大学卒業時が就職氷河期だった,ロスジェネといわれる私の世代ですが,いよいよ40代に差し掛かってきました。子どもの教育費がかさむ時期で,学生時代に借りた奨学金の返済を続けている人もいるでしょう。
http://tmaita77.blogspot.jp/2018/01/blog-post_22.html
しかるに,今の40代は一昔前の40代とは違います。上述のように,学校から社会への移行期が不況のどん底でしたので,正規就職が叶わず,非正規雇用に滞留している人が数多くいます。わが国は,新卒時の一発勝負の社会ですので。順調にスキルやキャリアを積めていない人も多し。
それに年功賃金も薄れてきてますので,若い頃から右上がりに昇給してホクホク,という人も少なくなっているのではないでしょうか。
5年刻みで実施されている『就業構造基本調査』のデータをもとに,35~44歳男性有業者の年収変化を観察してみましょう。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00200532&result_page=1
バブル末期の1992年と,最新の2012年調査のデータから年収(税引き前)の分布を拾うと,以下のようになります。
1992年のアラフォー男性有業者は912万人,2012年は872万人です。1992年は階級の刻みが粗いですが,最も多いのは年収500~600万円台となっています。対して2012年の最頻階級は,300万円台です。
階級を揃えて,人数の構成比(%)にしたグラフを作ってみましょう。
この20年間の変化が見やすくなりました。ピークは,年収500~600万円台ですが,2012年はその山が下がり,代わって低収入層が増えています。
緑のマークで囲った部分は年収300万未満ですが,この割合は,1992年では15.7%でしたが,2012年では23.6%に増えています。最近では,アラフォー男性の4人に1人が,年収300万未満であると。これは税込みの年収ですので,実際の手取りはもっと少なくなります。
このグラフをツイッターで発信したところ,多くの方に見ていただけました。中京大学の大内教授が言われていますが,奨学金の返済どころではない人が増えていることが知られます。
https://twitter.com/ouchi_h/status/965935583263522817
最初の度数分布表から,階級値(真ん中の値)を使って平均値を計算すると,1992年が548.4万円,2012年が479.6万円となります。この20年間で,アラフォー男子の年収は70万円近くも減っていると。
これは全国値ですが,都道府県別の度数分布も原資料に出ていますので,同じやり方で47都道府県のアラフォー男性の平均年収を計算できます。1992年と2012年のデータを対比すると,怖いことが分かります。
どの県も,出費がかさむアラフォー年代の年収はダウンしています。埼玉,千葉,神奈川,石川,岐阜,京都,奈良では,100万円以上の減です。
黄色マークは年収500万円以上ですが,その数は大きく減っています。1992年では25県でしたが,2012年では6県のみです。
これを地図化すると,身震いするような模様になります。下のマップは,アラフォー男性の年収が500万円を超える県に色をつけたものです。
「失われた20年」の可視化以外の何物でもありません。2012年では,埼玉や大阪も白色,働き盛りの男性の平均年収が500万円に達していないのです。
ツイッターでこの地図を発信したところ,かなり注目され,多くのリプがついています。そこで書いた,やや汚い言葉での主張をここで繰り返させていただきます。
https://twitter.com/tmaita77/status/965944504858525697
「もう成り立たねえよ。奨学金返済,学費の親負担という「年功賃金」を前提としたシステムは。」
これだけ収入が減っているのに,子どもの教育費負担,奨学金の返済がのしかかるのはツライ。そもそも,子どもの教育費の大部分を親に払わせる,高等教育の学費をローンで賄わせ,後から返済させるというのは,年功賃金を前提としたシステムです。
しかしここではっきり示したように,それは崩壊しつつあります。ロスジェネという特殊世代の要因かもしれませんが,より最近では,事態はもっと悪化しているかもしれません。昨年実施された,2017年の『就業構造基本調査』のデータではどうなっていることか…。
若い世代の皆さん。「一つの会社に長く勤めれば給料が上がる。石の上にも3年。若いうちは辛抱しろ」などという,上の世代の戯言に騙されるべからず。気に入らなければどんどん転職しましょう。副業をして,どこでも通用する汎用性のあるスキルを身に付けましょう。
年功賃金の崩壊というのは,教育費の家計押し付け型や,長期の飼い慣らしによる家畜労働というような,わが国の病理を克服するいい契機かもしれません。変化はチャンスです。
今回のデータは,奨学金政策の担当者の方に,ぜひ注視してほしいと思います。