気が付いたら,今日は2月の末日。恒例の教員不祥事報道の整理をせねばと,あわててツイログを漁った次第です。
今月,私がネット上でキャッチした教員不祥事報道は48件です。「ウザい,消えろ」と生徒に暴言,生徒に「自分は馬鹿」と叫ばせる,30年以上無免許授業,いじめの虚偽説明など,絶句させられるような事案が見受けられます。
明日から3月,もう春です。3月中旬に,私が書いた,教員採用試験の時事対策本『速攻の教育時事』が,実務教育出版より刊行されます。ツイッターによる日頃の新聞記事収集は,こういう時に役立ちました。
http://jitsumu.hondana.jp/book/b214682.html
亡き恩師・陣内靖彦先生は,主要紙の新聞切り抜きを日課にされていました。そのファイルを見せてもらったことがありますが,それはスゴイものでした。しかし今は,新聞はネットで読めます。シェアボタンをクリックするだけで,自分のSNSに保存できます。これぞ,現代版の新聞切り抜きです。
教員採用試験を受ける学生さんは,主要紙のサイトは「お気に入り」に登録し,1日2~3回はチェックするようにしましょう。まずは,こういう習慣をつけることが大切。これだけで,「モグリ」と揶揄されることはなくなります。慣れてくると,楽しくなりますよ。
春が来ました。ブログの背景を変えます。
<2016年2月の教員不祥事報道>
・元小学校長を書類送検=給食費など横領容疑(2/1,時事通信,三重,小,男,56)
・霞ケ浦高、体罰で教諭を減給処分(2/1,茨城新聞,茨城,高,男,27)
・大津市立中の教諭ら逮捕 危険ドラッグ輸入疑い(2/1,産経,滋賀,中,男,51)
・女性臨時講師が「消えて」、高3授業で暴言(2/2,読売,秋田,高,女,30代)
・授業中ライターで生徒の髪に火 加西の中学教諭(2/2,神戸新聞,兵庫,中,男,26)
・小6・中1男子にわいせつ行為 容疑の保育教諭の男ら逮捕
(2/2,産経,埼玉,認定子ども園,男,21)
・元教え子の交際相手暴行 高校教諭を再逮捕(2/3,神戸新聞,兵庫,高,男,37)
・高校教諭2人に懲戒処分
(2/3,NHK,三重,同僚へのわいせつ:高男38,スマホ横領:高男47)
・水戸の高校教諭再逮捕=中学生にわいせつ容疑(2/3,時事通信,茨城,高,男,44)
・部活引率中の事故で中学教諭を減給処分(2/4,佐賀新聞,佐賀,中,男,43)
・学校で児童の着替え盗撮、教諭を懲戒免職(2/5,朝日,愛知,小,男,54)
・教諭免許偽造の女性教諭を懲戒処分(2/5,和歌山放送,和歌山,中,女,54)
・教師に引き倒され、中1男子が尾骨骨(2/6,朝日,兵庫,中,男,40代9
・体罰繰り返し教諭を減給処分 (2/8,NHK,鹿児島,高?,男,44)
・公立高入試願書、教諭が出し忘れ「特例で受理」(2/10,神戸新聞,兵庫,中,男)
・三省堂から謝礼金、中学校長を戒告処分(2/10,朝日,広島,中,男,59)
・小学校長、PTA会費478万円横領 懲戒免職処分(2/10,朝日,大阪,小,男,55)
・体罰:部活指導で 教諭2人を処分(2/10,毎日,大阪,中,男28,38)
・「私は馬鹿です」と叫ばせる 中学教諭が課外活動で不適切指導
(2/10,産経,広島,中,男,50代)
・着替え中の女性を盗撮 小学校教諭を懲戒免職(2/10,NHK,埼玉,小,男,35)
・女性の下着などを盗もうとした疑い 県立高校教諭を逮捕
(2/11,瀬戸内海放送,岡山,高,男,33)
・“交際していた”教え子の女子生徒にわいせつ行為で免職(2/12,産経,群馬,高,男,27)
・女子生徒にわいせつ、飲酒事故…高校教諭2人を懲戒免職
(2/13,産経,広島,わいせつ:高男30,酒気帯び運転:高男52)
・白樺学園教頭が飲酒し交通事故、不申告容疑で逮捕(2/14,産経,北海道,高,男,58)
・八幡平 教諭逮捕で市教委謝罪
(2/15,NHK,岩手,18歳未満の少女にみだらな行為,中,男,38)
・元山梨県警警官の小学校教諭、異色の経歴の先生 巡査時代の強制わいせつ容疑で逮捕
(2/16,産経,山梨,小,男,31)
・合否決定前なのに…受験生の作文、校長が全校生徒に朗読(2/16,朝日,福岡,高)
・飲酒運転で高田高校の35歳男性教諭懲戒免職
(2/16,上越タウンジャーナル,新潟,高,男,35)
・小学校臨時教諭、児童ポルノ投稿容疑 動画データなど(2/18,朝日,大阪,小,男,40)
・生徒に体罰、鼓膜破る 県立高バスケ部顧問を処分(2/18,静岡新聞,静岡,高,男,34)
・事故起こし逃走の教諭を免職(2/18,NHK,東京,中,男,35)
・中学生の水着盗んだ疑い 37歳の小学校教諭を再逮捕(2/19,朝日,愛知,小,男,37)
・女性教諭児童に体罰 特支学級、頭や腹たたく(2/20,千葉日報,千葉,小,女,44)
・わいせつ行為:講師ら懲戒免職 県教委が3人処分
(2/20,毎日,岡山,中、高、高 いずれも20代男性)
・懲戒処分:小学校教諭と消防士を 堺市教委(2/20,毎日,大阪,小,男,31,痴漢行為)
・殺人未遂容疑:中学教諭の44歳女ら逮捕(2/21,毎日,熊本,中,女,449
・児童の着替えを盗撮しようとした疑い 名古屋の小学教諭(2/22,朝日,愛知,小,男,30)
・30年以上無免許で生徒指導 山形、県立高女性教諭の任用無効
(2/22,スポニチ,山形,高,女,55)
・覚醒剤使用の疑い、中学教諭を再逮捕(2/23,朝日,愛知,中,男,51)
・中学教諭、いじめで虚偽説明指示(2/23,河北新報,兵庫,中,男,58)
・テストせず成績 小学校が謝罪(2/25,京都新聞,京都,小,男,35)
・まいた画びょう、生徒に飛び越えさせる(2/25,朝日,東京,中,男,61)
・酔って他人の家に侵入 同僚に職員室でデコピン
(2/26,産経,大阪,侵入:中男25,デコピン:高男42)
・中学副校長 帰りに「車内で紙パックの焼酎飲んだ」(2/26,テレビ朝日,大阪)
・生徒の母親にわいせつ行為…養護学校教諭を現行犯逮捕
(2/28,サンスポ,京都,特,男,47)
・生徒の椅子蹴り倒しけが、38歳男性教員を減給処分(2/29,産経,兵庫,中,男,38)
・部費360万円「食費に」 滋賀短大付高の女性講師が着服
(2/29,中日新聞,滋賀,高,女,24)
・高校教諭 バールで生徒殴る(2/29,TBS,茨城,高,男,41)
2016年2月29日月曜日
2016年2月28日日曜日
就業者の公務員比率の国際比較
先日のニューズウィーク日本版サイトに,「育児も介護も家族が背負う,日本の福祉はもう限界」と題する記事を書いたのですが,読んでくださる方が多いようです。おりしも,認可保育所の4月入所可否が通知される時期ですので,時宜にかなったのでしょうか。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/02/post-4532.php
この記事でみたところによると,北欧の福祉は公型,日本の福祉は「私」型と性格づけられるのですが, 保育所の公私割合もそうなっているでしょう。
保育や介護といった福祉は,あまり民間に委ね過ぎるのは好ましくなく,基本的に「公」が担うのがよしとされます。しかし日本の現状は,それとは隔たっていて,たとえば保育所の大半は私立です。
ここで,ふと素朴な疑問がわきます。働いている人のうち,公務員は何%くらいかです。それは『国勢調査』や『就業構造基本調査』をみれば分かりますが,他国との比較をしたいので,『世界価値観調査』のデータから計算してみました。
この調査では,就業者に対し,どのセクター(部門)で働いているかを尋ねています。用意されている選択肢は,公的機関,民間企業,非営利団体(NPO)です。2010~14年の調査データを使って,公的機関と答えた者(公務員)の比率を国ごとに出し,ランキングにすると,下表のようになります。無回答・無効回答はベースから除いて出した百分比です。
http://www.worldvaluessurvey.org/WVSOnline.jsp
日本は10.7%ですが,調査対象の58か国の中では,下から2番目です。就業者の1割が公務員というのは,われわれの肌感覚に照らせば「そんなもんだろう」ですが,国際的にみたら特異なのですね。
58か国の平均値は32.6%です。国際的にみると,就業者の3人に1人が公務員というのが標準のようです。もっと高い国も多く,北欧のスウェーデンは46.2%,旧共産圏の社会では6~7割となっています。
何から何まで「私依存」,好んで使われる言葉が「自己責任」の日本ですが,この国のそういう風潮が,就業者の公務員比率にも出ているような気がします。
しかるに,わが国では公務員は人気です。学生の公務員志望率も,年々高まっているといいます。民間に比して,優遇されているためでしょう。
上記の『世界価値観調査』では,対象者に対し,自分が属する世帯の収入の水準を問うています。10段階で自己評定してもらう形式です。日本の場合,公務員の平均点が4.89点,民間・NPO勤務者のそれは3.93点です。前者は,後者の1.24倍。
この指標は,民間に比した公務員の優位度と読めますが,先ほど明らかにした公務員比率と絡めてみると,各国の公務員の地位文脈が可視化されます。下図は,横軸に就業者の公務員比率,縦軸に公務員の収入の対民間倍率をとった座標上に,58の社会を配置したグラフです。
傾向としては,公務員が少ない国ほど,公務員の優位度が高くなっています。相関係数は-0.5605で,1%水準で有意です。
左上にあるのは,公務員のプレミアが高い社会ですが,日本はこのタイプの典型です。逆に,右下の旧共産圏では,公務員のプレミアはなく,収入は民間より低いくらいです。
日本では,ただでさえ少ない公務員をさらに減らす方針だそうですが,上図でいうと,ますます左上に昇天していくのでしょうか。
私としては,その反対方向,右下にもっとシフトしてほしいと思います。公務員給与を民間にもっと近づけ,その分,量を増やす。福祉をはじめとした,諸々の社会制度充実の条件になるのではないでしょうか。憶測ですが,そう考えている人も少なくないと思います。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/02/post-4532.php
この記事でみたところによると,北欧の福祉は公型,日本の福祉は「私」型と性格づけられるのですが, 保育所の公私割合もそうなっているでしょう。
保育や介護といった福祉は,あまり民間に委ね過ぎるのは好ましくなく,基本的に「公」が担うのがよしとされます。しかし日本の現状は,それとは隔たっていて,たとえば保育所の大半は私立です。
ここで,ふと素朴な疑問がわきます。働いている人のうち,公務員は何%くらいかです。それは『国勢調査』や『就業構造基本調査』をみれば分かりますが,他国との比較をしたいので,『世界価値観調査』のデータから計算してみました。
この調査では,就業者に対し,どのセクター(部門)で働いているかを尋ねています。用意されている選択肢は,公的機関,民間企業,非営利団体(NPO)です。2010~14年の調査データを使って,公的機関と答えた者(公務員)の比率を国ごとに出し,ランキングにすると,下表のようになります。無回答・無効回答はベースから除いて出した百分比です。
http://www.worldvaluessurvey.org/WVSOnline.jsp
日本は10.7%ですが,調査対象の58か国の中では,下から2番目です。就業者の1割が公務員というのは,われわれの肌感覚に照らせば「そんなもんだろう」ですが,国際的にみたら特異なのですね。
58か国の平均値は32.6%です。国際的にみると,就業者の3人に1人が公務員というのが標準のようです。もっと高い国も多く,北欧のスウェーデンは46.2%,旧共産圏の社会では6~7割となっています。
何から何まで「私依存」,好んで使われる言葉が「自己責任」の日本ですが,この国のそういう風潮が,就業者の公務員比率にも出ているような気がします。
しかるに,わが国では公務員は人気です。学生の公務員志望率も,年々高まっているといいます。民間に比して,優遇されているためでしょう。
上記の『世界価値観調査』では,対象者に対し,自分が属する世帯の収入の水準を問うています。10段階で自己評定してもらう形式です。日本の場合,公務員の平均点が4.89点,民間・NPO勤務者のそれは3.93点です。前者は,後者の1.24倍。
この指標は,民間に比した公務員の優位度と読めますが,先ほど明らかにした公務員比率と絡めてみると,各国の公務員の地位文脈が可視化されます。下図は,横軸に就業者の公務員比率,縦軸に公務員の収入の対民間倍率をとった座標上に,58の社会を配置したグラフです。
傾向としては,公務員が少ない国ほど,公務員の優位度が高くなっています。相関係数は-0.5605で,1%水準で有意です。
左上にあるのは,公務員のプレミアが高い社会ですが,日本はこのタイプの典型です。逆に,右下の旧共産圏では,公務員のプレミアはなく,収入は民間より低いくらいです。
日本では,ただでさえ少ない公務員をさらに減らす方針だそうですが,上図でいうと,ますます左上に昇天していくのでしょうか。
私としては,その反対方向,右下にもっとシフトしてほしいと思います。公務員給与を民間にもっと近づけ,その分,量を増やす。福祉をはじめとした,諸々の社会制度充実の条件になるのではないでしょうか。憶測ですが,そう考えている人も少なくないと思います。
2016年2月26日金曜日
同じ労働時間の正規・非正規の年収比較
「同一労働・同一賃金」のかけ声のもと,同じ仕事をしている正規・非正規の収入格差を撤廃する方針が打ち出されています。
わが国では,正規・非正規の収入格差があることは,誰もが知っています。私も前に,データでそれを明らかにしたことがあります。性別や年齢をそろえても,正規と非正規では大きな開きがあります。それは,年収の年齢カーブをみれば一目瞭然です。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=3559
しかしそれは,労働時間や仕事の中身の違いによるのも確かです。こうした基本条件をそろえた比較ができないかと前から思っていたのですが,『就業構造基本調査』でそれが可能であることを知りました。
2012年調査の公表統計をみると,「従業上の地位×所得×週間就業時間・年間就業日数」のクロス表があるではありませんか。下記サイトの表30です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048178&cycleCode=0&requestSender=search
これを使えば,同じ労働時間(日数)の正規・非正規の年収分布を出すことができます。年間200日以上の規則的就業をしている雇用者のデータを使って,それをつくってみましょう。
手始めに,年間250~299日就業・週43~48時間の雇用者の年収分布をみてみます。量的に最も多い層です。まあ,普通のリーマンはこんなところでしょう。
この層に属する雇用者で年収が判明するのは,正規が467万人,非正規が77万人ほどです。後者の比率(非正規率)は,14.2%,およそ7人に1人です。正社員と変わらぬくらい,バリバリ働いている非正規労働者も結構いますね。パートやバイトはともかく,派遣社員や契約社員には,そういう人も多いでしょう。
しかるに,同じくらい働いていても,正規と非正規では年収の分布がかなり違っています。右欄の構成比のヒストグラムをみれば明らかです。
階級値を使って,両群の平均年収を計算すると,正規が420.1万円,非正規が232.3万円となります。労働時間(日数)がほぼ同じであるにもかかわらず,正規と非正規では,年収に200万近い開きがあります。仕事の内容まで揃えることはできませんが,これは就業地位という外的属性に由来する,格差と形容してもいいでしょう。
これは,年間250~299日・週43~48時間就業の雇用者の比較結果ですが,他の群の比較データもお見せしましょう。同じやり方で,9つの群の正規・非正規の平均年収を比べてみました。
赤字は,先ほど取り上げた,年間250~299日・週43~48時間就業の群です。この群だけでなく,他のどの群でも,正規と非正規の平均年収は大きく開いています。倍率にすると,1.8~2.2倍です。
同じくらい働いても,正規と非正規という外的属性によって,収入が大きく異なる。仕事内容をそろえれば,差はもっと小さくなるでしょうが,どの程度に落ち着くことか・・・。
外国はどうなのかと,ISSPのデータを使って,正規と非正規の収入差の国際比較をしようとしたのですが,このデータでは,就業者にそういうカテゴリー区分がありません。フルタイムとパートタイムという区分すらありません。就業地位による労働者の区分けというのは,「日本的」なものなのでしょうか。
「同一労働・同一賃金」を掲げる冒頭の政策によって,事態はどう変わるか。いや,変わらねばなりません。私個人としては,現代の身分差別とでも言い得る,大学の専任・非常勤格差がどう変化を遂げるかに,強い関心を抱いています。
わが国では,正規・非正規の収入格差があることは,誰もが知っています。私も前に,データでそれを明らかにしたことがあります。性別や年齢をそろえても,正規と非正規では大きな開きがあります。それは,年収の年齢カーブをみれば一目瞭然です。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=3559
しかしそれは,労働時間や仕事の中身の違いによるのも確かです。こうした基本条件をそろえた比較ができないかと前から思っていたのですが,『就業構造基本調査』でそれが可能であることを知りました。
2012年調査の公表統計をみると,「従業上の地位×所得×週間就業時間・年間就業日数」のクロス表があるではありませんか。下記サイトの表30です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048178&cycleCode=0&requestSender=search
これを使えば,同じ労働時間(日数)の正規・非正規の年収分布を出すことができます。年間200日以上の規則的就業をしている雇用者のデータを使って,それをつくってみましょう。
手始めに,年間250~299日就業・週43~48時間の雇用者の年収分布をみてみます。量的に最も多い層です。まあ,普通のリーマンはこんなところでしょう。
この層に属する雇用者で年収が判明するのは,正規が467万人,非正規が77万人ほどです。後者の比率(非正規率)は,14.2%,およそ7人に1人です。正社員と変わらぬくらい,バリバリ働いている非正規労働者も結構いますね。パートやバイトはともかく,派遣社員や契約社員には,そういう人も多いでしょう。
しかるに,同じくらい働いていても,正規と非正規では年収の分布がかなり違っています。右欄の構成比のヒストグラムをみれば明らかです。
階級値を使って,両群の平均年収を計算すると,正規が420.1万円,非正規が232.3万円となります。労働時間(日数)がほぼ同じであるにもかかわらず,正規と非正規では,年収に200万近い開きがあります。仕事の内容まで揃えることはできませんが,これは就業地位という外的属性に由来する,格差と形容してもいいでしょう。
これは,年間250~299日・週43~48時間就業の雇用者の比較結果ですが,他の群の比較データもお見せしましょう。同じやり方で,9つの群の正規・非正規の平均年収を比べてみました。
赤字は,先ほど取り上げた,年間250~299日・週43~48時間就業の群です。この群だけでなく,他のどの群でも,正規と非正規の平均年収は大きく開いています。倍率にすると,1.8~2.2倍です。
外国はどうなのかと,ISSPのデータを使って,正規と非正規の収入差の国際比較をしようとしたのですが,このデータでは,就業者にそういうカテゴリー区分がありません。フルタイムとパートタイムという区分すらありません。就業地位による労働者の区分けというのは,「日本的」なものなのでしょうか。
「同一労働・同一賃金」を掲げる冒頭の政策によって,事態はどう変わるか。いや,変わらねばなりません。私個人としては,現代の身分差別とでも言い得る,大学の専任・非常勤格差がどう変化を遂げるかに,強い関心を抱いています。
2016年2月24日水曜日
警察官の女性比率の国際比較
われわれの生活を守ってくれるお巡りさん。最近は,警察官の女性比率を増やそうという方針が示されています。性犯罪の被害者などは,女性警官の接遇を望むといいます。
警察官の統計ですが,これがなかなか見当たらない。『警察白書』にも載っていません。しかし,国連薬物犯罪事務所(UNODC)のサイトに,その資料が出ていることに気付きました。国際機関のサイトですので,国別の統計も出ています。
このデータを使って,警察官の女性比率の国際比較をしてみましょう。下の表は,主要国の2012年の統計です。
日本は,全国の警察官25万6700人のうち,女性警官は1万7700人。比率にすると6.9%です。欧米はどの国も10%超で,北欧のスウェーデンでは3割近くにもなります。女性の社会進出が進んでいるお国柄が出ていますね。
これは主要国のデータですが,世界は広し。比較対象を広げてみましょう。値を出せる71か国を,高い順に並べたランキングにしてみました。国名は原資料からコピペしましたので,英語表記になっています。
トップは東欧のラトビアで34.8%,この国では警官の3人に1人が女性であると。先ほどみたスウェーデンやイギリスも上位です。
日本は下から8番目。主要国の中では,圧倒的に低い位置にあります。なるほど,事態を改善する余地はまだまだありそうです。
あと一つ,各国の警察官の絶対量と絡めたグラフを作っておきましょう。警察官の量とは,人口10万人あたりの警察官の数です。この指標も,興味あるところ。下図は横軸に人口10万人あたりの警察官数,縦軸に警察官の女性比率をとった座標上に,71か国を配置した散布図です。
どうでしょう。右上は,警察官の絶対数が多く,かつ女性比率も高い国です。警察の人的整備が充実している国といえましょう。左下はその逆ですが,日本はこのゾーンに位置しています。
横軸の人口あたりの警官数は,他の主要国とほぼ同じですが,やはり女性比率が低いのがネック。2023年までに,この値を10%まで高めることを目標とされていますが,どうなることか。現状は明らかに,先進国にふさわしくない位置であるのは確かです。
2016年2月21日日曜日
勉強時間格差
近年,あらゆる面での格差が開いているといいますが,子どもの勉強という点ではどうでしょう。子どもの本分は勉強ですが,する子としない子の分化(segragation)が大きくなってきている。こういう声をよく聞きます。
苅谷剛彦教授が『階層化日本と教育危機』(有信堂)という著作において,意欲格差(インセンティブ・ディバイド)という現象を指摘したのは,2001年,今世紀の初頭です。それから15年経過しましたが,この現象はどうなっているのか。
私は,子どもの勉強時間の分布に注目することとしました。これは,文科省の『全国学力・学習状況調査』に載っています。このデータから,勉強をする子としない子の分化,勉学時間格差の様相を数値で可視化してみようと思います。
なお,全国データをみるだけでは面白くないので,地域差という視点も据えましょう。上記調査であ,都道府県別の勉強時間分布も明らかにされています。私は,最新の2015年度調査の資料にあたって,公立小学校6年生の勉強時間分布を県別に採取しました。
小6児童の勉強時間分布は,県によって多様です。全県を観察すると,とりわけ大阪の分布の特異性が目立っています。下表は,大阪の公立小学校6年生について,休日1日あたりの勉強時間分布を示したものです。
有効回答を寄せた73093人の分布ですが,半分が1時間未満,ゼロ勉強も2割います。その一方で,4時間以上のガリ勉君も7.4%います(児童数の相対度数を参照)。
図の提示は省きますが,東北の秋田は,中間の階級が厚い分布です。対して,大阪は両端の分化が相対的に大きくなっています。ここでの関心事である,勉学時間格差が大きい,ということになります。
ジニ係数という指標で,その程度を「見える化」してみましょう。上表の6つの階級に属する児童数の分布と,各々の勉強時間量のそれがどれほどズレているかに着眼するものです。
各階級の勉強時間は,中間の値(階級値)で代表させます。1時間台の児童は,中間の1.5時間(90分)と仮定します。一番上の4時間以上の群は,ひとまず4.5時間(270分)とみなしましょう。
これによると,勉強時間1時間台の階級の勉強時間総量は,90分×16645人=1498050分となります。6つの階級のトータルは,5408430時間なり。
注目するのは,この勉学時間の分布と児童数分布がどれほどズレているかです。中央の相対度数をみると,勉強時間ゼロの階級は,児童数では2割いますが,勉強時間総量は当然ゼロ。一方,児童数では7.4%しかいないマックスの階級が,勉強時間では全体の26.9%をも占めています。
こうした偏りは,右欄の累積相対度数をみると,もっとクリアーです。この累積相対度数をグラフにすることで,児童数の分布と勉学時間量の分布のズレが可視化されます。下図は,横軸に児童す,縦軸に勉強時間量の累積相対度数をとった座標上に,6つの階級をプロットし線でつないだものです。これを,ローレンツ曲線といいます。
弓なりの曲線ですが,このカーブの底が深いほど,児童数と勉強時間の分布の隔たりが大きいことになります。つまり,勉強をする子としない子の分化,勉強時間の格差が大きいことを意味します。
ここで求めようとしているジニ係数とは,この曲線の深さを表現するもので,上図の色付きの面積を2倍して出されます。算出された,大阪の小6児童の勉強時間ジニ係数(休日)は0.536です。
ジニ係数は0.0~1.0の範囲をとりますが,一般に0.4を超えると,値は高いと判定されます。大阪の休日の勉強時間ジニ係数は,この水準を超えています。この西の大都市では,子どもの勉強時間格差が大きいようです。
これは絶対水準の評価ですが,他県と比した相対水準はどうでしょう。私は同じやり方で,全県について,小6児童の勉強時間ジニ係数を計算しました。休日だけでなく,平日のそれも出してみました。下の表は,係数が高い順に並べたランキング表です。
平日・休日ともトップは大阪です。子どもの勉強時間格差が最も大きい,する子としない子の分化が最も激しい地域ということになります。上位は,都市部が多いですね。おそらくは,塾通いをする子としない子の差でしょう。平日より休日で,それが顕著に出ると。
一方,差が小さいのは東北や北陸の県です。これらの県の勉強時間分布は中央が厚いノーマルカーブなので,ジニ係数も小さく出ます。学力トップの秋田はその典型。
想像がつくでしょうが,上記の勉強時間ジニ係数は,全体の学力(教科の平均正答率)とマイナスの相関関係にあります。勉強時間格差が小さい県ほど,全体の学力が高い傾向です。全体の底上げを図ったほうがよい,ということでしょうね。
まあ,上記のジニ係数のような面倒な指標を計算せずとも,勉強をする子としない子,つまり両端の比重を出してグラフにすれば,ここで言わんとすることは分かります。下図がそれです。
右上はガリ勉君とゼロ勉君の両方が多い,つまり勉強時間格差の大きい県ということになります。先ほどの表のジニ係数が高い県と一致します。左下は,その反対です。
普通に考えるなら,上図のドットの配置は右下がりになると想定されるのですが,現実はさにあらず。上が多いほど下も多い。こういう現実になっています。ある方が言われていましたが,「格差」が今の日本のキーワードになりそうです。
目につきやすい平均値だけでなく,分布に注目する。統計分析のイロハですが,子どもの勉強時間や学力については,その視点が重要であると,改めて思いました。昨今の社会状況を考えると,なおさらのことです。
2016年2月20日土曜日
東京都内49市区の保育所供給率(2015年)
認可保育所の4月入園可否の通知が届く時期です。全国の至る所で,安堵と落胆の声が上がっています。「保育所落ちた 日本死ね」と叫んだ,匿名ブログが話題になっています。
http://www.j-cast.com/2016/02/17258821.html
共働き夫婦が子どもを預ける保育所不足による,待機児童問題が深刻化していることは,誰もが知っています。とりわけ,核家族化が進んだ都市部ではそれが顕著です。
たとえば大都市の東京都ですが,都内の地域別にみても,認可保育所に入れている乳幼児の数は違っています。
東京都の『福祉衛生統計年報』(2014年度)という資料に,2015年4月1日時点の認可保育所在所児数が,都内の市区町村別に載っています。これを,同年1月1日時点の0~5歳人口で除して,各地域の保育所供給率を試算してみました。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/chosa_tokei/nenpou/2014.html
乳幼児人口の何%が保育所に入れているかです。下表は,算出された都内49市区の保育所供給率の一覧表です。分母の0~5歳人口は,0~4歳人口に,5~9歳人口の5分の1を足して出していること申し添えます。地域別の人口統計は5歳刻みの公表なので,こうした便法をとりました。
黄色マークは最高値,青色マークは最低値を意味します。2015年の都内49市区の保育所供給率は,最低の24.3%から最高の54.2%まで,広く分布しています。赤字は上位5位ですが,保育所供給率が高い地域は,西のほうに多くなっています。
ママたちの保育所増設運動が起きた,杉並区や世田谷区の値は低し。30%未満です。
各市区の保育所供給率は当然,幼子がいるママの就業率と相関していることでしょう。ちょっと古いですが,2010年の『国勢調査』のデータを使って,6歳未満の子がいる母親の就業率を市区別に計算してみました。夫がいる核家族世帯の妻の就業率です。
表の右欄の数値がそれですが,こちらも地域差が大きくなっています。最低は東村山市の29.7%,最高は千代田区の44.7%です。
上表の保育所供給率と母親の就業率の相関図を描いてみましょう。横軸に後者,縦軸に前者をとった座標上に,49市区を配置したグラフです。
攪乱がありますが,おおよそ,保育所供給率が高い市区ほど,乳幼児がいる母親の就業率が高い傾向がみられます。回帰直線は右上がりです。相関係数は+0.5467で,49というケース数を考慮した場合,1%水準で有意と判断されます。
横軸が2015年,縦軸が2010年というように,データのタイムラグがあるのですが,これを埋めたら,相関はもっとクリアーになるのでは。2015年の『国勢調査』のデータ公表が待ち遠しいです。
上図に出ているのはあくまで相関ですが,「保育所の不足→母親の就業機会のはく奪」という因果経路を,多くの方が想像するかと思います。働く母親が少ない(需要がない)から,保育所を作らないなどという,逆の解釈は正しくないでしょう。
認可保育所の入園可否が決まる時期ということもあってか,先日,保育意識の国際比較をしたニューズウィーク記事がよく読まれているようです。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/02/post-4532.php
就学前の乳幼児の世話は誰がすべきかに関する意識の比較ですが,日本は「家族」という回答が多いのに対し,北欧は「政府機関」と考える人がマジョリティー。「私型」の保育と「公型」の保育の違いがはっきり出ています。
スウェーデンでは,希望者を保育所に入れるのは自治体の法的な義務であり,日本でいう待機児童はほぼゼロだそうです。
ヨーロッパ諸国とわが国では社会構造が違うといわれそうですが,核家族化のレベルはそれほど違いません。上記のNW記事でも書きましたが,北欧よりも日本のほうが,核家族世帯率は高くらいです。
にもかかわらず,日本の「私」型保育は変わっておらず,むしろそれを強化する方針すら出されています(三世代同居の推奨など)。これでは,少子化は進もうというものです。
少子高齢化,核家族化が進んだ今の日本では,家族依存型福祉はもう限界に来ています。それにかんがみ,公のサポートを増やす時期にきています。その策の一つは保育士の待遇改善ですが,私は,そのための公的な基金を設けてもよいと考えています。保育所の非利用者から反発があるでしょうが,保育を充実できるかどうかは,社会の維持・存続にかかわる大問題です。子がおらず,保育所とは縁のない人とて,将来は下の世代に支えられることになるのですから。
http://www.j-cast.com/2016/02/17258821.html
共働き夫婦が子どもを預ける保育所不足による,待機児童問題が深刻化していることは,誰もが知っています。とりわけ,核家族化が進んだ都市部ではそれが顕著です。
たとえば大都市の東京都ですが,都内の地域別にみても,認可保育所に入れている乳幼児の数は違っています。
東京都の『福祉衛生統計年報』(2014年度)という資料に,2015年4月1日時点の認可保育所在所児数が,都内の市区町村別に載っています。これを,同年1月1日時点の0~5歳人口で除して,各地域の保育所供給率を試算してみました。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/chosa_tokei/nenpou/2014.html
乳幼児人口の何%が保育所に入れているかです。下表は,算出された都内49市区の保育所供給率の一覧表です。分母の0~5歳人口は,0~4歳人口に,5~9歳人口の5分の1を足して出していること申し添えます。地域別の人口統計は5歳刻みの公表なので,こうした便法をとりました。
黄色マークは最高値,青色マークは最低値を意味します。2015年の都内49市区の保育所供給率は,最低の24.3%から最高の54.2%まで,広く分布しています。赤字は上位5位ですが,保育所供給率が高い地域は,西のほうに多くなっています。
ママたちの保育所増設運動が起きた,杉並区や世田谷区の値は低し。30%未満です。
各市区の保育所供給率は当然,幼子がいるママの就業率と相関していることでしょう。ちょっと古いですが,2010年の『国勢調査』のデータを使って,6歳未満の子がいる母親の就業率を市区別に計算してみました。夫がいる核家族世帯の妻の就業率です。
表の右欄の数値がそれですが,こちらも地域差が大きくなっています。最低は東村山市の29.7%,最高は千代田区の44.7%です。
上表の保育所供給率と母親の就業率の相関図を描いてみましょう。横軸に後者,縦軸に前者をとった座標上に,49市区を配置したグラフです。
攪乱がありますが,おおよそ,保育所供給率が高い市区ほど,乳幼児がいる母親の就業率が高い傾向がみられます。回帰直線は右上がりです。相関係数は+0.5467で,49というケース数を考慮した場合,1%水準で有意と判断されます。
横軸が2015年,縦軸が2010年というように,データのタイムラグがあるのですが,これを埋めたら,相関はもっとクリアーになるのでは。2015年の『国勢調査』のデータ公表が待ち遠しいです。
上図に出ているのはあくまで相関ですが,「保育所の不足→母親の就業機会のはく奪」という因果経路を,多くの方が想像するかと思います。働く母親が少ない(需要がない)から,保育所を作らないなどという,逆の解釈は正しくないでしょう。
認可保育所の入園可否が決まる時期ということもあってか,先日,保育意識の国際比較をしたニューズウィーク記事がよく読まれているようです。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/02/post-4532.php
就学前の乳幼児の世話は誰がすべきかに関する意識の比較ですが,日本は「家族」という回答が多いのに対し,北欧は「政府機関」と考える人がマジョリティー。「私型」の保育と「公型」の保育の違いがはっきり出ています。
スウェーデンでは,希望者を保育所に入れるのは自治体の法的な義務であり,日本でいう待機児童はほぼゼロだそうです。
ヨーロッパ諸国とわが国では社会構造が違うといわれそうですが,核家族化のレベルはそれほど違いません。上記のNW記事でも書きましたが,北欧よりも日本のほうが,核家族世帯率は高くらいです。
にもかかわらず,日本の「私」型保育は変わっておらず,むしろそれを強化する方針すら出されています(三世代同居の推奨など)。これでは,少子化は進もうというものです。
少子高齢化,核家族化が進んだ今の日本では,家族依存型福祉はもう限界に来ています。それにかんがみ,公のサポートを増やす時期にきています。その策の一つは保育士の待遇改善ですが,私は,そのための公的な基金を設けてもよいと考えています。保育所の非利用者から反発があるでしょうが,保育を充実できるかどうかは,社会の維持・存続にかかわる大問題です。子がおらず,保育所とは縁のない人とて,将来は下の世代に支えられることになるのですから。
2016年2月19日金曜日
全国1271市区町村の平均世帯年収分布
パソコンを新調し,今日の午前中は,そのセットアップに費やしました。前に使っていたパソコンのOSはウィンドウズvistaなのですが,4月以降,これではグーグルクロームが使えなくなるそうです。そこで,最新の「10」が搭載されたパソコンに買い替えることとしました。
まだ使えますが,もう6年も使用しましたので,まあよしとしましょう。新しくかったのは,F士通のワケありデスクトップ(返品再生品)なのですが,何も問題ありません。格安だったし,トクした気分です。
新しいパソコンにはエクセル2013が入っているのですが,これが使い勝手がよくない。グラフも作りにくい。まあ,そのうち慣れるでしょうが,今回の記事に載せる散布図を作るのに,えらい苦労しました。
今回は,タイトルに記したデータをお見せしようと思います。総務省の『住宅土地統計』(2013年)からつくったデータです。前に,首都圏214市区町村の平均世帯年収を出したことがありますが,今回は全国の1271市区町村にまで射程を広げ,その分布を明らかにしてみました。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/03/2013.html
当該資料には,各地域の世帯の年収分布が掲載されています。私が住んでいる多摩市の分布は,以下です。年収が不明の世帯は除きます。
年収が判明するのは63870世帯ですが,最も多いのは,年収300万円台の階級ですね。まあ,ノーマルに近い分布です。私がどこら辺かは,想像にお任せします。
この分布から平均世帯年収を出すのですが,度数分布表から平均を出す場合は,階級値を使います。各階級に属する世帯の年収を,中間の値(階級値)で代表させます。たとえば,年収300万円台の世帯は,一律年収350万円とみなすわけです。上限のない年収1500万超の世帯は,ひとまず年収2000万円と仮定しましょう。
この場合,多摩市の平均世帯年収は,以下のようにして算出されます。全体を100とした相対度数を使ったほうが,計算は楽です。
{(50万×6.1)+(150万×10.6)+・・・(2000万×1.5)}/100.0 ≒ 489.8万円
私が住んでいる多摩市の平均年収は,489.8万円なり。ジブリ「耳をすませば」(1995年)のモデルとなった,丘の上の桜が丘地区に限ったら値はうんと高くなるでしょうが,市全体でみるとこんなとこでしょうか。それにこれは,単身世帯や高齢世帯も含む全世帯の平均ですし。
私は,これと同じやり方で,全国の1271市区町村の平均世帯年収を計算しました。大変な手間と思われるかもしれませんが,そうでもありません。今の官庁統計はリモート集計ができ,「地域×世帯年収」のクロス表をつくり,それをエクセルにコピペして,上記の計算を施しただけです。
これが15年くらいまえだったら,それこそ「1か月」仕事です。しかし今では,それがわずか30分ほどでできると。便利な時代になったものです。
1271市区町村の平均世帯年収を出すと,最低の240万円から最高の793万円まで,非常に大きなレインヂが見られます。同じ日本かと思うくらいです。100万円刻みの階級を設けて,ヒストグラムにすると,下図のようになります。
真ん中の層が厚い,きれいな分布です。最も多いのは,年収450万以上500万未満の地域。私が住んでいる多摩市も,この階級に含まれます。
平均年収600万を超える富裕地域は16ですが,その上位3位を取り出すと,東京の千代田区,港区,そして横浜市の青葉区です。スゴイですねえ。これは平均ですが,六本木ヒルズのある港区では,年収1000万超の世帯が全体の4分の1を占めます。
上記の分布図では,地域の顔が見えませんので,その一部をご覧に入れましょう。分析対象の1271市区町村のうち,平均世帯年収が上位50位の市区町村を掲げます。
7位まで,東京と神奈川の市区町村が寡占。8位になって,兵庫県の芦屋市が出てきます。表全体をみると,愛知県の地域も結構多いですね。この50市区町村のうち,33の市区町村が,東京・神奈川・愛知の地域です。富裕地域の恐るべき集中度。
これは平均世帯年収ですが,もう一つ,先ほどちょっと言及した,年収1000万以上世帯比率も加味してみましょう。年収1000万を超える富裕世帯が,全体の何%かです。横軸に平均世帯年収,縦軸に年収1000万以上世帯比率をとった座標上に,1271市区町村を配置すると,下のグラフのようになります。十字の点線は,1271市区町村の平均値です。
右上にあるのは,「お金持ち」地域です。都内特別区,横浜市内の5つの区がかっ飛んでいます。私が住んでいる多摩市は,センターよりもちょと右上。自分の地域の位置がわかりました。
今回は全国に観察範囲を広げましたが,住民の経済力にこうもバラツキがあることに驚かされます。エンリコ・モレッティの言ではないですが,「年収は住むところで決まる」かもしれません。そうした地域の条件が,子どもの発達(学力,体力,健康)と強く関連することは,本ブログで何度も明らかにした通りです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/03/blog-post_12.html
まだ使えますが,もう6年も使用しましたので,まあよしとしましょう。新しくかったのは,F士通のワケありデスクトップ(返品再生品)なのですが,何も問題ありません。格安だったし,トクした気分です。
新しいパソコンにはエクセル2013が入っているのですが,これが使い勝手がよくない。グラフも作りにくい。まあ,そのうち慣れるでしょうが,今回の記事に載せる散布図を作るのに,えらい苦労しました。
今回は,タイトルに記したデータをお見せしようと思います。総務省の『住宅土地統計』(2013年)からつくったデータです。前に,首都圏214市区町村の平均世帯年収を出したことがありますが,今回は全国の1271市区町村にまで射程を広げ,その分布を明らかにしてみました。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/03/2013.html
当該資料には,各地域の世帯の年収分布が掲載されています。私が住んでいる多摩市の分布は,以下です。年収が不明の世帯は除きます。
年収が判明するのは63870世帯ですが,最も多いのは,年収300万円台の階級ですね。まあ,ノーマルに近い分布です。私がどこら辺かは,想像にお任せします。
この分布から平均世帯年収を出すのですが,度数分布表から平均を出す場合は,階級値を使います。各階級に属する世帯の年収を,中間の値(階級値)で代表させます。たとえば,年収300万円台の世帯は,一律年収350万円とみなすわけです。上限のない年収1500万超の世帯は,ひとまず年収2000万円と仮定しましょう。
この場合,多摩市の平均世帯年収は,以下のようにして算出されます。全体を100とした相対度数を使ったほうが,計算は楽です。
{(50万×6.1)+(150万×10.6)+・・・(2000万×1.5)}/100.0 ≒ 489.8万円
私が住んでいる多摩市の平均年収は,489.8万円なり。ジブリ「耳をすませば」(1995年)のモデルとなった,丘の上の桜が丘地区に限ったら値はうんと高くなるでしょうが,市全体でみるとこんなとこでしょうか。それにこれは,単身世帯や高齢世帯も含む全世帯の平均ですし。
私は,これと同じやり方で,全国の1271市区町村の平均世帯年収を計算しました。大変な手間と思われるかもしれませんが,そうでもありません。今の官庁統計はリモート集計ができ,「地域×世帯年収」のクロス表をつくり,それをエクセルにコピペして,上記の計算を施しただけです。
これが15年くらいまえだったら,それこそ「1か月」仕事です。しかし今では,それがわずか30分ほどでできると。便利な時代になったものです。
1271市区町村の平均世帯年収を出すと,最低の240万円から最高の793万円まで,非常に大きなレインヂが見られます。同じ日本かと思うくらいです。100万円刻みの階級を設けて,ヒストグラムにすると,下図のようになります。
真ん中の層が厚い,きれいな分布です。最も多いのは,年収450万以上500万未満の地域。私が住んでいる多摩市も,この階級に含まれます。
平均年収600万を超える富裕地域は16ですが,その上位3位を取り出すと,東京の千代田区,港区,そして横浜市の青葉区です。スゴイですねえ。これは平均ですが,六本木ヒルズのある港区では,年収1000万超の世帯が全体の4分の1を占めます。
上記の分布図では,地域の顔が見えませんので,その一部をご覧に入れましょう。分析対象の1271市区町村のうち,平均世帯年収が上位50位の市区町村を掲げます。
7位まで,東京と神奈川の市区町村が寡占。8位になって,兵庫県の芦屋市が出てきます。表全体をみると,愛知県の地域も結構多いですね。この50市区町村のうち,33の市区町村が,東京・神奈川・愛知の地域です。富裕地域の恐るべき集中度。
これは平均世帯年収ですが,もう一つ,先ほどちょっと言及した,年収1000万以上世帯比率も加味してみましょう。年収1000万を超える富裕世帯が,全体の何%かです。横軸に平均世帯年収,縦軸に年収1000万以上世帯比率をとった座標上に,1271市区町村を配置すると,下のグラフのようになります。十字の点線は,1271市区町村の平均値です。
右上にあるのは,「お金持ち」地域です。都内特別区,横浜市内の5つの区がかっ飛んでいます。私が住んでいる多摩市は,センターよりもちょと右上。自分の地域の位置がわかりました。
今回は全国に観察範囲を広げましたが,住民の経済力にこうもバラツキがあることに驚かされます。エンリコ・モレッティの言ではないですが,「年収は住むところで決まる」かもしれません。そうした地域の条件が,子どもの発達(学力,体力,健康)と強く関連することは,本ブログで何度も明らかにした通りです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/03/blog-post_12.html
2016年2月16日火曜日
男性のWLB指数の国際比較
WLBとは,「ワーク・ライフ・バランス」の略です。和訳すると「仕事と生活の調和」となります。共生社会の実現を掲げる,内閣府の政策の目玉ポイントです。
大人の生活の場は,家庭,職場,地域社会からなりますが,わが国の成人男性にあっては,職場の比重が殊に大きいことはよく知られています。WLB施策は,それを是正しようとする営みに他なりません。
現実に,男性のWLBはどれほど進んでいるか。私は,仕事時間(W)と家庭での生活時間(F)を使った,簡便な尺度を考えてみました。以下のようなものです。
WLB指数=F/(W+F)
ISSPが2012年に実施した『家族と性役割に関する意識調査』では,週当たりの仕事時間と家事・家族ケア時間を尋ねています。日本の子(18歳未満)持ちの有配偶男性でみると,週当たりの平均仕事時間は51.0時間,平均家事・家族ケア時間は12.0時間です(ローデータより独自に計算)。よって上記の指数は,19.1%と算出されます。
http://www.issp.org/index.php
WとFの合算に占めるFの割合は,およそ5分の1です。スウェーデンの子持ち有配偶男性は,仕事時間が42.1時間,家事・家族ケア時間が28.6時間ですから,WLB指数は40.5%となります。この北欧国では4割。違うものですねえ。
この値を他国についても計算してみました。下表は,その一覧です。18歳未満の子がいる有配偶男性のWLB指数です。指数の計算に使った,WとFの値も掲げておきます。
日本の男性のWLB指数は,値を計算できた34か国の中では最低となっています。それもそもはず。仕事時間は4位ですが,家事・家族ケア時間は最下位ですので。
われわれの感覚からすれば,働き盛りのオトコの「F/(W+F)」の値が2割ほどというのは,さして違和感がありませんが,国際的にみたら特異であるようです。34か国のWLB指数の平均値は35.8%であり,40%(4割)を超える国もあります。アイルランドやインドは45%超で,WとFがほぼ拮抗しています。女性蔑視が強いといわれるインドですが,この国のダンナは結構家事をするんですよ。
上表のデータをビジュアル化しておきましょう。横軸に仕事時間,縦軸に家事・家族ケア時間をとった座標上に,34の国を配置しました。斜線は,WLB指数を表します。
日本の男性は仕事時間が長く,家事・家族ケア時間が短いので,右下に位置しています。先ほど述べたように,WLB指数は20%未満,最下位です。
韓国は20%台前半,独仏英は30%台後半,瑞米は40%超なり。この図から,子持ち男性のWとFの絶対水準と同時に,WLB指数の位置もみてとれます。
日本のお父さんはこういう状況なのですが,これは,子どもたちにとっての悪いモデルとなっていそうです。日々の家庭でみる父親の姿がこうでは,学校におけるWLB教育の効果も半減しようというものです(反面教師になることはあり得ますが)。
教育は,真空の中で行われているのではありません。まぎれもなく,外部社会の影響を被っています。われわれは一時たりとも,このことを忘れるべきではありません。
大人の生活の場は,家庭,職場,地域社会からなりますが,わが国の成人男性にあっては,職場の比重が殊に大きいことはよく知られています。WLB施策は,それを是正しようとする営みに他なりません。
現実に,男性のWLBはどれほど進んでいるか。私は,仕事時間(W)と家庭での生活時間(F)を使った,簡便な尺度を考えてみました。以下のようなものです。
WLB指数=F/(W+F)
ISSPが2012年に実施した『家族と性役割に関する意識調査』では,週当たりの仕事時間と家事・家族ケア時間を尋ねています。日本の子(18歳未満)持ちの有配偶男性でみると,週当たりの平均仕事時間は51.0時間,平均家事・家族ケア時間は12.0時間です(ローデータより独自に計算)。よって上記の指数は,19.1%と算出されます。
http://www.issp.org/index.php
WとFの合算に占めるFの割合は,およそ5分の1です。スウェーデンの子持ち有配偶男性は,仕事時間が42.1時間,家事・家族ケア時間が28.6時間ですから,WLB指数は40.5%となります。この北欧国では4割。違うものですねえ。
この値を他国についても計算してみました。下表は,その一覧です。18歳未満の子がいる有配偶男性のWLB指数です。指数の計算に使った,WとFの値も掲げておきます。
日本の男性のWLB指数は,値を計算できた34か国の中では最低となっています。それもそもはず。仕事時間は4位ですが,家事・家族ケア時間は最下位ですので。
われわれの感覚からすれば,働き盛りのオトコの「F/(W+F)」の値が2割ほどというのは,さして違和感がありませんが,国際的にみたら特異であるようです。34か国のWLB指数の平均値は35.8%であり,40%(4割)を超える国もあります。アイルランドやインドは45%超で,WとFがほぼ拮抗しています。女性蔑視が強いといわれるインドですが,この国のダンナは結構家事をするんですよ。
上表のデータをビジュアル化しておきましょう。横軸に仕事時間,縦軸に家事・家族ケア時間をとった座標上に,34の国を配置しました。斜線は,WLB指数を表します。
日本の男性は仕事時間が長く,家事・家族ケア時間が短いので,右下に位置しています。先ほど述べたように,WLB指数は20%未満,最下位です。
韓国は20%台前半,独仏英は30%台後半,瑞米は40%超なり。この図から,子持ち男性のWとFの絶対水準と同時に,WLB指数の位置もみてとれます。
日本のお父さんはこういう状況なのですが,これは,子どもたちにとっての悪いモデルとなっていそうです。日々の家庭でみる父親の姿がこうでは,学校におけるWLB教育の効果も半減しようというものです(反面教師になることはあり得ますが)。
教育は,真空の中で行われているのではありません。まぎれもなく,外部社会の影響を被っています。われわれは一時たりとも,このことを忘れるべきではありません。
2016年2月14日日曜日
大卒就業者の年収の性差(国際比較)
多くの人は働いて収入を得ているわけですが,その多寡に男女差があることは,よく知られています。学歴という,収入を大きく左右する条件を揃えてもそうでしょう。
私は前から,大卒男女の年収の性差が国によってどう違うかを明らかにしたい,と思っていました。このことは,女性のハイタレントがどう扱われているか,という問題に通じます。ISSPが2012年に実施した『家族と性役割に関する意識調査』のローデータを使って,それをやってみました。その結果をレポートします。
本調査では,就業している者に対し,年収の額を尋ねています。私は,25~59歳の大卒男女就業者のサンプルを取り出し,年収の分布を明らかにしました。ここでいう大卒には,大学院卒も含みます。
本当は正社員に限定し,年齢をもっと狭く限るのが望ましいのですが,如何せんサンプルが少ないので,こうしたラフな措置をとっています。正規・非正規の内訳が男女で異なることの影響が出ますが,正社員として働くチャンスのジェンダー差も見るということで,就業者全体の比較でもよいでしょう。
下表は,日本の年収分布です。
原資料の年収階級は,上記のような階級値の形になっています。年収350万円とは,年収300万円台のことです。
右欄の相対度数をみると,やはり男性のほうが高収入の階級に多く分布しています。ボリュームゾーンは,年収500万円台。女性は,非正規雇用(パート等)も多いので,低収入層も多くなっています。
この分布から平均値を出すと,男性は585.6万円,女性は318.3万円となります。その差は1.84倍。同じ大卒でも,男女で違いますねえ。女性は非正規が多いからですが,ハイタレント女性の正社員就業が難しい,という問題の表われともとれます。
ここでの関心は,このジェンダー倍率が国によってどう違うかです。私は,上記のような年収分布表(各国通過)を国ごとに作り,男女の平均年収を出し,「男性/女性」の倍率を計算しました。アメリカは男性が7.1万ドル,女性が5.0万ドルですので,ジェンダー倍率は1.42倍となります。日本より低いですね。
下の図は,この倍率が高い順に20か国を並べたランキングです。年収が判明する有効サンプル数が,男女いずれかで50人を割る国は,分析対象から外しています。
日本は,20か国の中でトップです。高学歴就業者の年収の性差が最も大きい社会ということになります。その次は,お隣の韓国。最下位はフィンランドで,大卒者同士を比べると,年収の性差はほとんどありません。
先ほど述べたように,非正規も含む就業者全体のデータです。よって,ハイタレント女性の正社員就業チャンスが少ないという問題があるでしょう。言わずもがな,同じ大卒正社員で同じような仕事をしても,年収は男女で違っています。
ラフな国際統計ですが,日本ではこういう問題が他国に比して強いのではないかと推察されます。日本は高学歴女性の就業率が低いのですが,こういう現実を目の当たりにして,就業意欲が削がれている,ということもあり得るのでは。
上記のジェンダー倍率は,大卒女性の就業率と少しばかり相関しています。横軸に上図の年収ジェンダー倍率,縦軸に高学歴女性の就業率をとった座標上に,20か国を配置すると,下図のようになります。
傾向としては,大卒就業者の年収の性差が大きい国ほど,大卒女性の就業率が低くなっています。相関係数は,-0.32806です。ケース数が少ないので,統計的に有意ではありませんが,注視すべき傾向ではあります。
わが国では,女性のハイタレントが活用されていない(されにくい),また彼女らが不利益を被っている。この問題が他国に比して色濃いのは,今回のラフな国際比較からもいえそうです。
2016年2月13日土曜日
中学校教員の年齢層別の課外活動指導時間
最近,学校現場でいろいろ取りざたされている部活ですが,その指導負担の重さに耐えかねた教員らが動き出したようです。部活顧問をするかどうかの選択権を教員に与えるべきと,公立中学校の若手教員がネット署名を募っています。
http://www.asahi.com/articles/ASJ2D4V8VJ2DUTIL031.html
部活は,課外活動に属し,正規の授業には含まれません。よって,教員免許を持つ教員が指導に当たる必要はないのですが,日本ではその指導の多くを教員が担っており,過労・多忙の大きな原因となっています。
それはとくに深刻なのは,若手でしょう。体力のある若手教員は運動部の指導を任され,練習や試合の引率なので,土日や長期休暇も返上になる。平日においても,朝練や夕方遅くまでの練習など。こういう声は,至るところで聞かれます。
前に,課外活動指導時間の国際比較をしたのですが,日本の中学校教員の平均指導時間は7.8時間で,世界一でした。
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/09/blog-post_23.html
これは若手や年輩も含めた全教員の平均ですが,今回は,年齢層別の平均指導時間を出してみようと思います。若手ほど長いことは誰もが肌感覚で知っていますが,数値でそれを表してみましょう。
資料は,2013年にOECDが実施した国際教員調査「TALIS 2013」です。この調査では,各国の中学校教員に対し,週間の課外活動指導時間を尋ねています。直近の1週間の指導時間(H)を記入してもらう形式です。
http://www.oecd.org/edu/school/talis-excel-figures-and-tables.htm
私は,本調査のローデータを使って,各国の年齢層別の平均値を計算してみました。下表は,32か国の一覧表です(ドイツは不参加)。
どの年齢層も,日本がトップです。日本の場合,そのほぼ全ては部活指導でしょう。しかし,北欧のスウェーデンなんかは,全然違いますねえ。どの層も,この手の課外活動指導にはほぼノータッチ。学校での部活という概念がなく,日本でいう運動部の活動などは,地域のスポーツクラブに委ねれていると聞きます。
日本国内でみると,予想通り,若い層ほど週間の平均指導時間が長くなっています。20代が9.6時間,30代が8.9時間,40代が7.8時間,50代が5.7時間です。上記の署名活動の担い手が若手というのも,分かる気がします。
わが国は年功序列のお国柄も反映してか,年齢差が大きいことにも注目。20代は9.6時間,50代は5.7時間で,4時間近くも違います。対して他の先進国では,さほど年齢差はないようです。
こうした若手と年輩の距離を可視化してみましょう。課外活動指導時間だけでなく,授業なども含めた総勤務時間の差も考慮します。横軸に後者,縦軸に前者の平均週間時間をとった座標上に,主要国の20代(○)と50代(●)のドットを配置すると,下図のようになります。
各国の線分の長さが,若手と年輩の距離に相当します。役割差の大きさの表現といってもよいでしょう。
主要国でみると,日本の線分が飛びぬけて長くなっています。年齢による役割規範が大きい風潮が表われていますね。欧米では,こうした違いはほとんどありません。米仏では,線分が見えないほどです。
まあ,いつの時代も同じといえばそうなのですが,最近は教員集団の年齢構成も逆ピラミッド型になっていることから,少数の若手に負荷が凝縮される構造になっているともいえるでしょう。
1月27日のプレジデント記事でみたように,教員の病気離職率は,近年では20代で最も高くなっています。この層に対するサポート,負担緩和が必要であることは,既に指摘しました。上の世代は,下の世代の重荷になるのではなく,サポート資源にならないといけません。でないと,2004年に起きた新人女性教員の自殺事件のような悲劇が,また繰り返されます。
部活の話から逸れましたが,課外活動の指導を教員が一手に担う日本の現状は,国際的にみたら特異です。年齢層別にみると,それにより若手に大きな負荷がかかっているのは明らか。冒頭の朝日新聞記事で,学習院大学の長沼教授が言われているように,「今回の署名運動は現場からの「NO」の声だ。運動を機に,今年を「部活改革元年」としてきたい」ものです。
それを具現する手立ては,既に示されています。「チーム学校」という人材組織を学校に導入することです。その中には,部活動支援員というスタッフも含まれます。こうした人的資源の活用により,国際標準から隔たった日本の学校現場が変わることを願います。
http://www.asahi.com/articles/ASJ2D4V8VJ2DUTIL031.html
部活は,課外活動に属し,正規の授業には含まれません。よって,教員免許を持つ教員が指導に当たる必要はないのですが,日本ではその指導の多くを教員が担っており,過労・多忙の大きな原因となっています。
それはとくに深刻なのは,若手でしょう。体力のある若手教員は運動部の指導を任され,練習や試合の引率なので,土日や長期休暇も返上になる。平日においても,朝練や夕方遅くまでの練習など。こういう声は,至るところで聞かれます。
前に,課外活動指導時間の国際比較をしたのですが,日本の中学校教員の平均指導時間は7.8時間で,世界一でした。
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/09/blog-post_23.html
これは若手や年輩も含めた全教員の平均ですが,今回は,年齢層別の平均指導時間を出してみようと思います。若手ほど長いことは誰もが肌感覚で知っていますが,数値でそれを表してみましょう。
資料は,2013年にOECDが実施した国際教員調査「TALIS 2013」です。この調査では,各国の中学校教員に対し,週間の課外活動指導時間を尋ねています。直近の1週間の指導時間(H)を記入してもらう形式です。
http://www.oecd.org/edu/school/talis-excel-figures-and-tables.htm
私は,本調査のローデータを使って,各国の年齢層別の平均値を計算してみました。下表は,32か国の一覧表です(ドイツは不参加)。
どの年齢層も,日本がトップです。日本の場合,そのほぼ全ては部活指導でしょう。しかし,北欧のスウェーデンなんかは,全然違いますねえ。どの層も,この手の課外活動指導にはほぼノータッチ。学校での部活という概念がなく,日本でいう運動部の活動などは,地域のスポーツクラブに委ねれていると聞きます。
日本国内でみると,予想通り,若い層ほど週間の平均指導時間が長くなっています。20代が9.6時間,30代が8.9時間,40代が7.8時間,50代が5.7時間です。上記の署名活動の担い手が若手というのも,分かる気がします。
わが国は年功序列のお国柄も反映してか,年齢差が大きいことにも注目。20代は9.6時間,50代は5.7時間で,4時間近くも違います。対して他の先進国では,さほど年齢差はないようです。
こうした若手と年輩の距離を可視化してみましょう。課外活動指導時間だけでなく,授業なども含めた総勤務時間の差も考慮します。横軸に後者,縦軸に前者の平均週間時間をとった座標上に,主要国の20代(○)と50代(●)のドットを配置すると,下図のようになります。
各国の線分の長さが,若手と年輩の距離に相当します。役割差の大きさの表現といってもよいでしょう。
主要国でみると,日本の線分が飛びぬけて長くなっています。年齢による役割規範が大きい風潮が表われていますね。欧米では,こうした違いはほとんどありません。米仏では,線分が見えないほどです。
まあ,いつの時代も同じといえばそうなのですが,最近は教員集団の年齢構成も逆ピラミッド型になっていることから,少数の若手に負荷が凝縮される構造になっているともいえるでしょう。
1月27日のプレジデント記事でみたように,教員の病気離職率は,近年では20代で最も高くなっています。この層に対するサポート,負担緩和が必要であることは,既に指摘しました。上の世代は,下の世代の重荷になるのではなく,サポート資源にならないといけません。でないと,2004年に起きた新人女性教員の自殺事件のような悲劇が,また繰り返されます。
部活の話から逸れましたが,課外活動の指導を教員が一手に担う日本の現状は,国際的にみたら特異です。年齢層別にみると,それにより若手に大きな負荷がかかっているのは明らか。冒頭の朝日新聞記事で,学習院大学の長沼教授が言われているように,「今回の署名運動は現場からの「NO」の声だ。運動を機に,今年を「部活改革元年」としてきたい」ものです。
それを具現する手立ては,既に示されています。「チーム学校」という人材組織を学校に導入することです。その中には,部活動支援員というスタッフも含まれます。こうした人的資源の活用により,国際標準から隔たった日本の学校現場が変わることを願います。
2016年2月11日木曜日
離婚の学歴差
5年スパンで実施される『国勢調査』では,対象の国民の配偶関係を調べています。用意されているカテゴリーは,未婚,有配偶,死別,そして離別です。死別とは配偶者と死に分かれた者,離別は配偶者との離婚を経験した者です。
この内訳は年齢によって違いますが,他の属性による差もクリアーです。たとえば,社会階層の尺度である学歴差とかはどうでしょう。男性の中卒者と大卒者について,配偶関係構成の年齢グラフを描くと,下図のようになります。下記サイトの表10-1のデータをもとに,作図しました。
結婚できている有配偶者の比重は,大卒者のほうが多くなっています。その分,中卒者では,未婚者や死・離別者が多し。男性の場合,低学歴の者ほど,結婚できない者が多く,家族解体を経験した者が多いと。
未婚については,低収入のオトコは結婚しづらいことは,これまで何度もデータで明らかにしました。学歴と収入が相関することを思うと,上図の傾向もさもありなんです。
しかるに,ここで興味が持たれるのは,紫色の離別者の比重です。未婚者を除いた結婚経験者(有配偶者,死別者,離別者)に占める離別者の比率は,中卒の40代後半男性では17.8%,およそ6人に1人です。
この値は,学歴別の離婚確率の指標として使えるでしょう。この指標の年齢曲線を描いてみました。下図は,1990年と2010年の曲線の対比です。両年について,中卒,高卒,大卒の3本のカーブが描かれています。
「失われた20年」にかけて離婚率が上がったことは知られていますが,それは学歴差(≒社会階層差)の拡大を伴っているようです。低学歴群ほどこの20年間の伸びが大きく,2010年では,3本の折れ線の距離が離れています。
社会全体の進学率上昇,高学歴化の進展により,中卒者はますますマイノリティーになりつつあります。こうした少数の不利な層が被る圧力は,以前にも増して強くなっているのでしょう。
1月12日のプレジデント記事でみたところによると,90年代以降,若者の自殺率が増加しているのですが,ここでみた離婚と同様,階層差の拡大を伴っているかもしれません。こうした層別の分析もできるようになったらと思います。時代の診断学としての社会病理学の使命です。
2016年2月9日火曜日
転居の理由
職業選択の自由と同時に,転居の自由も認められていますが,その理由はどういうものなのでしょう。当然,ライフステージによって様相は異なると思われます。
国立社会保障・人口問題研究所は,5年に1回のスパンで『人口移動調査』を実施しています。2011年7月に実施された第7回調査では,全国11353世帯のデータが集計されています。
同調査では,過去5年間に引っ越しを経験した世帯の世帯主に,その理由を尋ねています。複数の選択肢から,主なもの1つを選んでもらう形式です。年齢層別の回答内訳を面グラフにすると,下図のようになります。
過去5年間の転居の理由ですので,調査時点の年齢と離れている可能性もありますが,おおむね肯ける模様です。
15~24歳では進学,25~34歳では結婚,30代後半以降は住宅事情がマジョリティーになりますが,中年期では転勤も多いですね。リーマンの辛いところ。高齢期では子どもとの近居(同居)や健康上の理由も増してきます。
前に,人生のお悩み一望図をつくったことがありますが,転居の理由にも,ステージごとの色が出ていて,面白いです。こういう図を何枚をつくっていけば,加齢に伴う人間の行動変化を予測できるようになるでしょう。もっとも,私みたいな型外れの人間もいるのですが。
2016年2月7日日曜日
結婚・出産による女性の正社員率変化
タイトルのような現象があることに,異を唱える人はいないでしょう。女性の場合,正社員として働き続けるに際して,結婚・出産が障壁になります。結婚したら寿退職,そうせずに踏ん張ったとしても,子どもができたらギブアップというように。
その様相を数値で可視化してみましょう。やや古いですが,2010年の『国勢調査』のデータを使います。この資料から,配偶関係・子どもの有無別に,ベース人口と正規職員(以下,正社員)として働いている女性の数を知ることができます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001039448
結婚・出産期の25~34歳女性について,人口と正社員の数を整理すると,下表のようになります。2010年0月時点の数値です。
原統計から分かるのは,未婚者(a),有配偶者(b),有配偶・幼子あり(c)の女性人口および正社員数です。bからcを差し引くことで,有配偶・幼子なしの数を割り出すことができます。この中には,6歳以上の子がいる女性が含まれてしまいますが,まあ,その数はさして多くはないでしょう。
「未婚」,「有配偶・幼子なし」,「有配偶・幼子あり」の3群の正社員比率を出すと,赤字のようになります。順に49.6%,29.6%,17.5%です。
やはり,結婚・出産に伴い,女性の正社員率はダウンしますね。結婚に伴い49.6%から29.6%,出産によりさらに17.5%まで減です。
右端は,未婚者の正社員率を100とした指数です。これによると,結婚により当初から4割減,出産により6割5分の減であることが知られます。
これは全国統計ですが,様相は地域によって違っています。同じデータを47都道府県について作ってみましたので,ご覧に入れましょう。下の表は,3つの群の正社員率と減少幅を表す指数の一覧表です。黄色は47都道府県中の最高値,青色は最低値を意味します。
どの県でも,結婚・出産に伴い,女性の正社員比率はダウンしますが,その程度は多様です。
それは,右端の指数をみれば分かります。山形では,未婚者が54.8%,有配偶・幼子ありが35.8%であり,3割5分の減少です。しかし岐阜では,結婚・出産に伴い,7割5分も正社員率が減ることが分かります(57.7%→31.1%→13.9%)。
結婚・出産期の女性の正社員率には地域差があり,三世代世帯率や保育所設置率が高い日本海沿岸ゾーンで,それが高いことは知られています。ここでの観察ポイントは,結婚・出産に伴う,女性の正社員率の減少具合です。
これなども,子がいる女性が働きやすい環境がどれほど整備されているかを測る,メジャーとなるでしょう。右端の指数値が低い県は,自県の状況を点検していただきたいと思います。
最後に,対照的な2県の様相をグラフにしておきます。上記で言及した,山形と岐阜です。未婚者の正社員率を100とした指数の折れ線です。
決めつけることはできませんが,この折れ線の傾斜具合によって,結婚・出産の障壁,それに伴う不利益の大きさが可視化されるともいえるでしょう。
昨年実施された2015年『国勢調査』のデータでは,果たしてどうなっているか。傾斜はいくぶんか,緩やかになっているでしょうか。逆に急になってしまっている県もあるでしょうか。注目ポイントです。
その様相を数値で可視化してみましょう。やや古いですが,2010年の『国勢調査』のデータを使います。この資料から,配偶関係・子どもの有無別に,ベース人口と正規職員(以下,正社員)として働いている女性の数を知ることができます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001039448
結婚・出産期の25~34歳女性について,人口と正社員の数を整理すると,下表のようになります。2010年0月時点の数値です。
原統計から分かるのは,未婚者(a),有配偶者(b),有配偶・幼子あり(c)の女性人口および正社員数です。bからcを差し引くことで,有配偶・幼子なしの数を割り出すことができます。この中には,6歳以上の子がいる女性が含まれてしまいますが,まあ,その数はさして多くはないでしょう。
「未婚」,「有配偶・幼子なし」,「有配偶・幼子あり」の3群の正社員比率を出すと,赤字のようになります。順に49.6%,29.6%,17.5%です。
やはり,結婚・出産に伴い,女性の正社員率はダウンしますね。結婚に伴い49.6%から29.6%,出産によりさらに17.5%まで減です。
右端は,未婚者の正社員率を100とした指数です。これによると,結婚により当初から4割減,出産により6割5分の減であることが知られます。
これは全国統計ですが,様相は地域によって違っています。同じデータを47都道府県について作ってみましたので,ご覧に入れましょう。下の表は,3つの群の正社員率と減少幅を表す指数の一覧表です。黄色は47都道府県中の最高値,青色は最低値を意味します。
どの県でも,結婚・出産に伴い,女性の正社員比率はダウンしますが,その程度は多様です。
それは,右端の指数をみれば分かります。山形では,未婚者が54.8%,有配偶・幼子ありが35.8%であり,3割5分の減少です。しかし岐阜では,結婚・出産に伴い,7割5分も正社員率が減ることが分かります(57.7%→31.1%→13.9%)。
結婚・出産期の女性の正社員率には地域差があり,三世代世帯率や保育所設置率が高い日本海沿岸ゾーンで,それが高いことは知られています。ここでの観察ポイントは,結婚・出産に伴う,女性の正社員率の減少具合です。
これなども,子がいる女性が働きやすい環境がどれほど整備されているかを測る,メジャーとなるでしょう。右端の指数値が低い県は,自県の状況を点検していただきたいと思います。
最後に,対照的な2県の様相をグラフにしておきます。上記で言及した,山形と岐阜です。未婚者の正社員率を100とした指数の折れ線です。
決めつけることはできませんが,この折れ線の傾斜具合によって,結婚・出産の障壁,それに伴う不利益の大きさが可視化されるともいえるでしょう。
昨年実施された2015年『国勢調査』のデータでは,果たしてどうなっているか。傾斜はいくぶんか,緩やかになっているでしょうか。逆に急になってしまっている県もあるでしょうか。注目ポイントです。
2016年2月6日土曜日
正社員男女の平均年収の既婚・未婚差
昨日の記事では,正社員女性の年収が「既婚<未婚」であることを知りました。年齢曲線をみると,30代後半から差がぐんぐん開き,女性にとって,結婚に伴う損失は小さくはないようです。
男性の曲線もみたいという要望がありましたので,男女のグラフを左右に並べてみました。ツイッターで発信済みですが,ブログにも載せておきます。
女性では「既婚<未婚」ですが,男性はその反対です。女性は「既婚だから低年収」なのでしょうが,男性は「低年収だから未婚」という因果経路でしょうね。
年収の年齢曲線は,未婚者では男女がほぼ重なります。ジェンダー差が大きいのは,既婚者です。既婚の女性は家庭の足かせが多く,バリバリ働きにくい。一方,既婚の男性には,家族を養わねばならないだろうと,いろいろな手当てが支給される。
上記のグラフには,日本的ジェンダーが実によく表われていると思います。
男性の曲線もみたいという要望がありましたので,男女のグラフを左右に並べてみました。ツイッターで発信済みですが,ブログにも載せておきます。
女性では「既婚<未婚」ですが,男性はその反対です。女性は「既婚だから低年収」なのでしょうが,男性は「低年収だから未婚」という因果経路でしょうね。
年収の年齢曲線は,未婚者では男女がほぼ重なります。ジェンダー差が大きいのは,既婚者です。既婚の女性は家庭の足かせが多く,バリバリ働きにくい。一方,既婚の男性には,家族を養わねばならないだろうと,いろいろな手当てが支給される。
上記のグラフには,日本的ジェンダーが実によく表われていると思います。
2016年2月5日金曜日
結婚による損失
キャリア女性の理想。「年収は600万円以上,職種はバックオフィス(事務・管理業務)で,結婚して子育て中」。こんな記事を見かけました。
http://blogos.com/outline/158873/
これに対し,「身の丈を考えていない」という声が多く寄せられているようですが,私も,現実には難しいのではないか,という感じがします。女性は,家庭を持ったらバリバリ働くのを制限されるでしょうし・・・。
統計でみて,既婚の女性正社員の年収はどれくらいなのでしょう。2012年の総務省『就業構造基本調査』のデータをもとに,計算してみました。下の表は,30代後半の女性正規職員の年収分布です。既婚者84万人,未婚者49万人の分布が示されています。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
一番多いのは,既婚者・未婚者とも,年収300万円台の階級です。年収600万円以上は,既婚者で5.2%,未婚者で6.0%となっています。少ないですね。
上記の分布から平均値を出してみましょう。各階級に属する者の年収を,中央の階級値で代表させます。年収300万円台の女性は,一律350万円とみなすわけです。上限のない1500万超の階級は,ひとまず2000万円と仮定しましょう。
この場合,既婚の30代後半女性正社員の平均年収は,次のようにして出されます。全体を100.0とした相対度数を使った方が,計算は楽です。
{(25万×1.7)+(75万×2.9)+・・・(2000万×0.0)}/100.0 ≒ 344.3万円
未婚女性の平均年収は361.8万円です。正社員で比べると,女性の年収は「既婚<未婚」のようです。
これは私と同じ30代後半のデータですが,他の年齢層についても,女性正社員の平均年収を既婚・未婚別に出し,グラフにすると下図のようになります。
既婚女性にとって,年収600万円は厳しいようです。しかしそれ以上に驚かされるのは,既婚者と未婚者の差です。30代後半から差が開き始め,50代前半では既婚が378.3万円,未婚が460.0万円と,81.7万円もの差になります。
むうう。女性にとって,バリバリ稼ぐことと家庭の両立が以下に困難であるかが知られます。上記のグラフを昨日ツイッターで発信したところ,「これを突きつけられたら,結婚したいという女性が減りそう」,「結婚する気なくすわ」という声が多数寄せられました。
https://twitter.com/michelle92226/status/695240504158453760
言葉がよくないですが,上記のグラフは,女性が結婚することに伴う損失を可視化しているともいえるでしょう。こうみると,女性が結婚相手の男性に高い年収を求めるというのも,無理からぬことのように思えてきます。
なお,この損失の規模は地域によって違っています。上のグラフによると,30代後半から50代前半にかけて既婚女性と未婚女性の差が大きくなっています。私は47都道府県について,35~54歳の女性正社員の平均年収を,既婚・未婚別に計算してみました。下の表は,結果の一覧です。
右端の数値は,未婚者が既婚者の何倍かです。この値が大きいほど,結婚による損失が大きいと解されます。トップは,愛知県の1.14倍。赤字は1.1倍を超える県ですが,東京もこの中に含まれています。
その一方,既婚者のほうが未婚者より年収が高い県もあります。福井などです。三世代世帯が多く,保育所設置も充実しているので,既婚女性といえど,バリバリ働ける環境があるためでしょうか。しかし,同じような条件の富山や石川では,「既婚<未婚」であることから,そう単純な話でもなさそうです。
結婚による女性の損失量を表す,右端の倍率をランキングにしてみましょう。
愛知,佐賀,福島,東京,富山。中年女性正社員の平均年収の「既婚<未婚」差が大きい県なり。換言すれば,女性が家庭を持つことによる損失(拘束)が大きい県ということになります。有配偶(子持ち)の女性社員に対する配慮が,企業社会に欠けていることの表れとも読めるでしょうか。
先のツイッターの意見にもありますが,未婚化を解消するには,こういう構造も変えないといけないでしょう。女性にすれば,結婚すると足枷をつけられる,稼げない。よって,結婚相手の男性に高い年収を期待せざるを得なくなる。しかし,このご時世。そういう男性は滅多にいない。よって,未婚化が進行する。こういう循環です。
とくにランキング上位の地域では,働く女性の置かれた状況について,綿密に点検をしていただきたいと思います。家庭での家事・育児負担,子育て中の女性社員に対する企業の配慮などです。
今回みたような,結婚による女性の損失が国によってどう違うかも興味が持たれます。ISSP調査のローデータで,比較のデータを作れないか,今奮闘しているところです。
https://twitter.com/winnieholzman/status/695227888547684352
http://blogos.com/outline/158873/
これに対し,「身の丈を考えていない」という声が多く寄せられているようですが,私も,現実には難しいのではないか,という感じがします。女性は,家庭を持ったらバリバリ働くのを制限されるでしょうし・・・。
統計でみて,既婚の女性正社員の年収はどれくらいなのでしょう。2012年の総務省『就業構造基本調査』のデータをもとに,計算してみました。下の表は,30代後半の女性正規職員の年収分布です。既婚者84万人,未婚者49万人の分布が示されています。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
一番多いのは,既婚者・未婚者とも,年収300万円台の階級です。年収600万円以上は,既婚者で5.2%,未婚者で6.0%となっています。少ないですね。
上記の分布から平均値を出してみましょう。各階級に属する者の年収を,中央の階級値で代表させます。年収300万円台の女性は,一律350万円とみなすわけです。上限のない1500万超の階級は,ひとまず2000万円と仮定しましょう。
この場合,既婚の30代後半女性正社員の平均年収は,次のようにして出されます。全体を100.0とした相対度数を使った方が,計算は楽です。
{(25万×1.7)+(75万×2.9)+・・・(2000万×0.0)}/100.0 ≒ 344.3万円
未婚女性の平均年収は361.8万円です。正社員で比べると,女性の年収は「既婚<未婚」のようです。
これは私と同じ30代後半のデータですが,他の年齢層についても,女性正社員の平均年収を既婚・未婚別に出し,グラフにすると下図のようになります。
既婚女性にとって,年収600万円は厳しいようです。しかしそれ以上に驚かされるのは,既婚者と未婚者の差です。30代後半から差が開き始め,50代前半では既婚が378.3万円,未婚が460.0万円と,81.7万円もの差になります。
むうう。女性にとって,バリバリ稼ぐことと家庭の両立が以下に困難であるかが知られます。上記のグラフを昨日ツイッターで発信したところ,「これを突きつけられたら,結婚したいという女性が減りそう」,「結婚する気なくすわ」という声が多数寄せられました。
https://twitter.com/michelle92226/status/695240504158453760
言葉がよくないですが,上記のグラフは,女性が結婚することに伴う損失を可視化しているともいえるでしょう。こうみると,女性が結婚相手の男性に高い年収を求めるというのも,無理からぬことのように思えてきます。
なお,この損失の規模は地域によって違っています。上のグラフによると,30代後半から50代前半にかけて既婚女性と未婚女性の差が大きくなっています。私は47都道府県について,35~54歳の女性正社員の平均年収を,既婚・未婚別に計算してみました。下の表は,結果の一覧です。
右端の数値は,未婚者が既婚者の何倍かです。この値が大きいほど,結婚による損失が大きいと解されます。トップは,愛知県の1.14倍。赤字は1.1倍を超える県ですが,東京もこの中に含まれています。
その一方,既婚者のほうが未婚者より年収が高い県もあります。福井などです。三世代世帯が多く,保育所設置も充実しているので,既婚女性といえど,バリバリ働ける環境があるためでしょうか。しかし,同じような条件の富山や石川では,「既婚<未婚」であることから,そう単純な話でもなさそうです。
結婚による女性の損失量を表す,右端の倍率をランキングにしてみましょう。
愛知,佐賀,福島,東京,富山。中年女性正社員の平均年収の「既婚<未婚」差が大きい県なり。換言すれば,女性が家庭を持つことによる損失(拘束)が大きい県ということになります。有配偶(子持ち)の女性社員に対する配慮が,企業社会に欠けていることの表れとも読めるでしょうか。
先のツイッターの意見にもありますが,未婚化を解消するには,こういう構造も変えないといけないでしょう。女性にすれば,結婚すると足枷をつけられる,稼げない。よって,結婚相手の男性に高い年収を期待せざるを得なくなる。しかし,このご時世。そういう男性は滅多にいない。よって,未婚化が進行する。こういう循環です。
とくにランキング上位の地域では,働く女性の置かれた状況について,綿密に点検をしていただきたいと思います。家庭での家事・育児負担,子育て中の女性社員に対する企業の配慮などです。
今回みたような,結婚による女性の損失が国によってどう違うかも興味が持たれます。ISSP調査のローデータで,比較のデータを作れないか,今奮闘しているところです。
https://twitter.com/winnieholzman/status/695227888547684352
2016年2月1日月曜日
2016年1月の教員不祥事報道
月を超えましたが,先月の教員不祥事報道の整理をします。先月,私がネット上でキャッチした不祥事報道は38件でした。
寒波の影響で,寒い日が続いております。風邪などひかれませぬよう。
<2016年1月の教員不祥事報道>
・車にはねられ男性死亡 校長の59歳男逮捕(1/4,テレビ朝日,埼玉,小,男,59)
・岡崎の小学校教諭逮捕 女子高生にみだらな行為(1/5,中日新聞,愛知,小,男,23)
・中学教諭の男逮捕、16歳少年にみだらな行為容疑(1/6,産経,高知,中,男,30)
・男児を裸にして撮影した疑い、小学校教諭を3度目の逮捕(1/8,朝日,東京,小,男,38)
・交際していた元教え子を脅迫 容疑で高校教諭逮捕(1/12,神戸新聞,兵庫,高,男,37)
・堺市立中教諭を強制わいせつ容疑で再逮捕(1/12,産経,大阪,中,男,40)
・教科書会社の会議出席 尼崎市立中校長を戒告処分
(1/13,神戸新聞,兵庫,中,男,57)
・男性教諭2人懲戒処分 女子生徒に裸写真送らせた
(1/14,日刊スポーツ,神奈川,中男27,高男53)
・11年以上無免許 教諭を停職(1/14,NHK,長野,特,女,37)
・同僚を誹謗中傷するビラまいた女性教諭に懲戒免職処分
(1/15,和歌山放送,和歌山,小,女,50)
・下着盗み目的か中学教諭を逮捕(1/15,NHK,愛媛,中,男,54)
・校長らが賭けマージャン? 尾張地方の県立高
(1/15,中日新聞,愛知,属性は非公表)
・生徒に平手打ち”男性教諭を書類送検(1/16,日テレ,愛媛,中,男,40代)
・盗撮の疑いで私立高校教諭逮捕(1/16,NHK,神奈川,高,男,35)
・中学教諭、ホテルで女子高生にみだらな行為(1/18,産経,奈良,中,男,28)
・男子生徒にパンツ贈った男性実習教諭が停職処分(1/18,サンスポ,岩手,高,男,40代)
・期間採用の高校教諭を飲酒運転で懲戒免職(1/21,産経,山梨,高,男,27)
・免停3度もマイカー通勤 事故で発覚の教諭処分(1/21,神戸新聞,兵庫,中,女,45)
・都教委:講師や教諭6人、免職や停職など
(1/21,毎日,東京,わいせつ:小男27,小男37,窃盗:高男27)
・スカート内を携帯で盗撮…男性教諭を懲戒免職
(1/22,産経,長崎,盗撮:小男47,飲酒運転:小男43)
・パチンコ店でスカート盗撮教諭を懲戒免職(1/24,産経,愛媛,中,男,48)
・中学教諭、男子生徒に体罰 部活中、平手や頭突き
(1/24,佐賀新聞,佐賀,中,男,40代)
・自宅で飲酒後、酒を買いに車を運転(1/24,スポーツ報知,広島,高,男,52)
・女性教諭を懲戒免職処分 ファクスで中傷を繰り返し(1/25,山梨放送,山梨,小,女,48)
・南陽市 小学校講師が酒気帯びで摘発(1/25,Nスタやまがた,山形,小,男,40代)
・元校長逮捕 児童ポルノを“陳列目的”所持(1/15,日テレ,岐阜,中,男,63)
・生徒の髪の毛抜き頭たたく 姫路の中学校教諭処分(1/26,神戸新聞,兵庫,中,男,29)
・みだらな行為で中学教諭停職 横浜、元教え子に81/26,神奈川新聞,神奈川,中,男,29)
・教え子にわいせつ行為か、中学教諭を懲戒免職(1/27,朝日,愛知,中,男,28)
・県学力テストに酷似の問題、教諭が事前に宿題(1/28,読売,高知,中,女,30代)
・高校教諭が下着窃盗未遂で逮捕(1/28,NHK,岡山,高,男,33)
・生徒に淫行容疑、元私立高教諭逮捕(1/28,東奥日報,青森,高,男,64)
・生徒に軽傷負わせた男性教諭を戒告処分(1/29,産経,埼玉,中,男,61)
・強制わいせつ容疑:女児の体を触る(1/30,毎日,愛知,小,男,37)
・「かぶってみたかった」中学教諭、ゆるキャラのマスク盗み懲戒処分
(1/30,産経,愛知,中,男,48)
・ひき逃げで西粟倉小教諭逮捕(1/30,山陽新聞,鳥取,小,女,24)
・上越地方の小学校50代女性教頭懲戒処分 教職員に暴言や悪口
(1/30,上越タウンジャーナル,新潟,小,女,50代)
・2万円渡し女子高生にみだらな行為の中学教諭、懲戒免職(1/30,産経,奈良,中,男,28)
寒波の影響で,寒い日が続いております。風邪などひかれませぬよう。
<2016年1月の教員不祥事報道>
・車にはねられ男性死亡 校長の59歳男逮捕(1/4,テレビ朝日,埼玉,小,男,59)
・岡崎の小学校教諭逮捕 女子高生にみだらな行為(1/5,中日新聞,愛知,小,男,23)
・中学教諭の男逮捕、16歳少年にみだらな行為容疑(1/6,産経,高知,中,男,30)
・男児を裸にして撮影した疑い、小学校教諭を3度目の逮捕(1/8,朝日,東京,小,男,38)
・交際していた元教え子を脅迫 容疑で高校教諭逮捕(1/12,神戸新聞,兵庫,高,男,37)
・堺市立中教諭を強制わいせつ容疑で再逮捕(1/12,産経,大阪,中,男,40)
・教科書会社の会議出席 尼崎市立中校長を戒告処分
(1/13,神戸新聞,兵庫,中,男,57)
・男性教諭2人懲戒処分 女子生徒に裸写真送らせた
(1/14,日刊スポーツ,神奈川,中男27,高男53)
・11年以上無免許 教諭を停職(1/14,NHK,長野,特,女,37)
・同僚を誹謗中傷するビラまいた女性教諭に懲戒免職処分
(1/15,和歌山放送,和歌山,小,女,50)
・下着盗み目的か中学教諭を逮捕(1/15,NHK,愛媛,中,男,54)
・校長らが賭けマージャン? 尾張地方の県立高
(1/15,中日新聞,愛知,属性は非公表)
・生徒に平手打ち”男性教諭を書類送検(1/16,日テレ,愛媛,中,男,40代)
・盗撮の疑いで私立高校教諭逮捕(1/16,NHK,神奈川,高,男,35)
・中学教諭、ホテルで女子高生にみだらな行為(1/18,産経,奈良,中,男,28)
・男子生徒にパンツ贈った男性実習教諭が停職処分(1/18,サンスポ,岩手,高,男,40代)
・期間採用の高校教諭を飲酒運転で懲戒免職(1/21,産経,山梨,高,男,27)
・免停3度もマイカー通勤 事故で発覚の教諭処分(1/21,神戸新聞,兵庫,中,女,45)
・都教委:講師や教諭6人、免職や停職など
(1/21,毎日,東京,わいせつ:小男27,小男37,窃盗:高男27)
・スカート内を携帯で盗撮…男性教諭を懲戒免職
(1/22,産経,長崎,盗撮:小男47,飲酒運転:小男43)
・パチンコ店でスカート盗撮教諭を懲戒免職(1/24,産経,愛媛,中,男,48)
・中学教諭、男子生徒に体罰 部活中、平手や頭突き
(1/24,佐賀新聞,佐賀,中,男,40代)
・自宅で飲酒後、酒を買いに車を運転(1/24,スポーツ報知,広島,高,男,52)
・女性教諭を懲戒免職処分 ファクスで中傷を繰り返し(1/25,山梨放送,山梨,小,女,48)
・南陽市 小学校講師が酒気帯びで摘発(1/25,Nスタやまがた,山形,小,男,40代)
・元校長逮捕 児童ポルノを“陳列目的”所持(1/15,日テレ,岐阜,中,男,63)
・生徒の髪の毛抜き頭たたく 姫路の中学校教諭処分(1/26,神戸新聞,兵庫,中,男,29)
・みだらな行為で中学教諭停職 横浜、元教え子に81/26,神奈川新聞,神奈川,中,男,29)
・教え子にわいせつ行為か、中学教諭を懲戒免職(1/27,朝日,愛知,中,男,28)
・県学力テストに酷似の問題、教諭が事前に宿題(1/28,読売,高知,中,女,30代)
・高校教諭が下着窃盗未遂で逮捕(1/28,NHK,岡山,高,男,33)
・生徒に淫行容疑、元私立高教諭逮捕(1/28,東奥日報,青森,高,男,64)
・生徒に軽傷負わせた男性教諭を戒告処分(1/29,産経,埼玉,中,男,61)
・強制わいせつ容疑:女児の体を触る(1/30,毎日,愛知,小,男,37)
・「かぶってみたかった」中学教諭、ゆるキャラのマスク盗み懲戒処分
(1/30,産経,愛知,中,男,48)
・ひき逃げで西粟倉小教諭逮捕(1/30,山陽新聞,鳥取,小,女,24)
・上越地方の小学校50代女性教頭懲戒処分 教職員に暴言や悪口
(1/30,上越タウンジャーナル,新潟,小,女,50代)
・2万円渡し女子高生にみだらな行為の中学教諭、懲戒免職(1/30,産経,奈良,中,男,28)
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