週60時間といたら,週5日勤務と仮定すると1日12時間。法定の1日あたりの労働時間は8時間ですから,週あたりの残業時間は(12-8)×5=20時間,月あたりにすると80時間,過労死ラインを超えます。
こんな働き方をしている教員が7割もいると。子どもにとっても,悪いモデルになるでしょう。
他国もそうなのでしょうか?いや,そんなわけはありません。OECDの国際教員調査「TALIS 2013」のローデータから,中学校教員の週間勤務時間分布を知れます。フルタイム勤務の教員のうち,週60時間以上勤務している者は何%か。この比率の国際比較をやってみました。
勤務時間が判明する全教員でみると,週60時間以上勤務者の割合は,日本の49.6%からフィンランドの1.0%まで幅広く分布しています。日本では半分ですが,北欧のフィンランドではほぼ皆無であると。スゴイ違いですねえ。
しかし,様相は年齢によって違います。以下に掲げるのは,32か国の年齢層別の長時間勤務者率です。
どの年齢層でも,週60時間以上働いている教員の割合は日本が最も高くなっています。20代では67.0%と,7割近くになります。若手では,こんなにも多くの教員が過労死レベルの働き方をしていると。
日本は率の高さに加え,年齢差が大きいことも特徴のようですが,昔ながらの年功序列のようなものが生きているのでしょうね。今問題になっている部活指導も,若手に多く降ってくるでしょう。
20代の若手について,長時間勤務者率のランキングのグラフを作ると,実に衝撃的です。
日本は,2位のシンガポールを大きく引き離してダントツ。国際的な標準から大きく外れた,病理のレベルに至っています。
次期学習指導要領の目玉はアクティブ・ラーニングですが,AL型の授業の準備には手間がかかります。教えることの専門職たる教員が,本来の業務(授業)に集中できるようにすべく,部活指導のような業務から,彼らを解放しないといけません。
下位のヨーロッパ諸国では,教員の職務の境界がさぞ明確なのでしょうね。それは,教員が専門職として確立されていることと同義です。
わが国では,教員の社会的性格が未だに曖昧なまま。「準専門職(semi-profession)」という苦肉の表現があてがわれたりしています。教員自身は,自分たちを専門職と思っているのに,現実には「何でも屋」のようなことをさせられる。教員の苦悩の源泉は,こういう立ち位置の曖昧さにあるともいえるでしょう。
長時間勤務を是正するのは小手先の手段ですが,もっと根源的には,教員という職業の社会的性格を定かにすること。後者の大きな課題も,絶えず認識しておかないとなりますまい。