リンダ・グラットン著『ライフ・シフト-100年時代の人生戦略-』東洋経済新報(2016年)を,キンドルで読み始めています。就業形態の未来予測をした『ワーク・シフト』に次ぐ,話題作です。
http://store.toyokeizai.net/books/9784492533871/
寿命の延びにより,人生100年の時代になる。それに伴い,人々の生活は大きく変わる。人生100年という時間を,苦役ではなく恩恵に変えるにはどうしたらいいか。こういうテーマを扱った本です。
まだ最初のちょっとを読んだだけですので,内容については話せませんが,人生100年の時代というのを統計で表現してみたくなりました。同一世代の何%くらいが,100年を生きる時代になるのか。国連の人口推計サイトのデータを使って,この問題に接近してみましょう。
https://esa.un.org/unpd/wpp/
上記の資料には,5年間隔で,5歳刻みの人口統計が載っています。1950年から2100年までの長期統計です。
1950年の日本の0~4歳人口は1099.8万人(①)です。1946~50年生まれ世代ということになります。この世代が全員100歳を超えるのは,100年後の2050年。この年の100歳以上人口は44.1万人(②)。よって当該世代が100歳まで生きる割合は,②/①=4.0%と算出されます。およそ25人に1人。
これは,戦後初期に生まれた団塊世代のデータですが,世代を下るにつれ,値はどんどん高くなっていきます。その様相を整理すると,下表のようになります。
100歳以上生きる人間の割合は,1946~50年生まれ世代では4.0%でしたが,前世紀の末(96~00年)に生まれた世代では,15.5%にもなります。およそ7人に1人です。
データを出せませんが,今世紀以降に生まれた世代は,この値はもっと高いことでしょう。
表の上段には世界全体の数値も掲げましたが,わが国がいち早く「人生100年の時代」に突入することが見て取れます。冒頭の書物でもいわれていますが,日本が先例を提供することになるわけです。
私は長生きしたいなどと思ってませんので,厄介だなという印象ですが,人生100年という時間を厄災ではなく恩恵に変える術もある。それは,生活のステージの再編です。
現在では,人の一生は,教育期,仕事期,引退期の3つに分けられ,左から右のステージへと直線的に進む型ですが,これを変えないといけない。現状維持のままだと,空疎な引退期がべらぼうに長くなり,人生100年は苦役にしかならなくなります。
リンダ・グラットン教授がいう処方箋は,それぞれのステージの間を,いつでも自由に往来できるようにすることです。引退した後でも,学び直したり,(軽度)の仕事に戻れるようにする。仕事期の途中でも,プチ引退をし,時代の変化に即した職業訓練を受けるなど・・・。
老化防止薬の開発により,高齢者の就業も今よりは容易になるでしょう。また社会の変化が速まる中,同じ仕事だけで生涯メシを食える時代は終わります。人は,絶えず「変身」することを迫られる。そのための戦略は,仕事期から教育期へと再び舞い戻る,リカレント教育です。
なるほど。リンダ・グラットン教授がいう処方箋が実現する条件は出てきているように思えます。ただ,硬直した直線型のライフコースが支配的な日本では,他国に比して,いろいろ障害が多い。この点をどう克服して,人生100年の時代を恩恵に変えるのか。『ライフ・シフト-100年時代の人生戦略-』を,これからじっくり読み進めようと思います。