2015年8月24日月曜日

料理男子

 男女共同参画社会の実現に向けた取り組みが進展し,女性の社会進出とともに,男性の家庭進出も促されるようになっています。男性の家事時間は,以前に比したら増えていることでしょう。*絶対水準ではまだまだですが。

 しかし,妻に文句を言われ仕方なく,イヤイヤ・・・。こんな人も少なくないのでは。男性が,本心から家事にどれだけ目覚めているかを測る尺度はないか。こういう関心をもって,「社会生活基本調査」の統計表を眺めたところ,一つあることに気づきました。

 それは,趣味としての料理・菓子作り実施率です。「趣味として」とありますから,妻との取り決めによるノルマのようなものは含まれていません。自らの意志で,鼻歌でも交えながら楽しくやるものと考えられます。

 「社会生活基本調査」から,趣味としての料理・菓子作りの実施率を知ることができます。過去1年間における実施率です。私は,男性の年齢層別の実施率を拾ってみました。下図は,1986年と2011年の実施率の年齢曲線です。下記サイトの表6-3のデータをもとに作成しました。


 1986(昭和61)年といえば,男女雇用機会均等法が施行された年で,それ以降,男女平等に向けた施策や取組が充実してきました。冒頭で述べたように,男性の家事時間はわずかではありますが,増えてきています。

 しかし,内発的な家事への目覚めの指標である,趣味としての料理・菓子作りの実施率は,若年から壮年層では下がっています。私の年代の30代では,8.1%から5.5%へのダウンです。

 この四半世紀にかけて,オトコの料理・菓子作り実施率は上がっているだろうと踏んでいましたが,現実は逆であることにちょっと驚いています。未婚化により,独身・単身の男性が増えているためでしょうか。

 なお,値は地域によっても違っています。2011年のデータを使って,働き盛りの35~44歳男性の実施率を都道府県別に出してみました。以下に掲げるのは,そのランキング表です。


 全国値は5.1%ですが,県別では10.1%~2.3%までの幅があります。トップは首都の東京ですか。大都市で,お料理教室とかが相対的に多いためでしょうか。しかし都市性とリンクしているわけではなく,東北や九州などの地方県も上位に位置しています。私の郷里の鹿児島は,ちょうど中ほどです。

 男性の家庭進出度の尺度として家事時間ばかりに注目されがちですが,ここでみたような,趣味としての料理・菓子作り実施率のような指標にも目をむけるべきでしょう。それは,自発(内発)的な家事への目覚めの指標です。

 子どもの勉強にしてもそう。1日の勉強時間だけでなく,知への内発的な希求度を測る指標として,趣味としての読書実施率,社会教育施設利用率などにも注意すべきでしょう。子どもの勉強時間は一昔前に比してうんと伸びていますが,悲しいかな,自発的な読書実施率(時間)は低下しています。

 人間は生来「怠け者」で,外から鞭を打たれないと行動しない面を持っています。近年の家事時間や勉強時間の増加は,おそらくは外からの働きかけによる「外発的」なものでしょう。しかしそれだけではいかにも脆く,当人の内発的な志向も伴うべきです。今回みた,趣味としての料理・家事実施率は,こちらの面を可視化する指標です。