2014年10月2日木曜日

大学の定員充足率の分布(2014年)

 読売新聞教育取材班の『大学の実力2015』(中央公論新社)を入手しました。同社が今年に実施した,全国の大学調査の結果が掲載されています。
 毎年行われている大規模調査ですが,今年は660大学から回答があったそうです。『学校基本調査』から分かる,今年5月時点の全国の大学数は781校ですから,母集団の84.5%がカバーされていることになります。

 調査項目も年々充実してきており,今年は,入試方法別の退学率までが大学別に掲載されています。一般入試で入った者の退学率はどれほどか,AO経由の入学者はどうか,というデータです。いやはやスゴイ。こういう貴重な調査を毎年実施している,読売新聞社の労には頭が下がります。

 私は本書のデータをエクセルに入力して,独自のデータベースを作りました。現在,660大学の学生数や教員数などの基礎データを打ち終えたところです。今回は分析第一報として,回答のあった大学の定員充足率を明らかにしてみようと思います。

 定員充足率とは,定員に占める学生数の百分比です。この値が100を下回る場合,定員割れを起こしていることを意味します。昨今,学生が集まらず定員割れに悩んでいる大学が多いといいますが,数でみてどれほどなのでしょう。

 上記の書籍には,今年5月時点の学生数と定員数が掲載されています。私の非常勤先のM大学でいうと,前者が7,299人,後者が6,721人です。よって定員充足率は前者を後者で除して,108.6%となります。へえ,まあまあ好調なんだな。

 659大学の定員充足率を計算すると,最高の131.5%から最低の23.7%まで,甚だ広く分布しています。後者では,定員の5分の1しか学生がいないわけです。これはかっ飛んだ値ですが,100%未満の定員割れ大学は結構あります。その数は241であり,全体の36.6%に相当します。調査に回答していない大学も含めれば,この比率は4割を超えるでしょう。

 算出された定員充足率の分布をグラフで示しましょう。設置主体ごとの帯グラフです。国立82校,公立76校,私立501校の分布図なり。


 太枠は定員充足率100%未満,すなわち定員割れしている大学ですが,「国<公<私」となっています。私立大学の定員割れ率は46.1%で,ほぼ半分です。新聞等で報じられる数値とだいたい一致しています。

 私大では,充足率8割未満の大学も2割ありますが,その多くは地方の大学です。少子化でどの大学も大変ですが,最も苦境に立たされているのは地方私大です。ただでさえ少ない18歳人口が都会に出ていく,所得水準が低いので国公立志向が強い,などの条件がありますしね。私の郷里の鹿児島などは,その典型です。

 私は,私立大学の定員充足率の都道府県地図をつくってみました。各県の私大の学生数/定員数です。鹿児島の場合,回答のあった3私立大学の学生数は4,768人,定員数は5,156人ですから,本県の私大の定員充足率は92.5%となります。やっぱ,定員割れしているな。

 この値を全県分出し,マップをつくってみました。私立大学の回答がゼロ,または私大がない県は「欠損値」としています。


 白色は総体でみて定員割れを免れている県ですが,それは東北や都市部の数県だけであり,多くの県に不吉な色が付いています。黒色は90%を下回る,苦境の度合いが高い県です。最低の青森は75%,県内の私大の定員は6,515人ですが,学生は4,913人しかいません。

 こういう状況のなか,留学生や社会人などを取り込むことに力を入れている大学も多いことでしょう。今年の読売新聞調査では,これらのような「非伝統的」学生がどれほどいるかも大学ごとに分かります。留学生率や社会人学生率は,大学の国際化や生涯学習化の指標となるでしょう。回を改めて,これらの大学分布も明らかにするつもりです。

 他にも,恒例の退学率や卒業生の正規就職率分布など,やりたいことが盛りだくさん。データベースを徐々に完成させ,分析結果を定期的にレポートしていきたいと考えております。