020年,今から5年後には,マックスの県では50%を超えるか,全国値もせめて25%(4分の1)は超えるか。注目されるところです。
学校経営の善し悪しは,校長のリーダーシップに規定される面が大です。それだけに,校長の社会的属性の解明は,教師の社会学的研究の重要なテーマであるといえるでしょう。
考えてみれば,学校のトップの女性割合がどれほどかに関心をお持ちの方も多いでしょう。今回は,各学校段階の長の女性比率をみてみようと思います。また,過去との比較も交えることにしましょう。
なお長の女性比は,全体の女性比が高まれば,それに比例して自ずと高まります。そこであと一つのジェンダー指標として,女性教員から長が出る確率(輩出率)も計算してみます。巷では100人に1人とか1000人に1人とかいわれますが,どういう値が出てくるでしょうか。
資料は,文科省の「学校基本調査」です。小学校,中学校,高校,大学について,次の3つの数値を採取しました。(a)校長・学長数,(b)女性の校長・学長数,(c)女性の全教員数,です。bをaで除すことで,校長・学長の女性比が出てきます。bをcで割ることで,女性からのトップ輩出率が明らかになります。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
私は,1991年度と最新の2014年度の値を計算しました。各年5月時点の本務教員数をもとにしています。下の表は,結果を整理したものです。
「失われた20年」というように,90年代以降の時期は影の面が強調されがちですが,光の面もあります。男女共同参画に向けた施策が立て続けに打ち出され,施行されたことです。
その成果でしょうか。学校のトップの女性比は,以前と比したら増えてきています。小学校校長の女性比は,4.9%から19.1%へと10ポイント以上も伸びました。ただ中等教育より上では,未だに1ケタであり,絶対水準としてはまだまだ低いことが知られます。トップの女性比が一番低いのは中学校なんだな。あと,大学が中高よりも高いんだ。これも発見。
これは全体の女性割合を反映しますが,視点を変えて,女性からトップが出る確率はどうでしょう。こちらも,90年代初頭に比べて増えています(大学は別)。現在では,下の段階ほど輩出率が高いという構造です。女性からのトップ輩出率は,小学校で68人に1人,中学校で198人に1人,高校で208人に1人,大学で599人に1人なり。
ちなみに男性では,順に10人に1人,16人に1人,37人に1人,206人に1人です。トップになれる確率は,やはり男性のほうが格段に高いようです。
次に,都道府県別の値をみてみましょう。人数的に多い小学校のデータを出してみました。下表は,2014年度の一覧表です。最高値に黄色,最低値に青色のマークをしています。上位5位の数字は赤色にしました。
2つの指標はだいたい相関していますが,校長の女性比が最も高く,かつその地位が女性に最も開かれているのは,北陸の石川です。隣接する富山と福井も高い値。北陸はスゴイですねえ。一方,最低は山梨となっています。私の郷里の鹿児島も,あまり高くないな。女性比は46位,輩出率は39位か・・・。
最後に,校長の女性比(b/a)を地図にしておきます。25%以上,20%以上25%未満,15%以上20%未満,15%未満の4階級を設け,47都道府県を塗り分けてみました。
昨日,ツイッターで発信した図と同じものですが,25%(4分の1)を超えるのは,神奈川,富山,石川,福井,そして広島です。北陸3県は,ヘッドのジェンダーバランスが最もいいようですが,学力テストや体力テストでの高いパフォーマンスの一因は,こういうところにあったりして。校長会など,重要事項を審議する場において,女性の視点からの意見も幅を利かすでしょうし。
オリンピックが開かれる2020年,今から5年後には,マックスの県では50%を超えるか,全国値もせめて25%(4分の1)は超えるか。注目されるところです。
学校経営の善し悪しは,校長のリーダーシップに規定される面が大です。それだけに,校長の社会的属性の解明は,教師の社会学的研究の重要なテーマであるといえるでしょう。
2015年3月14日土曜日
進学先は首都圏か関西圏か
北陸新幹線が開通したことにより,北陸地方と東京がより短時間で結ばれることになりました。結構なことですが,関西圏の人たちは心境複雑のようで,大阪府の松井知事は「東京と北陸が新幹線でつながるとこちらが不利」と漏らしています。
http://news.livedoor.com/article/detail/9888447/
しかし,より危機感を抱いているのは,ほかならぬ大学関係者かもしれません。大学進学段階では地域移動が激しくなりますが,北陸地方といえば,首都圏と関西圏が常に拮抗しているところ。関西の大学にすれば,入学者の供給源を奪われることにもなりかねません。
これからどうなるかは,神のみが知るところですが,ちょっと現状分析をしてみましょう。文科省の「学校基本調査」から,各県の高校出身の大学進学者が,どこの大学に進学したかを知ることができます。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
たとえば,2014年春の石川県の高校出身の大学入学者は5,330人です。この中には,過年度卒業生,つまり浪人経由者も含みます。この5,330人がどの県の大学に入ったのか,すなわち進学先の内訳を明らかにできるわけです。
私は,自県,首都圏(埼玉,千葉,東京,神奈川),関西圏(京都,大阪,兵庫,奈良),その他という4カテゴリーを設け,その組成を調べました,下図は,北陸新幹線のターミナルがある石川県と,わが郷里の鹿児島県の円グラフです。2014年春の統計です。
自県内(地元)のシェアは,石川のほうが大きくなっています。しかしここでみたいのは,黄色枠で囲った部分です。首都圏と関西圏のどっちが強いかですが,石川では僅差で関西圏,鹿児島では首都圏が圧倒的に勝っています。
まあ鹿児島から出ようという場合,大阪も東京も一緒なんですよ。それなら首都へ一気に「高跳び」と。この傾向は昔から続いているようで,70年代の「サンデー毎日」には,鹿児島県人の東京志向について述べた記事が載っています(具体的は号は忘れましたが)。
以上は2県のデータですが,他の県はどうでしょう。私は,首都圏と関西圏の8都府県を除く39道県について,同じデータをつくりました。下の表は,内訳の一覧表です。百分比ですので,全部足したら100になります。
両端の北海道と沖縄は,地元の比重が高いですね。本州と海で隔てられているという地理的条件もあるでしょう。
さて,注目ポイントは「首都圏か関西圏か」ですが,高いほうの数値を赤色にしています。見事に地理的ロケーションの影響が出ていて,東北と中部地方は首都圏派,中国・四国地方は関西派となっています。さらに西の九州は,軒並み首都圏派という次第です。
黄色マークは北陸3県ですが,富山と福井の間の石川は拮抗していますねえ。首都圏が14.4%,関西が16.2%です。2014年春は後者のほうがちょっと多くなっていますが,年による変動もあるでしょう。金沢から東京までの新幹線が開通したことにより,この構造がどう変わるか。目下,首都圏の有利度が高くなるであろう,という予測が支配的です。
最後に,首都圏派と関西派の分布を地図にしておきましょう。前者の県には水色,後者の県にはピンク色をつけてみました。
地理的ロケーションによる色分かれがあまりに明瞭ですが,北陸新幹線の開通により,北陸のゾーンも水色になるのでしょうか。
話が変わりますが,私としては,九州人の東京志向が可視化されたことに,ちょっとした爽快感を抱いています。「やはり」って感じです。問題は,中央に出て行った人間がどれほどUターンするかですが,この点は簡単に明らかにできるようで,それができない。大卒者の就職先の県別内訳も,「学校基本調査」で集計してくれたらなと思います。地方創生が掲げられている現在,まずもって必要不可欠なデータでしょう。
3月も半ばになりました。「風邪をひいた」「花粉症にやられた」というツイートが目につきます。季節の変わり目,かつ年度末の多忙な時期,体調を崩されませぬよう。
http://news.livedoor.com/article/detail/9888447/
しかし,より危機感を抱いているのは,ほかならぬ大学関係者かもしれません。大学進学段階では地域移動が激しくなりますが,北陸地方といえば,首都圏と関西圏が常に拮抗しているところ。関西の大学にすれば,入学者の供給源を奪われることにもなりかねません。
これからどうなるかは,神のみが知るところですが,ちょっと現状分析をしてみましょう。文科省の「学校基本調査」から,各県の高校出身の大学進学者が,どこの大学に進学したかを知ることができます。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
たとえば,2014年春の石川県の高校出身の大学入学者は5,330人です。この中には,過年度卒業生,つまり浪人経由者も含みます。この5,330人がどの県の大学に入ったのか,すなわち進学先の内訳を明らかにできるわけです。
私は,自県,首都圏(埼玉,千葉,東京,神奈川),関西圏(京都,大阪,兵庫,奈良),その他という4カテゴリーを設け,その組成を調べました,下図は,北陸新幹線のターミナルがある石川県と,わが郷里の鹿児島県の円グラフです。2014年春の統計です。
自県内(地元)のシェアは,石川のほうが大きくなっています。しかしここでみたいのは,黄色枠で囲った部分です。首都圏と関西圏のどっちが強いかですが,石川では僅差で関西圏,鹿児島では首都圏が圧倒的に勝っています。
まあ鹿児島から出ようという場合,大阪も東京も一緒なんですよ。それなら首都へ一気に「高跳び」と。この傾向は昔から続いているようで,70年代の「サンデー毎日」には,鹿児島県人の東京志向について述べた記事が載っています(具体的は号は忘れましたが)。
以上は2県のデータですが,他の県はどうでしょう。私は,首都圏と関西圏の8都府県を除く39道県について,同じデータをつくりました。下の表は,内訳の一覧表です。百分比ですので,全部足したら100になります。
両端の北海道と沖縄は,地元の比重が高いですね。本州と海で隔てられているという地理的条件もあるでしょう。
さて,注目ポイントは「首都圏か関西圏か」ですが,高いほうの数値を赤色にしています。見事に地理的ロケーションの影響が出ていて,東北と中部地方は首都圏派,中国・四国地方は関西派となっています。さらに西の九州は,軒並み首都圏派という次第です。
黄色マークは北陸3県ですが,富山と福井の間の石川は拮抗していますねえ。首都圏が14.4%,関西が16.2%です。2014年春は後者のほうがちょっと多くなっていますが,年による変動もあるでしょう。金沢から東京までの新幹線が開通したことにより,この構造がどう変わるか。目下,首都圏の有利度が高くなるであろう,という予測が支配的です。
最後に,首都圏派と関西派の分布を地図にしておきましょう。前者の県には水色,後者の県にはピンク色をつけてみました。
地理的ロケーションによる色分かれがあまりに明瞭ですが,北陸新幹線の開通により,北陸のゾーンも水色になるのでしょうか。
話が変わりますが,私としては,九州人の東京志向が可視化されたことに,ちょっとした爽快感を抱いています。「やはり」って感じです。問題は,中央に出て行った人間がどれほどUターンするかですが,この点は簡単に明らかにできるようで,それができない。大卒者の就職先の県別内訳も,「学校基本調査」で集計してくれたらなと思います。地方創生が掲げられている現在,まずもって必要不可欠なデータでしょう。
3月も半ばになりました。「風邪をひいた」「花粉症にやられた」というツイートが目につきます。季節の変わり目,かつ年度末の多忙な時期,体調を崩されませぬよう。
2015年3月12日木曜日
年収と子どもの育ちの関連
3月1日の記事にて,首都圏214区市町村の平均世帯年収を出したのですが,教育社会学をやっている人間として,この指標が各地域の子どもの育ちとどう関連しているかを知りたくなります。
たとえば,学力との関連はどうでしょう。また,学力と並んで能力の重要な要素である体力との相関はどうか。さらには,病気にかかる頻度との関連は如何。これらを統計で明らかにすることは,学力格差,体力格差,健康格差という現象を「見える化」することと同義です。
個々の子どもの間で学力や体力に差があるのは当たり前ですが,それが当人の努力ではどうにもならない外的条件と結びついたものであるならば「格差」ということになり,人為的な働きかけによって是正すべき性質のものになります。ここでいう外的条件として,家庭環境は最たるものです。
私は,東京都内23区のデータを使って,この問題に接近することとしました。大都市という基底的特性を同じくするとともに,それぞれの区ごとで,社会階層による住み分けが明瞭であるからです(橋本健二「階級都市」ちくま新書,2011年)。不遜な言い方ですが,子どもの育ちの社会的規定性を解明するに当たって,最高のフィールドであるといえましょう。
では,順にみていきましょう。まずは学力との関連です。都教委が毎年実施している「児童・生徒の学力向上を図るための調査」(2013年度)から,公立小学校5年生の算数の平均正答率を区別に収集し,各区の平均世帯年収との相関をとってみました。年収は,2013年度の「住宅土地統計」から計算したものです。計算方法については,3月1日の記事をご覧ください。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr131128b.htm
予想通りといいますか,明瞭なプラスの相関です。年収が高い区ほど,算数の正答率が高い傾向にあります。相関係数は+0.7569であり,1%水準で有意です。
通塾や参考書購入の費用を賄えるか,落ち着いて勉強できる環境があるか,というような要因が想起されます。また,家庭の文化的環境と学校のそれとの距離という問題もあるでしょう(ブルデュー)。
なお,個人単位のデータでみても,子どもの学力は家庭の年収と強く相関しています。2013年度の文科省「全国学力・学習状況調査」では,対象児童・生徒の家庭環境も調査されたのですが,お茶の水女子大学グループの特別分析の結果,年収が高い群ほど教科の正答率が高い傾向が露わになりました。上記の地域データとつながっています。
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/04/blog-post_3.html
次に,年収と体力の相関関係です。都教委は,都内の公立学校を対象に,毎年体力テストも行っています。複数の種目の合計点をもとに,A~Eの5段階の総合評価をつける形式です。私は,公立小学校4年生男子のうち,AもしくはBの評価を得た児童が何%いるかを区別に計算しました。10歳という代表的な発達段階である,この学年に注目した次第です。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/pickup/seisaku_sport-6.htm
さて,体力テストで良好な評価を得た児童の割合は,地域の平均年収とどう関連しているか。下図は,先ほどと同じ形の相関図です。
ほう,体力のほうも地域の平均年収と強く相関しています。相関係数は+0.7482であり,学力と同じくらい,社会的な規定を被っています。
体力にしても,学校外教育への投資がモノをいう面があるかと思いますが,スポーツの習い事をさせるにしても,それなりの費用がかかります。当然,通塾率と同じく階層差があり,水泳の習い事をしている12歳児の割合は,年収200未満の家庭では4.3%ですが,年収800万以上では32.6%にもなります。テニスに至っては階層差がもっと顕著で,順に3.8%,40.1%という次第です(厚労省「21世紀出生児縦断調査」第12回,2013年)。上図の傾向は,こういう差の反映ともいえるでしょう。
また,最近は子どもを狙った犯罪が多発しているので,子どもだけでの外遊びを禁止している学校もあるのだとか(ホントかどうかは知りませんが)。サンマ(時間,空間,仲間)の減少により,子どもの自発的な外遊びが減ってきていることも考えると,子どもが体を動かす機会(場)がおカネで買われる時代になっているのかもしれません。こうみると,上図に描かれている年収と体力の相関も分かろうというものです。
学校教育法第137条では,学校の施設を「社会教育その他公共のため」に利用させることができると定めていますが,こうした学校開放をもっと進めるべきかと思います。
最後に,健康の指標との相関です。私は,年少児童の虫歯率と肥満率を区別に計算しました。健康診断を受けた公立小学校1・2年生のうち,未処置の虫歯がある者,学校医によって肥満傾向と判定された児童の割合です。資料は,都教委の「東京都の学校保健統計」(2013年度)です。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/buka/gakumu/kenkou/karada/shcp.html
これらの指標は,各区の世帯年収とどう相関しているか。左は「年収×虫歯」,右は「年収×肥満」の相関図です。肥満率のほうは,単位が‰(千人あたり)であることに注意してください。
学力や体力とはうって変って,右下がりの負の相関です。貧困な区ほど,虫歯や肥満の子どもが多い。低学年の虫歯率と年収の相関係数は,-0.8204と絶対値が大変高くなっています。
貧困家庭は子どもを歯医者にやれないという事情がまっさきに思い浮かびますが,都内23区では,義務教育修了までの医療費は無料ですので,この面を強調するのは憚られます。それよりも,子どもの健康に対する保護者の関心,歯磨きなどの生活習慣の躾の差とみられます。一人親世帯にあっては,親が仕事で忙しくて子を医者に連れて行けない,ということもあるでしょう。
肥満率のほうも,地域住民の富裕度と強く関連しています。アメリカでは,貧困と肥満の関連はよくいわれます。貧困層は安価で高カロリーのジャンクフードに依存しがちであるため,肥満になりやすいと。海を隔てた大国の話ですが,わが国でも,似たような状況がないとは限りません。母子世帯の貧困を特集した番組で,来る日も来る日も,100円ハンバーガーやポテトチップを夕食代わりにする子どもの姿を見たときはショックでした。
子どもの相対貧困率は15.7%,一人親世帯に限ると50.7%でしたっけ(2010年)。今述べたような子どもがネグリジブル・スモールであると,誰が断言できるでしょう。
学校に上がって間もない低学年児童のデータですが,学校における食育の重要性が強調されねばなりません。また,学校で行われる保健指導は,場合によっては保護者をも対象とすると規定されていますが(学校保健安全法第9条),こうした機会を通じて,保護者の意識を高めていくことも求められます。言わずもがな,子ども,とりわけ年少の子どもは,生活の大半を家庭で過ごすわけですから。
以上,細かい地域別の年収を出したということで,それが子どもの育ちとどう関連しているかを明らかにしてみました。東京都内23区という局地のデータですが,家庭環境とリンクした学力格差,体力格差,さらには健康格差が厳としてある可能性が示唆されます。
西の大阪など,他の地域での追試もしたいところですが,この手の作業ができるのは,情報公開に積極的な東京だけです。他の自治体も,ぜひ追随していただきたいと思います。
たとえば,学力との関連はどうでしょう。また,学力と並んで能力の重要な要素である体力との相関はどうか。さらには,病気にかかる頻度との関連は如何。これらを統計で明らかにすることは,学力格差,体力格差,健康格差という現象を「見える化」することと同義です。
個々の子どもの間で学力や体力に差があるのは当たり前ですが,それが当人の努力ではどうにもならない外的条件と結びついたものであるならば「格差」ということになり,人為的な働きかけによって是正すべき性質のものになります。ここでいう外的条件として,家庭環境は最たるものです。
私は,東京都内23区のデータを使って,この問題に接近することとしました。大都市という基底的特性を同じくするとともに,それぞれの区ごとで,社会階層による住み分けが明瞭であるからです(橋本健二「階級都市」ちくま新書,2011年)。不遜な言い方ですが,子どもの育ちの社会的規定性を解明するに当たって,最高のフィールドであるといえましょう。
では,順にみていきましょう。まずは学力との関連です。都教委が毎年実施している「児童・生徒の学力向上を図るための調査」(2013年度)から,公立小学校5年生の算数の平均正答率を区別に収集し,各区の平均世帯年収との相関をとってみました。年収は,2013年度の「住宅土地統計」から計算したものです。計算方法については,3月1日の記事をご覧ください。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr131128b.htm
予想通りといいますか,明瞭なプラスの相関です。年収が高い区ほど,算数の正答率が高い傾向にあります。相関係数は+0.7569であり,1%水準で有意です。
通塾や参考書購入の費用を賄えるか,落ち着いて勉強できる環境があるか,というような要因が想起されます。また,家庭の文化的環境と学校のそれとの距離という問題もあるでしょう(ブルデュー)。
なお,個人単位のデータでみても,子どもの学力は家庭の年収と強く相関しています。2013年度の文科省「全国学力・学習状況調査」では,対象児童・生徒の家庭環境も調査されたのですが,お茶の水女子大学グループの特別分析の結果,年収が高い群ほど教科の正答率が高い傾向が露わになりました。上記の地域データとつながっています。
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/04/blog-post_3.html
次に,年収と体力の相関関係です。都教委は,都内の公立学校を対象に,毎年体力テストも行っています。複数の種目の合計点をもとに,A~Eの5段階の総合評価をつける形式です。私は,公立小学校4年生男子のうち,AもしくはBの評価を得た児童が何%いるかを区別に計算しました。10歳という代表的な発達段階である,この学年に注目した次第です。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/pickup/seisaku_sport-6.htm
さて,体力テストで良好な評価を得た児童の割合は,地域の平均年収とどう関連しているか。下図は,先ほどと同じ形の相関図です。
ほう,体力のほうも地域の平均年収と強く相関しています。相関係数は+0.7482であり,学力と同じくらい,社会的な規定を被っています。
体力にしても,学校外教育への投資がモノをいう面があるかと思いますが,スポーツの習い事をさせるにしても,それなりの費用がかかります。当然,通塾率と同じく階層差があり,水泳の習い事をしている12歳児の割合は,年収200未満の家庭では4.3%ですが,年収800万以上では32.6%にもなります。テニスに至っては階層差がもっと顕著で,順に3.8%,40.1%という次第です(厚労省「21世紀出生児縦断調査」第12回,2013年)。上図の傾向は,こういう差の反映ともいえるでしょう。
また,最近は子どもを狙った犯罪が多発しているので,子どもだけでの外遊びを禁止している学校もあるのだとか(ホントかどうかは知りませんが)。サンマ(時間,空間,仲間)の減少により,子どもの自発的な外遊びが減ってきていることも考えると,子どもが体を動かす機会(場)がおカネで買われる時代になっているのかもしれません。こうみると,上図に描かれている年収と体力の相関も分かろうというものです。
学校教育法第137条では,学校の施設を「社会教育その他公共のため」に利用させることができると定めていますが,こうした学校開放をもっと進めるべきかと思います。
最後に,健康の指標との相関です。私は,年少児童の虫歯率と肥満率を区別に計算しました。健康診断を受けた公立小学校1・2年生のうち,未処置の虫歯がある者,学校医によって肥満傾向と判定された児童の割合です。資料は,都教委の「東京都の学校保健統計」(2013年度)です。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/buka/gakumu/kenkou/karada/shcp.html
これらの指標は,各区の世帯年収とどう相関しているか。左は「年収×虫歯」,右は「年収×肥満」の相関図です。肥満率のほうは,単位が‰(千人あたり)であることに注意してください。
学力や体力とはうって変って,右下がりの負の相関です。貧困な区ほど,虫歯や肥満の子どもが多い。低学年の虫歯率と年収の相関係数は,-0.8204と絶対値が大変高くなっています。
貧困家庭は子どもを歯医者にやれないという事情がまっさきに思い浮かびますが,都内23区では,義務教育修了までの医療費は無料ですので,この面を強調するのは憚られます。それよりも,子どもの健康に対する保護者の関心,歯磨きなどの生活習慣の躾の差とみられます。一人親世帯にあっては,親が仕事で忙しくて子を医者に連れて行けない,ということもあるでしょう。
肥満率のほうも,地域住民の富裕度と強く関連しています。アメリカでは,貧困と肥満の関連はよくいわれます。貧困層は安価で高カロリーのジャンクフードに依存しがちであるため,肥満になりやすいと。海を隔てた大国の話ですが,わが国でも,似たような状況がないとは限りません。母子世帯の貧困を特集した番組で,来る日も来る日も,100円ハンバーガーやポテトチップを夕食代わりにする子どもの姿を見たときはショックでした。
子どもの相対貧困率は15.7%,一人親世帯に限ると50.7%でしたっけ(2010年)。今述べたような子どもがネグリジブル・スモールであると,誰が断言できるでしょう。
学校に上がって間もない低学年児童のデータですが,学校における食育の重要性が強調されねばなりません。また,学校で行われる保健指導は,場合によっては保護者をも対象とすると規定されていますが(学校保健安全法第9条),こうした機会を通じて,保護者の意識を高めていくことも求められます。言わずもがな,子ども,とりわけ年少の子どもは,生活の大半を家庭で過ごすわけですから。
以上,細かい地域別の年収を出したということで,それが子どもの育ちとどう関連しているかを明らかにしてみました。東京都内23区という局地のデータですが,家庭環境とリンクした学力格差,体力格差,さらには健康格差が厳としてある可能性が示唆されます。
西の大阪など,他の地域での追試もしたいところですが,この手の作業ができるのは,情報公開に積極的な東京だけです。他の自治体も,ぜひ追随していただきたいと思います。
2015年3月10日火曜日
首都圏の空き家率地図(2013年)
総務省「住宅土地統計」(2013年)の地域統計分析,第3弾です。今回は,総住宅数に占める空き家の割合をみてみましょう。この資料によると,2013年10月時点の全国の空き家数は6063万戸であり,総住宅数の13.5%を占めます。人が住めるように建てられた住宅のおよそ7件に1件が空家であるわけです。
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/kekka.htm
なお,一口に空き家といってもいくつかの種類があり,統計では4つのカテゴリーが設けられています。二次住宅,賃貸用住宅,売却用住宅,その他です。下の図は,これらの比重を面積図で表したものです。4つの比率の総和は,上記の13.5%と等しくなります。
最も多いのは,賃貸に出されているが借り手がつかない賃貸住宅です。別荘などの二次住宅は0.7%,売却住宅は0.5%と少数派。残りの5.2%は,これらのいずれにも該当しない「その他」です。
賃貸住宅や売却住宅は,定期的に業者によるメンテナンスが入るでしょう。二次住宅にしても,たまには寝泊まりに来る人間がいるでしょう。しかし,その他の空き住宅の中には,持ち主の放置プレイにより,荒れ放題になっている住宅も少なくないとみられます。朽ちた屋根瓦が落ちて通行人に当たる,不審な人物が出入りするようになるなど,地域生活の安全を脅かす要因にもなり得ます。いわゆる,空き家問題です。
言わずもがな,これらの空き家の割合(空き家率)は,地域によってかなり違っています。都道府県別にみると,最低の9.4%(宮城)から最高の22.0%(山梨)までのレインヂです。*山梨の空き家の多くは二次住宅(別荘)。
しかるに,それよりも下りた区市町村のレベルでみると,値はもっと広く分布しています。首都圏(1都3県)の214区市町村の空き家率を計算すると,3.4%から36.8%までの開きがあります。このデータをマップにすると,下図のようになります。最新の首都圏の空き家率地図をご覧ください。
濃い色は15%を超える地域ですが,周辺部に多くなっています。千葉の東部や南部が不気味な色で染まっていますが,海沿いのリゾート地ですので,別荘などの二次住宅も多いと思われます。
大よその生態学的構造は上記のとおりですが,それぞれの区市町村の空き家率はどうか。例によって,214区市町村の値を高い順に並べたランキング表を提示いたします。
赤色は20%を超える地域ですが,多くが千葉県内の周辺の市町です。トップは勝浦市の36.8%ですが,この市の空き家の半分ほどは別荘などの二次住宅です。しかし,3位のいすみ市は,賃貸・売却でも二次住宅でもない「その他」の空き家が最多となっています(空き家全体の57%)。
私が住んでいる多摩市は9.7%で,低い部類なんだな。散歩で目を凝らしてみると,空き家と思しき建物を結構見かけるのですが。ちなみに,私が住んでいる部屋の隣も空き家です。こちらは,賃貸に出されているタイプで,不動産屋さんが定期的に見回りにきています。駅からバスで15分ほどかかる丘の上,おまけに周囲に何もないときていますから,借り手がなかなかつかないのかなあ。でも家賃安いし,見晴らしはいいし,私は気に入っています。
話がそれましたが,首都圏214区市町村の空き家率のデータの紹介でした。資料としてお使いいただければと思います。
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/kekka.htm
なお,一口に空き家といってもいくつかの種類があり,統計では4つのカテゴリーが設けられています。二次住宅,賃貸用住宅,売却用住宅,その他です。下の図は,これらの比重を面積図で表したものです。4つの比率の総和は,上記の13.5%と等しくなります。
最も多いのは,賃貸に出されているが借り手がつかない賃貸住宅です。別荘などの二次住宅は0.7%,売却住宅は0.5%と少数派。残りの5.2%は,これらのいずれにも該当しない「その他」です。
賃貸住宅や売却住宅は,定期的に業者によるメンテナンスが入るでしょう。二次住宅にしても,たまには寝泊まりに来る人間がいるでしょう。しかし,その他の空き住宅の中には,持ち主の放置プレイにより,荒れ放題になっている住宅も少なくないとみられます。朽ちた屋根瓦が落ちて通行人に当たる,不審な人物が出入りするようになるなど,地域生活の安全を脅かす要因にもなり得ます。いわゆる,空き家問題です。
言わずもがな,これらの空き家の割合(空き家率)は,地域によってかなり違っています。都道府県別にみると,最低の9.4%(宮城)から最高の22.0%(山梨)までのレインヂです。*山梨の空き家の多くは二次住宅(別荘)。
しかるに,それよりも下りた区市町村のレベルでみると,値はもっと広く分布しています。首都圏(1都3県)の214区市町村の空き家率を計算すると,3.4%から36.8%までの開きがあります。このデータをマップにすると,下図のようになります。最新の首都圏の空き家率地図をご覧ください。
濃い色は15%を超える地域ですが,周辺部に多くなっています。千葉の東部や南部が不気味な色で染まっていますが,海沿いのリゾート地ですので,別荘などの二次住宅も多いと思われます。
大よその生態学的構造は上記のとおりですが,それぞれの区市町村の空き家率はどうか。例によって,214区市町村の値を高い順に並べたランキング表を提示いたします。
赤色は20%を超える地域ですが,多くが千葉県内の周辺の市町です。トップは勝浦市の36.8%ですが,この市の空き家の半分ほどは別荘などの二次住宅です。しかし,3位のいすみ市は,賃貸・売却でも二次住宅でもない「その他」の空き家が最多となっています(空き家全体の57%)。
私が住んでいる多摩市は9.7%で,低い部類なんだな。散歩で目を凝らしてみると,空き家と思しき建物を結構見かけるのですが。ちなみに,私が住んでいる部屋の隣も空き家です。こちらは,賃貸に出されているタイプで,不動産屋さんが定期的に見回りにきています。駅からバスで15分ほどかかる丘の上,おまけに周囲に何もないときていますから,借り手がなかなかつかないのかなあ。でも家賃安いし,見晴らしはいいし,私は気に入っています。
話がそれましたが,首都圏214区市町村の空き家率のデータの紹介でした。資料としてお使いいただければと思います。
2015年3月8日日曜日
兄弟地位による人格比較
人間は社会の中で何らかの地位を占め,それに応じた役割を遂行するのですが,そのことが継続することで,当該個人に固有の行動性向,いわゆる人格が形成されるようになります。
これは家族という小社会についてもいえることでして,父親,母親,そして子どもにあっては兄姉・弟妹といった地位があり,それぞれに対し明示的・非明示的な役割期待が向けられ,各人はそれに沿った行為を遂行します。この違いは,子どもの人格形成に際して少なからぬ影響を及ぼすでしょう。
長子は下の面倒をみ指導もしなければならないことから,独立的・攻撃的な人格ができやすいといわれます。逆に末子は上に従属・依存する位置にあることから,依存的・甘えん坊的な人格になりやすい。上も下もいる中子は双方の「いいとこ取り」をできる位置にあるので,こすっからい,振舞い上手の向きに傾くと。
書店で立ち読みした育児書にこんなことが書かれていましたが,データでみるとどうなのでしょう。厚労省「21世紀出生児縦断調査(2001年出生児)」では,3歳児(第4回調査,2004年)と9歳児(第9回調査,2010年)の父母に,当該の子の人格について尋ねています。それを,兄弟構成とクロスさせた集計表も公表されています。下記サイトの表101です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001085569
私は,兄弟内の地位を自覚し,ある程度人格も固まりつつある9歳児のデータを使うこととしました。上記の調査は,2001年に生まれた子どもの追跡調査ですが,2010年,すなわち9歳の対象児童数は以下のようです。兄弟構成別の数を示します。
一人っ子(兄弟なし) ・・・ 4705人
長子(弟妹のみあり) ・・・ 12621人
中子(兄姉弟妹あり) ・・・ 4006人
末子(兄姉のみあり) ・・・ 13932人
これらの9歳児の人格を父母が主観評定しているわけですが,「おとなしい」と評された子どもの割合は,一人っ子では15.4%,長子では16.9%,中子では12.0%,末子では10.7%となっています。ほう,兄弟ありの子どもでみると,上にいくほど高いですね。「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」と抑えつけられることが多いためでしょうか。
では,他の人格項目の該当率もみてみましょう。下の表は,21の項目の該当率を群ごとに整理したものです。赤字は,4群の中の最高値です。右端の「傾向」の欄は,兄弟ありの3群の傾向を示すもので,上に行くほど高い場合は「>」,その逆の場合は「<」の不等号を記しています。
私が「ははあ」と思った数字には黄色マークをしましたが,やっぱ甘えん坊は末っ子に多いですね。「長<中<末」というきれいな傾向です。他の兄弟との関わりあいをしないで済む一人っ子で「マイペース」が多いのも納得。好奇心旺盛,飽きっぽい,落ち着きがないのマックスが一人っ子というのも注目かな。ふるまいの自由度が高いので・・・。
育児経験のない私に,上表のデータを解釈する経験知はありませんが,人によっては思うところもおありでしょう。どうぞ,上記の素材をさまざまな角度から眺めてみてください。
これで終わりでは芸がありませんので,長子と末子の該当率を視覚的なグラフにしてみましょう。上と下の違いの可視化です。横軸に長子,縦軸に末子の該当率をとった座標上に,21の人格項目を位置付けてみました。
斜線は均等線であり,この線よりも下にあるのは長子的パーソナリティー,上にあるのは末子的パーソナリティーと読んでよいかと思います。
ざっくりと対照させるなら,末子は活発,好奇心旺盛,お調子者,勝ち気,我が強いという「外向的」人格,長子は恥ずかしがり屋,慎重,おとなしい,気が弱いといった「内向的」人格でしょうか。個人の私的な体験が影響しているでしょうが,兄弟内の地位の違い,それに応じた役割期待の差という条件も効いていることは間違いありますまい。
ここでお見せしたのは,あくまで父母による主観評定のデータです。厳密にいうなら,それぞれの人格特性をしっかり定義して,各々を測る複数のメジャーを設け,それを合成するというような手はずが求められます。まあしかし,せっかくこういう公的なデータがありますので,世間の関心が高い「兄弟内地位による人格比較」という資料に仕上げてみた次第です。
ママさん・パパさんのティータイムの話ネタにでも使っていただけますと幸いです。さて,そろそろ休日の3時ですね。私も,おやつタイムといきましょう。
これは家族という小社会についてもいえることでして,父親,母親,そして子どもにあっては兄姉・弟妹といった地位があり,それぞれに対し明示的・非明示的な役割期待が向けられ,各人はそれに沿った行為を遂行します。この違いは,子どもの人格形成に際して少なからぬ影響を及ぼすでしょう。
長子は下の面倒をみ指導もしなければならないことから,独立的・攻撃的な人格ができやすいといわれます。逆に末子は上に従属・依存する位置にあることから,依存的・甘えん坊的な人格になりやすい。上も下もいる中子は双方の「いいとこ取り」をできる位置にあるので,こすっからい,振舞い上手の向きに傾くと。
書店で立ち読みした育児書にこんなことが書かれていましたが,データでみるとどうなのでしょう。厚労省「21世紀出生児縦断調査(2001年出生児)」では,3歳児(第4回調査,2004年)と9歳児(第9回調査,2010年)の父母に,当該の子の人格について尋ねています。それを,兄弟構成とクロスさせた集計表も公表されています。下記サイトの表101です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001085569
私は,兄弟内の地位を自覚し,ある程度人格も固まりつつある9歳児のデータを使うこととしました。上記の調査は,2001年に生まれた子どもの追跡調査ですが,2010年,すなわち9歳の対象児童数は以下のようです。兄弟構成別の数を示します。
一人っ子(兄弟なし) ・・・ 4705人
長子(弟妹のみあり) ・・・ 12621人
中子(兄姉弟妹あり) ・・・ 4006人
末子(兄姉のみあり) ・・・ 13932人
これらの9歳児の人格を父母が主観評定しているわけですが,「おとなしい」と評された子どもの割合は,一人っ子では15.4%,長子では16.9%,中子では12.0%,末子では10.7%となっています。ほう,兄弟ありの子どもでみると,上にいくほど高いですね。「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」と抑えつけられることが多いためでしょうか。
では,他の人格項目の該当率もみてみましょう。下の表は,21の項目の該当率を群ごとに整理したものです。赤字は,4群の中の最高値です。右端の「傾向」の欄は,兄弟ありの3群の傾向を示すもので,上に行くほど高い場合は「>」,その逆の場合は「<」の不等号を記しています。
私が「ははあ」と思った数字には黄色マークをしましたが,やっぱ甘えん坊は末っ子に多いですね。「長<中<末」というきれいな傾向です。他の兄弟との関わりあいをしないで済む一人っ子で「マイペース」が多いのも納得。好奇心旺盛,飽きっぽい,落ち着きがないのマックスが一人っ子というのも注目かな。ふるまいの自由度が高いので・・・。
育児経験のない私に,上表のデータを解釈する経験知はありませんが,人によっては思うところもおありでしょう。どうぞ,上記の素材をさまざまな角度から眺めてみてください。
これで終わりでは芸がありませんので,長子と末子の該当率を視覚的なグラフにしてみましょう。上と下の違いの可視化です。横軸に長子,縦軸に末子の該当率をとった座標上に,21の人格項目を位置付けてみました。
斜線は均等線であり,この線よりも下にあるのは長子的パーソナリティー,上にあるのは末子的パーソナリティーと読んでよいかと思います。
ざっくりと対照させるなら,末子は活発,好奇心旺盛,お調子者,勝ち気,我が強いという「外向的」人格,長子は恥ずかしがり屋,慎重,おとなしい,気が弱いといった「内向的」人格でしょうか。個人の私的な体験が影響しているでしょうが,兄弟内の地位の違い,それに応じた役割期待の差という条件も効いていることは間違いありますまい。
ここでお見せしたのは,あくまで父母による主観評定のデータです。厳密にいうなら,それぞれの人格特性をしっかり定義して,各々を測る複数のメジャーを設け,それを合成するというような手はずが求められます。まあしかし,せっかくこういう公的なデータがありますので,世間の関心が高い「兄弟内地位による人格比較」という資料に仕上げてみた次第です。
ママさん・パパさんのティータイムの話ネタにでも使っていただけますと幸いです。さて,そろそろ休日の3時ですね。私も,おやつタイムといきましょう。
2015年3月6日金曜日
乳児の父親の家事・育児実施度
暇をみては官庁統計をサーチして回っているのですが,厚労省が「21世紀出生児縦断調査」を実施しているようです。今世紀の初頭に生まれた子どもを追跡する調査であり,2001年と2010年の出生児とその父母が調査対象となっています。
公表されている統計表をみると,父母の子育て観,悩み,子どもの学校での様子,習い事の有無など,いろいろ尋ねています。しかもその結果が,父母の学歴別,収入別,都道府県別に集計されているのもうれしい。貴重な調査資料です。
やりたいことがわんさと出てきますが,私は2010年出生児調査のデータを使って,0歳児の父親の家事・育児実施度を都道府県別に明らかにしてみました。2010年5月に生まれた子どもの父親を対象に,同年12月に実施された調査の結果です。よって,生後7か月の乳児のパパということになります。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/27-22.html
全面的な世話を要する乳児がいる家庭において,父親はどれほど家事・育児をしているか。まあ,この手のデータは白書とかでも目にしますが,ここでの主眼は都道府県比較です。複数の行動の実施率を合成した指数を県別に出し,ランキングにしてみようと思います。
上記の厚労省調査では12の行動を提示し,それぞれの実施頻度を尋ねています。選択肢は,「いつもする」「時々する」「ほとんどしない」「全くしない」の4つです。私は,前二者の回答割合に注目しました。下の表は,全国値と47都道府県の両端の値を整理したものです。比率の計算にあたっては,無回答(不詳)は分母からのぞいていることを申し添えます。*元データの表は,下記サイトの表50です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001109922
メジャーな家事・育児行動ですが,「入浴させる」や「家の中で相手をする」は実施率が高いですね。その一方,食事作りや洗濯などは,実施率は3割未満と低くなっています。
しかるに,県別にみると値はかなり違っており,両端の県で倍以上の差がある項目も見受けられます(食後の後片付け,洗濯など)。ちなみに最上位は沖縄,最下位は佐賀が多くなっています。
さて,12の行動の実施率を合成して,各県のパパの家事・育児実施度を測る単一の尺度をつくるのですが,それぞれは値の水準が異なるので,単純に足したり均したりすることはできません。そこで,47都道府県中の相対順位に基づいて,各行動の実施率を10段階のスコアにします。
1~5位を10点,6~10位を9点,11~15位を8点,16~20位を7点,21~25位を6点,26~30位を5点,31~35位を4点,36~40位を3点,41~45位を2点,46~47位を1点としましょう。
私はこの基準に依拠して,各県の12の行動実施率を相対スコアにしました。東京と郷里の鹿児島のスコアをチャート図にすると,下図のようです。
全体的にみて,東京のほうが図形が大きくなっています。食事作りや食後の片づけは,差が大きいなあ。そういえば,郷里の中学校の家庭科教師が,「男子は厨房に立つべからず」なんて,堂々と生徒の前で言い放っていたっけ。しかし,寝かすや相手をするなどのスキンシップ系は,鹿児島のほうが高いようです。
上図の12のスコアを平均すると,東京が7.83,鹿児島が6.17となります。軍配は東京にあり。この指標を家事・育児実施度指数とし,これでもって,各県のパパの頑張り度を可視化することにいたしましょう。下表は,この指数をランキングにしたものです。
トップは沖縄の8.917です。あくまで自己評定による結果ですが,赤ちゃんのパパの家事・育児実施度全国1位。在日アメリカ人が多い県でもありますが,こういう文化の影響もあるのでしょうか。2位は秋田,3位は山梨,そして4・5位は首都圏の神奈川と東京です。
スコアが7.0を超えるのは,宮崎を除いてすべて東日本の県です。反対に,スコアが低いのは多くが西日本の県。「東高西低」という構造がありそうです。この点を確認するため,上表の指数をマップにしてみましょう。4つの階級を設けて,グラデーションで塗り分けてみました。
確かに,大よそ東高西低になっています。近畿圏は色が薄くなっていますが,前に日経デュアル誌の記事でみたところによると,この地方では児童虐待の発生率が高い傾向にありました。「家事をしない夫→妻のイライラ→虐待」というような因果経路が存在しないかどうか・・・。ちと不安に感じます。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=2612
「21世紀出生児縦断調査」は,字のごとく子どもの成長過程を追跡していく調査です。今回は第1回の0歳児調査のデータを使いましたが,これから詳細結果が公表される第2回(1歳),第3回(2歳),第4回(3歳)・・・のデータでは,どういう図柄になるでしょう。この点も,重要な観測ポイントです。
「21世紀出生児縦断調査」のサイトを,お気に入りバーに入れました。2001年出生児調査の場合,第12回調査までのデータが公開されており,0歳から12歳までの変化の過程を詳細にたどることができます。保護者の育児観,子どもの学校の様子,習い事,はてはその階層差の変化などを仔細に明らかにできます。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/27-9.html
この調査データの分析結果も,随時報告していこうと思っております。
公表されている統計表をみると,父母の子育て観,悩み,子どもの学校での様子,習い事の有無など,いろいろ尋ねています。しかもその結果が,父母の学歴別,収入別,都道府県別に集計されているのもうれしい。貴重な調査資料です。
やりたいことがわんさと出てきますが,私は2010年出生児調査のデータを使って,0歳児の父親の家事・育児実施度を都道府県別に明らかにしてみました。2010年5月に生まれた子どもの父親を対象に,同年12月に実施された調査の結果です。よって,生後7か月の乳児のパパということになります。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/27-22.html
全面的な世話を要する乳児がいる家庭において,父親はどれほど家事・育児をしているか。まあ,この手のデータは白書とかでも目にしますが,ここでの主眼は都道府県比較です。複数の行動の実施率を合成した指数を県別に出し,ランキングにしてみようと思います。
上記の厚労省調査では12の行動を提示し,それぞれの実施頻度を尋ねています。選択肢は,「いつもする」「時々する」「ほとんどしない」「全くしない」の4つです。私は,前二者の回答割合に注目しました。下の表は,全国値と47都道府県の両端の値を整理したものです。比率の計算にあたっては,無回答(不詳)は分母からのぞいていることを申し添えます。*元データの表は,下記サイトの表50です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001109922
メジャーな家事・育児行動ですが,「入浴させる」や「家の中で相手をする」は実施率が高いですね。その一方,食事作りや洗濯などは,実施率は3割未満と低くなっています。
しかるに,県別にみると値はかなり違っており,両端の県で倍以上の差がある項目も見受けられます(食後の後片付け,洗濯など)。ちなみに最上位は沖縄,最下位は佐賀が多くなっています。
さて,12の行動の実施率を合成して,各県のパパの家事・育児実施度を測る単一の尺度をつくるのですが,それぞれは値の水準が異なるので,単純に足したり均したりすることはできません。そこで,47都道府県中の相対順位に基づいて,各行動の実施率を10段階のスコアにします。
1~5位を10点,6~10位を9点,11~15位を8点,16~20位を7点,21~25位を6点,26~30位を5点,31~35位を4点,36~40位を3点,41~45位を2点,46~47位を1点としましょう。
私はこの基準に依拠して,各県の12の行動実施率を相対スコアにしました。東京と郷里の鹿児島のスコアをチャート図にすると,下図のようです。
全体的にみて,東京のほうが図形が大きくなっています。食事作りや食後の片づけは,差が大きいなあ。そういえば,郷里の中学校の家庭科教師が,「男子は厨房に立つべからず」なんて,堂々と生徒の前で言い放っていたっけ。しかし,寝かすや相手をするなどのスキンシップ系は,鹿児島のほうが高いようです。
上図の12のスコアを平均すると,東京が7.83,鹿児島が6.17となります。軍配は東京にあり。この指標を家事・育児実施度指数とし,これでもって,各県のパパの頑張り度を可視化することにいたしましょう。下表は,この指数をランキングにしたものです。
トップは沖縄の8.917です。あくまで自己評定による結果ですが,赤ちゃんのパパの家事・育児実施度全国1位。在日アメリカ人が多い県でもありますが,こういう文化の影響もあるのでしょうか。2位は秋田,3位は山梨,そして4・5位は首都圏の神奈川と東京です。
スコアが7.0を超えるのは,宮崎を除いてすべて東日本の県です。反対に,スコアが低いのは多くが西日本の県。「東高西低」という構造がありそうです。この点を確認するため,上表の指数をマップにしてみましょう。4つの階級を設けて,グラデーションで塗り分けてみました。
確かに,大よそ東高西低になっています。近畿圏は色が薄くなっていますが,前に日経デュアル誌の記事でみたところによると,この地方では児童虐待の発生率が高い傾向にありました。「家事をしない夫→妻のイライラ→虐待」というような因果経路が存在しないかどうか・・・。ちと不安に感じます。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=2612
「21世紀出生児縦断調査」は,字のごとく子どもの成長過程を追跡していく調査です。今回は第1回の0歳児調査のデータを使いましたが,これから詳細結果が公表される第2回(1歳),第3回(2歳),第4回(3歳)・・・のデータでは,どういう図柄になるでしょう。この点も,重要な観測ポイントです。
「21世紀出生児縦断調査」のサイトを,お気に入りバーに入れました。2001年出生児調査の場合,第12回調査までのデータが公開されており,0歳から12歳までの変化の過程を詳細にたどることができます。保護者の育児観,子どもの学校の様子,習い事,はてはその階層差の変化などを仔細に明らかにできます。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/27-9.html
この調査データの分析結果も,随時報告していこうと思っております。
2015年3月4日水曜日
首都圏の家賃地図
先日,2013年の「住宅土地統計」の確報結果が公表されましたが,県よりも下った区市町村別にいろいろな情報を知ることができるスグレモノです。
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/kekka.htm
前々回と前回は世帯の平均年収に注目しましたが,今度は平均家賃をみてみましょう。こちらは,原資料に計算済みの数値が掲載されています。各地域の借家世帯の平均家賃月額です。家賃0円の世帯は除外して算出された平均値です。
首都圏1都3県の214区市町村の値を収集し,マップにしてみました。8万以上,7万台,6万台,5万台,5万未満の5階級を設け,各地域をグラデーションで塗り分けています。
予想通り,都内の都心が濃い色になっていますね。それと横浜市の北部。周辺部に行くほど色が薄くなりますが,千葉で白色のゾーンがここまで広いとは初めて知りました。
上の地図では大まかな区切りにしていますが,個々の区市町村別にみると平均家賃はかなり広く分布しています。マックスは,東京・港区の15.9万円です。ほか,10万以上の地域は中央区,千代田区,渋谷区,目黒区というように,全て都内23区です。
反対に下をみれば,平均家賃が3万円台の地域もあります。ほとんどが千葉県内の周辺部ですが,安いですねえ。
自分が住んでいる市はどうか,あそこはどうか・・・こういうディティールに関心をお持ちも方もおられると思います。そこで前回と同様,214区市町村のランキング表をつくってみましたので,以下に掲げます。1万円刻みの区切りを設けています。
ご自分が住んでいる地域はどうでしょうか。私が住んでいる多摩市にマークをしましたが,6.2万円ですか。私のアパートの家賃は,これよりも安いです。丘の上で,何もないところですので。
しかし右下をみると,家賃が安い地域もありますねえ。引っ越そうかしらん。地方に移住する気はありませんが,首都圏内だったら,月1程度で国会図書館や統計図書館に行くのも不可能ではありませんし。まあ,今の住まいと環境が気に入っているので,当面はその考えはないですけど。
これは借家の全世帯の平均家賃ですが, 原資料には世帯主の年齢別のデータも掲載されています。若者の借家世帯のデータは,地方から出てくる学生の参考資料になるかも。大学の生協とかに貼っておくといいんじゃないかな。関心がある方は,「住宅土地統計」の原典に当たってつくってみてください。
今日は暖かかったですね。しかしまだしばらく,寒暖差の大きい日が続きそうです。年度末の多忙も加わって,体調を崩しやすい時期です(私はヒマですが)。ご自愛くださいますよう。
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/kekka.htm
前々回と前回は世帯の平均年収に注目しましたが,今度は平均家賃をみてみましょう。こちらは,原資料に計算済みの数値が掲載されています。各地域の借家世帯の平均家賃月額です。家賃0円の世帯は除外して算出された平均値です。
首都圏1都3県の214区市町村の値を収集し,マップにしてみました。8万以上,7万台,6万台,5万台,5万未満の5階級を設け,各地域をグラデーションで塗り分けています。
予想通り,都内の都心が濃い色になっていますね。それと横浜市の北部。周辺部に行くほど色が薄くなりますが,千葉で白色のゾーンがここまで広いとは初めて知りました。
上の地図では大まかな区切りにしていますが,個々の区市町村別にみると平均家賃はかなり広く分布しています。マックスは,東京・港区の15.9万円です。ほか,10万以上の地域は中央区,千代田区,渋谷区,目黒区というように,全て都内23区です。
反対に下をみれば,平均家賃が3万円台の地域もあります。ほとんどが千葉県内の周辺部ですが,安いですねえ。
自分が住んでいる市はどうか,あそこはどうか・・・こういうディティールに関心をお持ちも方もおられると思います。そこで前回と同様,214区市町村のランキング表をつくってみましたので,以下に掲げます。1万円刻みの区切りを設けています。
ご自分が住んでいる地域はどうでしょうか。私が住んでいる多摩市にマークをしましたが,6.2万円ですか。私のアパートの家賃は,これよりも安いです。丘の上で,何もないところですので。
しかし右下をみると,家賃が安い地域もありますねえ。引っ越そうかしらん。地方に移住する気はありませんが,首都圏内だったら,月1程度で国会図書館や統計図書館に行くのも不可能ではありませんし。まあ,今の住まいと環境が気に入っているので,当面はその考えはないですけど。
これは借家の全世帯の平均家賃ですが, 原資料には世帯主の年齢別のデータも掲載されています。若者の借家世帯のデータは,地方から出てくる学生の参考資料になるかも。大学の生協とかに貼っておくといいんじゃないかな。関心がある方は,「住宅土地統計」の原典に当たってつくってみてください。
今日は暖かかったですね。しかしまだしばらく,寒暖差の大きい日が続きそうです。年度末の多忙も加わって,体調を崩しやすい時期です(私はヒマですが)。ご自愛くださいますよう。
2015年3月2日月曜日
首都圏214区市町村の年収ランキング
昨日,首都圏の年収地図を公表したのですが,それの元データを見たい,という要望が数件ありました。上位40位までのランキング表は掲げましたが,それ以外の地域,とりわけ自分の地域はどうかという関心もおありかと思います。
ではそれにお応えして,1都3県214区市町村の世帯平均年収のランキング表を掲げます。2013年の「住宅土地統計調査」に世帯の年収分布が掲載されている,214区市町村のデータです。計算の方法については,前回の記事をご覧ください。
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/kekka.htm
字が小さくて見にくいかもしれませんが,ご寛恕のほど。700万以上,650万以上700万未満というように,50万区切りで線を引いています。
ヒストグラムを描けば分かりますが,年収450万以上500万未満の地域が最も多くなっています。平均世帯年収600万超の「お金持ち」の地域は12です。
一番下が千葉県勝浦市となっていますが,これは学生の単身世帯が多いためと思われます。国際武道大学があるあそこです。
http://www.budo-u.ac.jp/
2013年の官庁統計から計算した,首都圏214区市町村の世帯平均年収のランキング表です。資料として,参考にしていただければと思います。
ではそれにお応えして,1都3県214区市町村の世帯平均年収のランキング表を掲げます。2013年の「住宅土地統計調査」に世帯の年収分布が掲載されている,214区市町村のデータです。計算の方法については,前回の記事をご覧ください。
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/kekka.htm
字が小さくて見にくいかもしれませんが,ご寛恕のほど。700万以上,650万以上700万未満というように,50万区切りで線を引いています。
ヒストグラムを描けば分かりますが,年収450万以上500万未満の地域が最も多くなっています。平均世帯年収600万超の「お金持ち」の地域は12です。
一番下が千葉県勝浦市となっていますが,これは学生の単身世帯が多いためと思われます。国際武道大学があるあそこです。
http://www.budo-u.ac.jp/
2013年の官庁統計から計算した,首都圏214区市町村の世帯平均年収のランキング表です。資料として,参考にしていただければと思います。
2015年3月1日日曜日
首都圏の年収地図(2013年)
2013年の「住宅土地統計調査」の最終結果が公表されました。これまで,47都道府県の結果は少しずつ公表されてきたのですが,26日に人口の多い首都圏の分も公表され,最終的な確定結果とされています。
この調査では,都道府県よりも下った区市町村のレベルにおいて,世帯単位の年収分布が明らかにされています。したがって,このデータを加工すれば,区市町村別の平均年収も計算できる次第です。
県別の平均年収のデータはよく見かけますが,それよりも下りた区市町村レベルのそれはあまり知られていないのではないでしょうか。まあ,ネットアンケートによる「お金持ちの地域はどこ?」みたいな記事はありますが,信頼度の高い官庁統計を使って地図を描いてみるとどうでしょう。今回は,それをしてみようと思います。
本調査では,世帯の年間収入が調査されていますが,用語解説によると「世帯全員の1年間の収入(税込)」だそうです。給与のほか,ボーナスや年金なども含むトータルな収入額です。私が住んでいる多摩市(東京)の総世帯の年収分布は,以下のようになっています。年収が判明した63,870世帯の分布表です。
最も多いのは,年収300万円台の世帯です。単身世帯や高齢者世帯も含む全世帯の分布ですので,こんなところでしょう。年収1000万超の世帯は7.8%,およそ13分の1なり。余談ですが,都心の港区では,このレベルの世帯が全体の4分の1を占めています。さすがですね。
それはさておき,上表の度数分布表から世帯年収の平均値(average)を計算しましょう。各階級の世帯の年収を中間の階級値で代表させます。年収100万円台の世帯は150万,200万台の世帯は250万というように仮定します。上限のない1500万超の世帯は,ひとまず年収2000万とみなします。この場合,多摩市の総世帯の平均年収は,次のようになります。全体を100とした相対度数を使ったほうが,計算は楽です。
{(50万×6.1)+(150万×10.6)+・・・(2000×1.5)} / 100.0 ≒ 489.8万円
多摩市の平均世帯年収は490万円と出ました。取り立てて違和感のない数値です。私の年収がこれと比してどうかは,ご想像にお任せいたします。
私はこのやり方で,首都圏(1都3県)の214区市町村の平均世帯年収を明らかにしました。下の図は,それを地図にしたものです。世帯年収が調査されていない地域は,欠損値としています。
色は濃い地域は年収が相対的に高い地域ですが,東京の都心,千葉の北部近郊,横浜の北部に多くなっています。「お金持ちの地域」の分布図ですが,これも肌感覚に照らして頷けます。
ついでに,その具体的な顔ぶれも示しておきましょう。世帯平均年収が高い順に並べたランキング表をつくったのですが,全部は載せられないので,上位40位までの部分を切り取って掲げます。
トップは東京の千代田区で793万円です。わが多摩市と300万円以上の差!その次は六本木ヒルズのある港区,その次は横浜市の青葉区となっています。全世帯でみた平均年収が700万超ってのはスゴイですねえ。平均値にまとめる前の分布でみたら,特異性がもっと際立っていることでしょう。先ほど述べたように,港区では年収1000万超の世帯が25%超を占めます。
最後に,この点も可視化しておきましょう。上表で2位にあがっている港区と足立区の世帯年収分布を,百分比の折れ線で描いてみました。双方とも,都内の特別区です。
ほぼ左右対称の型になっています。足立区では低収入層が多いですが,港区は逆に右側の富裕ゾーンにが多いと。単一の平均だけでなく分布の様相も観察すると,収入の地域格差が大きいことがより一層伝わってきます。エンリコ・モレッティの名著のタイトルを借りると,まさに「年収は住むところで決まる」です。
問題は,こうした収入の地域格差が子どもの育ちとどう関連しているかです。学力との相関はどうか,中学受験をする子どもの率との相関はどうか・・・。さらには,肥満や虫歯など,発育面の指標との関連はどうか。こういう関心が出てきます。
基底的な経済格差と教育格差の関連分析ですが,この点は,3月12日の記事で行っています。子どもの学力,体力,健康の指標とどう相関しているか。こちらもぜひ,ご覧ください。
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