先日,プレジデント・オンラインの記事にて,15歳生徒の数学嗜好スコアの国際比較をやってみました。数学嗜好を測る設問(8つ)への回答を合成して作ったスコアの平均値です。資料は,OECDの国際学力調査「PISA 2012」なり。
http://president.jp/articles/-/21065
日本の生徒の平均スコアは最下位。世界で最も「数学ギライ」の国であることが分かってしまいました。対して,インドネシア,ペルー,メキシコといった発展途上国ではスコアは高くなっています。
言わずもがな,このスコアの高低は,それぞれの社会の数学教育のレベルにもよるでしょう。日本では内容が高度ですが,途上国ではさにあらず。簡単な内容なので,多くの生徒は自信満々。数学嗜好と数学学力は別の次元の話で,後者は日本のほうがはるかに高くなっています。
国際データにて,両者の相関図を描くと,逆相関の傾向になっています。
左上は,高度な内容を課され,多くの生徒が自信を失っている社会。右下は,内容が平易で,生徒が自信を持てている社会。こんなふうに性格づけることができるでしょうか。
個人単位の因果の話ではありませんが,社会レベルのデータでみた場合,数学を好む度合いと数学の現実の学力水準は,逆相関の関係にあります。シンガポールのように,両方が高い水準にある,好ましい社会もありますが。
しかし,左上と右下の社会のどっちがいいのかしら。
高度な内容を課して,全体として高い学力水準を実現していますが,多くの生徒が自信を剥奪されている。高度な理系学力を鍛えても,それを活かして理系職を希望する生徒が出てこない(とくに女子)。これが日本の現状でしょう。
変動が激しい社会で重要なのは,新たなことを積極的に学んでいこうという「関心・意欲・態度」です。日本では,学力の「現在値」が高くても,将来での躍進可能性を示す「未来値」は低いのではないか。
この問題ははっきり認識されており,次期学習指導要領の目玉である「アクティブ・ラーニング」は,後者を鍛えるための戦略であることは,言うまでもありません。