2019年4月22日月曜日

正社員の人件費の半分は40~54歳

 気温が上がってきましたが,いかがお過ごしでしょうか。横須賀は現在,22度まで上がっています。先ほど,今年初の冷房を入れました。

 人手不足が叫ばれていますが,大企業は45歳以上の中高年のリストラをしているようです。今朝は,NECの記事を見かけました(「早期退職しない限り面接が続き…45歳以上クビ切り横行」)。富士通も大々的にやっていますよね。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190422-00010000-flash-peo

 45歳といえば団塊ジュニアで人数的にも多い世代です。それで年功賃金なものですから,企業にすればコストがかかって仕方ない。それでリストラに踏み切っていると。これでは,われわれロスジェネの入る隙などありません。

 私にすれば,この年功賃金をどうにかしたらと思うのですが,子どもの教育費がかさみ,住宅ローンも抱えている年代ですので,そうもいかないのでしょうね。年齢による役割規範が強い日本社会の病理の反映でもあります。根本的には,この部分を治療しないといけません。

 企業にすれば「金食い虫」と揶揄したくなる40代後半の層ですが,この年齢層の正社員は全国に471万人ほどいます(総務省『就業構造基本調査』2017年)。この人たちに対し,トータルでどれくらいの人件費が払われているのでしょう。所得の度数分布から,総額を割り出してみます。


 各階級に含まれる人の所得は,一律に中間の値とみなします。所得500万円台の人は,一律に中間の550万円と仮定します。この中間の値(階級値)に人数をかけ,それを合算すれば,471万人の所得の総額が出てきます。

 右下にあるように,その額は25兆6908億5000万円です。これが,全国の40代後半の正社員が手にした所得の総額,企業にすれば支払った人件費のトータルです。

 これは40代後半の額ですが,同じやり方で他の年齢層の所得量も出してみます。結果をまとめると,以下のようになります。


 どうでしょう。予想通りといいますか,40代後半の得ている所得量が最も多くなっていますね。年功賃金で給与がそこそこ上がっていて,かつ人数的に多いためです(団塊ジュニア!)。

 前後の40代前半と50代前半も多いですね。これら3つの年齢層(黄色マーク)の所得総額は73兆2752億7500万円で,全年齢層の総額の46.4%に該当します。すなわち,正社員の人件費の半分近くは40~54歳に支払われていると。タイトルの通りです。

 年功賃金な上,世代的な条件で人数が多いものですから,こういう事態になっています。これでは企業も立ちいかない。そこで,リストラのナタが振るわれているというわけです。
 
 いよいよ,年功賃金という日本的慣行も限界に達しつつあるようです。城繁幸さん流にいうと「人間の価値は年齢で決まる」を前提にしたシステムで,賃金は年齢に応じて機械的に上がります。高度経済成長期のようなピラミッド型の人口構成ならまだしも,上が厚く下が薄い「逆ピラミッド」の社会で,これが維持できるはずがありません。

 年齢が高い人には,相応の(高い)賃金を払わないといけない。こういう教典があるものですから,当然,中途採用のハードルは高くなります。これが,ロスジェネの正社員化を阻んでいるのは,言うまでもありません。

 ロスジェネの救済に政府は乗り出しましたが,まずは年功賃金の是正を呼び掛けるべきかと思います。ロスジェネの中に,高い給与を望んでいる人はそんなにいません。人間らしい暮らしが営めるお給料と社会保障が欲しいのです。先週,久々に新聞の取材を受けたのですが,記者さんにこの点を繰り返し言わせてもらいました。

 経団連のお偉方が「もう終身雇用は限界だ」という趣旨の発言をしています。そうでしょうね。終身雇用と年功賃金。この2つが崩壊したら,もう労働者は一つの会社に身をゆだねるわけにはいきません。絶えず研鑽を続け,自身のスキルを売りに複数の組織を渡り歩く時代になります。

 考えてみれば,そのほうが健全だと思うのですがどうでしょう。ツイッターでつぶやきましたが,日本の企業でパワハラがまかり通るのは,雇用の流動性という文化がないからです。「ここしか居場所がない」となると,どんな理不尽な仕打ち(パワハラ,転勤強制…)にも耐えないといけない。こんな「しがみつく」生き方は,非常にハイリスクといえるでしょう。

 ピンチはチャンス。人口学的条件により,長らく続いてきた日本的慣行(終身雇用,年功賃金)の維持が難しくなってきていますが,これは日本の企業社会を健全な方向に変えるいい機会でもあります。われわれロスジェネは,その壮大な社会実験に挑む最初の世代です。「人の価値は年齢で決まる」,まずはこの思い込みを捨て去り,このさ迷える世代を企業社会に取り込むことから始めようではありませんか。