5月は今日でおしまいでした。晩御飯を食べ,お茶を飲んでいるときに思い出し,慌ててツイログを掘り返しました。時の流れは早し。最近は,月曜が始まったらもう週末,というふうに感じられます。年のせいでしょうか。
今月,私がネットで把握した教員不祥事報道は46件です。教頭が若手女性教員に「君を食べちゃう」と言った事案。43歳ってことは,私と同世代。こういう人がよく,若くして管理職試験にパスしたもんだと思います。
教師がいじめに加担するという事案もあり。いじめが社会問題化するきっかけとなった,1986年の中野区の中学校のいじめ自殺事件。被害生徒の「葬式ごっこ」に教師も参加したといいます。30年を経た今で,このようなことが繰り返されることに,ショックを覚えます。
小学校の若手女性教員がテストの採点を怠っていた事案。「余裕がなかった,授業を終わらせることを優先した」と当人は話しているとのこと。教員の本務は授業で,テストの採点等は,教員が担うべき業務であるものの,補助スタッフの力を借りることで負担軽減可能と,中教審答申で指摘されています。情状酌量の余地のあるケースです。
https://twitter.com/tmaita77/status/1130803014271291392
教員の業務の仕分けについては,最近の教員採用試験でよく出ますので,受験者は知っておきましょう。
明日から6月,暦の上では夏です。今年はエルニーニョ現象とやらで冷夏になるという予測もありますが,熱中症には気をつけましょう。背景を五月雨模様にチェンジします。
<2019年5月の教員不祥事報道>
・小学校教諭が住居侵入容疑で逮捕(5/4,NHK,島根,小,男,34)
・部活の顧問が「殺すぞ」と暴言吐き指導 中3女子自殺の一因か
(5/6,読売,茨城,中,男)
・中学校の男性教諭がスマホを女生徒のスカートの下に入れ盗撮し停職処分に
(5/8,CBCテレビ,愛知,中,男,28)
・岐南中の教頭が7000円持ち去る 岐阜市のパチンコ店
(5/8,岐阜新聞,岐阜,中,男,50代)
・盗撮などで公立学校の男性教諭3人を停職処分(5/9,中京テレビ,愛知,盗撮:中男28,生徒と交際:高男28,わいせつ:中男39)
・小学校教諭 酒気帯び運転の罪で略式起訴(5/9,FNN,秋田,小,男,50代)
・県立高 全校生の個人情報盗難か(5/9,NHK,茨城,高,男)
・全国Vの高校バレー部で体罰 20代コーチ、部員を複数回平手打ち
(5/9,神戸新聞,兵庫,高,男,20代)
・酒気帯び運転疑い小学校教諭逮捕(5/10,NHK,福岡,小,男,57)
・元教え子に半裸画像送らせる 中学教諭逮捕
(5/10,読売テレビ,京都,中,男,33)
・1月に人身事故、小学教諭を県教委が戒告処分に
(5/10,秋田魁新報,秋田,小,男,20代)
・サッカー部コーチが暴言と体罰 群馬・桐生第一高 (5/10,産経,群馬,高,男)
・女子高生のスカート内にスマホ自称府立高教諭を逮捕
(5/11,日刊スポーツ,大阪,高,男,57)
・バイクを置いて逃げ・・・酒気帯び運転容疑(5/11,FNN,大阪,小,男,38)
・小学校教諭を住居侵入容疑で逮捕(5/12,NHK,長野,小,男,25)
・41歳中学教諭「気持ち抑えられず」女子高校生にわいせつ容疑
(5/13,NHK,千葉,中,男,41)
・小学校教諭がテスト実施怠る(NHK,広島,小,女,20代)
・改元10連休に“無銭宿泊” 中学教諭ら逮捕(5/14,北海道,中,男,29)
・現金1万円盗む 講師を懲戒処分(5/14,NHK,栃木,小,男,53)
・女子生徒にわいせつ行為 男性教諭を懲戒免職
(5/14,テレ玉,埼玉,中,男,28)
・体罰の小学校教諭処分 札幌市教委
(5/16,北海道新聞,北海道,小,男,50代)
・クラス目標欄に教諭、中3男子を「皆でいじめよう」
(5/17,読売,福島,中,男,48)
・中学校講師がわいせつ行為で逮捕(5/17,NHK,愛知,中,男,47)
・小学校講師 実は免許なし、授業も無効で子どもは補習
(5/17,TBS,千葉,小,男,23)
・小学校教諭 道育成条例違反疑い(5/17,NHK,北海道,中,男,24)
・中学教頭が体罰で減給処分(5/17,NHK,和歌山,中,男,50代)
・児童の頭たたき、校長に「つねった」とウソ報告
(5/17,読売,鹿児島,小,男,50代)
・女性の胸元を盗撮した容疑で高校教諭を逮捕
(5/19,産経,大阪,高,男,29)
・少女に淫らな行為で中学教諭逮捕(5/21,NHK,石川,中,男,27)
・女子生徒に不適切行為 停職処分(5/22,NHK,新潟,高,男,30代)
・野球部員が投げられ前歯2本を折るけが 男性教諭を戒告処分に
(5/23,産経,静岡,高,男,30)
・10代の少女を買春 私立高の非常勤講師を逮捕
(5/23,産経,大阪,高,男,57)
・児童に体罰、小学校教諭を処分 川崎市教委、別の教諭は盗撮で停職
(5/23,神奈川新聞,神奈川,体罰:小男34,盗撮:小男31)
・戒告処分:男子児童たたいた男性教諭を(5/24,毎日,神奈川,小,男,34)
・帰宅中人身事故、教諭2人を戒告 県教委が処分
(5/24,秋田魁新報,秋田,小女20代,小男50代)
・盗撮:県立高校の教諭、懲戒免職 「無意識でやった」
(5/25,毎日,茨城,高,男,52)
・教諭を逮捕 酒気帯び運転の疑い(5/26,NHK,奈良,中,男,57)
・女子生徒にわいせつ行為か、県立高校の男性教諭
(5/27,NNN,岐阜,高,男)
・障害ある生徒に女性教諭が体罰や暴言(5/28,神戸新聞,兵庫,特,女,29)
・懲戒処分:部活動で体罰、高校教諭減給 県教委
(5/28,毎日,神奈川,高,男,58)
・体罰防止誓った会見の2日後、女性教諭が体罰
(5/28,読売,兵庫,中,女,48)
・児童に体罰 男性教諭を停職処分(5/29,NHK,千葉,小,男,36)
・生徒とみだらな行為 懲戒免職に(5/30,NHK,北海道,中,男,30代)
・道立高の男性教諭、飲酒運転で事故
(5/31,北海道新聞,北海道,高,男,40代)
・強制わいせつなどの罪で刑確定した小学校教諭が失職
(5/31,宮崎,小,男,58)
・教頭「君を食べちゃう」、大阪 八尾市中、部下にセクハラで処分
(5/31,共同通信,大阪,中,男,43)
2019年5月31日金曜日
2019年5月29日水曜日
フルタイム就業女性の変化
結婚・出産期にかけて,フルタイム就業女性はどれだけ減るか? とある方が,この問題にトライしていました。2015年の『国勢調査』のデータを使って,20代後半と30代後半の数を比較しています。
うーん,これはよろしくないです。こういう問題に接近する場合,同一コーホート(世代)の変化を辿らないといけません。世代によって人口量が違いますので。
試みに,人数的に多い団塊ジュニアの世代(1971~75年生まれ)の軌跡をたどってみましょうか。この世代は2000年に25~29歳,2005年に30~34歳,2010年に35~39歳,2015年に40~44歳となります。
各年の当該年齢層のフルタイム就業女性数を拾えばいいわけです。e-statの『国勢調査』のページで簡単に採取できます。フルタイム就業とは,労働力状態が「主に仕事」である人です。
2000年(25~29歳) 271万568人 <100.0>
2005年(30~34歳) 204万8588人 <75.6>
2010年(35~39歳) 205万8353人 <75.9>
2015年(40~44歳) 218万8822人 <80.8>
20代後半から30代前半の結婚・出産期にガクンと減り,子育てが一段落したら盛り返す,という具合ですね。< >内は20代後半時点を100とした指数ですが,これだと変化が見やすい。結婚・出産により,フルタイム就業女性が25%(4分の1)も減るのですね。
これは全国の統計ですが,様相は地域によって異なるでしょう。20代後半と30代前半の落差は,都市部では殊に大きいのではないかと思われます。私は,47都道府県のデータを集めて,同じ処理を施してみました。下表は,20代後半の人数を100とした指数の一覧です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値,赤色は上位5位の数値です。
都道府県別だと,人口の地域移動の影響が出る恐れがありますが,ひとまずそれは置いておきます。
どうでしょう。女性の就業に対する結婚・出産のインパクトは,地域によって違うようです。20代後半から30代前半の減少率は,奈良県では3割以上(100.0→66.8)ですが,高知県では1割未満にとどまっています(100.0→90.3)。
首都圏(1都3県)は,軒並み減少が大きくなっています(25%超)。三世代同居が少ない,保育所の不足といった条件によるでしょう。対して,東北,北陸,山陰では減少率が低くなっています。都市部とは逆の条件があるからです。夫婦フルタイムの共稼ぎでないとやっていけない,という事情もあるでしょうが。
30代後半以降の盛り返しの度合いも,県によって異なります。30代後半になると増える県が多いですが,都市部ではこのステージでも減少が続きます。私が住んでいる神奈川県は,30代前半から後半にかけて74.6から66.3にダウンです。40代になってようやく盛り返しが始まる,という具合です。学童保育が足りないのもあるでしょうか。
鳥取県や島根県は,40代前半になると20代後半の頃より多くなります。人口流入の影響とは考えにくいのですが,これはどういうことか。いや,島根県の浜田市は,介護職に就くことを条件に,住居・クルマ付きで母子世帯の移住を募る事業をやってますので,その効果ゆえかもしれません。
https://twitter.com/tmaita77/status/1133594915437404160
結婚・出産・子育て期にかけてのフルタイム就業女性の減少。誰もが知っている事実ですが,データにするとこんな感じです。地域差もあり,大きくは都市か地方かという基底的条件によります。三世代世帯の量,小さい子がいる母親が働くことへの意識など,幾多の派生要因がこの上に乗っかるのですが,政策で変え難い要因を取り上げても,あまり意味はありません。
ここでフォーカスを当てたいのは,保育所の供給量です。私は47都道府県について,5歳までの乳幼児の何%が保育所等に在籍しているかを計算しました。2015年10月時点の在所者数を,同時点のベース人口で割った値です。保育所等とは,認可保育所,認定こども園(幼保連携型,保育所型)をいいます。
上記の表の右端の数値との相関をとってみましょうか。20代後半のフルタイム就業女性数を100とした時,40代前半の数はいくつになるかです。言い回しが適当か分かりませんが,フルタイム就業女性の残存率と呼びます。
ほう,強く相関しているではないですか。相関係数は+0.8近くにもなります。保育所在所率が高い県ほど,フルタイム就業女性の残存率が高い傾向にあります。
当然といえばそうですが,明瞭な傾向ですね。女性のフルタイム就業の維持(促進)に際して,保育所整備の効果はやはり大きい。三世代世帯率の影響もあるだろうと言われるかもしれませんが,重回帰分析でこの2変数の効果を比較した所,保育所のほうに軍配が上がりました(拙著『データで読む教育の論点』晶文社)。
今年10月から,保育所無償化が始まりますが,受け皿を大幅に増やす政策ではないので,待機児童問題解消には結びつかないでしょう。入れた人と落ちた人の格差が開き,後者の不公平感が高まるという,よからぬ効果が出る公算が高し。何度も言いますが,消費税アップの財源を,保育士の待遇改善にあて,受け皿を増やすことが先決だったのではないでしょうか。
団塊ジュニアの世代を例に,20代後半から40代前半のステージにかけて,フルタイム就業の女性がどれほど減るかを明らかにしました。こういう問題を扱う際は,面倒であっても,同一世代の追跡をする必要があります。非正規雇用やニートの変化を跡付けても面白い。興味ある方は,トライされたし。『国勢調査』のページを開き,データを集めましょう。
うーん,これはよろしくないです。こういう問題に接近する場合,同一コーホート(世代)の変化を辿らないといけません。世代によって人口量が違いますので。
試みに,人数的に多い団塊ジュニアの世代(1971~75年生まれ)の軌跡をたどってみましょうか。この世代は2000年に25~29歳,2005年に30~34歳,2010年に35~39歳,2015年に40~44歳となります。
各年の当該年齢層のフルタイム就業女性数を拾えばいいわけです。e-statの『国勢調査』のページで簡単に採取できます。フルタイム就業とは,労働力状態が「主に仕事」である人です。
2000年(25~29歳) 271万568人 <100.0>
2005年(30~34歳) 204万8588人 <75.6>
2010年(35~39歳) 205万8353人 <75.9>
2015年(40~44歳) 218万8822人 <80.8>
20代後半から30代前半の結婚・出産期にガクンと減り,子育てが一段落したら盛り返す,という具合ですね。< >内は20代後半時点を100とした指数ですが,これだと変化が見やすい。結婚・出産により,フルタイム就業女性が25%(4分の1)も減るのですね。
これは全国の統計ですが,様相は地域によって異なるでしょう。20代後半と30代前半の落差は,都市部では殊に大きいのではないかと思われます。私は,47都道府県のデータを集めて,同じ処理を施してみました。下表は,20代後半の人数を100とした指数の一覧です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値,赤色は上位5位の数値です。
都道府県別だと,人口の地域移動の影響が出る恐れがありますが,ひとまずそれは置いておきます。
どうでしょう。女性の就業に対する結婚・出産のインパクトは,地域によって違うようです。20代後半から30代前半の減少率は,奈良県では3割以上(100.0→66.8)ですが,高知県では1割未満にとどまっています(100.0→90.3)。
首都圏(1都3県)は,軒並み減少が大きくなっています(25%超)。三世代同居が少ない,保育所の不足といった条件によるでしょう。対して,東北,北陸,山陰では減少率が低くなっています。都市部とは逆の条件があるからです。夫婦フルタイムの共稼ぎでないとやっていけない,という事情もあるでしょうが。
30代後半以降の盛り返しの度合いも,県によって異なります。30代後半になると増える県が多いですが,都市部ではこのステージでも減少が続きます。私が住んでいる神奈川県は,30代前半から後半にかけて74.6から66.3にダウンです。40代になってようやく盛り返しが始まる,という具合です。学童保育が足りないのもあるでしょうか。
鳥取県や島根県は,40代前半になると20代後半の頃より多くなります。人口流入の影響とは考えにくいのですが,これはどういうことか。いや,島根県の浜田市は,介護職に就くことを条件に,住居・クルマ付きで母子世帯の移住を募る事業をやってますので,その効果ゆえかもしれません。
https://twitter.com/tmaita77/status/1133594915437404160
結婚・出産・子育て期にかけてのフルタイム就業女性の減少。誰もが知っている事実ですが,データにするとこんな感じです。地域差もあり,大きくは都市か地方かという基底的条件によります。三世代世帯の量,小さい子がいる母親が働くことへの意識など,幾多の派生要因がこの上に乗っかるのですが,政策で変え難い要因を取り上げても,あまり意味はありません。
ここでフォーカスを当てたいのは,保育所の供給量です。私は47都道府県について,5歳までの乳幼児の何%が保育所等に在籍しているかを計算しました。2015年10月時点の在所者数を,同時点のベース人口で割った値です。保育所等とは,認可保育所,認定こども園(幼保連携型,保育所型)をいいます。
上記の表の右端の数値との相関をとってみましょうか。20代後半のフルタイム就業女性数を100とした時,40代前半の数はいくつになるかです。言い回しが適当か分かりませんが,フルタイム就業女性の残存率と呼びます。
ほう,強く相関しているではないですか。相関係数は+0.8近くにもなります。保育所在所率が高い県ほど,フルタイム就業女性の残存率が高い傾向にあります。
当然といえばそうですが,明瞭な傾向ですね。女性のフルタイム就業の維持(促進)に際して,保育所整備の効果はやはり大きい。三世代世帯率の影響もあるだろうと言われるかもしれませんが,重回帰分析でこの2変数の効果を比較した所,保育所のほうに軍配が上がりました(拙著『データで読む教育の論点』晶文社)。
今年10月から,保育所無償化が始まりますが,受け皿を大幅に増やす政策ではないので,待機児童問題解消には結びつかないでしょう。入れた人と落ちた人の格差が開き,後者の不公平感が高まるという,よからぬ効果が出る公算が高し。何度も言いますが,消費税アップの財源を,保育士の待遇改善にあて,受け皿を増やすことが先決だったのではないでしょうか。
団塊ジュニアの世代を例に,20代後半から40代前半のステージにかけて,フルタイム就業の女性がどれほど減るかを明らかにしました。こういう問題を扱う際は,面倒であっても,同一世代の追跡をする必要があります。非正規雇用やニートの変化を跡付けても面白い。興味ある方は,トライされたし。『国勢調査』のページを開き,データを集めましょう。
2019年5月27日月曜日
性役割観の都道府県比較
「夫は外で働き,妻は家を守るべし」。聞くのも恥ずかしい伝統的性役割観ですが,日本は先進国の中では,それが強固な社会です。
メディアにとっては,この意識が地域によってどう違うかは,読者にウケるネタであるようで,性役割意識の都道府県ランキングの記事をよく見かけます。私は,鹿児島と東京の暮らしを知っていますが,性役割観は,郷里の鹿児島のほうが強いかなという感覚を持っています。
ネットメディアでは,お粗末なネットアンケートでとったデータが報じられますが,公的な調査資料もあります。内閣府が2015年2月に実施した「地域における女性の活躍に関する意識調査」です。調査対象は,各県の20歳以上の成人男女です。
http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/chiiki_ishiki.html
調査票をみると,伝統的性役割に関する質問が多数盛られていますが,最初のほうに置かれている,ベーシックな設問への回答を拾ってみましょう。「自分の家庭に限らず一般に,夫が外で働き,妻が家を守るべき」という考えについて,どう思うかを問うものです(Q4の2)。
「そう思う」ないしは「ややそう思う」の回答比率を出してみます。男性でみると,この比率は,東京が34.3%,鹿児島が32.6%となっています。おや意外ですね。微差ですが,鹿児島のほうが低くなっています。肌感覚と違う結果が出るのも面白い。
下の表は,47都道府県の成人男女の肯定率の一覧です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値で,上位5位の数値は赤色にしています。
男性は福岡の44.8%から岩手の29.4%,女性は山口の33.2%から福島の21.3%というレインヂです。同じ日本でも,地域が違えば性役割観の強度も異なることが知られます。
九州で高いという傾向でもありません。上位県(赤字)の分布をみても,明瞭な地域性を見いだすのは難しい。一昔前なら西高東低のような図柄になったかもしれませんが,今はそうでもないようです。男女共同参画の時代ですが,各地域の啓発活動の影響もあるのではないでしょうか。ジェンダー意識というのは,歴史・風土に規定された「固定的」なものと見るべきではありません。
上表のデータをグラフにしてみましょう。私は,男性の意識(a)を横軸,ジェンダー差(a-b)を縦軸にとったマトリクス上に,47都道府県を配置してみました。昨日,ツイッターで発信したグラフと同じものですが,関心を引いているようですので,ブログにも載せます。
右上は,働く女性に対する風当たりが強い県といえるでしょうか。九州の中枢県,福岡県の皆さんにとってはショッキングなグラフかもしれません。
ツイッターでこのグラフを出したところ,「福岡に帰らない理由はコレ」「経済発展や人口増加が著しく,勢いがあるのに,これだけがネック」というリプが寄せられました。男性と女性の意識差も大きくなっています。男性への啓発を!と言いたいですね。男性と女性の意識差が最も大きいのは,中部の静岡県なり。
対極の左下は,偏狭なジェンダー意識が相対的に薄い県です。岩手県,千葉県,群馬県ですか。岩手県の達増知事が,ツイッターでこの結果に興味を示されていました。
ちなみに各県の性役割意識は,子育て期の女性のフルタイム就業率とマイナスの相関関係にあります。地域のクライメイトの影響,侮りがたしです。ただ,女性が働くのが当たり前の地域では,人々のジェンダー意識も自ずと薄くなる,という逆の因果経路もあるかと思います。
https://twitter.com/tmaita77/status/1132856547929780226
今から4年前の2015年の調査データですが,5年のスパンを開けた来年(2020年)に,同じ調査をやってほしいです。政策の成果は,定点観測によって,嘘偽りない形で計測されます。
なお,伝統的性役割意識への賛成度が低いといっても,安心はできません。「女性も男性と対等に働くべし」という意識の下には,「女性は仕事も家事も育児もやれ」という,歪んだ期待が潜んでいることがしばしば。女性のフルタイム就業率が高い東北や日本海沿岸地域では,こういう重圧がないとも限りませんよね。
メディアにとっては,この意識が地域によってどう違うかは,読者にウケるネタであるようで,性役割意識の都道府県ランキングの記事をよく見かけます。私は,鹿児島と東京の暮らしを知っていますが,性役割観は,郷里の鹿児島のほうが強いかなという感覚を持っています。
ネットメディアでは,お粗末なネットアンケートでとったデータが報じられますが,公的な調査資料もあります。内閣府が2015年2月に実施した「地域における女性の活躍に関する意識調査」です。調査対象は,各県の20歳以上の成人男女です。
http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/chiiki_ishiki.html
調査票をみると,伝統的性役割に関する質問が多数盛られていますが,最初のほうに置かれている,ベーシックな設問への回答を拾ってみましょう。「自分の家庭に限らず一般に,夫が外で働き,妻が家を守るべき」という考えについて,どう思うかを問うものです(Q4の2)。
「そう思う」ないしは「ややそう思う」の回答比率を出してみます。男性でみると,この比率は,東京が34.3%,鹿児島が32.6%となっています。おや意外ですね。微差ですが,鹿児島のほうが低くなっています。肌感覚と違う結果が出るのも面白い。
下の表は,47都道府県の成人男女の肯定率の一覧です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値で,上位5位の数値は赤色にしています。
男性は福岡の44.8%から岩手の29.4%,女性は山口の33.2%から福島の21.3%というレインヂです。同じ日本でも,地域が違えば性役割観の強度も異なることが知られます。
九州で高いという傾向でもありません。上位県(赤字)の分布をみても,明瞭な地域性を見いだすのは難しい。一昔前なら西高東低のような図柄になったかもしれませんが,今はそうでもないようです。男女共同参画の時代ですが,各地域の啓発活動の影響もあるのではないでしょうか。ジェンダー意識というのは,歴史・風土に規定された「固定的」なものと見るべきではありません。
上表のデータをグラフにしてみましょう。私は,男性の意識(a)を横軸,ジェンダー差(a-b)を縦軸にとったマトリクス上に,47都道府県を配置してみました。昨日,ツイッターで発信したグラフと同じものですが,関心を引いているようですので,ブログにも載せます。
右上は,働く女性に対する風当たりが強い県といえるでしょうか。九州の中枢県,福岡県の皆さんにとってはショッキングなグラフかもしれません。
ツイッターでこのグラフを出したところ,「福岡に帰らない理由はコレ」「経済発展や人口増加が著しく,勢いがあるのに,これだけがネック」というリプが寄せられました。男性と女性の意識差も大きくなっています。男性への啓発を!と言いたいですね。男性と女性の意識差が最も大きいのは,中部の静岡県なり。
対極の左下は,偏狭なジェンダー意識が相対的に薄い県です。岩手県,千葉県,群馬県ですか。岩手県の達増知事が,ツイッターでこの結果に興味を示されていました。
ちなみに各県の性役割意識は,子育て期の女性のフルタイム就業率とマイナスの相関関係にあります。地域のクライメイトの影響,侮りがたしです。ただ,女性が働くのが当たり前の地域では,人々のジェンダー意識も自ずと薄くなる,という逆の因果経路もあるかと思います。
https://twitter.com/tmaita77/status/1132856547929780226
今から4年前の2015年の調査データですが,5年のスパンを開けた来年(2020年)に,同じ調査をやってほしいです。政策の成果は,定点観測によって,嘘偽りない形で計測されます。
なお,伝統的性役割意識への賛成度が低いといっても,安心はできません。「女性も男性と対等に働くべし」という意識の下には,「女性は仕事も家事も育児もやれ」という,歪んだ期待が潜んでいることがしばしば。女性のフルタイム就業率が高い東北や日本海沿岸地域では,こういう重圧がないとも限りませんよね。
2019年5月25日土曜日
0円借家
暑くなってきました。横須賀は,今日も30度を超える夏日です。週末のお昼は長井水産に行くのですが,今日は陽が強いので見合わせます。
堀江貴文さんの『疑う力』(宝島社)を読んでいます。私は,この人の本は好きでよく買っています。言うことが鋭いのはもちろん,文章がいい。語り口調でスイスイ頭に入ってきます。この人は,文章を書くときは,ベッドに寝転んでフリック入力だそうですが,こういうふうに力を抜いて書くのもいいかもしれませんね。
https://tkj.jp/book/?cd=TD293695
唸らされる言葉が盛りだくさんですが,162ページで次ように言われています。「家賃は要らないから,空き家に住んでハウスキーパーをやってほしい,と懇願される時代がやってくる」。
住める家が余りまくる時代がくるのに,先行き不透明な中,ローンを組んでマイホームを買うのはナンセンス,という話です。
確かに,空き家が増えていますからね。家というのは,人が住まないと荒みます。それだけならまだしも,朽ち果てて景観が悪くなったり,犯罪の温床になったりします。「タダでいいから,空き家に住んでください」と言われるようになるかもしれません。
しかし今でも,タダで借りれる家は存在します。下の表は,借家世帯の月家賃の分布を整理したものです。専用住宅に住む借家世帯で,家賃不詳の世帯は除きます。資料は,2013年の総務省『住宅土地統計調査』です。
家賃が分かる借家世帯は,全国で1786万8800世帯あります。家賃の分布をみると,4~5万円台がボリュームゾーンです。私が今住んでいる部屋も,この階級に属します。
表の上をみると,家賃が「0円」という借家が35万9700戸あるではないですか。タダで人様の家を借りているという世帯です。ちなみに,『住宅土地統計』の家賃区分に「0円」というカテゴリ―が設けられたのは,2013年調査からです。空き家をタダ借りする人が増えているのを受けてでしょうか。
この「0円」借家は,借家世帯全体の中では2.0%に相当します。思うに,この数値は田舎では高いような気がします。都道府県統計がありますので,0円借家が借家世帯全体の何%かを県別に出してみましょう。下表は,高い順に並べたランキングです。
上位3位は,岩手県,福島県,宮城県です。これら3県では,借家世帯の1割が0円借家となっています。おそらく,2011年の東日本大震災の影響があるでしょう。
南端の沖縄県も,3.2%で比較的高いですね。郷里の鹿児島県も高い部類です。人口減に悩む離島部が,空き家を放出しているのでしょうか。
その0円借家ですが,どんな家なんでしょう。おそらく築年数がだいぶ経った,古い家屋が多いと思われます。築年数の分布は分かりませんが,畳数の分布はとれるので,それをグラフにしてみます。
ほう,一番多いのは30畳以上ですね。0円借家,広いではないですか。やはり,古い一戸建てが多いようです。空き家の状態が続くことに困り果てたオーナーないしは自治体が,タダ貸ししているのでしょう。
0円借家に住んでいる人ですが,居住開始時期をみると,半分近くが2011年以降となっています。東日本大震災の被災者だろうと思われるかもしれませんが,どの県でみても,マジョリティは2011年以降の入居者です。空き家問題が深刻化している,最近の状況の反映といえそうです。
うーん,0円借家もいいような気がしてきました。では,どういう地域に多くあるのでしょう。最初の都道府県統計から,地方に多いのは分かりますが,県レベルから下りた市区町村レベルのデータも出せます。
私は,家賃0円の借家世帯が,借家世帯全体の何%かを,市区町村別に計算しました。その比率が15%を超える地域をご覧に入れましょう。市区町村レベルだと実数が少ないのでは,という疑問もあるかと思いますので,計算に使った分子・分母の数値も添えます。
0円借家が借家全体の15%(7分の1)以上の地域です。率が高いのは,被災県の地域です。岩手県の陸前高田市や山田町では8割を超えます。
被災県以外でも,0円借家の率が高い地域があります。昨日ツイートしましたが,島根県の隠岐の島では,970の借家世帯のうち200世帯が,家賃タダの家に住んでいます。長崎県の対馬市もランクイン。離島部の人口呼び寄せ策でしょうか。長野の軽井沢は,別荘のタダ貸しかな。
目を凝らしてみると,0円借家がわんさとある地域が散見されます。これは2013年のデータですが,2018年の『住宅土地統計』のデータでみたら,0円借家はもっと増えていると思われます。2013年10月時点では約36万戸でしたが,50万戸を超えていたりして。
堀江さんの予言は的中するかもしれません。こう考えると,長期の高いローンを組んで家を買うのは躊躇われます。堀江さんが言っていますが,先行き不透明な時代に重荷を負うのはリスク。地震で潰れたらおしまい。地震保険も,首都圏直下型地震で保険会社がデフォルトになったら,保険金も支払われなくなっちゃいます。
高齢になったら家を借りにくくなるとはいいますが,人口の高齢化が進行したら,家主もそんなこと言ってられなくなるでしょう。前回申しましたが,われわれが高齢者になる頃には,ITを使った安否確認網とかが張り巡らされているのではないでしょうか。
黙っていても,家が空から降ってくる時代。夢のようです。0円借家の分布図というのは,地方創生の関連資料にぜひとも入れていただきたい。人の移動(mobility)を促す,最良のファクトだと考えます。
今回提示したのは2013年のデータですが,間もなく公開の2018年データが楽しみです。また同じデータを出しますので,それを眺めて,移住を本気で検討する人が出てきてくれればなと思います。
堀江貴文さんの『疑う力』(宝島社)を読んでいます。私は,この人の本は好きでよく買っています。言うことが鋭いのはもちろん,文章がいい。語り口調でスイスイ頭に入ってきます。この人は,文章を書くときは,ベッドに寝転んでフリック入力だそうですが,こういうふうに力を抜いて書くのもいいかもしれませんね。
https://tkj.jp/book/?cd=TD293695
唸らされる言葉が盛りだくさんですが,162ページで次ように言われています。「家賃は要らないから,空き家に住んでハウスキーパーをやってほしい,と懇願される時代がやってくる」。
住める家が余りまくる時代がくるのに,先行き不透明な中,ローンを組んでマイホームを買うのはナンセンス,という話です。
確かに,空き家が増えていますからね。家というのは,人が住まないと荒みます。それだけならまだしも,朽ち果てて景観が悪くなったり,犯罪の温床になったりします。「タダでいいから,空き家に住んでください」と言われるようになるかもしれません。
しかし今でも,タダで借りれる家は存在します。下の表は,借家世帯の月家賃の分布を整理したものです。専用住宅に住む借家世帯で,家賃不詳の世帯は除きます。資料は,2013年の総務省『住宅土地統計調査』です。
家賃が分かる借家世帯は,全国で1786万8800世帯あります。家賃の分布をみると,4~5万円台がボリュームゾーンです。私が今住んでいる部屋も,この階級に属します。
表の上をみると,家賃が「0円」という借家が35万9700戸あるではないですか。タダで人様の家を借りているという世帯です。ちなみに,『住宅土地統計』の家賃区分に「0円」というカテゴリ―が設けられたのは,2013年調査からです。空き家をタダ借りする人が増えているのを受けてでしょうか。
この「0円」借家は,借家世帯全体の中では2.0%に相当します。思うに,この数値は田舎では高いような気がします。都道府県統計がありますので,0円借家が借家世帯全体の何%かを県別に出してみましょう。下表は,高い順に並べたランキングです。
上位3位は,岩手県,福島県,宮城県です。これら3県では,借家世帯の1割が0円借家となっています。おそらく,2011年の東日本大震災の影響があるでしょう。
南端の沖縄県も,3.2%で比較的高いですね。郷里の鹿児島県も高い部類です。人口減に悩む離島部が,空き家を放出しているのでしょうか。
その0円借家ですが,どんな家なんでしょう。おそらく築年数がだいぶ経った,古い家屋が多いと思われます。築年数の分布は分かりませんが,畳数の分布はとれるので,それをグラフにしてみます。
ほう,一番多いのは30畳以上ですね。0円借家,広いではないですか。やはり,古い一戸建てが多いようです。空き家の状態が続くことに困り果てたオーナーないしは自治体が,タダ貸ししているのでしょう。
0円借家に住んでいる人ですが,居住開始時期をみると,半分近くが2011年以降となっています。東日本大震災の被災者だろうと思われるかもしれませんが,どの県でみても,マジョリティは2011年以降の入居者です。空き家問題が深刻化している,最近の状況の反映といえそうです。
うーん,0円借家もいいような気がしてきました。では,どういう地域に多くあるのでしょう。最初の都道府県統計から,地方に多いのは分かりますが,県レベルから下りた市区町村レベルのデータも出せます。
私は,家賃0円の借家世帯が,借家世帯全体の何%かを,市区町村別に計算しました。その比率が15%を超える地域をご覧に入れましょう。市区町村レベルだと実数が少ないのでは,という疑問もあるかと思いますので,計算に使った分子・分母の数値も添えます。
0円借家が借家全体の15%(7分の1)以上の地域です。率が高いのは,被災県の地域です。岩手県の陸前高田市や山田町では8割を超えます。
被災県以外でも,0円借家の率が高い地域があります。昨日ツイートしましたが,島根県の隠岐の島では,970の借家世帯のうち200世帯が,家賃タダの家に住んでいます。長崎県の対馬市もランクイン。離島部の人口呼び寄せ策でしょうか。長野の軽井沢は,別荘のタダ貸しかな。
目を凝らしてみると,0円借家がわんさとある地域が散見されます。これは2013年のデータですが,2018年の『住宅土地統計』のデータでみたら,0円借家はもっと増えていると思われます。2013年10月時点では約36万戸でしたが,50万戸を超えていたりして。
堀江さんの予言は的中するかもしれません。こう考えると,長期の高いローンを組んで家を買うのは躊躇われます。堀江さんが言っていますが,先行き不透明な時代に重荷を負うのはリスク。地震で潰れたらおしまい。地震保険も,首都圏直下型地震で保険会社がデフォルトになったら,保険金も支払われなくなっちゃいます。
高齢になったら家を借りにくくなるとはいいますが,人口の高齢化が進行したら,家主もそんなこと言ってられなくなるでしょう。前回申しましたが,われわれが高齢者になる頃には,ITを使った安否確認網とかが張り巡らされているのではないでしょうか。
黙っていても,家が空から降ってくる時代。夢のようです。0円借家の分布図というのは,地方創生の関連資料にぜひとも入れていただきたい。人の移動(mobility)を促す,最良のファクトだと考えます。
今回提示したのは2013年のデータですが,間もなく公開の2018年データが楽しみです。また同じデータを出しますので,それを眺めて,移住を本気で検討する人が出てきてくれればなと思います。
2019年5月20日月曜日
4~5万円台で借りられる賃貸の広さ
私は,横須賀市の長井という地域にて,賃貸アパートに住んでいます。相模湾に面した西海岸です。
隣のアパートの若いファミリーが,近くに念願のマイホームを建て,ニコニコ顔で引っ越して行きました。引っ越し作業を見守っている旦那さんと立ち話しましたが,「舞田さんも,安い中古のマンション買ったらどうですか,年をとったら賃貸も借りにくくなりますよ」と言われました。
うう,私が抱いている懸念を言い当ててくれました。孤独死を恐れてか,高齢者に部屋を貸すのを嫌がる家主が多いですからね。しかし今は奨学金を返済中ですので,叶いそうにありません。まあ近未来は,孤独死保険が普及したり,ITを使った安否確認網が発達したりと,事態は変わるのではないか。こう楽観しています。
賃貸(借家)の統計といえば,総務省の『住宅土地統計調査』です。最新の2013年調査にて月家賃の分布をみると,4~5万円台の階級が最も多くなっています。私が今住んでいる部屋も,この階級に属します。
想像がつくでしょうが,この家賃でどういう部屋を借りれるかは,地域によって大きく違います。私の郷里の鹿児島なら,そこそこのマンションを借りれますが,東京ではユニットバスの1ルームがやっとでしょう。
上記の調査の公表統計をみると,家賃と延べ面積のクロス表が地域別に出ています。これを使えば,今申したことを数値で可視化できます。私は,月家賃が4~5万円台の借家世帯を都道府県別に取り出し,延べ面積の分布を明らかにしました。4~5万円台の家賃で,どれくらいの広さの部屋を借りれるか? 47都道府県の比較をやってみます。
手始めに,私が住んでいる神奈川県の分布表をみてみましょう。4~5万円台の借家世帯(約33万世帯)の延べ面積分布です。
最も多いのは20~29平米で3割,次に多いのは20平米未満の狭小住宅です。これらの広さの部屋(30平米未満)で,全体の56%を占めます。さすがは首都圏です。
ただこれは,全国屈指の大都市の横浜市を反映しているでしょうね。神奈川といっても広いですが,三浦半島の横須賀市や三浦市は分布がもっと下に垂れています(後でお見せします)。
上表の分布を簡易な代表値にまとめましょう。平均値よりも中央値(Median)がベターです。累積相対度数が50ジャストの中央値は,20~29平米の階級に含まれます。按分比を使って,これを割り出しましょう。
按分比=(50-25.3)/(56.1-25.3)=0.8007
中央値=20平米+(10平米 × 0.8007)=28.0平米
神奈川県では,4~5万円台の家賃で借りれる部屋の広さは,ざっくり28平米ですよ,と言い表すことができます。ちょっと広めの1ルームというところです。
当然,この値は県によってかなり違っています。私は同じやり方にて,47都道府県の家賃4~5万円台の借家世帯について,延べ面積の中央値を計算しました。下表は,高い順に並べたランキングです。昨日,ツイッターで流した表と同じです。
https://twitter.com/tmaita77/status/1130040550286012416
予想通り,最も狭いのは東京都ですね。家賃4~5万円台では,24.2平米の狭い1ルームというのが相場です。次が古都の京都で,その次が先ほど取り上げた神奈川県,私の居住県です。下位5位には,大都市の都府県が見事に位置しています。
表の左上に目をやると,この家賃で最も広い部屋を借りれるのは九州の宮崎県のようです。49.7平米,同じ家賃であっても,東京の倍以上の広めのマンションに住めちゃいます。私の郷里の鹿児島は43.5平米,さもありなんです。
誰もが感じていることでしょうが,数値にするとインパクトありますね。ツイッター上でかなり注目されているようです。リプでも言われていますが,地方移住を促す「地方創生」のパンフに,こういうデータを載せるといいと思います。白々しいPRよりも,客観的な事実のほうが吸引力は強いでしょう。「宮崎いいな」「宮崎に移住しようかな」という声もあり。
どこで働いても収入は一緒という,身の軽いフリーランスの皆さん,ぜひ参考になさってください。ただ,都会に勤務先がある勤め人の方は,そうはいかないかもしれません。しかし移住といってもバリエーションがあり,東京から九州への高跳びもあれば,近郊県の郡部へというようなプチ移住もあります。
私は,このプチ移住を選択した人間の一人です。現住地は横須賀市の南西,三浦半島の西海岸で,畑と漁港の街です。街といっても,農村的な雰囲気がただよっています。それゆえ,家賃も安いです。『住宅土地統計』では市区別の「家賃×面積」のクロスもとれますので,三浦半島の横須賀市と三浦市の統計もご覧に入れましょう。比較対象として,都内23区と横浜市の分布も添えます。
大都市の23区や横浜市では,4~5万円台の家賃では,20平米に満たない狭小住宅がマジョリティです。対して横須賀市と三浦市では,2段上がった30平米台が最も多くなっています。ちょっと足を延ばすだけで,ずいぶん違うもんです。
「赤い弾丸」と形容される京急が通ってますので,都心へのアクセスは良好。横浜だったら,横須賀中央から20分ほどで行けます。
私などは,たまに横浜や新宿に出る程度なので,今の賃貸暮らしにとても満足しています。2017年の春に多摩市から横須賀市に移り住んで,本当によかった…。
移住といっても,大げさに考える必要はありますまい。ちょっと目を凝らせば,それほど遠くない穴場はあるでしょう。よくPRされていますが,三浦半島はおススメです。都心の文化を享受でき,かつ落ち着いた(海のある)暮らしができます。都会と地方のいいとこどり!
身の軽いフリーランスの方は,ここでお見せしたようなデータを参考に,移住を検討されてもよいでしょう。どこに住んでも収入は一緒,それでいて家賃が安くなるなら,暮らしはかなり楽になります。私は,この特権を行使してよかったと思っています。
隣のアパートの若いファミリーが,近くに念願のマイホームを建て,ニコニコ顔で引っ越して行きました。引っ越し作業を見守っている旦那さんと立ち話しましたが,「舞田さんも,安い中古のマンション買ったらどうですか,年をとったら賃貸も借りにくくなりますよ」と言われました。
うう,私が抱いている懸念を言い当ててくれました。孤独死を恐れてか,高齢者に部屋を貸すのを嫌がる家主が多いですからね。しかし今は奨学金を返済中ですので,叶いそうにありません。まあ近未来は,孤独死保険が普及したり,ITを使った安否確認網が発達したりと,事態は変わるのではないか。こう楽観しています。
賃貸(借家)の統計といえば,総務省の『住宅土地統計調査』です。最新の2013年調査にて月家賃の分布をみると,4~5万円台の階級が最も多くなっています。私が今住んでいる部屋も,この階級に属します。
想像がつくでしょうが,この家賃でどういう部屋を借りれるかは,地域によって大きく違います。私の郷里の鹿児島なら,そこそこのマンションを借りれますが,東京ではユニットバスの1ルームがやっとでしょう。
上記の調査の公表統計をみると,家賃と延べ面積のクロス表が地域別に出ています。これを使えば,今申したことを数値で可視化できます。私は,月家賃が4~5万円台の借家世帯を都道府県別に取り出し,延べ面積の分布を明らかにしました。4~5万円台の家賃で,どれくらいの広さの部屋を借りれるか? 47都道府県の比較をやってみます。
手始めに,私が住んでいる神奈川県の分布表をみてみましょう。4~5万円台の借家世帯(約33万世帯)の延べ面積分布です。
最も多いのは20~29平米で3割,次に多いのは20平米未満の狭小住宅です。これらの広さの部屋(30平米未満)で,全体の56%を占めます。さすがは首都圏です。
ただこれは,全国屈指の大都市の横浜市を反映しているでしょうね。神奈川といっても広いですが,三浦半島の横須賀市や三浦市は分布がもっと下に垂れています(後でお見せします)。
上表の分布を簡易な代表値にまとめましょう。平均値よりも中央値(Median)がベターです。累積相対度数が50ジャストの中央値は,20~29平米の階級に含まれます。按分比を使って,これを割り出しましょう。
按分比=(50-25.3)/(56.1-25.3)=0.8007
中央値=20平米+(10平米 × 0.8007)=28.0平米
神奈川県では,4~5万円台の家賃で借りれる部屋の広さは,ざっくり28平米ですよ,と言い表すことができます。ちょっと広めの1ルームというところです。
当然,この値は県によってかなり違っています。私は同じやり方にて,47都道府県の家賃4~5万円台の借家世帯について,延べ面積の中央値を計算しました。下表は,高い順に並べたランキングです。昨日,ツイッターで流した表と同じです。
https://twitter.com/tmaita77/status/1130040550286012416
予想通り,最も狭いのは東京都ですね。家賃4~5万円台では,24.2平米の狭い1ルームというのが相場です。次が古都の京都で,その次が先ほど取り上げた神奈川県,私の居住県です。下位5位には,大都市の都府県が見事に位置しています。
表の左上に目をやると,この家賃で最も広い部屋を借りれるのは九州の宮崎県のようです。49.7平米,同じ家賃であっても,東京の倍以上の広めのマンションに住めちゃいます。私の郷里の鹿児島は43.5平米,さもありなんです。
誰もが感じていることでしょうが,数値にするとインパクトありますね。ツイッター上でかなり注目されているようです。リプでも言われていますが,地方移住を促す「地方創生」のパンフに,こういうデータを載せるといいと思います。白々しいPRよりも,客観的な事実のほうが吸引力は強いでしょう。「宮崎いいな」「宮崎に移住しようかな」という声もあり。
どこで働いても収入は一緒という,身の軽いフリーランスの皆さん,ぜひ参考になさってください。ただ,都会に勤務先がある勤め人の方は,そうはいかないかもしれません。しかし移住といってもバリエーションがあり,東京から九州への高跳びもあれば,近郊県の郡部へというようなプチ移住もあります。
私は,このプチ移住を選択した人間の一人です。現住地は横須賀市の南西,三浦半島の西海岸で,畑と漁港の街です。街といっても,農村的な雰囲気がただよっています。それゆえ,家賃も安いです。『住宅土地統計』では市区別の「家賃×面積」のクロスもとれますので,三浦半島の横須賀市と三浦市の統計もご覧に入れましょう。比較対象として,都内23区と横浜市の分布も添えます。
大都市の23区や横浜市では,4~5万円台の家賃では,20平米に満たない狭小住宅がマジョリティです。対して横須賀市と三浦市では,2段上がった30平米台が最も多くなっています。ちょっと足を延ばすだけで,ずいぶん違うもんです。
「赤い弾丸」と形容される京急が通ってますので,都心へのアクセスは良好。横浜だったら,横須賀中央から20分ほどで行けます。
私などは,たまに横浜や新宿に出る程度なので,今の賃貸暮らしにとても満足しています。2017年の春に多摩市から横須賀市に移り住んで,本当によかった…。
移住といっても,大げさに考える必要はありますまい。ちょっと目を凝らせば,それほど遠くない穴場はあるでしょう。よくPRされていますが,三浦半島はおススメです。都心の文化を享受でき,かつ落ち着いた(海のある)暮らしができます。都会と地方のいいとこどり!
身の軽いフリーランスの方は,ここでお見せしたようなデータを参考に,移住を検討されてもよいでしょう。どこに住んでも収入は一緒,それでいて家賃が安くなるなら,暮らしはかなり楽になります。私は,この特権を行使してよかったと思っています。
2019年5月15日水曜日
ロスジェネの一人として朝日新聞に登場
今朝の朝日新聞ウェブ版に「40代,貧困ポスドクの悲哀,時給バイト以下,突然クビ」という記事が出ています。この記事に顔出しで登場させていただきました。
https://digital.asahi.com/articles/ASM4T747JM4TULZU017.html
同紙の連載「ロスジェネはいま」に含まれる記事です。学校卒業時が就職氷河期と重なり,正規就職が叶わず非正規や無職に留め置かれている人が多し。団塊ジュニアのちょっと下の世代で,人数的にも多いです。
ロスジェネも40代前半に達し,介護保険の支払い等,重みを増す税負担にあえいでいます。今は働き盛りですが,老後もチラチラ見え始め,一体どうなるのだろうと絶望に駆られている人もいるでしょう。年金など碌にもらえない人も多し。
国も,この世代が高齢期に達したらどうなるかと懸念を抱き,また学校卒業期の状況がどうだったかで,こうも割を食うのは不公平だと,この世代の救済に乗り出しました。まずは名前からと,「人生再設計第一世代」とネーミングしてくださっています。
朝日新聞の連載「ロスジェネはいま」は,こういう時流に即したものです。当該世代の当事者に会って,生の肉声を集めているようです。語り手は駒崎弘樹さん,雨宮処凛さん,小林美希さん,阿部真大さん…。なるほど,この世代の人たちですね。
76年生まれの私も,末席に加えていただきました。当事者として私もロスジェネ問題に関心があり,いろいろデータを集め,ブログやニューズウィーク記事で言いたいことを申してきました。編集委員の真鍋弘樹氏が,それに関心を持ってくださったことによります。
ロスジェネといっても色々な人がいますが,優秀なポスドク女性の自殺事件が起き,高学歴ワーキングプア問題への関心が集まる中,似たような状況に置かれているこいつの話を聞いてみよう。こういう意図もお持ちだったと推測します。
連休前の平日に昼下がりに,横須賀中央駅までお越しいただき,行きつけの南蛮茶屋でお話ししました。まずは私の身の上話から。99年に学部卒業,01年修士修了,1年ダブって05年に博士修了,博士号を取得し,数校で非常勤講師をしながら大学専任職への道を模索したと。
今でこそブログやツイッターで大学の悪口を言ってますが,05~10年頃は,私もせっせと教員公募に応募していました。1年間に8つくらい出してましたから,トータルで40ほど落選したことになります。今朝の記事で書かれている通りです。自殺された優秀な仏教研究者は20校ほど落選とのことですが,私はその倍以上です。
経験者はお分かりでしょうが,「貴意に沿えず」を何回も食らっていると,心が荒んでくるのですよね。送った書類や業績がきれいなまま戻ってくるのもしばしば。30代半ばになると状況が厳しいのが分かってきて,「もういいや」となりました。最後の公募に応募したのは,2011年の3月半ばだったと記憶しています。東日本大震災の直後です。
非常勤講師は続けましたが,給与が激安であること,そもそも採用時に給与すら聞けないこと,という話に驚いておられましたねえ。真鍋氏も,われわれの業界でいう「1コマの意味」をご存知ないようでした。1コマ3万円というのは,1回90分の講義ではなく,月4回の講義の対価です。1回あたりにすると7500円。授業準備や学生への質問対応の時間を入れたら,時給は学生バイト以下になります。記事で書かれていますが,「ボランティアや名誉職」という感じです。
https://tmaita77.blogspot.com/2015/01/blog-post_20.html
給与を聞けないというのも,この業界では常識。代わりはいくらでもいますので,給与を聞こうものなら「じゃあいいいです,他の人に頼みます」と言われます。私自身,それをやってしまったことがあります。紹介してくれた先生にも話がいったようで,「非常識なことを聞くな」とお叱りを受けました。給与を聞けないことのほうが,よっぽど非常識だと思いますがねえ…。
この業界は,やはり異常なんだなと感じました。
その非常勤講師も,40歳になった2016年度をもって,軒並み雇い止めになりました。記事に書かれている通り,「若い人に代わって欲しい」という理由からです。専任職に応募する場合,教歴が問われますので,後進に道を譲らないといけません。この仕事にうんざりしていた面もあるので,「ああそうですか」と,大人しく職を退きました(懇親会や会合に全然出ない,私の態度が問題になったという話も聞きましたが)。2017年春に横須賀に越したのは,都内に居続ける必要がなくなったのもあります。
今は文筆で生計を立てていますが,まあ,独り身を養う分の額は稼げています。「今後も,正規の研究職を目指すのか」と聞かれ,「いや,もういいっすわ」と答えたところ,相手はちょっと意外そうな顔をされていました。「はい,今後もトライします」と答えたら,「ロスジェネの救済を!」というトーンの美談を書けたのでしょうが,申し訳ありません…。
ロスジェネは20年も社会の片隅に置かれ,メンタルを病んでいる人も多いです。「正社員化,正社員化というけれど,それは通用しないと思いますよ」と,私は言いました。
「ロスジェネという,このさ迷える世代をレールに戻すには,どうしたらいいか」という問いには,「レール自体がおかしくなっている」と答えました。正社員を是とし,年功によって給与が決まる年功賃金制を改めない限り,ロスジェネが社会に入る隙などありません。時代にそぐわなくなった,昭和以来のレールを修理してほしい。ロスジェネ難民を乗せた列車の車輪に合うようにです。
具体的にどういうことかは,記事の最後のほうをご覧くださいませ。ネット限定の有料記事ですが,朝日新聞には良質な記事が多いので,有料会員登録しても損はないと思います。私も,この4月から登録しています。月に980円,社会を語るなら必須の投資です。
「ロスジェネはいま」は,とても楽しみな連載です。今後も,この世代の面白い人が続々登場するでしょう。最後になりましたが,モノ申す場を設けてくださった,朝日新聞編集委員の真鍋弘樹氏にお礼を申し上げます。
https://digital.asahi.com/articles/ASM4T747JM4TULZU017.html
同紙の連載「ロスジェネはいま」に含まれる記事です。学校卒業時が就職氷河期と重なり,正規就職が叶わず非正規や無職に留め置かれている人が多し。団塊ジュニアのちょっと下の世代で,人数的にも多いです。
ロスジェネも40代前半に達し,介護保険の支払い等,重みを増す税負担にあえいでいます。今は働き盛りですが,老後もチラチラ見え始め,一体どうなるのだろうと絶望に駆られている人もいるでしょう。年金など碌にもらえない人も多し。
国も,この世代が高齢期に達したらどうなるかと懸念を抱き,また学校卒業期の状況がどうだったかで,こうも割を食うのは不公平だと,この世代の救済に乗り出しました。まずは名前からと,「人生再設計第一世代」とネーミングしてくださっています。
朝日新聞の連載「ロスジェネはいま」は,こういう時流に即したものです。当該世代の当事者に会って,生の肉声を集めているようです。語り手は駒崎弘樹さん,雨宮処凛さん,小林美希さん,阿部真大さん…。なるほど,この世代の人たちですね。
76年生まれの私も,末席に加えていただきました。当事者として私もロスジェネ問題に関心があり,いろいろデータを集め,ブログやニューズウィーク記事で言いたいことを申してきました。編集委員の真鍋弘樹氏が,それに関心を持ってくださったことによります。
ロスジェネといっても色々な人がいますが,優秀なポスドク女性の自殺事件が起き,高学歴ワーキングプア問題への関心が集まる中,似たような状況に置かれているこいつの話を聞いてみよう。こういう意図もお持ちだったと推測します。
連休前の平日に昼下がりに,横須賀中央駅までお越しいただき,行きつけの南蛮茶屋でお話ししました。まずは私の身の上話から。99年に学部卒業,01年修士修了,1年ダブって05年に博士修了,博士号を取得し,数校で非常勤講師をしながら大学専任職への道を模索したと。
今でこそブログやツイッターで大学の悪口を言ってますが,05~10年頃は,私もせっせと教員公募に応募していました。1年間に8つくらい出してましたから,トータルで40ほど落選したことになります。今朝の記事で書かれている通りです。自殺された優秀な仏教研究者は20校ほど落選とのことですが,私はその倍以上です。
経験者はお分かりでしょうが,「貴意に沿えず」を何回も食らっていると,心が荒んでくるのですよね。送った書類や業績がきれいなまま戻ってくるのもしばしば。30代半ばになると状況が厳しいのが分かってきて,「もういいや」となりました。最後の公募に応募したのは,2011年の3月半ばだったと記憶しています。東日本大震災の直後です。
非常勤講師は続けましたが,給与が激安であること,そもそも採用時に給与すら聞けないこと,という話に驚いておられましたねえ。真鍋氏も,われわれの業界でいう「1コマの意味」をご存知ないようでした。1コマ3万円というのは,1回90分の講義ではなく,月4回の講義の対価です。1回あたりにすると7500円。授業準備や学生への質問対応の時間を入れたら,時給は学生バイト以下になります。記事で書かれていますが,「ボランティアや名誉職」という感じです。
https://tmaita77.blogspot.com/2015/01/blog-post_20.html
給与を聞けないというのも,この業界では常識。代わりはいくらでもいますので,給与を聞こうものなら「じゃあいいいです,他の人に頼みます」と言われます。私自身,それをやってしまったことがあります。紹介してくれた先生にも話がいったようで,「非常識なことを聞くな」とお叱りを受けました。給与を聞けないことのほうが,よっぽど非常識だと思いますがねえ…。
この業界は,やはり異常なんだなと感じました。
その非常勤講師も,40歳になった2016年度をもって,軒並み雇い止めになりました。記事に書かれている通り,「若い人に代わって欲しい」という理由からです。専任職に応募する場合,教歴が問われますので,後進に道を譲らないといけません。この仕事にうんざりしていた面もあるので,「ああそうですか」と,大人しく職を退きました(懇親会や会合に全然出ない,私の態度が問題になったという話も聞きましたが)。2017年春に横須賀に越したのは,都内に居続ける必要がなくなったのもあります。
今は文筆で生計を立てていますが,まあ,独り身を養う分の額は稼げています。「今後も,正規の研究職を目指すのか」と聞かれ,「いや,もういいっすわ」と答えたところ,相手はちょっと意外そうな顔をされていました。「はい,今後もトライします」と答えたら,「ロスジェネの救済を!」というトーンの美談を書けたのでしょうが,申し訳ありません…。
ロスジェネは20年も社会の片隅に置かれ,メンタルを病んでいる人も多いです。「正社員化,正社員化というけれど,それは通用しないと思いますよ」と,私は言いました。
「ロスジェネという,このさ迷える世代をレールに戻すには,どうしたらいいか」という問いには,「レール自体がおかしくなっている」と答えました。正社員を是とし,年功によって給与が決まる年功賃金制を改めない限り,ロスジェネが社会に入る隙などありません。時代にそぐわなくなった,昭和以来のレールを修理してほしい。ロスジェネ難民を乗せた列車の車輪に合うようにです。
具体的にどういうことかは,記事の最後のほうをご覧くださいませ。ネット限定の有料記事ですが,朝日新聞には良質な記事が多いので,有料会員登録しても損はないと思います。私も,この4月から登録しています。月に980円,社会を語るなら必須の投資です。
「ロスジェネはいま」は,とても楽しみな連載です。今後も,この世代の面白い人が続々登場するでしょう。最後になりましたが,モノ申す場を設けてくださった,朝日新聞編集委員の真鍋弘樹氏にお礼を申し上げます。
2019年5月11日土曜日
フルタイム就業女性の家事時間
令和は,女性の社会進出が進展する時代。こう願いたいところですが,当の女性は複雑な思いを禁じ得ないかもしれません。「仕事,家事,育児・介護をトリプルでしろというのか!」と。
いや,「自分がフルタイム就業となれば,さすがに夫も今より分担してくれるだろう」「いつも口うるさい姑も,手抜きを許容してくれるようになるだろう」と,淡い期待を抱くでしょうか。
日本の女性の家事時間が長いことは知られていますが,フルタイム就業の女性に限るとどうなんでしょう。ISSPの「家族と性役割の変化に関する調査」(2012年)では,週間の家事時間を尋ねています。既婚女性と,そのうちのフルタイム就業女性を取り出し,回答の分布をとってみましょう。ラフな5つの階級にまとめました。左は日本,右はアメリカのグラフです。
個票データから,私が独自に集計したデータであることを申し添えます。
http://www.issp.org/data-download/by-year/
日本の女性はアメリカより家事時間が長いですが,フルタイム就業者の分布は,既婚女性全体とほぼ同じです。フルタイムか否かに関係なく,週20時間以上が6割以上います。
フルタイム就業女性であっても,主婦と同じくらい,重い家事負担を担っている(担わされている)ことに驚きます。女性の社会進出を促す気流に,懸念を抱く女性が多いのは頷けます。
対してアメリカでは,フルタイム就業女性になると,家事時間がかなり短くなります。おそらく外注するのでしょう。あるいは,夫の分担度が上がるためか…。
夫婦というのは,妻と夫のタッグですので,夫の家事時間(分担度)にも目を配らないといけません。上記のISSP調査では,配偶者(パートナー)の週間家事時間も答えてもらっています。既婚女性と既婚フルタイム就業女性が答えた,自分と夫の家事時間を平均してみましょう。
下表は,主要7か国の結果をまとめたものです。上段は既婚女性,下段は既婚フルタイム就業女性の回答に依拠します。
日本をみると,妻がフルタイム就業であっても,夫婦の家事時間と夫の分担率は,ほとんど同じではないですか。「自分がフルタイム就業となれば,夫も今より分担してくれるだろう」という期待は,そう簡単には実現しないようです。
諸外国では,フルタイム就業の妻になると,家事時間がかなり減ります。先ほどみたアメリカやドイツは,減少幅が大きいですね。夫の家事時間は微増であることから,やはり外注に頼るのでしょう。あるいは,家事のレベルを下げると。
しかし日本ではそういう融通はきかず,フルタイムの妻であっても,主婦と同様の重い家事負担を課されます。こういう状況を考えると,社会進出の進展は,女性にとって地獄と言い得るかもしれません。
随所で申していますが,日本では家事のレベルが高く,手抜きは悪という風潮が強いのでしょう。「男は仕事,女は家庭」という性役割分業で社会が築かれる中,家事に求められる水準はすっかり高くなってしまっています。専業主婦が手間暇かけて作った料理(一汁三菜)で,疲れて帰宅する夫をねぎらう…。これが高度経済成長期の日々でした。
しかし時代は変わっています。個人・社会双方の要請から,夫婦の共働き(稼ぎ)が求められる時代です。今こそ「時短」「手抜き」を奨励すべき時。それを可能ならしめるテクノロジーも生まれています。
あと問題なのは,やはり夫の家事時間の短さです。妻の就業状態に関係なく,夫は週に4時間ほどしか家事をしません。妻との落差が非常に大きい。
日本の夫は仕事時間がべらぼうに長いからだと思われるでしょうが,夫の仕事時間でグループ分けしても,結果はほぼ同じです。「日本の男性は仕事時間が長いから家事をしない」っていうわけではさなそうです。定時に上がっても,家ではなく酒場に足が向くフラリーマンも多いわけでして…。
それに,高齢夫婦に限ってみても,日本の夫の家事分担率はすこぶる低くなっています。無職が多い高齢夫婦でもコレです。やはり,仕事時間云々の問題ではないといえそうです。
https://twitter.com/tmaita77/status/1126770989730111494
女性の社会進出を促すのは大賛成ですが,時代にそぐわなくなっている家事労働への考え方を変え,さらに男性の「家庭進出」をも同時に促さないことには,女性にとって地獄絵図のような世になりそうです。
いや,「自分がフルタイム就業となれば,さすがに夫も今より分担してくれるだろう」「いつも口うるさい姑も,手抜きを許容してくれるようになるだろう」と,淡い期待を抱くでしょうか。
日本の女性の家事時間が長いことは知られていますが,フルタイム就業の女性に限るとどうなんでしょう。ISSPの「家族と性役割の変化に関する調査」(2012年)では,週間の家事時間を尋ねています。既婚女性と,そのうちのフルタイム就業女性を取り出し,回答の分布をとってみましょう。ラフな5つの階級にまとめました。左は日本,右はアメリカのグラフです。
個票データから,私が独自に集計したデータであることを申し添えます。
http://www.issp.org/data-download/by-year/
日本の女性はアメリカより家事時間が長いですが,フルタイム就業者の分布は,既婚女性全体とほぼ同じです。フルタイムか否かに関係なく,週20時間以上が6割以上います。
フルタイム就業女性であっても,主婦と同じくらい,重い家事負担を担っている(担わされている)ことに驚きます。女性の社会進出を促す気流に,懸念を抱く女性が多いのは頷けます。
対してアメリカでは,フルタイム就業女性になると,家事時間がかなり短くなります。おそらく外注するのでしょう。あるいは,夫の分担度が上がるためか…。
夫婦というのは,妻と夫のタッグですので,夫の家事時間(分担度)にも目を配らないといけません。上記のISSP調査では,配偶者(パートナー)の週間家事時間も答えてもらっています。既婚女性と既婚フルタイム就業女性が答えた,自分と夫の家事時間を平均してみましょう。
下表は,主要7か国の結果をまとめたものです。上段は既婚女性,下段は既婚フルタイム就業女性の回答に依拠します。
日本をみると,妻がフルタイム就業であっても,夫婦の家事時間と夫の分担率は,ほとんど同じではないですか。「自分がフルタイム就業となれば,夫も今より分担してくれるだろう」という期待は,そう簡単には実現しないようです。
諸外国では,フルタイム就業の妻になると,家事時間がかなり減ります。先ほどみたアメリカやドイツは,減少幅が大きいですね。夫の家事時間は微増であることから,やはり外注に頼るのでしょう。あるいは,家事のレベルを下げると。
しかし日本ではそういう融通はきかず,フルタイムの妻であっても,主婦と同様の重い家事負担を課されます。こういう状況を考えると,社会進出の進展は,女性にとって地獄と言い得るかもしれません。
随所で申していますが,日本では家事のレベルが高く,手抜きは悪という風潮が強いのでしょう。「男は仕事,女は家庭」という性役割分業で社会が築かれる中,家事に求められる水準はすっかり高くなってしまっています。専業主婦が手間暇かけて作った料理(一汁三菜)で,疲れて帰宅する夫をねぎらう…。これが高度経済成長期の日々でした。
しかし時代は変わっています。個人・社会双方の要請から,夫婦の共働き(稼ぎ)が求められる時代です。今こそ「時短」「手抜き」を奨励すべき時。それを可能ならしめるテクノロジーも生まれています。
あと問題なのは,やはり夫の家事時間の短さです。妻の就業状態に関係なく,夫は週に4時間ほどしか家事をしません。妻との落差が非常に大きい。
日本の夫は仕事時間がべらぼうに長いからだと思われるでしょうが,夫の仕事時間でグループ分けしても,結果はほぼ同じです。「日本の男性は仕事時間が長いから家事をしない」っていうわけではさなそうです。定時に上がっても,家ではなく酒場に足が向くフラリーマンも多いわけでして…。
それに,高齢夫婦に限ってみても,日本の夫の家事分担率はすこぶる低くなっています。無職が多い高齢夫婦でもコレです。やはり,仕事時間云々の問題ではないといえそうです。
https://twitter.com/tmaita77/status/1126770989730111494
女性の社会進出を促すのは大賛成ですが,時代にそぐわなくなっている家事労働への考え方を変え,さらに男性の「家庭進出」をも同時に促さないことには,女性にとって地獄絵図のような世になりそうです。
2019年5月9日木曜日
日本女性学習財団に行く
連休が明け,昨日は晴天でしたので出かけてきました。私は「逆張り」主義ですので,出かけるのは平日です。
私はラーメン二郎が大好きで,2015年秋から16年春にかけて,首都圏(1都3県)の二郎は全店制覇しました。ツイログに店舗とラーメンの写真を撮ってますので,「このラーメンはどこの店舗のものか?」という問題を作ることもできます。
今年の3月に埼玉の越谷に新店舗ができたと聞き,「首都圏二郎全店制覇」を名乗り続けるにはここも行かねばならぬと,昨日出向いてみた次第です。品川まで京急,北千住までJR,そこから東武線で越谷駅まで,2時間半ほどの遠出でした。
店は駅からすぐで,イケメン2名の店員さんが切り盛りしています。「少ラーメン,ニンニクマシマシ,アブラ」を頼みましたが,他店に比してあっさりしていました。スープに脂分が少なく,女性客も結構いたのはそのためでしょうか。
https://twitter.com/tmaita77/status/1125954839790346240
**********
爪楊枝でシーシーやりながら,帰りの電車に乗り込み,スマホをいじっていたら,日本女性学習財団の編集者さんからメールがきました。「財団の最寄りは浜松町で,帰りに通るじゃん」と,「今から行きます」とリプした所,先方はちょっと驚きつつも快諾してくれました。
ガムでニンニク臭を必死に消しながら,浜松町駅に到着。東京タワー方面に歩いて5分ほどで,日本女性会館という建物が見えてきます。ここの5階です。
http://www.jawe2011.jp/
日本女性学習財団は,女性の学習活動の調査や資料刊行,優れた実践の表彰などを行っている団体です。公益財団法人の名に偽りなく,公共性・公益性の高い活動を手掛けておられます。理事長は,わが母校・東京学芸大学の前学長であられた村松泰子先生です。
私は昨年4月から,当財団の機関紙『ウィラーン』にて連載「データをジェンダーの視点で読み解く」を書かせていただいています。もう1年以上の付き合いですが,財団の事業所におうかがいするのは初めてでした。出不精ゆえ,申し訳なく思っております。
学習事業課の方々にお迎えいただき,施設を見せていただきました。その代表格は,学習・研究用スペースの「ウィラーン」です。
http://www.jawe2011.jp/building/space_we_learn.html
日当たりがよく,窓からは東京タワーと芝公園が見えます。室内には,ホワイトボードと可動式の机・椅子があり,グループでの学習やゼミなどに使えるとのこと。
そのためには資料が必要ですが,さすが女性学習財団というだけあって,関連の文献や資料が豊富に取り揃えられています。すぐ手の届くところに,女性分野の基本資料がありますので,学習もさぞ充実することでしょう。学大で習ったある先生は,「資料に囲まれた部屋でこそ,いいゼミができるのだ」とおっしゃっていました。
棚には,財団機関誌の『ウィラーン』もあります。過去半世紀のバックナンバー(縮刷版)も備えられています。以前は『女性教養』という名前だったそうです。女性の学習のあゆみを跡付けられる貴重な資料(史料)ですが,ここではそれを軒並み見ることができます。国会図書館のように,面倒な閲覧手続きも要りません。
場所は港区芝公園,浜松町駅から徒歩5分,東京タワーのすぐ近くという立地ですので,オフィス帰りの学習,調べものなどに使えるでしょう。今の時期なら,勉強した後に,近くの芝公園で,ライトアップされた東京タワーを見ながら酒盛りなんてのもできます。
昨日は,この明るい空間で,編集者さん2名と30分ほど談笑しました。ジェンダー統計に関することですが,未だに男子が先,女子は後の男女別名簿を使っている学校が大半という話には驚きました。
選挙の年にかんがみ,選挙のジェンダー差についても話しました。議員の女性比率が低いのだが,「そもそも出馬する女性自体が少ない,当選率(当選者数/立候補者数)にも性差がある」「あと女性の投票率は男性より低い」と言われ,本当かなと,帰宅後にちょっとデータを作ってみたら,その通りでした。
https://twitter.com/tmaita77/status/1126064502032572416
https://twitter.com/tmaita77/status/1126103137679314945
私は滅多に人と話しませんが,対話によって気づかされる部分もあるのだなと実感します。私のような出不精な人間が,アパートの部屋の中で思いつくことなんて限られています。人間は所詮はアナログ動物,人と膝を突き合わせて話すって大事だと思います。
日本女性学習財団の連載ですが,当初は1年間の約束だったのですが,思いのほか好評?とのことで,今年度も継続しています。財団HPにて注文可能,PDFでの購入もできます。ぜひ,ご覧くださいませ。
私はラーメン二郎が大好きで,2015年秋から16年春にかけて,首都圏(1都3県)の二郎は全店制覇しました。ツイログに店舗とラーメンの写真を撮ってますので,「このラーメンはどこの店舗のものか?」という問題を作ることもできます。
今年の3月に埼玉の越谷に新店舗ができたと聞き,「首都圏二郎全店制覇」を名乗り続けるにはここも行かねばならぬと,昨日出向いてみた次第です。品川まで京急,北千住までJR,そこから東武線で越谷駅まで,2時間半ほどの遠出でした。
店は駅からすぐで,イケメン2名の店員さんが切り盛りしています。「少ラーメン,ニンニクマシマシ,アブラ」を頼みましたが,他店に比してあっさりしていました。スープに脂分が少なく,女性客も結構いたのはそのためでしょうか。
https://twitter.com/tmaita77/status/1125954839790346240
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爪楊枝でシーシーやりながら,帰りの電車に乗り込み,スマホをいじっていたら,日本女性学習財団の編集者さんからメールがきました。「財団の最寄りは浜松町で,帰りに通るじゃん」と,「今から行きます」とリプした所,先方はちょっと驚きつつも快諾してくれました。
ガムでニンニク臭を必死に消しながら,浜松町駅に到着。東京タワー方面に歩いて5分ほどで,日本女性会館という建物が見えてきます。ここの5階です。
http://www.jawe2011.jp/
日本女性学習財団は,女性の学習活動の調査や資料刊行,優れた実践の表彰などを行っている団体です。公益財団法人の名に偽りなく,公共性・公益性の高い活動を手掛けておられます。理事長は,わが母校・東京学芸大学の前学長であられた村松泰子先生です。
私は昨年4月から,当財団の機関紙『ウィラーン』にて連載「データをジェンダーの視点で読み解く」を書かせていただいています。もう1年以上の付き合いですが,財団の事業所におうかがいするのは初めてでした。出不精ゆえ,申し訳なく思っております。
学習事業課の方々にお迎えいただき,施設を見せていただきました。その代表格は,学習・研究用スペースの「ウィラーン」です。
http://www.jawe2011.jp/building/space_we_learn.html
日当たりがよく,窓からは東京タワーと芝公園が見えます。室内には,ホワイトボードと可動式の机・椅子があり,グループでの学習やゼミなどに使えるとのこと。
そのためには資料が必要ですが,さすが女性学習財団というだけあって,関連の文献や資料が豊富に取り揃えられています。すぐ手の届くところに,女性分野の基本資料がありますので,学習もさぞ充実することでしょう。学大で習ったある先生は,「資料に囲まれた部屋でこそ,いいゼミができるのだ」とおっしゃっていました。
棚には,財団機関誌の『ウィラーン』もあります。過去半世紀のバックナンバー(縮刷版)も備えられています。以前は『女性教養』という名前だったそうです。女性の学習のあゆみを跡付けられる貴重な資料(史料)ですが,ここではそれを軒並み見ることができます。国会図書館のように,面倒な閲覧手続きも要りません。
場所は港区芝公園,浜松町駅から徒歩5分,東京タワーのすぐ近くという立地ですので,オフィス帰りの学習,調べものなどに使えるでしょう。今の時期なら,勉強した後に,近くの芝公園で,ライトアップされた東京タワーを見ながら酒盛りなんてのもできます。
昨日は,この明るい空間で,編集者さん2名と30分ほど談笑しました。ジェンダー統計に関することですが,未だに男子が先,女子は後の男女別名簿を使っている学校が大半という話には驚きました。
選挙の年にかんがみ,選挙のジェンダー差についても話しました。議員の女性比率が低いのだが,「そもそも出馬する女性自体が少ない,当選率(当選者数/立候補者数)にも性差がある」「あと女性の投票率は男性より低い」と言われ,本当かなと,帰宅後にちょっとデータを作ってみたら,その通りでした。
https://twitter.com/tmaita77/status/1126064502032572416
https://twitter.com/tmaita77/status/1126103137679314945
私は滅多に人と話しませんが,対話によって気づかされる部分もあるのだなと実感します。私のような出不精な人間が,アパートの部屋の中で思いつくことなんて限られています。人間は所詮はアナログ動物,人と膝を突き合わせて話すって大事だと思います。
日本女性学習財団の連載ですが,当初は1年間の約束だったのですが,思いのほか好評?とのことで,今年度も継続しています。財団HPにて注文可能,PDFでの購入もできます。ぜひ,ご覧くださいませ。
2019年5月7日火曜日
高学歴マザーのフルタイム就業率
前回は,大卒率のジェンダー差の国際比較をしました。15歳生徒の父母のデータで見る限り,日本はそれが最も大きいことが分かりました。父の大卒率が44%,母が27%,その差は17ポイント。こういう社会は類を見ません。発展途上国を含めてもです。
だいぶ前に,これと同種のデータを出したことがあるのですが,「そりゃあ,女性は大学出たって,結婚したら仕事辞めてパートのおばちゃんなんだからね」という声がありました。辛辣ですが,現実を言い当ててていると思います。
前回は「PISA 2015」のデータを使いましたが,その前の「PISA 2012」では,15歳の生徒に母親が何をしているかを尋ねています。フルタイム就業,パート就業,求職中,専業主婦の4択です。母親が大卒ないしは大学院卒(ISCEDレベル5A以上の学歴保有者)の生徒は,この問いにどう答えているか。
リモート集計ではじき出してみると,フルタイム就業と答えた生徒の率は,日本は41%となっています。主要国の数値をみると,韓国は49%,アメリカは68%,イギリスは58%,ドイツは445,フランスは70%,スウェーデンは76%です。高学歴マザーのフルタイム就業率は,日本は低いようです。
他国はどうでしょう。「PISA 2012」から,64か国のデータを得ることができます。高学歴マザーのフルタイム就業率が高い順に並べると,以下のようになります。
日本は先進国の群れから外れて,下から7番目という位置です。近辺には,カタール,アラブ首長国連邦,ヨルダンといった社会があります。日本の高学歴マザーの社会進出度は,中東と同レベルのようです。
ドイツやスイスも低いですが,雇用形態による賃金差がないので,積極的にパートの働き方を選んでいるマザーが多いのかもしれませんね。
私はこの表をみて,日本は高学歴女性のハイタレントを活用できてないのだなあと思いました。こういう状況があるのを若き女子が感じ取って,大学進学の効用を見限り,大学進学率のジェンダー差が大きくなってしまうのでしょうか。冒頭で引いた「女性は大学出たって,結婚したら仕事辞めてパートのおばちゃんなんだからね」という声が突き刺さります。
上記の表は昨日ツイッターで発信しましたが,多くの人が見てくださっています。私と同様,「日本はスゴイ無駄をしている」という声が多数ですが,「社会進出できないでいるのか,しないでいるのかを区別しないといけない」という意見もありました。
そうですねえ。右下の中東諸国では,大卒女性は石油富豪と結婚していて,望んで(優雅な)主婦生活をしているのかもしれません。対して左上の旧共産圏の社会では,国民皆労働の伝統が強く,かつ貧しいので,好むと否とに関係なく働かないといけない。こういう社会の女性は「日本の女性を羨ましく思っている」。こんなリプもありました。
これが妥当であるなら,社会的地位の高い男性と結婚しやすい大卒女性のフルタイム就業率は,普通の女性よりも低いように思えます。しかし現実は逆です。どの社会でも例外なく,高学歴マザーのフルタイム就業率は,母親全体よりも高くなっています。
横軸に高学歴マザーのフルタイム就業率,縦軸に母親全体との差分をとった座標上に,64の国を配置したグラフを作ってみました。
トルコとベトナムでは,高学歴マザーのフルタイム就業率は,母親全体より40ポイント以上高くなっています。ハイタレントの女性は歓迎され,当の女性も身に付けた高度な能力を活かしたい,という欲求が強いのでしょう。三世代世帯が多いという条件もあるでしょうが…。
程度の差はあれ,それはどの社会も同じのようですね。しかし,日本の位置が気になります。高学歴マザーのフルタイム率が低く,かつ母親全体との差分も小さいのです。能力に関係なく,女性は「マミートラック」に絡めとられやすい,ということでしょうか。お隣の韓国も近い位置にあります。くどいですがもう一度。「女性は大学出たって,結婚したら仕事辞めてパートのおばちゃんなんだからね」。
最初のランキング表を見て,日本を含む右下の諸国は「豊か」であることの証,何も問題ない。こういう声がありましたが,果たしてそれは正しいのか。日本でも,自身のタレントを発揮したいと願う女性は多く,共働きでないとやっていけないという圧力に晒されている夫婦が多いのは同じです。だからこそ,多くの夫婦が血眼で「保活」に取り組むのです。
大卒・大学院卒の母親のフルタイム就業率=4割。日本のこの数値は,非自発的な要素を多く含んでいるとみていいでしょう。
高学歴の既婚女性にフォーカスを充ててみると,日本では,女性の社会進出を促す余地は多分にあるのだなと感じさせられます。三世代同居を促すような時代錯誤のやり方ではなく,公的な保育の受け皿を増やすことによってです。
だいぶ前に,これと同種のデータを出したことがあるのですが,「そりゃあ,女性は大学出たって,結婚したら仕事辞めてパートのおばちゃんなんだからね」という声がありました。辛辣ですが,現実を言い当ててていると思います。
前回は「PISA 2015」のデータを使いましたが,その前の「PISA 2012」では,15歳の生徒に母親が何をしているかを尋ねています。フルタイム就業,パート就業,求職中,専業主婦の4択です。母親が大卒ないしは大学院卒(ISCEDレベル5A以上の学歴保有者)の生徒は,この問いにどう答えているか。
リモート集計ではじき出してみると,フルタイム就業と答えた生徒の率は,日本は41%となっています。主要国の数値をみると,韓国は49%,アメリカは68%,イギリスは58%,ドイツは445,フランスは70%,スウェーデンは76%です。高学歴マザーのフルタイム就業率は,日本は低いようです。
他国はどうでしょう。「PISA 2012」から,64か国のデータを得ることができます。高学歴マザーのフルタイム就業率が高い順に並べると,以下のようになります。
日本は先進国の群れから外れて,下から7番目という位置です。近辺には,カタール,アラブ首長国連邦,ヨルダンといった社会があります。日本の高学歴マザーの社会進出度は,中東と同レベルのようです。
ドイツやスイスも低いですが,雇用形態による賃金差がないので,積極的にパートの働き方を選んでいるマザーが多いのかもしれませんね。
私はこの表をみて,日本は高学歴女性のハイタレントを活用できてないのだなあと思いました。こういう状況があるのを若き女子が感じ取って,大学進学の効用を見限り,大学進学率のジェンダー差が大きくなってしまうのでしょうか。冒頭で引いた「女性は大学出たって,結婚したら仕事辞めてパートのおばちゃんなんだからね」という声が突き刺さります。
上記の表は昨日ツイッターで発信しましたが,多くの人が見てくださっています。私と同様,「日本はスゴイ無駄をしている」という声が多数ですが,「社会進出できないでいるのか,しないでいるのかを区別しないといけない」という意見もありました。
そうですねえ。右下の中東諸国では,大卒女性は石油富豪と結婚していて,望んで(優雅な)主婦生活をしているのかもしれません。対して左上の旧共産圏の社会では,国民皆労働の伝統が強く,かつ貧しいので,好むと否とに関係なく働かないといけない。こういう社会の女性は「日本の女性を羨ましく思っている」。こんなリプもありました。
これが妥当であるなら,社会的地位の高い男性と結婚しやすい大卒女性のフルタイム就業率は,普通の女性よりも低いように思えます。しかし現実は逆です。どの社会でも例外なく,高学歴マザーのフルタイム就業率は,母親全体よりも高くなっています。
横軸に高学歴マザーのフルタイム就業率,縦軸に母親全体との差分をとった座標上に,64の国を配置したグラフを作ってみました。
トルコとベトナムでは,高学歴マザーのフルタイム就業率は,母親全体より40ポイント以上高くなっています。ハイタレントの女性は歓迎され,当の女性も身に付けた高度な能力を活かしたい,という欲求が強いのでしょう。三世代世帯が多いという条件もあるでしょうが…。
程度の差はあれ,それはどの社会も同じのようですね。しかし,日本の位置が気になります。高学歴マザーのフルタイム率が低く,かつ母親全体との差分も小さいのです。能力に関係なく,女性は「マミートラック」に絡めとられやすい,ということでしょうか。お隣の韓国も近い位置にあります。くどいですがもう一度。「女性は大学出たって,結婚したら仕事辞めてパートのおばちゃんなんだからね」。
最初のランキング表を見て,日本を含む右下の諸国は「豊か」であることの証,何も問題ない。こういう声がありましたが,果たしてそれは正しいのか。日本でも,自身のタレントを発揮したいと願う女性は多く,共働きでないとやっていけないという圧力に晒されている夫婦が多いのは同じです。だからこそ,多くの夫婦が血眼で「保活」に取り組むのです。
大卒・大学院卒の母親のフルタイム就業率=4割。日本のこの数値は,非自発的な要素を多く含んでいるとみていいでしょう。
高学歴の既婚女性にフォーカスを充ててみると,日本では,女性の社会進出を促す余地は多分にあるのだなと感じさせられます。三世代同居を促すような時代錯誤のやり方ではなく,公的な保育の受け皿を増やすことによってです。
2019年5月2日木曜日
15歳の父母の大卒率
10連休も後半にさしかかりましたが,いかがお過ごしでしょうか。予報によると,後半は晴天が続くそうです。私の自宅近くのソレイユの丘は,美しいブルーのネモフィラが満開です。三浦半島の南西に,ぜひお出かけください。
私はというと,いつもと変わらない暮らしをしています。人と違う「逆張り」主義ですので,暦の上での休日・祝日は出かけません。午前中は食い扶持仕事をして,午後からはパソコンの前に張り付いて,データやグラフの試作品をツイッターで流したりしています。
その中で,15歳生徒の父母の大卒率を国別に比べたグラフが関心を集めています。OECDの「PISA 2015」にて,15歳生徒に父母の学歴を尋ねた結果です。日本の場合,大卒率は父親のほうが母親より高い,と思われるでしょう。結果はその通りで,父が大学を出ていると答えた生徒の比率は44%ですが,母が大学を出ているという生徒は27%しかいません。
大学進学率は男子が女子より高いので当然,何の違和感もないデータです。しかし国際的にみると,こんなにジェンダー差が開いている社会はないのですよね。主要国のデータを拾ってみると,以下のようになります。リモート集計で作りましたので,粗い整数値になっていること,ご容赦ください。
大卒率とは,ISCEDのレベル5A以上の学歴保有者をいいます。日本でいう大学・大学院卒業者で,短大や専修学校等は含まれません(これらはレベル5B)。
表をぱっと見,さすがは教育大国のニッポン,父親の大卒率(44%)は8か国で最も高くなっています。しかし母親になるとガクンと下がり,8か国中6位です。右端は母の大卒率が父より何ポイント高いかですが,日本はマイナスの振れ幅が大きくなっています。大卒率のジェンダー差(男性>女性)が殊に大きい社会です。
母の大卒率が父より高い国があることにも注目。フィンランドでは9ポイント,アメリカとスウェーデンでは6ポイント,母の大卒率が父より高くなっています。世界を見渡せば,こういう社会もあるのですよね。
比較の射程を広げてみましょう。「PISA 2015」から,発展途上国も含む69か国のデータを得ることができます。横軸に母親の大卒率,縦軸に「母親-父親」の差分をとった座標上に,69の社会のドットを配置してみます。母親の大卒率を,絶対水準と相対水準(対父親)で見て取れる仕掛けです。
教育が普及しているといわれる日本ですが,15歳の母親の大卒率は69か国の中では真ん中辺りです(横軸)。大学進学率のジェンダー差が大きいからに他なりません。
それは,縦軸上の日本の位置に表れています。「母親-父親」の差分ですが,日本が最もマイナス方向(下)に振れています。「父親>母親」のジェンダー差が最も大きい,ということです。その度合いは,発展途上国やイスラーム諸国以上ではありませんか。
縦軸の位置がゼロよりも上なのは,母の大卒率が父よりも高い,言い換えると女子の大学進学率が男子より高い社会です。その数は33か国で,全体のおよそ半分です。右上には,北欧の諸国が位置しています。女性の大卒率が高く,かつ男性よりも高い社会。リカレント教育が普及していますので,社会に出てから大卒・院卒の学歴をとったという人も少なくないでしょう。
東洋の小さな島国でわれわれが見ている光景は,普遍的でも何でもないことが知られます。むしろ,国際的にみたらアブノーマルな部類です。大卒率,抽象度を上げていうと教育達成のジェンダー差(男性>女性)が他国に比して格段に大きいのは,明らかに問題であるといえるでしょう。
なぜ,こんな事態になっているか。思い当たるふしは,数多くあります。男子と女子では,親や周囲から向けられる教育期待が異なること,それに呼応して,女子の大学進学アスピレーションが男子より低いのは,日経DUALの寄稿記事で明らかにしました。その度合いは,他のどの国よりも大きくなっています。今回のデータと符合しますね。
https://dual.nikkei.co.jp/atcl/column/17/1111184/110500014/
そういうクライメイトを察知してか,女子,とりわけ低所得層の女子は,自身の将来を早くから見限る傾向もあります。高校生のバイト実施率を家庭の所得階層別に出すと,低所得層では「男子<女子」の差がものすごいのです。貧困という生活条件がどう作用するかは,男子と女子では違うようです。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/02/post-11687.php
また,大学が都市部に偏在しているゆえ,とりわけ地方において大学進学率の性差は大きくなっています。私の郷里の鹿児島は,その典型です。コストのかかる自宅外進学は男子優先,そもそも女子を外に出したくない…。こう考えている親御さんも多し。
対策は,女子に対し偏った眼差しを向けないこと,女子が進学しやすい条件を整えることに分かれます。後者についていうと,東大は女子学生の家賃補助をしていますが,これなどは,地方の才女を呼び寄せるのに一役買うと思います。
大学進学率のジェンダー差をなくすなんて不可能,そもそも男子と女子の意向の差とも読めるのだから,このままでいいじゃないか。こういう意見もあるでしょうが,上記の国際比較のグラフを一瞥するだけで,それが欺瞞に満ちていることは分かります。変革可能性はあるのです。
今回比べた69か国でみると,15歳の父の大卒率は3位ですが,母は33位なり。ここまで落差が大きい国は他にありません。人口の半分を占める女子の教育をなおざりにしてきたことの証左です。新しい令和は,女子教育の時代。そんなふうに思います。
私はというと,いつもと変わらない暮らしをしています。人と違う「逆張り」主義ですので,暦の上での休日・祝日は出かけません。午前中は食い扶持仕事をして,午後からはパソコンの前に張り付いて,データやグラフの試作品をツイッターで流したりしています。
その中で,15歳生徒の父母の大卒率を国別に比べたグラフが関心を集めています。OECDの「PISA 2015」にて,15歳生徒に父母の学歴を尋ねた結果です。日本の場合,大卒率は父親のほうが母親より高い,と思われるでしょう。結果はその通りで,父が大学を出ていると答えた生徒の比率は44%ですが,母が大学を出ているという生徒は27%しかいません。
大学進学率は男子が女子より高いので当然,何の違和感もないデータです。しかし国際的にみると,こんなにジェンダー差が開いている社会はないのですよね。主要国のデータを拾ってみると,以下のようになります。リモート集計で作りましたので,粗い整数値になっていること,ご容赦ください。
大卒率とは,ISCEDのレベル5A以上の学歴保有者をいいます。日本でいう大学・大学院卒業者で,短大や専修学校等は含まれません(これらはレベル5B)。
表をぱっと見,さすがは教育大国のニッポン,父親の大卒率(44%)は8か国で最も高くなっています。しかし母親になるとガクンと下がり,8か国中6位です。右端は母の大卒率が父より何ポイント高いかですが,日本はマイナスの振れ幅が大きくなっています。大卒率のジェンダー差(男性>女性)が殊に大きい社会です。
母の大卒率が父より高い国があることにも注目。フィンランドでは9ポイント,アメリカとスウェーデンでは6ポイント,母の大卒率が父より高くなっています。世界を見渡せば,こういう社会もあるのですよね。
比較の射程を広げてみましょう。「PISA 2015」から,発展途上国も含む69か国のデータを得ることができます。横軸に母親の大卒率,縦軸に「母親-父親」の差分をとった座標上に,69の社会のドットを配置してみます。母親の大卒率を,絶対水準と相対水準(対父親)で見て取れる仕掛けです。
教育が普及しているといわれる日本ですが,15歳の母親の大卒率は69か国の中では真ん中辺りです(横軸)。大学進学率のジェンダー差が大きいからに他なりません。
それは,縦軸上の日本の位置に表れています。「母親-父親」の差分ですが,日本が最もマイナス方向(下)に振れています。「父親>母親」のジェンダー差が最も大きい,ということです。その度合いは,発展途上国やイスラーム諸国以上ではありませんか。
縦軸の位置がゼロよりも上なのは,母の大卒率が父よりも高い,言い換えると女子の大学進学率が男子より高い社会です。その数は33か国で,全体のおよそ半分です。右上には,北欧の諸国が位置しています。女性の大卒率が高く,かつ男性よりも高い社会。リカレント教育が普及していますので,社会に出てから大卒・院卒の学歴をとったという人も少なくないでしょう。
東洋の小さな島国でわれわれが見ている光景は,普遍的でも何でもないことが知られます。むしろ,国際的にみたらアブノーマルな部類です。大卒率,抽象度を上げていうと教育達成のジェンダー差(男性>女性)が他国に比して格段に大きいのは,明らかに問題であるといえるでしょう。
なぜ,こんな事態になっているか。思い当たるふしは,数多くあります。男子と女子では,親や周囲から向けられる教育期待が異なること,それに呼応して,女子の大学進学アスピレーションが男子より低いのは,日経DUALの寄稿記事で明らかにしました。その度合いは,他のどの国よりも大きくなっています。今回のデータと符合しますね。
https://dual.nikkei.co.jp/atcl/column/17/1111184/110500014/
そういうクライメイトを察知してか,女子,とりわけ低所得層の女子は,自身の将来を早くから見限る傾向もあります。高校生のバイト実施率を家庭の所得階層別に出すと,低所得層では「男子<女子」の差がものすごいのです。貧困という生活条件がどう作用するかは,男子と女子では違うようです。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/02/post-11687.php
また,大学が都市部に偏在しているゆえ,とりわけ地方において大学進学率の性差は大きくなっています。私の郷里の鹿児島は,その典型です。コストのかかる自宅外進学は男子優先,そもそも女子を外に出したくない…。こう考えている親御さんも多し。
対策は,女子に対し偏った眼差しを向けないこと,女子が進学しやすい条件を整えることに分かれます。後者についていうと,東大は女子学生の家賃補助をしていますが,これなどは,地方の才女を呼び寄せるのに一役買うと思います。
大学進学率のジェンダー差をなくすなんて不可能,そもそも男子と女子の意向の差とも読めるのだから,このままでいいじゃないか。こういう意見もあるでしょうが,上記の国際比較のグラフを一瞥するだけで,それが欺瞞に満ちていることは分かります。変革可能性はあるのです。
今回比べた69か国でみると,15歳の父の大卒率は3位ですが,母は33位なり。ここまで落差が大きい国は他にありません。人口の半分を占める女子の教育をなおざりにしてきたことの証左です。新しい令和は,女子教育の時代。そんなふうに思います。
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