女性の社会進出が以前よりは進み,働く女性は増えています。しかしフタを開けると,増えているのは非正規雇用ばかりだったりする。私は前に,日本の女性の社会進出を「非正規依存型」と形容したことがあります。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=5728
給与も多くはありません。男性に比べると,かなり低くなっています。この点のデータはたくさんありますが,国際比較をするとどうでしょうか。今回は,有業女性の稼ぎの国際比較をやってみようと思います。
用いるのは,OECDの成人学力調査「PIAAC 2012」のデータです。この調査では,有業の対象者に年収を尋ねています。有業者全体の年収分布の中で,どの辺に位置するかを問う形式です。日本の場合,以下の6つの選択肢からチョイスしてもらっています。
http://www.oecd.org/skills/piaac/publicdataandanalysis/
①:10%未満 (192万円以下)
②:10%~ (193万円~)
③:25%~ (241万円~)
④:50%~ (315万円~)
⑤:75%~ (431万円~)
⑥:90%以上 (581万円以上)
他国も同じです。それぞれのカテゴリーの年収幅を各国通貨で提示し,選択してもらう設問です。
働き盛りの35~44歳の有業男女を取り出し,この設問の回答分布をとってみました。①~②を「下位25%未満」,③~④を「中間」,⑤~⑥を「上位25%以上」とし,3つの群の内訳をグラフにしてみましょう。下図は,主要6か国のものです。「瑞」は,スウェーデンを指します。
データの計算は,下記サイトのリモート集計を使ったことを申し添えます。
http://nces.ed.gov/surveys/international/ide/
男性は国際差はあまりないですが,女性はそれが大きくなっています。日本の女性でみると,下位25%未満の層が63%もおり,高収入層は11%しかいません。家計の補助的なパート就労が多いためでしょう。
日本は,ジェンダー差が大きいですね。伝統的性役割観の残存を見て取れます。
アメリカとスウェーデンは,女性であっても,低収入層(青色)よりも高収入層(緑色)のほうが多し。働き盛りの女性の稼ぎは,社会によって違うものです。
上図は主要国のものですが,他の対象国のデータも散りばめた散布図をつくってみましょう。35~44歳の有業女性のうち,年収が「下位25%未満」の者の比率を横軸,「上位25%以上」の者の比率を縦軸にとった座標上に,17の国を配置すると,下図のようになります。
左上は,低収入層が少なく高収入層が多い,つまり女性の稼ぎが相対的に多い社会です。右下は,その反対なり。
斜線は均等線ですが,このラインより上にある4つの社会(カナダ,アイスランド,アメリカ,スウェーデン)は,低収入層よりも高収入層が多くなっています。
日本は,東欧諸国と並んで,右下にあります。しかし,これから先は,徐々に左上に上がっていくのでしょうね。社会全体では人手不足,個々の家庭でみても,夫婦「二馬力」でないとやっていけない状況になりますので。
今回は,35~44歳の有業女性という括りで見ましたが,未婚/既婚,子の有無といった条件により,稼ぎの水準は大きく異なると思われます。日本の場合はおそらく,「未婚」→「既婚」→「既婚・子持ち」という地位の変化につれ,稼ぎはガクンガクンと減っていくのではないでしょうか。
リモート集計では,ここまで細かい変数統制はできませんが,ローデータを使えばそれは可能だと思います。今後の課題といたしましょう。