自粛生活要請が段階的に解除されてきました。しかし,お店を営業したり,子どもを公園で遊ばせたりすると,「不謹慎だ」という自粛警察がすっ飛んできます。私にすれば,「することないんだろうな」っていう感想しか出てきません。
この国にうずまく不寛容の精神について,考えさせられるデータがありますので,ご紹介します。東アジアの5都市の母親に,「将来,子どもにどういう人になってほしいか」と尋ねた結果です。
ベネッセコーポレーションが2010年に実施した調査で,3~6歳の子がいる母親に対し,10の選択肢を提示して,その中から3つまでを選んでもらっています。
https://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=3202
東京,ソウル,北京,上海,台北という5都市の母親の選択率をみると,どの都市でも「自分の家族を大切にする人」が最も高くなっています。東アジアの儒教スピリッツが出ていますね。その他をみると,日本の母親の選択率が段違いに高い項目が2つあります。グラフにするとインパクトがあります。
まずは「友人を大切にする人」。結構な人間像ですが,この項目に重きを置くって,日本の親の特徴なんですね。他国では1~2割弱ですが,日本の母親の71.6%がこれをチョイスしています。
友人を大切にする…。言い換えると,気の合わない人とも仲良くする,集団の和を乱さぬよう「空気」を読む,というふうにも読めます。こういう期待を真に受けた子どもが,いじめを受けつつも,必死に人間関係を維持しようとし,自分を追い詰めてしまうのかなあと思います。
2つ目は「他人に迷惑をかけない人」。これも正論に聞こえますが,誰しも,生きているだけで他人に迷惑をかけているのですよね。互いの迷惑(欲求充足)を処理することがすなわち仕事であって,それで社会は成り立っているのです。字の形をみると分かりますが,「人」は互いにもたれ合って生きる存在です。
日本人の親は「人様に迷惑をかけるな」と言いますが,インド人の親は「お前も迷惑をかけているんだから,他人からの迷惑も許せ」と説きます。人口大国,多文化共生の国ということもあってか,後者の考え方は真理を突いています。
私は上記のグラフをみて,「同調圧力」という言葉を思いつきました。学校に上がってからではなく,物心ついた時から,親によってこういう躾をされているのだと。為政者にとっては何とも扱いやすい国民が出来上がり,他人の些細な過ちをあげつらうのを生き甲斐とする「**警察」が蔓延るわけです。
「友人を大切にする」「他人に迷惑をかけない」。こういうことを頻繁に言い聞かされて育った子どもは,自尊心は低くなるでしょう。そんなのできっこなく,理想と現実のギャップの大きさに気づくばかりだからです。日本の子どもの自尊心が低いことの一因は,幼少期よりこうした同調圧力を受けているためかもしれません。