2019年3月27日水曜日

収入よりも地域?

 ライフチャンスの規定要因として,どういう家庭に生まれるかは重要です。このことは,誰だって知っています。

 と同時に,生まれ落ちた地域も劣らず重要です。地方出身の私にすれば,これもまたよく分かります。たとえば大学進学チャンスには,家庭環境の格差があると同時に,地域格差もあります。前者は東大の小林雅之教授が明らかにしており,後者は,都道府県差という形で,このブログで繰り返し実証しています。
http://tmaita77.blogspot.com/2018/08/2018.html

 家庭の所得と居住地。この2つのどっちの影響が大きいか? それは,地域別・家庭の年収別の大学進学率を出してみると分かります。そういうデータは知りませんが,私は居住地の規定力のほうが大きいのではないかと,前から思っています。鹿児島のホワイトカラー家庭より,東京のブルーカラー家庭の大学進学率のほうが高いのではないかと。

 大学が少ない地方では,子を大学にやろうとしたら自宅外に出すケースが多くなります。学費に下宿代・生活費が加算され,2倍の支出を強いられるわけです。また,大学進学を当たり前とみなすクライメイトが地域にあるかも大きいでしょう。私は,鹿児島の離島を調査したことがありますが,地域に大学がないのはもちろん,大卒学歴の人もわずかしかいないので,子どもたちは大学がどういうものかというイメージを持てないのだそうです。

 上記の仮説を検証する術はありませんが,人間形成に際して,収入より地域の影響が大きいことをうかがわせるデータはあります。人間形成に際しては,各種の体験が重要なのですが,高尚な趣味を嗜むチャンスの「地域別・収入別」のデータです。

 総務省『社会生活基本調査』の統計表を丹念に見てみると,有業者の年収別の行動実施率を,47都道府県別に出せる表があります。低収入層と高収入層の実施率を,東京と鹿児島に分けて出せるわけです。東京のプアと鹿児島のリッチを比較するとどうなのか。

 年収300万未満と700万以上の有業者をとりだし,前者をプア,後者をリッチとします。この2つの群について,美術鑑賞(DVD,PC等によるものは除く)と海外観光旅行の実施率を,47都道府県別に計算しました。実施率とは,過去1年間の実施率です。自発的なもので,職場の研修等で行ったものは含みません。

 手始めに,東京と鹿児島の比較結果をご覧いただきましょう。プアとリッチの高低差のグラフにすると分かりやすいでしょう。


 プアよりもリッチ,鹿児島よりも東京の数値が高いことが分かります。同時に,鹿児島のリッチより東京のプアの値が高いことも知られます。美術鑑賞の実施率は,前者が10.7%,後者が30.3%です。東京のプアは,鹿児島のリッチの倍近くです。

 美術館等の施設の多寡も違いますからね。鹿児島だと,鹿児島市は別として,郡部の人が美術鑑賞を嗜むのは容易ではないかもしれません。交通網も発達していませんので。海外旅行にしても,国際空港へのアクセスの便利度は,東京と鹿児島では桁違いです。

 「収入より地域」をうかがわせるデータですが,ケースをもっと増やして説得力を持たせることが可能でしょうか。では,47都道府県の結果一覧をみていただきましょう。各県のプアとリッチの美術鑑賞,海外旅行実施率です。


 数字がたくさんですが,注目ポイントは,各県のリッチの数値が東京のプアと比してどうかです。どうでしょう。高収入層の実施率が東京の低収入層に及ばない県が多いではないですか。黄色マークがそれです。美術鑑賞は35県,海外旅行は25県が該当します。

 様相を視覚化すると,以下の図のようになります。47都道府県の数値の布置図です。リッチの実施率が,東京のプアのライン(赤色)に達しない県が多いことを見て取ってください。


 高尚な趣味への接触率は,当人の経済力や文化嗜好によるのですが,居住地域の影響も大きいことが分かります。趣味の階層差はブルデューの文化的再生産論で扱われていますが,地域という変数も加えると,議論がもっと立体的になるでしょう。

 日本社会学会の伝家の宝刀「SSM調査」の個票データを使えば,「出身地域×出身階層×高等教育修了率」の多重クロス表ができると思うのですが,そういう分析はされているのでしょうか。地方のホワイトカラー層より,東京のブルーカラー層のほうが高かったりして。

 エンリコ・モレッティの『年収は住むところで決まる』(プレジデント社)では,旧来の工業都市の大卒者より,イノベーション都市の高卒者のほうが稼げる,ということが言われています。一流の「知」に触れるチャンスの違いによるそうです。ここで明らかにしたことに通じますね。美術鑑賞や海外旅行の実施率は,言葉がよくないですが,「東京の下層民 > 地方の上層民」です。

 地域間の人口の流動性がなく,生まれ落ちた地域で人生が完結していた時代では,地域間の不平等など意識されようがありませんでした。しかし,現在はそうではありません。ライフチャンスの規定因としての「出身地域」にも目を向けないといけません。

 出身階層と競合させてみると,出身地域の影響が勝ることもあり得る。それを主張する一助として,今回のデータを記録しておこうと思います。

2019年3月25日月曜日

高校生の専門学科生徒比率

 教育社会学の古典ともいえる,デュルケムの『教育と社会学』に,次のような文章があります。

 社会は,成員の間に十分な同質性がなければ存続できない。教育は,共同生活に必要不可欠な資質を子どもに据え付けることで,その同質性を確保・強化する。一方で,一定の多様性がなければ,ありとあらゆる協働も不可能である。教育は,それ自身が多様化し,専門分化することで,必要な多様性を確保するのである。

 教育の目的は,当該社会での生活に求められる資質・能力を子どもに教えることです。これをしないと,社会は維持・存続できません。この仕事は,共通教育(普通教育)でカバーされます。

 一方で,現代の高度化した社会を動かすには,各人の持ち味を生かした分業が不可欠。各人が得意分野を深め,それを持ち寄って協働するほうが,高いパフォーマンスを期待できます。それを担保するのは,いわゆる専門教育です。

 日本の制度の括りでいうと,小・中学校(義務教育)では普通教育,大学等の高等教育では専門教育に重きが置かれ,両者の中間の高校教育(後期中等教育)では,2色が混ざり合っています。

 この2色の配色ですが,時代と共に専門教育の領分が狭まり,普通教育の比重が増してきています。それは,高校生の学科別の生徒構成比率から見て取ることができます。高度経済成長の最中の1960年では,高校生の4割が専門学科(当時でいう職業科)の生徒でした。それが2017年では,2割ほどまで低下しています。

 高度成長を担う中堅技術者を輩出していた専門高校ですが,70年代以降,大学進学志向の高まりにより,人気が低落していきました。普通科が上,専門学科が下という序列意識も生まれ,「普商工農」などと囁かれるようにもなりました。80年代に,第2次ベビーブーマーを吸収するために,高校の大増設に迫られたのですが,その大半は普通科高校でした。専門学科生徒の比率の低下は,こういう背景によります。

 ところで,高校生の専門学科比率は,県によって違っています。高度経済成長期の頃と現在の数値を,47都道府県別に計算してみました。下表は,1964(昭和39)年と2017年の都道府県別数値です。1964年は普通科以外の生徒の率で,2017年の率は,高校生総数から普通科生徒と総合学科生徒を引いた数を,高校生総数で割って出しています。データの出所は,文科省『学校基本調査』です。


 一番下の全国値をみると,40.9%から21.6%に下がっています。これは,先ほど述べた通りです。

 県別の数値をみると,1964年では多くの県で4割を超えていました。マックスは,私の郷里の鹿児島で59.7%,6割にも達していました。農業県という地域柄もあるでしょう。当時の高校生活経験者に話を聞くと,普通科より専門学科のほうが人気で,後者に落ちた人が仕方なく前者に行っていたとのこと。今とは真逆です。

 富山も55.1%と高くなっています。当時,富山県が普通科と専門学科の比率を「3:7」にしようという計画を立てていたのは,よく知られています。総じて,高度経済成長期の高校教育は,普通教育に劣らず専門教育も重視されていて,県によっては完成教育の機関としての性格も有していました。

 しかし現在では,様相がガラリと変わっています。5割を超えるのは宮崎,40%台は鹿児島と佐賀だけになります。半世紀の大変化は,地図にすると分かりやすいでしょう。


 全国的に専門学科の生徒比率が下がっていますが,背景は上述の通りです。普通科志向の高まりにより,80年代の新設高校の大半が普通科高校であったと。

 それが最も顕著だったのは,私が今住んでいる神奈川県です。本県には,地方から団塊世代が大量に流入してきましたが,その子ども(第2次ベビーブーマー)を吸収するため,70~80年代にかけて公立高校が100校増設されましたが,そのうちの99校が普通科でした(100校計画)。そのおかげで普通科比率がうんと高まり,現在では高校生の9割が普通科の生徒です。専門学科の生徒は1割しかいません(最初の表)。

 一方,人口流出県だった鹿児島は,第2次ベビーブーマーの波がそれほど大きくなく,高校増設の必要に迫られませんでしたので,高度成長期の原型が維持されたと。最初の表にみるように,本県では今でも高校生の約半分が専門学科の生徒です。この辺りの事情については,駆け出しの頃,九州教育学会の紀要に論文で書いたことがあります。
https://ci.nii.ac.jp/naid/40007033189

 ともあれ,現在の高校教育は普通科偏重の型になってしまっています。法律では,高校教育は普通教育と専門教育の双方を担うと規定されているのですが,それとは程遠い状況です。成人年齢が18歳に引き下げられるのを機に,後期中等教育における普通教育と専門教育の配分を,改めて見直したいものです。

 現業職の人手不足もあり,最近では,専門高校の正社員就職率は良好です。大学の文系学部より高く,理系学部とも匹敵します。19~22歳の4年間を,無目的に四角いハコの中で過ごさせるのがいいことなのか。18歳で社会に出ることを,もっと推奨していいのではないか。こう思います。

 そのためには,高校教育の構造を変える必要があるでしょう。子どもの進路志向というのは,自分の地域にどういう教育機会が提供されているかにも左右されます。

 大学は,後から行けるようにすればいい。AIの台頭により,人間の労働時間は短くなり見通しですが,その余裕を「リカレント教育」に宛てればいいでしょう。企業は教育有給休暇を設け,国はそういう取組を後押しすべきです。

 「Learning by doing」「この国を作っているのは俺たちだ」。青年期教育の完成機関としての専門高校に,もっとスポットが当てられることを欲します。

2019年3月20日水曜日

教員の労働時間の相対評価

 AIの台頭により,仕事の省力化が進められるようになっています。保育所の入所者選考ですが,人手だと数百時間かかっていたのが,AIだとほんの数秒で完了だそうです。スゴイですね。ただの事務員は「用なし」になる時代は,すぐそこです。

 学校においても,試験の採点をAIにさせる実践が出てきています。模範解答と生徒の解答を読み取るスキャナーに通すと,パソコンが正誤を判断。1文字のカタカナやアルファベット,数字を認識し,自動で採点・記録」してくれるとのこと。教員の長時間労働の是正に,一役買いそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190319-00000019-kobenext-sci

 教員の長時間労働については,このブログで何度もデータを出してきました。「日本では,労働時間が長いのは教員だけではない。他の職業も同じ」。こういう声がありましたので,他の職業との比較もしたところ,教員の労働時間はやはり長いことを知りました。
https://tmaita77.blogspot.com/2017/09/blog-post_4.html

 社会学をやっている人間の性癖として,自分の国の状況を見た後は,他の国(社会)のことも知りたくなります。教員の労働時間が国の労働者全体よりも長いって,他の国でも同じなんでしょうか。

 学部の比較教育論の授業で,「欧米では教師の給料は安いが,仕事時間も短い。本とかを読んで勉強しないといけないからだ」と聞いた覚えがあります。「トムソーヤの冒険」のドビンズ先生も,授業が終わったらさっさと帰宅し,お医者さんになるための勉強をしていますよね。

 教員と就業者全体の労働時間を,国ごとに比べる作業をやってみましょう。私は,OECDの「TALIS 2013」から中学校教員,ISSPの2013年調査から有業者全体の労働時間の指標を計算してみました。性別と年齢の影響を除去するため,25~54歳の男性に限定しています。

 両調査の個票データから,週間の就業時間の分布を明らかにし,それをもとに平均値を出しました。本当は中央値がいいのですが,計算が面倒なので,平均値でお許しください。手始めに,日本を含む主要7国の結果をみていただきましょう。ドイツは教員調査に参加してないので,分析対象に含めていません。


 日本は,教員が55.9時間,有業者全体が50.1時間です。どちらも週50時間超え,長いですね。1日8時間(週40時間)という,労基法の規定はどこ吹く風です。

 教員の仕事時間が民間より長いのは,日本とイギリスだけです。差分は,日本のほうが大きくなっています。残りの5か国では,教員は民間よりも短し。韓国とフィンランドでは,10時間以上も短くなっています。儒教社会の韓国では,教員の社会的地位は高く,仕事時間が短く給与は高し。若者の人気職業の一つだそうです。

 教員の置かれた社会的文脈をみても,日本の教員の悲惨さが伝わってきます。7か国だけでは心もとないので,比較の対象を増やしましょう。「TALIS 2013」と「ISSP 2016」の共通の対象国は21か国です。これらの国について,同じやり方で週間の就業時間の平均値を算出しました。もう一つの指標として,週60時間以上働いている者が全体の何%かも出してみました。

 下表は,結果の一覧です。上段は平均就業時間,下段は長時間労働者の比率です。



 上段の平均値をみると,日本の教員の就業時間(週55.9時間)は最も長いことが知られます。民間との対比でいうと,右端の差分から分かるように,教員が民間よりも短い国がほとんどです。「教員>民間」の国は3か国ですが,その度合いは,日本が最も顕著です。

 下段の長時間労働者率(過労死予備軍率)をみると,日本の中学校教員では52.7%,半分以上が該当しています。21か国の中でダントツです。部活指導がネックになっているのでしょう。この値は,国内の就業者全体に比しても格段に高くなっています。倍以上の差です。

 教員の就業時間は長く,国内の全労働者と比しても長い。どうやら日本は,その度合いが最も大きい社会のようです。

 総じて海外では教員の給与は安いのですが,仕事時間も短いので,まだ慰めにはなろうというもの。日本の教員給与も民間より安いのですが(地域差はあります),それで労働時間も長いというのですからたまりません。日本の教員を国際標準に近づけるには,長時間労働を是正し,給与も上げないといけないようです。

 異国の人にすれば,「こういう待遇で,教員のなり手がよくいるもんだ」と驚かれるでしょう。それどころか,日本の教員志望者の学力は高く,優秀な人材を引き寄せることにすら成功しています。 
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/02/post-11650.php

 日本では,教員は崇高な仕事とみなされており,やりがい感情に魅せられて教員の志望する若者も多いのですが,それによりかかっていた「虫のいい」やり方も,綻びを見せ始めてきました。教員採用試験の競争率低下が,その証左です。小学校はとくに深刻で(2倍を切る自治体もあり),中学校教員を教壇に立たせようという案も出ています。

 民間が好景気だからだろうという見方もありますが,理由はそれだけではないような気がします。「教員離れ」の可能性も疑ってみる必要がありそうです。教育社会学者の功績?により,教員のブラック労働ぶりが,揺るぎないデータで知れ渡っていますからね。

 私もそれに一役買っていると思いますが,「余計なことを…」と思わないでください。データは,現実を変えるのに必要不可欠です。これがないと,働き方改革を進める政策のコンセンサスもとれません。

 中央教育審議会は,教員の働き方改革の答申を出しました。未来の労働者を育てる学校が,「ブラック労働の学校」でいいはずがありません。働き方改革,待ったなしです。

2019年3月14日木曜日

渡良瀬橋

 今日は、栃木県足利市に出張ってきています。天気がよく、宿も取れたので、森高千里さんが歌う「渡良瀬橋」の聖地巡礼にきました。

 森高千里さんといえば、私の世代が思春期・青年期に憧れたアイドルです。どの歌もいいですが、1993年の「渡良瀬橋」は特にいい。高2(17歳)の多感な時期に、涙を流しながら何度もCDを聴いたものです。

 歌詞にある「渡良瀬橋の夕日」を見たい、聖地巡礼をしたい。前から思っていました。ちょうど四半世紀経った42歳にして、願いを成就できました。この記念すべき日を、ブログに記録します。

 自宅最寄の三崎口から足利市までは、電車2本で来れます。浅草まで京急で、そこから東武線の特急りょうもうで1時間ちょっとです。駅の売店で買った缶ビールをグビグビやっている間に、あっという間に着きました。


 東武の足利市駅は渡良瀬川沿いにあり、ホームから橋が見えます。電車接近のメロディは当然、森高さんの渡良瀬橋です。

 駅から川を北側に渡り、渡良瀬橋方向に川沿いを5分ほど歩くと、渡良瀬橋の歌碑があります。噂には聞いてましたが、実物を拝むことができて感激です。


 左のボタンを押すと、森高さんの歌声が流れます。リアルの渡良瀬川を前にして聴くと、情緒が増します。5回リピートして聴いちゃいました。結構大きな音なんで、道行く人は変に思ったかもしれません。いや、地元民は慣れているのでしょうが。

 時計をみると、16時15分。夕日の時間までは、まだあります。「八雲神社へお参りするとあなたのこと祈るわ~♪」の八雲神社に行こうかと思いましたが、思ったより距離があるので断念。

 そこで「渡良瀬川の河原に下りてずっと流れ見てたわ♪」を実践することにしました。歌詞のとおり、北風が結構冷たかったです。聖地巡礼に来る人は多いと思うので、時間つぶしに入れる茶店でもあればいいのに、と思いました。繁盛すると思いますけどね。


 そうこうするうちに、夕日の時間帯になってきたので、渡良瀬橋と一緒に何枚かカメラに収めました。あいにくオレンジ色の夕焼けにはなりませんでしたが、若き17歳のころにどういうものだろうと思いを馳せていた「渡良瀬橋の夕日」を、この目で見れてよかったです。

 森高千里さんは今も精力的に活動され、今年は全国ツアーもされているそうです。年をとるにつれ、綺麗になるタイプなんじゃないかなと感じます。いつまでもご自分の歌を歌い続け、われわれの永遠のアイドルでいてくださることを願います。

 明日はJR両毛線で小山まで出て、湘南新宿ラインで逗子まで下ろうかと考えています。

親の養育態度と自尊心

 子どもの社会化に際し,基礎集団としての家庭は重要な役割を果たします。親がいるかどうかという外的な構造面よりも,親が子にどう接しているかという内面が重要です。

 そこで出てくるのが,親の養育態度です。やさしい親もいれば厳しい親もいますが,そういう性向が一定の持続性を持つとき,養育態度という概念で表されます。心理学者のサイモンズが,親の養育態度の4類型を提示し,子どもの人格形成との関連を明らかにしているのは有名です。

 国立青少年教育振興機構の『青少年の体験活動等に関する調査』(2014年度)では,対象の児童・生徒に,家の人に褒められる頻度と叱られる頻度を訊いています。選択肢は,以下の4つです。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/107/

 ①:よくある
 ②:時々ある
 ③:あまりない
 ④:ない

 ②を選んでいる児童・生徒が多いので,①をよく褒められる(叱られる)群とし,②~④をよく褒められない(叱られない)群と括ります。褒められ頻度,叱られ頻度をこのように2分し,両者をクロスさせると,親の養育態度の4類型ができあがります。下図のような感じです。


 褒められ,叱られる「ノーマル」型,叱られるだけの「厳格」型,褒められも叱られもしない「放任」型,褒められるだけの「溺愛」型,の4タイプです。

 叱るというのは,理路整然と子どもが納得いくように説き伏せることで,頭ごなしに怒るのとは区別されますが,そういう細かい部分は,ここではオミットしておきます。

 私は,褒められ頻度と叱られ頻度の回答をクロスさせ,調査対象の児童・生徒(小4~6,中2,高2)を,上記の4タイプに分類しました。上記調査の個票データを使ってです。下の帯グラフは,4タイプの構成の学年変化を表したものです。


 どの学年でも,よく褒められも叱られもしない「放任」型が最も多くなっています。学年を上がるにつれ,このタイプの比重が増してきます。小4では29.2%だったのが,高2では62.8%,3人に2人です。

 加齢とともに子離れ(親離れ)が進むのが常ですが,その表現ともいえるでしょう。しかし,親子関係の希薄化をここまで露骨に見せつけられると,ちょっと寂しいですね。進路選択の時期は,親子でもっと語らい,主張をぶつけ合うことがあってもいいように思いますが…。

 まあ,年齢を上がるにつれ,自身の思考や行動の拠り所となる「重要な他者」は,親から友人へと移行するのが常です。IT化が進んだ現在では,ネット上の友人(ネッ友)の影響も大きいかな。

 ところで,親がどういう養育態度をとりやすいかは,家庭の経済力によって違っています。小学校4~6年生については保護者調査もしており,家庭の年収とのクロスをとることができます。下図は,家庭の年収に応じて,4タイプの内訳がどう変わるかをグラフにしたものです。サンプル総数は6404人で,各群ともサンプルサイズは十分です。


 年収が高い家庭ほど,褒め,かつ叱る「ノーマル」型が多くなっています。叱るだけの「厳格」型,褒めも叱りもしない「放任」型は,低所得層ほど多い傾向です。

 しつけの階層差といいましょうか,分かる気がしますね。親の金銭的・精神的余裕の差の表れかなと思います。褒めるには,子どもの些細な取柄まで拾ってあげないといけないので,結構労力がかかるのですが,低所得層の親にはその余裕がない。嫌でも目に付く短所をあげつらい,叱ってばかり。いやそれすらせず,放任になってしまう。低所得層の場合,叱るの中に,頭ごなしに罵倒する「怒る」が多く交じっているのではないかと思われます。

 これをカバーすべく,学校では「褒める」指導に重点を置くべきです。家庭環境に恵まれない子の場合,なおさらのこと。子どもの見えざる取柄を拾い上げ,それを認め,自信をつけさせるのも,教員の重要な力量といえましょう。

 最後に,親の養育態度が子どもの人格形成に与える影響についてです。褒められ頻度と叱られ頻度のクロスにより,養育態度の4類型を導き出したのですが,子どものメンタルとの関連しているでしょう。ここでは,自尊心とのクロスをとってみます。

 発達段階の影響を除くため,小4~6年生のサンプルに限定します。また家庭環境の影響も除去すべく,家庭の年収も揃えましょう。年収分布のボリュームゾーンである,400~599万円の家庭を取り出します。

 このような限定をして,養育態度の4類型と自尊心の関連をとってみました。以下の帯グラフは,4つの群ごとに,自尊心(今の自分が好きだ)の自己評定の分布がどう異なるかを示したものです。


 「とても思う」と「少し思う」の比率をみると,溺愛,ノーマル,放任,厳格という順序です。やはり,叱られるだけの子どもは委縮してしまうようですね。

 叱られて自己の欠点を正し,褒められて自信を持っている「ノーマル」型の自尊心が最も高いと思っていましたが,褒められるだけの「溺愛」型のほうがちょっと高いようです。これは,叱るの中に「怒る」が混じってしまっている関係上,「ノーマル」型の自尊心が下がってしまっているためではないかと推測されます。

 私としては,子どもが納得いくように「叱る」こと,そして「褒める」ことの双方を行う,「ノーマル」型の養育態度を支持したいです。親にすれば労力が要ることですが,子どもが自信をもって社会のあらゆる領域に参画し,自己を成長させていくことを可能にする自尊心を育むためには,必要不可欠なことだと思います。

 日本の子どもの自尊心は他国に比して低いのですが,親に余裕がなく,養育態度に歪みが起きやすいからかもしれませんね。働き方改革は,未来を担う子どもたちの健全な育ちのためにも必要なんだなと思います。

 親の養育態度は,子どもの人格形成と関連していることが知られます。頭ごなしに怒るのは容易いこと。労力を伴うのは,子どもの些細な取柄を拾って褒め,悪いことをしたら,ちゃんと理由を示しながら叱ることです。家事は機械や外注で省力化し,こちらのほうに力を入れたいものです。

2019年3月11日月曜日

個票データの提供を

 春らしい陽気になってきましたが,いかがお過ごしでしょうか。

 私は,日本教育新聞にて連載コラムを書かせていただいています(「数字が語る・日本の教育」)。その関係上,同紙が毎週手元に送られてきます。国内唯一の教育専門紙をタダ読みできて,本当にありがたいです。
https://www.kyoiku-press.com/


 本日号のトップに,「業務改善,学校への調査は データ重視,削減に壁」という記事が載っています。教員の働き方改革が目指されていますが,国の各種調査への回答というのも,学校にとって負担になっているようです。

 私は2015年の夏,都内の教員を対象に講演しましたが,終了後の昼食会で「ホント,国や都からの調査,多いんですよ。それも内容がかぶっていてね」と,小学校の副校長先生から打ち明けられました。「負担となっている業務は何ですか?」という設問に対し,よっぽど「てめえらの調査への回答だ!」と書こうかと思ったそうです。

 国の側も,調査の削減や精選に取り組んでいるようですが,昨今の「根拠に基づく政策」の時流に抗うのも難しく,板挟みの状態だそうです。政策立案や予算獲得には,精緻なデータを揃えるのが必須であるとのこと。

 しかしですねえ,上記の副校長先生が言われているように「内容がかぶっている=無駄」も結構あるのではないでしょうか。

 子どもの貧困対策を進めるには,貧困と子どもの育ちの関連のデータが必要。しからば,「質問事項に家庭の年収を盛り込んで,こういう調査をしよう」となります。ところが,既存の公的調査を丹念にサーチしてみると,家庭の年収を織り込んだ調査はあるのです。

 たとえば,国立青少年教育振興機構の『青少年の体験活動等に関する実態調査』です。2014年度調査では,個票データも提供されており,家庭の年収をコアにした分析を独自に行うこともできます。昨日,ツイッターで発信した,家庭の年収と「褒められ」頻度のクロスは,このデータの分析によります。


 同じ調査が2016年にも実施されていますが,個票データが提供されていません。国立青少年教育振興機構は,子ども・若者に関する興味深い調査をたくさんしていて,調査票をみると家庭環境の設問も盛られています。調査の設計に,教育社会学者が関わっているのでしょう。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/

 残念なことに,最近では個票データが出されなくなっています。単純集計や性別クロスといった,うわべだけの報告書が出されるにとどまっています。せっかく興味深い属性変数を押さえているのに,勿体ないと言わざるを得ません。宝の持ち腐れです。

 こういう既存の財産を度外視して,貧困と子どもの育ちの関連を明らかにすべく,新たな調査を実施するというのは,全くもって無駄です。現場にも負担がかかります。

 ちなみに国際調査は,個票データが万人に供されるのがスタンダードです。PISA,TIMSS,PIAAC,といった国際学力調査のウェブサイトを御覧なさい。個票データをダウンロードできるページが設けられています。研究者でない一般人も利用可能です。
http://www.oecd.org/pisa/data/2015database/
https://timssandpirls.bc.edu/timss2015/international-database/
http://www.oecd.org/skills/piaac/publicdataandanalysis/

 3重クロスまでの簡単な分析は,リモート集計ですることもできます。
https://nces.ed.gov/surveys/international/ide/

 公的機関の調査データは,万人の共有財産という考えなのでしょう。たくさんの人がいろいろな観点から分析をすることで,様々な知見(findings)を引き出すことができます。100万円かけて実施した調査からどれほどの収穫を得られるかは,個票データがオープンにされるか否かにかかっていると思うのですが,いかがでしょうか。
https://twitter.com/KuroseYudai/status/1050520322800119808

 毎年行われる『全国学力・学習状況調査』には1億円もの公的資金が注がれているそうですが,その費用が回収されるといえるまで,十分にしゃぶり尽くされているのでしょうか。

 国際標準に合わせて,公的機関が実施する調査の個票データは,ぜひともオープンにしていただきたいと思います。調査の無駄(重複)を省き,現場への負荷や社会調査不信を軽減することにもなります。

 実は,3年前の朝日新聞の紙上で同じ主張をさせていただいたことがあります。記者さんも頷いておられましたが,事態はあまり変わっていません(悪化の兆しさえ見られます)。今日の日本教育新聞のトップ記事を見て,また同じことを言わないといけないなと思い,ブログの筆をとった次第です。

2019年3月6日水曜日

暮らしのゆとり度

 前回は,47都道府県の区市部・郡部別に所得中央値を出しました。「ウチの県は内部地域差が大きい」「わが県は,郡部のほうが所得が高いのか」といった声が寄せられています。

 私が地域別の所得を何度も出すのは,富の地域格差を浮き彫りにしたい,という意図からです。そのたびに,「地方は家賃や物価が安いので,所得だけでは豊かさ(暮らしやすさ)は測れない」という意見をよくいただきます。

 仰せの通りです。私は鹿児島と東京の暮らしを知ってますが,たとえば家賃4万円だと,東京では1ルーム・ユニットバスの部屋を借りるのがやっと。ところが鹿児島だと,そこそこのマンションを借りれます。食料品等の物価も違います(本代や自販機のジュース代は一緒ですが)。

 所得をはじき出した後,固定経費の代表格である家賃を除き,さらに物価差を考慮して調整する必要がありそうです。私の年代の借家世帯に焦点をあて,その作業をやってみようと思います。

 2013年の総務省『住宅土地統計』から,借家世帯の年間収入と家賃月額の分布表を得ることができます。私は,主たる家計支持者が35~44歳である借家世帯について,年収と月家賃の中央値を計算しました。下表は,都道府県別の数値をまとめたものです。年間家賃(b)は,家賃月額の中央値を12倍して出しています。黄色は全県の最高値,青色は最低値です。


 世帯年収をみると,最高が東京の465万円,最低が沖縄の290万円です。予想通りマックスは東京です。しかし東京は家賃も高く,月額8万円,年間96万円なり。

 右端の数値は,世帯年収から年間家賃を引いたものです。これだと231万円から369万円の分布幅になり,世帯年収の地域差よりも縮まります。固定費の代表格の家賃を除いた結果です。しかし順位構造はあまり変わらず,東京が首位で,沖縄が最下位なのは同じです。
 
 あと一つ,加工を施します。地域の物価差を考慮すべく,年収から家賃を引いた額を,各県の消費者物価指数(家賃除く)で割ります。2019年の『日本統計年鑑』によると,2017年の鹿児島の消費者物価指数は0.97で,上表の285.7万円をこれで割ると294.5万円となります。物価が安い分,額面の収入がちょっと高く評価されます。

 対して東京は,消費者物価指数が1.025なので,上表の369.1万円は,360.1万円に下方修正されます。

 この数値が,家賃・物価を考慮して調整した収入額です。各地域の暮らしのゆとり度に,より接近した指標といえるでしょう。同じ数値を都道府県別に計算し,高い順に並べてみました。左欄は,加工を施す前の世帯収入中央値(上表のa)のランキングです。


 生の世帯年収と,家賃・物価調整額の対比するとどうでしょう。家賃・物価を考慮すると,東京は首位の座から引きずり降ろされます。

 代わって,北関東の茨城がトップに躍り出ます。収入はそこそこで,家賃や物価が地方県並みに安いからです。つくばエクスプレスなどで都心へのアクセスもよく,東京通勤者も多し。東京の会社でガッツリ稼げて,生活費のほうは地方県並みに安く上がると。いいとこ取りができる県ですね。

 郷里の鹿児島は,家賃・物価を考慮すると,ランクが結構上がります。逆に大阪は,ガクンと下がりますね。

 アラフォー借家世帯を切り取って,ラフなやり方で試算した「暮らしの豊かさ指標」ですが,いかがでしょうか。参考に与するところがあれば幸いです。こういう数値も,毎年公表してみるといいかもしれませんね。願わくは,県よりも下った市町村レベルのデータも出したいところです。

2019年3月4日月曜日

47都道府県の区市部・郡部の所得中央値

 総務省が5年おきに実施している『就業構造基本調査』は,有業者や世帯の所得を地域別に知れるスグレモノです。

 私は,鹿児島と東京の暮らしを知っていますので,地域差という視点を常に据えることにしています。「今年の平均所得はいくらだ!」と提示されても全国値では,地方の人にすれば「へっ」っていう感じなんですよ。鹿児島大学の中武先生も,同じ思いを抱かれているようです。鹿児島のデータが必要だと。

 私は『就業構造基本調査』のデータを使って,47都道府県の所得を何度も出してきました。そのたびに,ものすごい地域差があることに驚かされます。しかるに,各県の内部でも地域差があります。鹿児島は南北に長い県で離島が多いのですが,県庁所在地の鹿児島市と奄美諸島では,所得水準がかなり違います。広大な北海道では,札幌市が突き抜けているのはよく言われること。

 『就業構造基本調査』では,各県内の区市部と郡部(町村)に分けて,所得の分布表を得ることができます。今回はこれを使って,各県の区市部と郡部の世帯所得の中央値を出してみようと思います。世帯全体ではなく,世帯主が40~50代の世帯に絞ります。大学進学該当年齢の子がいる世帯です。

 2017年のデータをもとに,鹿児島県郡部の世帯所得の分布をとると,以下のようになります。県全体から市部の世帯数を引いて出したものです。


 2万3500世帯の所得の度数分布表です。最頻階級(Mode)は200万円台となっています。働き盛りの世帯ですが,最も多いのは年間所得200万円台であると。1000万円を越える世帯は全体の4.3%しかありません。

 この分布をもとに,フツーの世帯の所得がナンボかという代表値を出しましょう。計算に手間がかかりますが,平均値より中央値(Median)がベターです。右端の累積相対度数から,中央値は400万円台の階級に含まれることが分かります。

 中央値は,データを高い順に並べた時,ちょうど真ん中にくる値です。累積相対度数が50ジャストの値です。按分比例を使って,この値を推し量ります。以下の2ステップです。

 按分比=(50.0-46.4)/(59.1-46.4)= 0.283
 中央値=400万円+(100万円 × 0.283)= 428.3万円

 鹿児島県の郡部の世帯所得中央値は428万円です。世帯主が40~50代の世帯で,大学生の子がいる年代の世帯なんですが,この所得では,子を大学にやるのはキツそうです。都市部の大学に出すための下宿代もプラスされます。ちなみに『就業構造基本調査』でいう世帯所得は税込みですので,税引き後の手取り収入だともっと低くなります。

 鹿児島大学は,離島出身の学生の学費減免枠を設けているそうですが,こういう実態を認識しているのでしょう。これに加えて「住」の支援も必要(学生寮の拡充など)。空き家が多いご時世ですので,学生向けの物件のデータベースの整備などもしてほしいものです。

 私は同じやり方で,47都道府県の区市部・郡部の世帯所得の中央値を計算しました。以下の表は,結果をまとめたものです。黄色マークは47都道府県の最高値,青色マークは最低値です。500万円に満たない数値はゴチにしてみました。


 どうでしょう。区市部と郡部に分けてみると,各県の「知られざる」性格が見えてきます。東京は,区市部と郡部(島しょ部)の格差がスゴイですね。同じ40~50代の世帯ですが,704万円と400万円という具合です。高知県も,県内の市部と郡部の差が大きくなっています。

 郷里の鹿児島は,市部が498万円,郡部が428万円ですか。市部でみても500万円にいかないのだなあ。これは世帯所得であって,世帯員全員の稼ぎの合算です(それも税引き前)。これでは子を大学,ましてや県外の私大にやるなんてのは難しいでしょう。

 こうした所得の地域格差は,子ども世代の大学進学率の地域格差となって表れています(とくに女子)。鹿児島の女子の大学進学率は全国で最低です。
https://tmaita77.blogspot.com/2018/08/2018.html

 高等教育無償化政策により,住民税非課税世帯の学費が無償になることが決まりましたが,所得に応じて納入する学費に傾斜をつけてほしいものです。あるラインを境に,天国と地獄がくっきり分かれてしまう制度設計は望ましくない。想定されている制度では,年収300万未満の世帯は非課税世帯の3分の2,年収300~380万の世帯は非課税世帯の3分の1が支給されるとありますが。

 ところで,市部よりも郡部の所得が多い県もちらほらあります。その代表格が福井県で,市部が642万円,郡部が737万円と,郡部のほうが100万円近く多くなっています。福井の郡部は,東京の区市部より高いではないですか。

 ちと調べたところ,繊維産業に加え,メガネフレーム,電気機械,化学など,付加価値の高い産業が集積しているとのことですが,土地の安い郡部に生産拠点が多くあるのでしょうか。
https://www.projectdesign.jp/201605/pn-fukui/002862.php

 北陸や中部では,市部より郡部の所得が高い県が多し。こういうのも,移住を募るアピール材料になるかと思いますが,いかがでしょうか。一般的な地域単位である都道府県よりも一段降りてみると,意外性のあるファインディングが出てきて面白いです。

2019年3月1日金曜日

2019年2月の教員不祥事報道

 昨日で2月はおしまいでした。うっかりしていましたが,2月の教員不祥事報道の整理を今日やります。

 先月,私がネットで把握した報道は38件です。特徴といえば,児童生徒に対する教員の不適切発言・暴言が目立つことでしょうか。ケンカを仲裁した教員が「やられたらやりかえせばいい」,指導に従わない児童に「障害者か」,「ピロリ菌」というあだ名。

 私の頃は,しょっちゅうでしたねえ。小5の時,担任が帰りの会で「やられたらやり返せばいいんです。大人しくしてるから,相手も図に乗るんです」と堂々と言い放ったのを覚えています。「頭いかれてるんじゃないか」「簀巻きにして,ここから放り投げるぞ」という暴言が口癖の教員もいました。

 軽い気持ちで放った言葉も,子どもにとってはトラウマになり得ます。それがもとで不登校になってしまうことも。これから,SNSに入り浸った世代が教員になるのですが,匿名での(調子いい)振る舞いを,リアルでしてしまわないよう,注意させたいものです。

 先月は,とあるユーチューバーの人とつまらない争いをしました。心を入れ替えて,著作権には留意して動画運営を行うと約束してくれたのはよかったと思います。おじさんのプロレスが高校生ユーチューバーの教材になったのもうれしい。争いはよくないですが,効能があるのも事実です。ゆえに,私は経緯を細かく記録することにしています。

 今日から,暦の上では春です。今月中に,足利市に出向き,渡良瀬橋の聖地巡礼をしようかと思っています。晴天でないと意味がないので,切符と宿の手配は前日にすることになりそうです。自由人の私にとって,こういうことは難ではありません。

 ブログの背景を,初春模様に変えます。

<2019年2月の教員不祥事報道>
・小学教諭、ガムテープで低学年女児の口ふさぐ(2/1,千葉日報,千葉,小)
・わいせつ行為で教員2人懲戒免職(2/1,NHK,福井,高男30代,中男40代)
・わいせつ行為の教諭らを懲戒処分
 (2/1,NHK,福岡,中男50代,体罰:小男37,体罰:中男37)
・不適切LINE:生徒に「大好き」(2/2,毎日,大阪,中,男,60)
・路面電車で痴漢の疑い 中学校教諭を逮捕(2/4,長崎放送,長崎,中,男,52)
・女子高の元非常勤講師を逮捕、児童買春の疑い(2/4,TBS,東京,高,男,26)
・盗撮目的で勤務先トイレに侵入 小学校講師を逮捕
 (2/5,産経,福島,小,男,25)
・144キロで東北道走行の教諭を減給処分(2/6,サンスポ,青森,小,男,51)
・懲戒処分:使途不明金の調査不十分で校長 県教委
 (2/6,毎日,熊本,高,男,60)
・児童ポルノ容疑で小学校教諭逮捕(2/7,NHK,神奈川,小,男,31)
・飲酒運転の小学校教諭を逮捕(2/7,NNN,広島,小,男,55)
・妻に暴行疑い、教師の夫を逮捕(2/8,産経,兵庫,中,男,28)
・高校教諭が体罰、生徒けが 1週間の出勤停止(2/8,産経,広島,高,男,50代)
・キス写真流出 少女と交際の副校長を処分(2/8,サンスポ,福島,高,男,58)
・飲酒運転の教諭を停職処分 和歌山県教委(2/8,紀伊民放,和歌山,中,男,51)
・宮城県水産高 男性教諭 今年度ほとんど授業せず(2/12,東北放送,宮城,高)
・死亡事故起こした教諭 停職処分(2/12,NHK,岩手,高,男,50代)
・女性の体触った容疑、市立中学教諭を逮捕(2/13,産経,埼玉,中,男,58)
・山形県教委、盗みの高校教諭を停職6カ月(2/13,産経,山形,高,男,30代)
・中学教諭が個人情報紛失、千葉 市長にUSB郵送、盗難か
 (2/14,西日本新聞,千葉,中,男,30代)
・都内の高校の臨時講師の男が教え子の女子生徒に目隠し監禁か ラップで両手首を縛る(2/14,TBS,東京,高,男,44)
・元教え子わいせつ行為の高校講師を懲戒免職
 (2/14,NNN,愛知,高,男,62)
・野球部員に体罰、教諭を懲戒処分(2/14,岐阜新聞,岐阜,高,男,34)
・小学校教諭を懲戒免職=女子児童9人にわいせつ行為
 (2/15,時事通信,長崎,小,男,28)
・スカート内盗撮容疑で41歳高校教員を逮捕(2/15,産経,群馬,高,男,41)
・生徒を壁に押し付け…高校教諭を懲戒処分 (2/15,FNN,秋田,高,男,30)
・トラブル仲裁で不登校 千葉の小学校 教員が不適切発言
  (2/15,産経,千葉,小,女,30代)
・教え子だった男子生徒にキスした女性教諭を処分 指導聞き入れず
 (2/18,産経,静岡,中,女,30代)
・キャンプ引率の男児に強制性交容疑 元小学校臨時講師の38歳男を再逮捕
 (2/18,神戸新聞,兵庫,小,男,38)
・鹿児島県教委 体罰で教諭2人を懲戒処分
 (2/18,南日本放送,鹿児島,高男32,中男49)
・元小学校校長”パパ活”で逮捕(2/19,ABCテレビ,大阪,特,男,59)
・館林市中学教諭児童買春か 逮捕(2/19,NHK,群馬,中,男,36)
・中学教諭、生徒に「ピロリ菌」「ピロちゃん」
 (2/23,読売,北海道,中,男,50代)
・幼稚園教諭、3歳児4人の足を椅子に固定(2/23,読売,長崎,幼,女,30代)
・小学校女性講師、指導に従わない4年生児童に「障害者か」と暴言
 (2/24,毎日,福岡,小,女)
・中2男子の頬に熱々「はんだ」 男性教諭を懲戒処分
 (2/26,神戸新聞,兵庫,中,男,25)
・生徒蹴りケガさせる 女性講師を処分(2/26,NNN,埼玉,中,女25)
横浜市立小の男性教諭 盗撮行為で懲戒免職に
 (2/28,テレビ神奈川,神奈川,小,男,25)