2017年4月27日木曜日

幼子がいる母親の就業率マップ(2015年)

 2015年の『国勢調査』の第2次集計結果が公表されました。国民の労働力状態の集計結果です。労働問題の研究者は「待ってました!」と,喝采の声を上げていることでしょう。私もそうです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001080615&requestSender=search

 失業率,若者の無業率,女性の労働力率のM字カーブが過去に比してどう変わったか。地域別の傾向はどうか…。いろいろ明らかにできますが,私はまず,就学前の乳幼児がいる母親の就業率がどう変わったかに関心を持ちます。

 ここ数年,この問題の重要性が認識され,保育所の増設,保育士の待遇改善などが図られてきました。上記の指標を手掛かりに,その成果を拝見といきましょう。

 私は,6歳未満の子がいる核家族世帯(夫婦あり)のうち,妻が働いている世帯の割合を計算してみました。2015年の『国勢調査』のデータによると,分母が349万2147世帯(妻の就業状態が不詳の世帯は含まず),分子が179万7107世帯です。よって求めるパーセンテージは,51.5%となります。

 2015年の最新データでみると,就学前の幼子がいる母親の就業率は51.5%ですか。5年前(2010年)の『国勢調査』のデータでは,同じ値は41.3%でした。この5年間で,10ポイントほど伸びていることになります。近年の政策の効果といえましょう。

 これは全国の値ですが,地域単位でみるとどうか。都道府県よりも下った,より身近な生活圏の市区町村レベルで,上記の指標を出してみました。観察対象は,首都圏(1都3県)の市区町村です。

 下図は,結果を地図に落としたものです。50%(半分)を超える市区町村に色がつくようにしてみました。


 ほう。色つきの地域が増えていますね。2010年では28でしたが,5年を経た2015年では97の市区町村で,幼子がいる母親の就業率が50%を超えています。

 しかるに,そのラインに満たない白色のゾーンが広いのは相変わらずで,私が住んでいる神奈川県は,2015年でも全体的にほぼ真っ白です。ちなみに,私が居を構えた横須賀市は40.4%なり。低い…。

 さて,幼子がいる女性の社会進出チャンスは,色の濃淡で見て取れるのですが,言わずもがな,子どもを預けることができる保育所の量と相関しているでしょう。今回見ているのは核家族世帯のデータですので,三世代世帯の量の影響は除かれています(近居の影響はあるかもしれませんが)。

 試みに,2013年の乳幼児の保育所在所率との相関をとってみましょう。分子は同年10月1日時点の認可保育所在所者数(厚労省『社会福祉施設等調査』)で,分母は3月31日時点の0~5歳人口(総務省『住民基本台帳による人口』)です。

 この指標を横軸,幼子がいる母親の就業率(2015年)を縦軸にとった座標上に,1都3県の242市区町村を配置すると以下のようになります。


 やはりですね。保育所に在籍している乳幼児の率が高い地域ほど,母親の就業率は高し。相関係数は+0.7147にもなります。まあ当たり前といえばそうですけど。

 私が住んでいる横須賀市の位置も分かりました。状況改善の余地はまだあり,というところでしょうか。

 最後に参考資料として,2015年の母親の就業率の市区町村別一覧表を掲げておきます。242の地域を高い順に並べたランキング表です。ご自分の地域の印をつけてみてください。


 神奈川県の地域は,右下に寄ってしまっている。児童福祉関係の部署のみなさん,参考になさってください。